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<26・強き瞳の真実>
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シンデレラこと、瀬良涼貴とは。莉緒も以前、一度接触したことがある。
魔王を倒すために。洗脳され、欲望を暴走させる物語達を止めるために。仲間を探していく仲、運良く見つけることができたのが彼女――否、彼であったというべきか。正確にはこちらが見つけたわけではなく、向こうがその高い調査能力を使ってこちらを探し当てて来たというのが正しいのだけれど。
『僕は体力もないし、貴方のような機動力もない。それでも、守るべきものを守るため、命を賭ける覚悟はあります』
真正面から自分とリーナを見据えて告げて来た涼貴は、嘘を言っているようには見えなかった。
『お願いします。共に戦う仲間になっていただけませんか』
体力のない紙装甲、しかし高い魔力とバリエーション豊富な技を持つシンデレラは、きっと共に戦えば大きな戦力として見込めたことだろう。どちらも、自分とリーナにはない重要な能力であったから尚更だ。
しかし、物語が物語として接触すれば、高い確率でお互いの“前世”の粗筋が知られることになる。
己が幼い考えの持ち主であるということくらい、莉緒にだってわかっていることだ。それでも、シンデレラの過去は――潔癖で、正義感の強い莉緒には到底受け入れられるものではなかったのである。例え今、目の前の少年が同じような行為をしているわけではないとわかっていても。
『……あんたの過去を、見た』
同性ではなく、異性として転生する者には、大抵何らかの理由がある。シンデレラはその理由があまりにも顕著であったことだろう。彼女は、女であるがゆえに虐げられ、踏みにじられ、嬲られ続けて殺された。女としての自分を忌み嫌うがゆえに、男性として生まれ変わることを魔女の呪いを超えて願ったのだろう。
残念ながら、転生しても彼女が望んだような――屈強な男らしい男にはなれなかったようだが。
そしてそれは彼女が、自らの過去をそれほどまでにトラウマにしていることを示している。きっと目の前の、記憶を持っているだけの転生者の彼さえ、思い出すたびに震えるほど恐ろしいものであるのは間違いない。何もあのシンデレラは望んで継母に虐待されたわけでもなければ、鬼畜な王子に性奴隷にされていたわけでもないのである。
そんなことはわかっている。それでもだ。
『……物語の罪を。悔やんでないだろう、あんたは。あれだけの目に遭っておきながら、継母達を陥れて惨たらしく殺したことを後悔していない……!』
気持ち悪い。
そう思ってしまうことを、どうして止められるだろう。
彼女は晩年、その僅かな命を長らえるためなら文字通り、自ら人間としての尊厳を投げ捨てるような行いも平気で行っていた。全裸で毎日過ごすことも、性的な奉仕をすることも勿論、彼らの目の前で排泄も出産も行い、望まれたならば自ら産んだ直後の赤子を殺すことさえしてみせたのだ。
それなのに、悔やむことができないなんて。いくらイジメ殺される寸前だったからといって、人を殺して平然と笑っていたなんて。そんな狂った話が本当にあるだろうか。
『人を殺すのは、罪だ。どんな理由があったとしても、許されていいことなんかじゃない。それを反省しない、間違いだとも思わないお前を……受け入れるなんて、俺には到底できっこない……!』
生きるためならば何でもする。自分のためなら平気で誰かを傷つける。それは、欲望を冗長させられた魔王やその手下達となんの違いがあるというのだろう。
あの時、自分の物言いがきつかったという自覚はある。きっと涼貴を傷つけた。未だに過去の記憶に苦しめられているであろう高校生の少年を、間違いなく深く抉ったに違いない。それがわかっていても、莉緒は己の感情を止めることができなかった。
『……そうですね』
彼は、けして食い下がってくることもしなければ、言い訳の一つもしなかった。自分達の会話は、接触してほんの数分であっさりと終わったのだ。
『シンデレラを受け入れられないと、貴方がそう思うのは当然です。未だに僕だって……僕自身だって、認めることができないんですから』
――酷いことを言ったのは、わかってた。傷つけてでもあの時の俺は……自分の感情を守ることで精一杯だった。それほどまでに、シンデレラの記憶は垣間見ただけの俺も切り刻んだのだから。
自分達の目的は、同じだ。それでも共闘することはけして無いのだろうと思っていた。差し出された手を、何よりも酷い形で振り払ったのは自分の方なのだから。
そう、故に。
何故、シンデレラが――涼貴が今、自分を助けたのかがわからない。たまたま近くにいて鳥籠が見えて駆けつけた、というのもわからないではないけれど。だからってどうして、自分を助ける必要があるのか。確かに共通の敵ではあるが、莉緒がやられている隙に白雪姫を倒す方が余程建設的であったというのに。
「あら……面白いゲストね」
涼貴の“硝子の雨”を受けて一瞬怯んだようだが、それでも白雪姫が余裕の顔を崩すことはない。
そうだ、確かにシンデレラは技のレパートリーも多く、魔法アタッカーとしてはそれなりに優秀だと聴いているが。自分はこの通り這いずるだけが精一杯の状態であるし、何より目覚めてから彼もそう日が長いわけではなかったはずだ。
あらゆる童話のトップオブトップに座する、それも魔王軍でも相当歴が長いであろう白雪姫に対抗するのは、相当厳しい筈である。一体どうやって戦うつもりでいるのだろう。
――それに、まだ白雪姫が使って来た毒の正体もわかってない……!多分毒ガスか、塗ったり打ったりするタイプの毒かのどっちかなんだろうが。いくら遅効性とはいえ、食らったらいずれシンデレラも動けなくなってしまう……!
