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第二章
私の過去、新しい好奇心
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【一】
私の人生とは何で構成されているのか。
そんな事に時間を割いているあたり、私自身に大きな変化はないのでしょう。季節や環境は移ろえど、長い間培ってきた自我の生命力は衰える気配すらありません。
話を少し戻して、人生と名が付く過去を振り返ってみましょうか。
生まれた時の記憶は一切ありません。中には生まれる前の、胎内記憶なるものを認識している子供もいるそうですが、私には無縁の現象です。母から聞いた事もないです。
勝手に想像するなら、お母さんのお腹の中で早く外の世界を展望したいと待ち侘びていたことでしょう。いや、待ちくたびれていたかも。
どのみち私は誕生し、覚えていなくても、きっと大勢の人に喜ばれたのです。母の泣く姿など生涯で一度も見てません、しかしこの時ばかりは大粒の涙で私を出迎えたと、決め付けちゃいます。
そして幼稚園に入園し、私は年少期をもも組で健やかに穏やかに過ごしました。同じ組のみかちゃんと泥遊びしたのは古い思い出です。泥団子に塩をかけて食べてみたり、泥水を先生にご馳走して困惑されたりと、その都度叱られていましたね……穏やかというのは嘘でした。
年中期は室内遊びが多かった気がします。昨年のおふざけから学んだのでしょう。ブロックで剣や銃を作り、男の子にも容赦なく闘いを挑んでいたと、これは昔お世話になった先生から聞きました。今では考えられない闘争心です。
年中期の頃は――――――――――――――恋をしました。初恋です。
お相手は誠に恐縮なのですが、当時、担任だった先生です。名前は苗字しか分からないのですが、陽本(ひのもと)さんと言います。
太陽の様に温かい人柄で……いいえ、それで例えるなら熱血教師が相応しいですね。えっと、まあ、常に目線を合わせてくれて、笑顔の絶えない人でした。園児の遊びにも積極的に参加してくれる程親和的です。具体的には、丁度良いタイミングでやられる敵役や、おままごとで気の利くお父さん役だったりと、お世話になった園児の数は相当なものだったと思われます。
しかしそんな陽本先生に告白する事もなく、私は卒園してしまった訳ですが。その時点で物心が芽生えていた明日読子ちゃんは、陽本先生の倍率の高さを重々理解していたのです。
先に待つ嬉しい結果より、リスクを気にする臆病さを小学校に入学する前に会得してしまっていたのです。
ピカピカの小学一年生に進化した私の背は、赤い革物で隠れていました。初めは、こんな派手な鞄を毎日背負っていくのかと多少嫌がりましたが、流石は六歳、そんな不快感は慣れが打ち消すのです。
眼鏡とはまだ無縁で、明日読子らしくなるのは三学期からです。
明日読子『さん』と呼ばれる違和感も、気が付く間もなく受容していました。
学校の規模と在籍年数を考えたら、友達は容易に増えていく……かと思われましたが、入学して三か月が経った時に母からとある要求といういか命令を下されたのです。
「明日以降を以て、明日読子の門限を五時半とする。破った場合の罰は不定なので十分注意するように。以上」
私はこのルールの意味を理解できていませんでした。だって、小学一年生に対してこの言葉使いは解読に難しいから。なので、制定された後の一年間は意識することもなく、友達とビデオゲームに夢中でした。楽しかったなあスマブラ。
当然母は私を迎えに来る訳ですけれど、それも保護者としてなすべき事をしているだけだと了解していました。しかし私を連れて帰る度に母の⎥明日冷子の機嫌が悪くなるのを感受してはいました。しかしまだ六歳。出来る子ではない明日読子さんは、肝心の空気が読めなかったのです。親に貰った名にむしろ背くような子供だったのであります。それは今現在も継続中かもですけど。
私の手を引く母に純粋に問います。
「お母さんはどうして怒ってるの?」
「何でだと思う?」
母は怖がらせないよう慎重に聞き返します。それでも認めるところは認めているので、思い返すと不気味さがあります。
「分かんないから怒んないで」
「何でだと思う?」
私のお願いなどあっさり受け流されて、同じ質問を再度されます。私に答えさせたい明確な意図があるとそこで察します。
「うーん。天気が悪いから」
