旅鉄からの手紙

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日豊本線〜大分ー鹿児島〜

宗太郎越えへ〜渡り鳥たちのコースも〜

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再び初めての九州への一人旅に戻る。大分から宮崎、鹿児島方面に向かう日豊本線に乗り換えた。私にとっての列車の旅での大きな楽しみの一つは、山越えであり日豊本線で難所の一つである大分と宮崎との県境の「宗太郎越」を通りたかった。
宗太郎と言えば人の名前で、地名の由来は江戸時代に岡藩に命じられてこの付近の管理に従事された洲本宗太郎氏に因んでいると言う。
この付近は殆どが大分県と宮崎県とを結ぶ特急列車が通過するために普通列車は私が乗った時も1日僅か5本であった。しかも阿蘇の火口を見るスケジュールとの兼ね合いもあり大分駅を発車した時には既に16時を回っていた。宗太郎越えは夏の九州で陽が沈み辺りが暗くなる20時頃の予定であった。

列車は大分の市街地を東へ抜けると急に南へ進路を変えて佐賀関まで延びる丘陵地帯を越える佐志生(さしう)トンネルなどを抜ける。佐賀関から豊予海峡を挟んだ四国の愛媛県の佐田岬と言えば、小学校の国語の教科書で日本列島と東南アジアなどを往復する渡り鳥の通り道として出てきた覚えがある。

それにしても常夏の東南アジア辺りに一年中居れば良いのに、何故大変な思いをしてまで遥か彼方の日本列島まで飛んで来るのか不思議である。渡り鳥の種類にもよるが一説では夏になると赤道付近よりも日が長い日本列島も含めた北半球の方が、繁殖や子育てに必要なエサを獲る時間が長く取れるからとも言われている。夜も電気や火などの明るさで食事を取るなど生活出来る我々にとっては想像出来ないくらい、空を飛んで気持ち良さそうに見える鳥達も、昼間の時間を少しでも長く使いたいくらい、寸暇を惜しんでエサを獲り子孫を残すのに必死なのであろう。

それに加えて重力に逆らって空を飛ぶだけでも物凄いエネルギーが要る事を考えると鳥や人間達に限らず多くの生き物がはたから見てなかなか気づかない努力をしていると思える広い心が欲しいと思える。

初夏になると我々の身近でもよく見られる家屋や田舎の駅舎の軒下などに巣を作り子育てをするツバメも含めた、多く渡り鳥達が佐田岬付近を通る春季と秋季を中心にバードウォッチングが楽しめるという。

そんな渡り鳥達のこともぼんやり考えながら臼杵市、津久見市、佐伯市周辺の九州と四国に挟まれた豊予海峡に面したリアス式海岸を形成していている海や山などの車窓を眺めていた。

この辺りに大友氏の拠点であった戦国時代に海に浮かぶお城があった。私も写真で見たことあるフランスの世界遺産にも登録されているモンサンミッシェル修道院を思わせるようなユニークなお城が日本にもあったのかと調べてみると城郭は現存するが周囲は既に埋め立てられていたようだ。臼杵市に残る臼杵城址がその海に浮かんでいたお城でありかつては引き潮時のみ九州本土と陸続きになる天然の要塞であったという。

佐伯駅から一日で5本だけであった宮崎方面への普通列車で出発した。列車はリアス式海岸から離れ山の中へと進んで行った。真夏の山の木々の深い緑は夕暮れで黒くなりかけていたがまだ明るさが残っていたので特に直川駅を出発した後は列車の窓の中へと吸い込まれるような緑豊かな峠の車窓を楽しむにはギリギリセーフと感じた。日豊本線を並走し宗太郎駅前も通る大分や宮崎などを経由して北九州と鹿児島とを結ぶ国道10号線は幹線国道なのに通過する車もまばらであった。周辺の近年整備されて走り易くなった他の国道に車が集中しているからであろう。10分程停車した宗太郎駅のホームや駅舎も静かな夕闇に包まれていた。
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