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<31・そこに愛はあるか>
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本当にこれでいいのか。涼貴にも、迷いがなかったわけではない。同時に、自分が完全に足を引っ張っている事実が憎たらしくてならなかったのも確かなことだ。想像以上に、この闇は精神的外傷《トラウマ》を刺激する。震える足を叱咤するたび、その足元からじわじわと這い上がってくる始末なのだ。
もう自分はシンデレラではないのに、シンデレラはやはり自分の一部で。切り離すことなどできないのである。確かに彼女は自分で、それを背負って歩くと決めたのも確かに己であったのだから。
そもそも自分は魔法で遠距離から狙えても、足そのものはけして速くない。第一紙装甲ときている。大群の中を突っ切るのに相応しい役目だとは思えない。適任は実質凛音か瑠衣で、瑠衣はまだ完全に敵を滅する覚悟ができたわけではないだろう。勿論それを言ったら凛音とて目覚めたばかりで本当に人の命を奪うかもしれない時躊躇わないとは言い切れないのだが――。
――それでも、僕は……貴女を信じたい。いや、むしろ貴女だけだと知ってるんだ……今この状況を、打破できるのは。
まだ、こなした戦いの数は少ない。それでも、危ない時に彼女に助けられてきて、彼女は土壇場でこそその力を発揮すると知っている。
今、誰より勇気があって――前に突き進めるのはきっと、彼女だけだ。きっと彼女に救われた瑠衣も本当はわかっている。そして此処に殴りこんで来た時点で、莉緒とリーナにもきっと。
「……合図をしたら、壁を解除します」
だから、涼貴は言う。それは他でもない、彼女の提案に乗ったことを示す肯定。
「そうしたら、僕等はすべての力を使い尽くす勢いで狼達を祓う。……莉緒。手負いですが貴方の速度なら凛音さんについていくことができるでしょう。できる限り最後まで彼女の傍でサポートしてください」
「俺でいいのか。赤ずきんに通用するほどの技の威力などないが」
「そんなものは凛音さんに任せておけばいいのです。……僕達は独りではない。独りで戦う必要も、全てができる必要もない……そうでしょう?」
涼貴が告げると――思うところがあったのだろう。彼もまた自分のように、独りきりで戦おうと足掻いてしまった時期があったのかもしれない。一瞬、苦笑気味に唇を歪めて――頷いた。わかった、と。
「リーナさん、瑠衣さん。……それでいいですね?」
「ええ」
「……」
まだ瑠衣は、全部を納得できた様子ではないようだった。それでももう、彼は何も言わなかった。悪い人物ではないなんてことはわかりきっている。彼が止めるのだって、全ては凛音を大切に思うがゆえのことなのだから。
それでも理性で、感情を押し殺して納得させることができる。自分がするべきことがわかっている。それならば、それで十分なのだ、きっと。
「行きますよ!3、2、1……0!」
そして、涼貴は、“硝子障壁”を解除した。一気に圧し掛かってくる黒い狼の津波、真っ先に先陣を切ったのは凛音だ。
「“修羅ノ舞!”」
自分の周囲に鋭い竹を具現化させて攻撃する凛音の技は、こういう四方八方から襲ってくる敵への対処に最も適している。竹の鋭い穂先に貫かれて、何十匹もの狼が一気に消滅した。
その様子を見て気づいたのだろう、己の感情とどうにか折り合いをつけるように瑠衣が叫んだ。
「思ったほど耐久力がないッスよこいつら!……みんな、岸田先輩に続いてください!!」
さあ、これが最後の祭りだ。
盛大に行こうではないか。
***
「“剣技・絶紫炎”!」
「“妖精の光”!」
「“硝子光矢”!」
「“偉大なる母の守護”!」
瑠衣が、莉緒が、涼貴が技を放ち次々狼達を撃破していく。サポートするのは、母山羊たるリーナの絶対防御の技だ。そうして開いた赤ずきんへ続く道を、凛音は全力で疾走していく。時折飛びかかってくる狼を日本刀で払い落としながら。
狼の数は恐ろしく多いが、一匹一匹は刀一本で斬捨てるだけで十分な耐久力しかない。むしろ、紙耐久で設定いしているからこそこれだけの数を出現させることができているのだろう。
――みんなが頑張って道を開いてくれてる……私を信じてくれてる!これに応えなきゃ女じゃねえ!