「何でだと思う?」
不正解のようです。
ついこの間まで幼稚園児の子供を母は優しく追い詰めます。しかし、明日読子一年生は自分が原因だとまだ分かっていません。痺れを切らした私は、子供ながら反論します。かなり文句寄りではありますが。
「しつこい。うるさい。ばばあ」
「何ですってぇ⁉」
ああ、これは暴言ですね。どうやら記憶違いがあったようです。
これが遅れてやって来た第一反抗期だったと思います。親に逆らうことでしか自分の本意を示せない時が存在するのだと、学習した瞬間でした。まあでもこの後、滅茶苦茶にお説教されるんですけどね。そして沢山泣かされるんですけどね。
小学校生活始まったばかりというのは概ねこんな感じです。
続く二年生、三年生、四年生と進級するにつれて私は塞ぎ込むようになりました。周囲の視線を意識して行動するようになった私は、外の刺激に耐えるのがやっとでした。ちなみに二年生の時、小説に触れ始めました。
内気でも友達が出来るのが小学生時代なのです。
焦げ茶のカバーで表紙が隠蔽されているライトノベルを、昼休みに読みふけっている最中です。とてもおどおどした声色なので変に心配しちゃいます。
「あ、あのそれ……魂フレンドだよね」
「そうだよ。何か」
この時小学五年生。思えば、私は近づきにくい児童として知られていたような。それも至極当然、ほとんどの児童は校庭で縄跳びや球遊びに無我夢中なのと比べれば、教室にぼっち読書に勤しむ輩など不自然極まれりなのですから。
気の弱い子なら、一声かけるだけでも相当の勇気が必要だったのです。
「へ、へーそうなんだ。私も好きなんだーそれ」
「ふーん」
コミュニケーションが下手糞な二人の会話というのは、もどかしさ満載です。
当時の私は人と話すのが怖かった訳ではなく、ただ億劫に感じていました。現実の人間が喋る言葉がどうにもつまらないのです。だから、架空の台詞に強い憧れをを示したのだと思います。
「ごめんなさい。邪魔しちゃって」
これきしの事で同じクラスの女子に謝るほど彼女は謙虚で、私はクズでした。
「あっ気にしないで。えっと…どのキャラが好き?」
流石に焦りました。不愉快な状況です。
その後、私達は何とか話を広げ、思う存分語り合いました。『魂フレンド』はバトルもので、キャラの特殊能力が数多く魅力的です。お互いの好きなキャラが被ったところも意気投合に繋がりました。
「この前の人気投票でクリスが五位だったの。やったね!」
「ざまあみろだよね。あいつ傲慢過ぎ」
まさか同志がいるとは。
『魂フレンド』のメインヒロインであるクリスは、個人的に今でも嫌いです。ツンデレ暴力のどこに需要があるかが分かりません。
しかし人気投票は四年連続で一位を誇っていたので、どこか引っかかっていたのです。それがその年は四つも順位を下げた訳ですから、愉快、爽快、痛快。
高学年期は、オタク話で馴れ合っていました。マイノリティな趣味を分かち合う特別感が、本当に楽しみでした。
そしてなんとなく卒業して何となく中学入学を果たし、思春期を迎えます。
一年一学期はA小学校グループとB小学校グループに分かれていました。中学生になると人を警戒する心が強くなるので、クラスが団結するまで少し時間がかかりました。
私は相変わらず暇になったら活字にのめり込んでいて、どこか壁を作っていました。クラスに馴染むのに一番無駄な苦労をしましたね。
部活は週三の緩い文芸部でした。
文芸部は本を自由に読めますし、行事等で派手な仕事を要求されないので楽々でした。唯一後悔がないとすればこの文芸部での活動です。長続きしない私が、三年間やり通せる環境に出会えた事は、ただただ幸運です。最終地位は副部長。
中学校生活というより、文芸部生活と表現した方が正しいかもしれません。
いじめには遭いませんでしたが、見て見ぬふりの経験はあります。あれ、加害者って意識が皆無でなければ基本発生しませんよね。しかしそんな出来事に正義感を募らせたりはせず、私は極力無関係であろうと必死でした。
例えそれが、小学校の時楽しくお喋りした相手でも。
陰湿な中学校生活を終えた私は、夢を見ていました。なぜかというと、高校生が題材の漫画やアニメはとても多いです。母校で最もサブカルチャーに触れたであろう私が期待しないわけないのです。