この情報だけでも、伝えなければ。そう思って莉緒が口を開こうとした時、再び背中に衝撃が来て吹き飛ばされた。白雪姫が爆弾林檎を再び投げつけて来たらしい。激痛に、思わず息が詰まる。体が横倒しになり、彼らのやり取りをはっきりと見られるようにはなったけれど。
「せっかく来て貰ったところ悪いけど、わたくしは今この子とデートの真っ最中ですの。お邪魔虫は引っ込んでいてくださる?わたくし、女の子には興味がないんですのよ」
「デートですか。僕が知るデートとは随分違うようですけど?彼は随分苦しんでいるように見えますけどね」
「それは貴女の眼が腐っているだけですわ。わたくし達、ちゃんと愛し合ってますのよ。この子がその愛を誤解しているから、こうしてしっかり痛みと共に調教してあげているというだけのこと。そうすれば、きっと頭の固いこの子もわかってくれるはず。わたくしの愛を受け入れ、共に永遠を生きることこそ史上の幸福であるということが……!」
己に酔ったように告げる、白雪姫。すぐに攻撃しないで話を引き伸ばしているのは何故だ、と思ってすぐにピンと来た。彼女は、自らの毒が効くのを待っているのだ。強い力を持っていてもけして驕ることなく、獲物が弱るのを待っているというあたりが実に嫌らしい。先ほど自分を攻撃してきたのも、余計なことを言わせない為だろう。
シンデレラに対して思うことはあるが、だからといって倒されていいなどと考えているわけではないのである。なんとかしなければ――莉緒は必死でそう頭を回していたが。
「貴女の茶番に付き合う気がないんですけどね。一つだけ教えて差し上げます」
少女の姿をした少年は、冷え切った眼で白雪姫を見、そして。
「貴女の目論見は、全て破壊させていただきました。僕の“王子の騎士達”は、隠れている敵を捜すのも得意なのですよね」
「!」
ここで、白雪姫が初めて驚愕に近い表情を浮かべた。シンデレラが床に投げたのは、目を回している、小さな人間のようなもの。
莉緒は気づいた。赤、緑、黄色、青――カラフルな服装を着た彼らが“七人の小人”であるということに。そしてそれぞれ手に、小さな槍のようなものを持っていることに。
「毒物のエキスパートということも調査済み。毒ガスは自分達にも危険が高い上、拡散してしまって効果が薄れる場合もある。だから貴女は確実に毒を回すため、小人達に不意打ちさせることによって標的を仕留めていたのでしょう?このサイズなら、相手は針で刺された程度のダメージにしかならず、毒針を打たれたことにさえ気づかなかったのでしょうね」
「ば、馬鹿な」
「そして、もう一つ教えてあげましょう。もう、勝負はついているといことを」
後ずさりをしようとして、白雪姫はぎょっとしたように自分の足を見る。慌てた様子の彼女に莉緒も気づいた。白雪姫の両足に、溶けた硝子のようなものが絡みつき、動きを完全に封じているということに。
「“硝子の罠”。罠を張ることができるのが、自分だけだとは思わないことです。チェックメイトですよ、白雪姫」
涼貴は凛々しく弓を構え、矢を引き絞る。シンデレラを嫌っていたはずの莉緒でさえ、見惚れるほどの凛々しさで。
「“硝子の矢”!」
散弾銃のように分裂し、弾ける硝子の礫。それは白雪姫を吹き飛ばすには、十分な威力を持っていた。
魔王を倒すために。洗脳され、欲望を暴走させる物語達を止めるために。仲間を探していく仲、運良く見つけることができたのが彼女――否、彼であったというべきか。正確にはこちらが見つけたわけではなく、向こうがその高い調査能力を使ってこちらを探し当てて来たというのが正しいのだけれど。
『僕は体力もないし、貴方のような機動力もない。それでも、守るべきものを守るため、命を賭ける覚悟はあります』
真正面から自分とリーナを見据えて告げて来た涼貴は、嘘を言っているようには見えなかった。
『お願いします。共に戦う仲間になっていただけませんか』
体力のない紙装甲、しかし高い魔力とバリエーション豊富な技を持つシンデレラは、きっと共に戦えば大きな戦力として見込めたことだろう。どちらも、自分とリーナにはない重要な能力であったから尚更だ。
しかし、物語が物語として接触すれば、高い確率でお互いの“前世”の粗筋が知られることになる。
己が幼い考えの持ち主であるということくらい、莉緒にだってわかっていることだ。それでも、シンデレラの過去は――潔癖で、正義感の強い莉緒には到底受け入れられるものではなかったのである。例え今、目の前の少年が同じような行為をしているわけではないとわかっていても。
『……あんたの過去を、見た』