「!」
ずる、と倒した狼の体に躓き、一瞬体制が崩れた。途端、目の前に飛びかかってくる数匹の狼。慌てて左手で眼前をガードする凛音。その手首に、狼の牙が食い込んだ。
「ぐあっ!」
脳髄を貫く激痛。そして同時に全身に満ちる闇の気配。ああ、これがリーナが警戒していたものか、と悟る。一瞬目の前が真っ暗になり、凛音の目の前に血だらけのおじいさんとおばあさんが、“かぐや姫”に求婚した青年が、村人達が出現した。
『かぐや姫、どうして私達のところに来たの……?』
おばあさんが、かぐや姫にとって唯一本当の“母”と呼べたはずの人が口を開く。話すたび、ずたずたに切り裂かれた口元からぼろぼろと血とともに歯の断片が溢れ落ちた。
『お前が、月の規則を破って此処に来なければ……私達は死なずに済んだのよ』
『ああ、どうして。どうしてなんだかぐや姫。お前をここまで育ててやった私達に何故こんな、酷い仕打ちを……』
『お前のせいだ』
『痛いよ、痛いよお……おねえちゃあん……!』
『なんでこんな、こんなことするの、こんなことしたの、ねえ……?』
『私達はお前のせいで死んだんだ。人殺し……人殺し……!』
血だらけの人々の姿と、言葉は。凛音を、凛音の中にいるかぐや姫を刺激する。そんなはずじゃなかった、と叫ぶ声が聞こえた。かぐや姫の嘆きが凛音の視界を滲ませ、涙の雫を零させていく。
ああ、痛い。これが、かぐや姫の痛みだ。体が、心が、まさに引き裂かれるかのよう。これを背負って生きていくことがどれほど大変か、苦痛か。自分に果たしてこの痛みと悲しみを背負って生きていく覚悟が本当にあるというのか。凛音は唇を噛み締める。己はまだまだ弱いと、そう実感させられる。
けれど。
「……違う」
それでも、自分は。自分はかぐや姫だから――彼女は自分でもあるから、知っているのだ。
正しい記憶は。自分はきちんと受け継いで、抱えているから。
「母上と父上は……みんなは。一度も私を、そのようには責めなかった。わかっているさ、お前達は……私の中にある闇。赤ずきんが作った幻」
『愛しているよ、かぐや姫。……最後まで守ってやれなくて、本当にすまない』
『どうか、幸せになっておくれ……私達の、可愛い可愛い娘』
「……“修羅ノ舞”!」
そして、全てを振り切るように凛音は技を発動させた。父が、母が、村人達が。次々切り裂かれ、狼へと姿を変えていく。幻に囚われた一瞬に、腕以外にも足やらなんやら噛み付かれたようでそこそこ痛いが――まだ、走れないほどではない。
闇を振り払い、凛音は走る。赤ずきんの姿が見えた。その前に並ぶのは、恐らく最後の砦であろう三匹の狼の姿。その彼らも凛音に到達する前に、光に貫かれて消えていく。
「“妖精の光”!……行け、岸田凛音!そいつを、倒せ!!」
少し後ろを飛んでいた莉緒の力だった。凛音は狼の骸を飛び越え、今赤ずきんの目の前へ。
「馬鹿な、あの数を超えてくるだと……!?」
さすがの赤ずきんも驚きを隠せない様子である。驚愕に目を見開き、手元に大きな猟銃を出現させる。どうやらそれが、彼女の最後の武器であるようだ。
――まだ戦う手段はあるようだけれど、でも……あれだけの狼を召喚・放出して操りながらでは、大した力はきっと残っていない!