都立不可思議高校。私の偏差値ではC判定だった志望校に晴れて合格してから約一か月後、私に奇妙な巡り合せがありました。正直、二次元の世界のようなファンタジックでエキサイティングな出来事など、所詮妄想なのだろうと諦めかけていました。生涯を通じて、私は平々凡々とした生活を送るのだと失望すらしていましたよ。しがないOLで社会に貢献し、ついでに婚期も逃すのだろうと……挙げれば枚挙に遑がありません。
だからこそ、あの不思議な出会いを大事にしていたのです。大切に興味を示したのです。
『未来予知』。私――明日読子を変えた超能力。私の原動力で人生の目的。きっかけはとある交通事故未遂。
そして明日読子ちゃんは個性豊かな人達に触れ、予知能力で目一杯遊んだのでした。
――――――――――――――回想終了。
冒頭の問いは簡単に答えられませんね。薄い人生を歩んできた自覚があっても、細かい部分を思い出すと、やはり詰まっています。寧ろ自分の過去ほど濃くて重いものもはありませんし、それを簡潔に説明したくないです。
時間の無駄、でしたね。
まあこの長い道中を考えると、その無駄こそが役に立つのですけれど。良い暇潰しになりました。
【二】
そう、今、私は登校中なのです。
今日は小雨で、町歩く人々は傘を持つ人と持たない人が半々くらいです。
足元は少し湿る程度ですが少し気持ち悪いです。湿度も気温も季節にしては高めなので、上半身の不快さがより増します。眠気はないですが怠さに苦しめられそうです。
ちなみに言うと、私は傘を刺していません。しかし頭頂部は濡れるどころか、少し湿気を吸った程度です。弾き切れない雨が、制服の裾を濡らしてはいますが。
……傘を、刺されているのです。ちょっとしたお嬢様気分です。
「もうそろそろか。達者でな、読(よみ)の字」
「付き添いどうもです。貴男は、少し働き過ぎですよ」
その変わった呼び方にも慣れていました。その骨格と筋肉が、真横の男性をより一層強く見せます。彼の体格なら、確かに適任だと思いますが、やはりこと日本において、馴染みがありません。
校門が丁度視界に入った距離です。
異様なこの光景を他の生徒に気付れたら、また変な噂が広がってしまいます。ただでさえここ一週間の私は悪目立ちが激しいというのに。
「母上によろしく」
頼もしい背を向けられ、私は一瞬迷います。
「あの、げ――。お店の場所教えてくれません?」
「駄目だ。独身独歩である。仮に儂の口が滑ったとしたら、冷子様に両手足を捥がれるのでな」
冗談だとしても、この人の母に対する忠義というのはかなり異常だと思います。
明日冷子。この現代越衛門(げんだい えつえもん)さんを、無期のボディーガードとして私に派遣した張本人。四六時中私の事を気にかける、愛と節介に尽きない女です。
「心配するな。お主程の情熱があれば、容易い筈だ」
一週間前の放課後、私と現代さんは出会いました。今いる校門付近辺りで。その前日にとあるもめ事をし、激高した母が私の行動を制限する意味で彼を寄せたと。登下校のボディガード、外出でもそうです。とにかく彼のせいで、自由に遊ぶ事もままなりません。
しかし私の事は予め知っていたらしく、嫌味な感じはしませんでした。寧ろ会話を合わせてくれたり、時にはレストランに連れてって下さるので、懐の深いおじさんです。いや、お兄さんです。
今みたいに、彼は何かとあれば褒めて伸ばそうとします。
「はぁ……やってらんない……」
現代さんとはもうお別れです。
登校中にする彼との会話は、私にはとても興味深いのです。私の趣味嗜好を熟知しているので、局所的に壺を刺激してきます。そして、ついさっき貴重な情報を教えていただきました。
けれど結局、この魔界への入り口を潜らねばならぬのは、学生の残酷な宿命。
「だーれだ」
視界が突然真っ暗になり、仕掛け人もすぐ判明します。というか、こいつ以外あり得ません。
「朝からうざいよ。それと手臭いよ」
「絡んでほしいんでしょ? そう言ってたじゃない」
人道情。クラスメイトの彼女は、しょっちゅう私にちょっかいを出してきます。けれど、先日私がある男子と接する場面を目撃して、彼女は遠慮がちに。
そんな余所余所しい情ちゃんは違和感満載で、すぐ止めてもらうようお願いしたのです。母と争った日と同じでした。
「今日もあの大男と一緒だったの? あんたの男運、最近凄いわね」
彼女には付き添い初日から知られていました。どこぞの週刊誌なんかより、よっぽど人間観察が鋭いと思います。
「うん。乙女ゲーなら、ここから色んなフラグが立つんだけど」
微塵も期待していないのが丸分かりな私です。
「でも、顔付きは大分良くなったじゃない。以前の読子は、現実と夢を行き来してたし。生きる目標、物語が、あんたにも生まれたのね」
「随分達観した口調だね。ちょっとムカついたよ。そう言う情ちゃんはどんな起承転結を迎えるつもりなの?」
「そりゃ高一だし、まだ冒頭よ。その先なんて予想できないわ。……でも恋愛はしない気がする。ほら私って、高根の花だから」
高飛車の花。
上履きに履き替え、教室へと向かいます。勿論エレベーターを利用します。一、二階は上級生の教室が並んでいますから、朝の主な利用者は私達一年生なのです。
「おわわ、あっ、すいません」
中は大変混雑していて、体の接触は避けられず、つい足を踏んでしまったり、局部が当たったりと、まあ酷いもんですわ。同級生とはいえ敬語を余儀なくされます。
「階段で行きなさいよ全く……」
お前が言うなと感じの文句まで。
重量的に限界を超えたのか、ブザーの響きが生徒達を困らせます。体重的にも位置的にも、私が降りる事はまずないでしょう。
「降りろやデブ!」
一人の男子生徒が厳しく言い放ちます。その対象である女子生徒は、扉に近い所で多くの体積を奪っていました。名を獅子堂可憐。膝の悪さと口の悪さがピカイチの彼女は、今日も今日とて炸裂します。
「うるせぇなぁ。健康体が横着してんじゃねぇぞ‼ こっちは体のあちこちに爆弾抱えてんだよ。爆発物は丁重に扱うのが筋だろうが」
大ブーイング。そりゃそうですよね。私も心の中でひっそりと。
「頼むから譲ってくんない⁉ 家から学校までが地獄なんだよ。登校中、車道に案内されるのマジでアタイだけだろ。次歩いたら絶対逝っちゃうの。おまけに多汗症だから、一日三回は着替えないと」
「もう退学しろや!」
「温暖化進めてんじゃねぇぞ‼」
飛び交う暴言は、その数が増す一方です。ブザーの音もいい加減ウザイのであります。
「あらあらあら、ちょっと貧血気味で」
獅子堂さんはわざと傾倒し、近くの人々から汚ねぇ汗の被害に遭わせます。右に左にあの巨体が人柱に寄りかかれば、誰だって回避行動に移るでしょう。
そうして、自然とスペースが空くのです。自分から出ていく形になった彼らは、パッと見でも十人はいるでしょうか。
「じゃ」
獅子堂さんは、おそらく今日一の身軽さを発揮し、『閉』ボタンに触れます。
私と情ちゃんの目の前は、巨大な加湿器。確かに不愉快ですけれど、しかし彼女の図太さにはいっそ惚れてしまいます。そんな獅子堂さんとは、これでも同い年なので尚更。
「……」
ちょっと視てみるか。気になるし。でも彼女にもプライバシーがあるしなぁ。いやでも学校だから大丈夫じゃね?
そんな自問自答を繰り返して、私は決意します。
「ウケる。曇ってんじゃん」
彼女の言う通り、私の眼鏡では結露が発生してました。これを拭き取るという大義の下、私は、無理なく眼鏡を外せるのです。
私の二・五倍はある背中を対象に、
今日初の、予知(ミーチ)⎥⎥⎥⎥⎥。
たった五秒間の未来予知。そして五分先しか視る事の出来ない、明日読子を最も動かす起爆剤。ネットで語れば小馬鹿にされそうですね。けどいいのです。私が楽しければ。
予知した未来は高画質な映像として頭に流れます。そしてその内容ですが、友人と思われる女子に、獅子堂さんがからかわれるという、彼女らしい日常でした。
到着し、眼鏡を基に戻します。
彼女のクラスは一Gなので、ここから最も遠いです。その間に、数人からいじられる事を想定すれば、五分はあっという間に過ぎる筈。後は、黙って後をつければ良いのです。
「ちょっと近づかないでよ。ブスがうつるでしょ」
「ありのままを生きるんだよ。お前みたいな切開プロテーゼとは違う」
そうですそうです。私が視たのはこのいじりなのです。予知の最中では対象の声だけしか聞こえないのですが、今はっきりと全貌を理解しました。
教室に入った時刻は、八時二十五分。
さっさと着席し、一限目の用意をします。
「はーい。読書」
担任がそう呼びかけ、生徒達が一斉に本を取り出します。私はここ一週間前の、予知能力に次ぐ楽しみ、『時間の天才』を開きます。
けれど、今日はその予知能力に読書の集中力を奪われます。先程の現代さんとの会話が、
頭から離れません。私の予知能力を向上させる為に必要な事。それを彼に仰っていただいたのです。かなり大雑把に「店に行け」と。
そのお店の在り処を、少しでも探ろうともがいていたのがついさっきの私です。本当、そんな中途半端に言うなら最後まで……って感じですけど、まぁお陰様でまた退屈しないで済みそうです。