勝機はある。仲間たちが狼の群れを抑えてくれている今ならば。
「“漆黒散弾銃”!」
恐らく、赤ずきんの攻撃の特性は全て先ほどの狼が照明している。猟銃を構え、彼女が発射すると同時に――分裂する黒い弾がいくつも凛音の元へと襲いかかってきた。あれは、ダメージを負ったものに悪夢を見せるもの。悪夢を見せ、心を削ることで敵を倒すのが彼女の戦術なのだ。幻に囚われて足を止めた相手をタコ殴りにするなど造作もないことなのだから。
そう、人の心の隙に入り込み、洗脳して手下を増やしている時点で想像はついていたのである。相手の洗脳と心の破壊。それが、彼女を魔王たらしめる恐ろしい力だと。
ゆえに、凛音は。
「なっ!」
致命傷にならない範囲で――あえて、攻撃を受けた。腕や足に弾が掠め、血を迸らせる。そして真っ直ぐ、顔を上げてみせた。多少ダメージを負ったとしても、その方が効果的であることを知っていたからだ。
罪を、傷を背負っているはずの物語たる凛音に、悪夢の効果が通用しない。
それはまさに、彼女にとっては“詰み”を意味することと知っていたから。
「何故……何故、悪夢が効かない!今の効果を受けて、オレに膝を折らない物語などいなかったというのに……!」
「効いてないわけじゃないさ。ただ、信じてるだけだ」
「何を……っ」
「決まってる。私を愛してくれた人たちを……そして、今の仲間を」
自分は、一人では何もできないただの女だ。
だからこそ。一人で何でもできる者よりよほど知っているのである。仲間の大切さを、愛しさを、絆を――愛を。
それは完全完璧で何でもできるチート戦士、にはきっと理解できないものだろう。人は欠点があるからこそ、それを誰かと補い合って今を生きることができるのだ。
未来へと、立ち向かって行けるのだ。
「お前にも教えてやる……本当の愛ってやつを!」
そして凛音は、全てをこめて一撃を放つ。
「“浄化ノ舞”!」
闇を切り裂く、月の光。月光を纏った無数の刃が、赤ずきんへと襲いかかっていた。
もう自分はシンデレラではないのに、シンデレラはやはり自分の一部で。切り離すことなどできないのである。確かに彼女は自分で、それを背負って歩くと決めたのも確かに己であったのだから。
そもそも自分は魔法で遠距離から狙えても、足そのものはけして速くない。第一紙装甲ときている。大群の中を突っ切るのに相応しい役目だとは思えない。適任は実質凛音か瑠衣で、瑠衣はまだ完全に敵を滅する覚悟ができたわけではないだろう。勿論それを言ったら凛音とて目覚めたばかりで本当に人の命を奪うかもしれない時躊躇わないとは言い切れないのだが――。
――それでも、僕は……貴女を信じたい。いや、むしろ貴女だけだと知ってるんだ……今この状況を、打破できるのは。
まだ、こなした戦いの数は少ない。それでも、危ない時に彼女に助けられてきて、彼女は土壇場でこそその力を発揮すると知っている。
今、誰より勇気があって――前に突き進めるのはきっと、彼女だけだ。きっと彼女に救われた瑠衣も本当はわかっている。そして此処に殴りこんで来た時点で、莉緒とリーナにもきっと。
「……合図をしたら、壁を解除します」
だから、涼貴は言う。それは他でもない、彼女の提案に乗ったことを示す肯定。
「そうしたら、僕等はすべての力を使い尽くす勢いで狼達を祓う。……莉緒。手負いですが貴方の速度なら凛音さんについていくことができるでしょう。できる限り最後まで彼女の傍でサポートしてください」
「俺でいいのか。赤ずきんに通用するほどの技の威力などないが」
「そんなものは凛音さんに任せておけばいいのです。……僕達は独りではない。独りで戦う必要も、全てができる必要もない……そうでしょう?」