私の人生とは何で構成されているのか。
そんな事に時間を割いているあたり、私自身に大きな変化はないのでしょう。季節や環境は移ろえど、長い間培ってきた自我の生命力は衰える気配すらありません。
話を少し戻して、人生と名が付く過去を振り返ってみましょうか。
生まれた時の記憶は一切ありません。中には生まれる前の、胎内記憶なるものを認識している子供もいるそうですが、私には無縁の現象です。母から聞いた事もないです。
勝手に想像するなら、お母さんのお腹の中で早く外の世界を展望したいと待ち侘びていたことでしょう。いや、待ちくたびれていたかも。
どのみち私は誕生し、覚えていなくても、きっと大勢の人に喜ばれたのです。母の泣く姿など生涯で一度も見てません、しかしこの時ばかりは大粒の涙で私を出迎えたと、決め付けちゃいます。
そして幼稚園に入園し、私は年少期をもも組で健やかに穏やかに過ごしました。同じ組のみかちゃんと泥遊びしたのは古い思い出です。泥団子に塩をかけて食べてみたり、泥水を先生にご馳走して困惑されたりと、その都度叱られていましたね……穏やかというのは嘘でした。
年中期は室内遊びが多かった気がします。昨年のおふざけから学んだのでしょう。ブロックで剣や銃を作り、男の子にも容赦なく闘いを挑んでいたと、これは昔お世話になった先生から聞きました。今では考えられない闘争心です。
年中期の頃は――――――――――――――恋をしました。初恋です。
お相手は誠に恐縮なのですが、当時、担任だった先生です。名前は苗字しか分からないのですが、陽本(ひのもと)さんと言います。
太陽の様に温かい人柄で……いいえ、それで例えるなら熱血教師が相応しいですね。えっと、まあ、常に目線を合わせてくれて、笑顔の絶えない人でした。園児の遊びにも積極的に参加してくれる程親和的です。具体的には、丁度良いタイミングでやられる敵役や、おままごとで気の利くお父さん役だったりと、お世話になった園児の数は相当なものだったと思われます。
しかしそんな陽本先生に告白する事もなく、私は卒園してしまった訳ですが。その時点で物心が芽生えていた明日読子ちゃんは、陽本先生の倍率の高さを重々理解していたのです。
先に待つ嬉しい結果より、リスクを気にする臆病さを小学校に入学する前に会得してしまっていたのです。
ピカピカの小学一年生に進化した私の背は、赤い革物で隠れていました。初めは、こんな派手な鞄を毎日背負っていくのかと多少嫌がりましたが、流石は六歳、そんな不快感は慣れが打ち消すのです。
眼鏡とはまだ無縁で、明日読子らしくなるのは三学期からです。
明日読子『さん』と呼ばれる違和感も、気が付く間もなく受容していました。
学校の規模と在籍年数を考えたら、友達は容易に増えていく……かと思われましたが、入学して三か月が経った時に母からとある要求といういか命令を下されたのです。
「明日以降を以て、明日読子の門限を五時半とする。破った場合の罰は不定なので十分注意するように。以上」
私はこのルールの意味を理解できていませんでした。だって、小学一年生に対してこの言葉使いは解読に難しいから。なので、制定された後の一年間は意識することもなく、友達とビデオゲームに夢中でした。楽しかったなあスマブラ。
当然母は私を迎えに来る訳ですけれど、それも保護者としてなすべき事をしているだけだと了解していました。しかし私を連れて帰る度に母の⎥明日冷子の機嫌が悪くなるのを感受してはいました。しかしまだ六歳。出来る子ではない明日読子さんは、肝心の空気が読めなかったのです。親に貰った名にむしろ背くような子供だったのであります。それは今現在も継続中かもですけど。
私の手を引く母に純粋に問います。
「お母さんはどうして怒ってるの?」
「何でだと思う?」
母は怖がらせないよう慎重に聞き返します。それでも認めるところは認めているので、思い返すと不気味さがあります。
「分かんないから怒んないで」
「何でだと思う?」
私のお願いなどあっさり受け流されて、同じ質問を再度されます。私に答えさせたい明確な意図があるとそこで察します。
「うーん。天気が悪いから」
「何でだと思う?」
不正解のようです。
ついこの間まで幼稚園児の子供を母は優しく追い詰めます。しかし、明日読子一年生は自分が原因だとまだ分かっていません。痺れを切らした私は、子供ながら反論します。かなり文句寄りではありますが。
「しつこい。うるさい。ばばあ」
「何ですってぇ⁉」
ああ、これは暴言ですね。どうやら記憶違いがあったようです。
これが遅れてやって来た第一反抗期だったと思います。親に逆らうことでしか自分の本意を示せない時が存在するのだと、学習した瞬間でした。まあでもこの後、滅茶苦茶にお説教されるんですけどね。そして沢山泣かされるんですけどね。
小学校生活始まったばかりというのは概ねこんな感じです。
続く二年生、三年生、四年生と進級するにつれて私は塞ぎ込むようになりました。周囲の視線を意識して行動するようになった私は、外の刺激に耐えるのがやっとでした。ちなみに二年生の時、小説に触れ始めました。
内気でも友達が出来るのが小学生時代なのです。
焦げ茶のカバーで表紙が隠蔽されているライトノベルを、昼休みに読みふけっている最中です。とてもおどおどした声色なので変に心配しちゃいます。
「あ、あのそれ……魂フレンドだよね」
「そうだよ。何か」
この時小学五年生。思えば、私は近づきにくい児童として知られていたような。それも至極当然、ほとんどの児童は校庭で縄跳びや球遊びに無我夢中なのと比べれば、教室にぼっち読書に勤しむ輩など不自然極まれりなのですから。
気の弱い子なら、一声かけるだけでも相当の勇気が必要だったのです。
「へ、へーそうなんだ。私も好きなんだーそれ」
「ふーん」
コミュニケーションが下手糞な二人の会話というのは、もどかしさ満載です。
当時の私は人と話すのが怖かった訳ではなく、ただ億劫に感じていました。現実の人間が喋る言葉がどうにもつまらないのです。だから、架空の台詞に強い憧れをを示したのだと思います。
「ごめんなさい。邪魔しちゃって」
これきしの事で同じクラスの女子に謝るほど彼女は謙虚で、私はクズでした。
「あっ気にしないで。えっと…どのキャラが好き?」
流石に焦りました。不愉快な状況です。
その後、私達は何とか話を広げ、思う存分語り合いました。『魂フレンド』はバトルもので、キャラの特殊能力が数多く魅力的です。お互いの好きなキャラが被ったところも意気投合に繋がりました。
「この前の人気投票でクリスが五位だったの。やったね!」
「ざまあみろだよね。あいつ傲慢過ぎ」
まさか同志がいるとは。
『魂フレンド』のメインヒロインであるクリスは、個人的に今でも嫌いです。ツンデレ暴力のどこに需要があるかが分かりません。
しかし人気投票は四年連続で一位を誇っていたので、どこか引っかかっていたのです。それがその年は四つも順位を下げた訳ですから、愉快、爽快、痛快。
高学年期は、オタク話で馴れ合っていました。マイノリティな趣味を分かち合う特別感が、本当に楽しみでした。
そしてなんとなく卒業して何となく中学入学を果たし、思春期を迎えます。
一年一学期はA小学校グループとB小学校グループに分かれていました。中学生になると人を警戒する心が強くなるので、クラスが団結するまで少し時間がかかりました。
私は相変わらず暇になったら活字にのめり込んでいて、どこか壁を作っていました。クラスに馴染むのに一番無駄な苦労をしましたね。
部活は週三の緩い文芸部でした。
文芸部は本を自由に読めますし、行事等で派手な仕事を要求されないので楽々でした。唯一後悔がないとすればこの文芸部での活動です。長続きしない私が、三年間やり通せる環境に出会えた事は、ただただ幸運です。最終地位は副部長。
中学校生活というより、文芸部生活と表現した方が正しいかもしれません。
いじめには遭いませんでしたが、見て見ぬふりの経験はあります。あれ、加害者って意識が皆無でなければ基本発生しませんよね。しかしそんな出来事に正義感を募らせたりはせず、私は極力無関係であろうと必死でした。
例えそれが、小学校の時楽しくお喋りした相手でも。
陰湿な中学校生活を終えた私は、夢を見ていました。なぜかというと、高校生が題材の漫画やアニメはとても多いです。母校で最もサブカルチャーに触れたであろう私が期待しないわけないのです。
都立不可思議高校。私の偏差値ではC判定だった志望校に晴れて合格してから約一か月後、私に奇妙な巡り合せがありました。正直、二次元の世界のようなファンタジックでエキサイティングな出来事など、所詮妄想なのだろうと諦めかけていました。生涯を通じて、私は平々凡々とした生活を送るのだと失望すらしていましたよ。しがないOLで社会に貢献し、ついでに婚期も逃すのだろうと……挙げれば枚挙に遑がありません。