涼貴が告げると――思うところがあったのだろう。彼もまた自分のように、独りきりで戦おうと足掻いてしまった時期があったのかもしれない。一瞬、苦笑気味に唇を歪めて――頷いた。わかった、と。
「リーナさん、瑠衣さん。……それでいいですね?」
「ええ」
「……」
まだ瑠衣は、全部を納得できた様子ではないようだった。それでももう、彼は何も言わなかった。悪い人物ではないなんてことはわかりきっている。彼が止めるのだって、全ては凛音を大切に思うがゆえのことなのだから。
それでも理性で、感情を押し殺して納得させることができる。自分がするべきことがわかっている。それならば、それで十分なのだ、きっと。
「行きますよ!3、2、1……0!」
そして、涼貴は、“硝子障壁”を解除した。一気に圧し掛かってくる黒い狼の津波、真っ先に先陣を切ったのは凛音だ。
「“修羅ノ舞!”」
自分の周囲に鋭い竹を具現化させて攻撃する凛音の技は、こういう四方八方から襲ってくる敵への対処に最も適している。竹の鋭い穂先に貫かれて、何十匹もの狼が一気に消滅した。
その様子を見て気づいたのだろう、己の感情とどうにか折り合いをつけるように瑠衣が叫んだ。
「思ったほど耐久力がないッスよこいつら!……みんな、岸田先輩に続いてください!!」
さあ、これが最後の祭りだ。
盛大に行こうではないか。
***
「“剣技・絶紫炎”!」
「“妖精の光”!」
「“硝子光矢”!」
「“偉大なる母の守護”!」
瑠衣が、莉緒が、涼貴が技を放ち次々狼達を撃破していく。サポートするのは、母山羊たるリーナの絶対防御の技だ。そうして開いた赤ずきんへ続く道を、凛音は全力で疾走していく。時折飛びかかってくる狼を日本刀で払い落としながら。
狼の数は恐ろしく多いが、一匹一匹は刀一本で斬捨てるだけで十分な耐久力しかない。むしろ、紙耐久で設定いしているからこそこれだけの数を出現させることができているのだろう。
――みんなが頑張って道を開いてくれてる……私を信じてくれてる!これに応えなきゃ女じゃねえ!
「!」
ずる、と倒した狼の体に躓き、一瞬体制が崩れた。途端、目の前に飛びかかってくる数匹の狼。慌てて左手で眼前をガードする凛音。その手首に、狼の牙が食い込んだ。
「ぐあっ!」
脳髄を貫く激痛。そして同時に全身に満ちる闇の気配。ああ、これがリーナが警戒していたものか、と悟る。一瞬目の前が真っ暗になり、凛音の目の前に血だらけのおじいさんとおばあさんが、“かぐや姫”に求婚した青年が、村人達が出現した。
『かぐや姫、どうして私達のところに来たの……?』
おばあさんが、かぐや姫にとって唯一本当の“母”と呼べたはずの人が口を開く。話すたび、ずたずたに切り裂かれた口元からぼろぼろと血とともに歯の断片が溢れ落ちた。
『お前が、月の規則を破って此処に来なければ……私達は死なずに済んだのよ』
『ああ、どうして。どうしてなんだかぐや姫。お前をここまで育ててやった私達に何故こんな、酷い仕打ちを……』
『お前のせいだ』
『痛いよ、痛いよお……おねえちゃあん……!』
『なんでこんな、こんなことするの、こんなことしたの、ねえ……?』
『私達はお前のせいで死んだんだ。人殺し……人殺し……!』
血だらけの人々の姿と、言葉は。凛音を、凛音の中にいるかぐや姫を刺激する。そんなはずじゃなかった、と叫ぶ声が聞こえた。かぐや姫の嘆きが凛音の視界を滲ませ、涙の雫を零させていく。
ああ、痛い。これが、かぐや姫の痛みだ。体が、心が、まさに引き裂かれるかのよう。これを背負って生きていくことがどれほど大変か、苦痛か。自分に果たしてこの痛みと悲しみを背負って生きていく覚悟が本当にあるというのか。凛音は唇を噛み締める。己はまだまだ弱いと、そう実感させられる。
けれど。
「……違う」
それでも、自分は。自分はかぐや姫だから――彼女は自分でもあるから、知っているのだ。