だからこそ、あの不思議な出会いを大事にしていたのです。大切に興味を示したのです。
『未来予知』。私――明日読子を変えた超能力。私の原動力で人生の目的。きっかけはとある交通事故未遂。
そして明日読子ちゃんは個性豊かな人達に触れ、予知能力で目一杯遊んだのでした。
――――――――――――――回想終了。
冒頭の問いは簡単に答えられませんね。薄い人生を歩んできた自覚があっても、細かい部分を思い出すと、やはり詰まっています。寧ろ自分の過去ほど濃くて重いものもはありませんし、それを簡潔に説明したくないです。
時間の無駄、でしたね。
まあこの長い道中を考えると、その無駄こそが役に立つのですけれど。良い暇潰しになりました。
【二】
そう、今、私は登校中なのです。
今日は小雨で、町歩く人々は傘を持つ人と持たない人が半々くらいです。
足元は少し湿る程度ですが少し気持ち悪いです。湿度も気温も季節にしては高めなので、上半身の不快さがより増します。眠気はないですが怠さに苦しめられそうです。
ちなみに言うと、私は傘を刺していません。しかし頭頂部は濡れるどころか、少し湿気を吸った程度です。弾き切れない雨が、制服の裾を濡らしてはいますが。
……傘を、刺されているのです。ちょっとしたお嬢様気分です。
「もうそろそろか。達者でな、読(よみ)の字」
「付き添いどうもです。貴男は、少し働き過ぎですよ」
その変わった呼び方にも慣れていました。その骨格と筋肉が、真横の男性をより一層強く見せます。彼の体格なら、確かに適任だと思いますが、やはりこと日本において、馴染みがありません。
校門が丁度視界に入った距離です。
異様なこの光景を他の生徒に気付れたら、また変な噂が広がってしまいます。ただでさえここ一週間の私は悪目立ちが激しいというのに。
「母上によろしく」
頼もしい背を向けられ、私は一瞬迷います。
「あの、げ――。お店の場所教えてくれません?」
「駄目だ。独身独歩である。仮に儂の口が滑ったとしたら、冷子様に両手足を捥がれるのでな」
冗談だとしても、この人の母に対する忠義というのはかなり異常だと思います。
明日冷子。この現代越衛門(げんだい えつえもん)さんを、無期のボディーガードとして私に派遣した張本人。四六時中私の事を気にかける、愛と節介に尽きない女です。
「心配するな。お主程の情熱があれば、容易い筈だ」
一週間前の放課後、私と現代さんは出会いました。今いる校門付近辺りで。その前日にとあるもめ事をし、激高した母が私の行動を制限する意味で彼を寄せたと。登下校のボディガード、外出でもそうです。とにかく彼のせいで、自由に遊ぶ事もままなりません。
しかし私の事は予め知っていたらしく、嫌味な感じはしませんでした。寧ろ会話を合わせてくれたり、時にはレストランに連れてって下さるので、懐の深いおじさんです。いや、お兄さんです。
今みたいに、彼は何かとあれば褒めて伸ばそうとします。
「はぁ……やってらんない……」
現代さんとはもうお別れです。
登校中にする彼との会話は、私にはとても興味深いのです。私の趣味嗜好を熟知しているので、局所的に壺を刺激してきます。そして、ついさっき貴重な情報を教えていただきました。
けれど結局、この魔界への入り口を潜らねばならぬのは、学生の残酷な宿命。
「だーれだ」
視界が突然真っ暗になり、仕掛け人もすぐ判明します。というか、こいつ以外あり得ません。
「朝からうざいよ。それと手臭いよ」
「絡んでほしいんでしょ? そう言ってたじゃない」
人道情。クラスメイトの彼女は、しょっちゅう私にちょっかいを出してきます。けれど、先日私がある男子と接する場面を目撃して、彼女は遠慮がちに。
そんな余所余所しい情ちゃんは違和感満載で、すぐ止めてもらうようお願いしたのです。母と争った日と同じでした。
「今日もあの大男と一緒だったの? あんたの男運、最近凄いわね」
彼女には付き添い初日から知られていました。どこぞの週刊誌なんかより、よっぽど人間観察が鋭いと思います。
「うん。乙女ゲーなら、ここから色んなフラグが立つんだけど」
微塵も期待していないのが丸分かりな私です。
「でも、顔付きは大分良くなったじゃない。以前の読子は、現実と夢を行き来してたし。生きる目標、物語が、あんたにも生まれたのね」
「随分達観した口調だね。ちょっとムカついたよ。そう言う情ちゃんはどんな起承転結を迎えるつもりなの?」