正しい記憶は。自分はきちんと受け継いで、抱えているから。
「母上と父上は……みんなは。一度も私を、そのようには責めなかった。わかっているさ、お前達は……私の中にある闇。赤ずきんが作った幻」
『愛しているよ、かぐや姫。……最後まで守ってやれなくて、本当にすまない』
『どうか、幸せになっておくれ……私達の、可愛い可愛い娘』
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そして、全てを振り切るように凛音は技を発動させた。父が、母が、村人達が。次々切り裂かれ、狼へと姿を変えていく。幻に囚われた一瞬に、腕以外にも足やらなんやら噛み付かれたようでそこそこ痛いが――まだ、走れないほどではない。
闇を振り払い、凛音は走る。赤ずきんの姿が見えた。その前に並ぶのは、恐らく最後の砦であろう三匹の狼の姿。その彼らも凛音に到達する前に、光に貫かれて消えていく。
「“妖精の光”!……行け、岸田凛音!そいつを、倒せ!!」
少し後ろを飛んでいた莉緒の力だった。凛音は狼の骸を飛び越え、今赤ずきんの目の前へ。
「馬鹿な、あの数を超えてくるだと……!?」
さすがの赤ずきんも驚きを隠せない様子である。驚愕に目を見開き、手元に大きな猟銃を出現させる。どうやらそれが、彼女の最後の武器であるようだ。
――まだ戦う手段はあるようだけれど、でも……あれだけの狼を召喚・放出して操りながらでは、大した力はきっと残っていない!
勝機はある。仲間たちが狼の群れを抑えてくれている今ならば。
「“漆黒散弾銃”!」
恐らく、赤ずきんの攻撃の特性は全て先ほどの狼が照明している。猟銃を構え、彼女が発射すると同時に――分裂する黒い弾がいくつも凛音の元へと襲いかかってきた。あれは、ダメージを負ったものに悪夢を見せるもの。悪夢を見せ、心を削ることで敵を倒すのが彼女の戦術なのだ。幻に囚われて足を止めた相手をタコ殴りにするなど造作もないことなのだから。
そう、人の心の隙に入り込み、洗脳して手下を増やしている時点で想像はついていたのである。相手の洗脳と心の破壊。それが、彼女を魔王たらしめる恐ろしい力だと。
ゆえに、凛音は。
「なっ!」
致命傷にならない範囲で――あえて、攻撃を受けた。腕や足に弾が掠め、血を迸らせる。そして真っ直ぐ、顔を上げてみせた。多少ダメージを負ったとしても、その方が効果的であることを知っていたからだ。
罪を、傷を背負っているはずの物語たる凛音に、悪夢の効果が通用しない。
それはまさに、彼女にとっては“詰み”を意味することと知っていたから。
「何故……何故、悪夢が効かない!今の効果を受けて、オレに膝を折らない物語などいなかったというのに……!」
「効いてないわけじゃないさ。ただ、信じてるだけだ」
「何を……っ」
「決まってる。私を愛してくれた人たちを……そして、今の仲間を」
自分は、一人では何もできないただの女だ。
だからこそ。一人で何でもできる者よりよほど知っているのである。仲間の大切さを、愛しさを、絆を――愛を。
それは完全完璧で何でもできるチート戦士、にはきっと理解できないものだろう。人は欠点があるからこそ、それを誰かと補い合って今を生きることができるのだ。
未来へと、立ち向かって行けるのだ。
「お前にも教えてやる……本当の愛ってやつを!」
そして凛音は、全てをこめて一撃を放つ。
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闇を切り裂く、月の光。月光を纏った無数の刃が、赤ずきんへと襲いかかっていた。
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