「そりゃ高一だし、まだ冒頭よ。その先なんて予想できないわ。……でも恋愛はしない気がする。ほら私って、高根の花だから」
高飛車の花。
上履きに履き替え、教室へと向かいます。勿論エレベーターを利用します。一、二階は上級生の教室が並んでいますから、朝の主な利用者は私達一年生なのです。
「おわわ、あっ、すいません」
中は大変混雑していて、体の接触は避けられず、つい足を踏んでしまったり、局部が当たったりと、まあ酷いもんですわ。同級生とはいえ敬語を余儀なくされます。
「階段で行きなさいよ全く……」
お前が言うなと感じの文句まで。
重量的に限界を超えたのか、ブザーの響きが生徒達を困らせます。体重的にも位置的にも、私が降りる事はまずないでしょう。
「降りろやデブ!」
一人の男子生徒が厳しく言い放ちます。その対象である女子生徒は、扉に近い所で多くの体積を奪っていました。名を獅子堂可憐。膝の悪さと口の悪さがピカイチの彼女は、今日も今日とて炸裂します。
「うるせぇなぁ。健康体が横着してんじゃねぇぞ‼ こっちは体のあちこちに爆弾抱えてんだよ。爆発物は丁重に扱うのが筋だろうが」
大ブーイング。そりゃそうですよね。私も心の中でひっそりと。
「頼むから譲ってくんない⁉ 家から学校までが地獄なんだよ。登校中、車道に案内されるのマジでアタイだけだろ。次歩いたら絶対逝っちゃうの。おまけに多汗症だから、一日三回は着替えないと」
「もう退学しろや!」
「温暖化進めてんじゃねぇぞ‼」
飛び交う暴言は、その数が増す一方です。ブザーの音もいい加減ウザイのであります。
「あらあらあら、ちょっと貧血気味で」
獅子堂さんはわざと傾倒し、近くの人々から汚ねぇ汗の被害に遭わせます。右に左にあの巨体が人柱に寄りかかれば、誰だって回避行動に移るでしょう。
そうして、自然とスペースが空くのです。自分から出ていく形になった彼らは、パッと見でも十人はいるでしょうか。
「じゃ」
獅子堂さんは、おそらく今日一の身軽さを発揮し、『閉』ボタンに触れます。
私と情ちゃんの目の前は、巨大な加湿器。確かに不愉快ですけれど、しかし彼女の図太さにはいっそ惚れてしまいます。そんな獅子堂さんとは、これでも同い年なので尚更。
「……」
ちょっと視てみるか。気になるし。でも彼女にもプライバシーがあるしなぁ。いやでも学校だから大丈夫じゃね?
そんな自問自答を繰り返して、私は決意します。
「ウケる。曇ってんじゃん」
彼女の言う通り、私の眼鏡では結露が発生してました。これを拭き取るという大義の下、私は、無理なく眼鏡を外せるのです。
私の二・五倍はある背中を対象に、
今日初の、予知(ミーチ)⎥⎥⎥⎥⎥。
たった五秒間の未来予知。そして五分先しか視る事の出来ない、明日読子を最も動かす起爆剤。ネットで語れば小馬鹿にされそうですね。けどいいのです。私が楽しければ。
予知した未来は高画質な映像として頭に流れます。そしてその内容ですが、友人と思われる女子に、獅子堂さんがからかわれるという、彼女らしい日常でした。
到着し、眼鏡を基に戻します。
彼女のクラスは一Gなので、ここから最も遠いです。その間に、数人からいじられる事を想定すれば、五分はあっという間に過ぎる筈。後は、黙って後をつければ良いのです。
「ちょっと近づかないでよ。ブスがうつるでしょ」
「ありのままを生きるんだよ。お前みたいな切開プロテーゼとは違う」
そうですそうです。私が視たのはこのいじりなのです。予知の最中では対象の声だけしか聞こえないのですが、今はっきりと全貌を理解しました。
教室に入った時刻は、八時二十五分。
さっさと着席し、一限目の用意をします。
「はーい。読書」
担任がそう呼びかけ、生徒達が一斉に本を取り出します。私はここ一週間前の、予知能力に次ぐ楽しみ、『時間の天才』を開きます。
けれど、今日はその予知能力に読書の集中力を奪われます。先程の現代さんとの会話が、
頭から離れません。私の予知能力を向上させる為に必要な事。それを彼に仰っていただいたのです。かなり大雑把に「店に行け」と。
そのお店の在り処を、少しでも探ろうともがいていたのがついさっきの私です。本当、そんな中途半端に言うなら最後まで……って感じですけど、まぁお陰様でまた退屈しないで済みそうです。
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