同性ではなく、異性として転生する者には、大抵何らかの理由がある。シンデレラはその理由があまりにも顕著であったことだろう。彼女は、女であるがゆえに虐げられ、踏みにじられ、嬲られ続けて殺された。女としての自分を忌み嫌うがゆえに、男性として生まれ変わることを魔女の呪いを超えて願ったのだろう。
残念ながら、転生しても彼女が望んだような――屈強な男らしい男にはなれなかったようだが。
そしてそれは彼女が、自らの過去をそれほどまでにトラウマにしていることを示している。きっと目の前の、記憶を持っているだけの転生者の彼さえ、思い出すたびに震えるほど恐ろしいものであるのは間違いない。何もあのシンデレラは望んで継母に虐待されたわけでもなければ、鬼畜な王子に性奴隷にされていたわけでもないのである。
そんなことはわかっている。それでもだ。
『……物語の罪を。悔やんでないだろう、あんたは。あれだけの目に遭っておきながら、継母達を陥れて惨たらしく殺したことを後悔していない……!』
気持ち悪い。
そう思ってしまうことを、どうして止められるだろう。
彼女は晩年、その僅かな命を長らえるためなら文字通り、自ら人間としての尊厳を投げ捨てるような行いも平気で行っていた。全裸で毎日過ごすことも、性的な奉仕をすることも勿論、彼らの目の前で排泄も出産も行い、望まれたならば自ら産んだ直後の赤子を殺すことさえしてみせたのだ。
それなのに、悔やむことができないなんて。いくらイジメ殺される寸前だったからといって、人を殺して平然と笑っていたなんて。そんな狂った話が本当にあるだろうか。
『人を殺すのは、罪だ。どんな理由があったとしても、許されていいことなんかじゃない。それを反省しない、間違いだとも思わないお前を……受け入れるなんて、俺には到底できっこない……!』
生きるためならば何でもする。自分のためなら平気で誰かを傷つける。それは、欲望を冗長させられた魔王やその手下達となんの違いがあるというのだろう。
あの時、自分の物言いがきつかったという自覚はある。きっと涼貴を傷つけた。未だに過去の記憶に苦しめられているであろう高校生の少年を、間違いなく深く抉ったに違いない。それがわかっていても、莉緒は己の感情を止めることができなかった。
『……そうですね』
彼は、けして食い下がってくることもしなければ、言い訳の一つもしなかった。自分達の会話は、接触してほんの数分であっさりと終わったのだ。
『シンデレラを受け入れられないと、貴方がそう思うのは当然です。未だに僕だって……僕自身だって、認めることができないんですから』
――酷いことを言ったのは、わかってた。傷つけてでもあの時の俺は……自分の感情を守ることで精一杯だった。それほどまでに、シンデレラの記憶は垣間見ただけの俺も切り刻んだのだから。
自分達の目的は、同じだ。それでも共闘することはけして無いのだろうと思っていた。差し出された手を、何よりも酷い形で振り払ったのは自分の方なのだから。
そう、故に。
何故、シンデレラが――涼貴が今、自分を助けたのかがわからない。たまたま近くにいて鳥籠が見えて駆けつけた、というのもわからないではないけれど。だからってどうして、自分を助ける必要があるのか。確かに共通の敵ではあるが、莉緒がやられている隙に白雪姫を倒す方が余程建設的であったというのに。
「あら……面白いゲストね」
涼貴の“硝子の雨”を受けて一瞬怯んだようだが、それでも白雪姫が余裕の顔を崩すことはない。
そうだ、確かにシンデレラは技のレパートリーも多く、魔法アタッカーとしてはそれなりに優秀だと聴いているが。自分はこの通り這いずるだけが精一杯の状態であるし、何より目覚めてから彼もそう日が長いわけではなかったはずだ。
あらゆる童話のトップオブトップに座する、それも魔王軍でも相当歴が長いであろう白雪姫に対抗するのは、相当厳しい筈である。一体どうやって戦うつもりでいるのだろう。
――それに、まだ白雪姫が使って来た毒の正体もわかってない……!多分毒ガスか、塗ったり打ったりするタイプの毒かのどっちかなんだろうが。いくら遅効性とはいえ、食らったらいずれシンデレラも動けなくなってしまう……!
この情報だけでも、伝えなければ。そう思って莉緒が口を開こうとした時、再び背中に衝撃が来て吹き飛ばされた。白雪姫が爆弾林檎を再び投げつけて来たらしい。激痛に、思わず息が詰まる。体が横倒しになり、彼らのやり取りをはっきりと見られるようにはなったけれど。
「せっかく来て貰ったところ悪いけど、わたくしは今この子とデートの真っ最中ですの。お邪魔虫は引っ込んでいてくださる?わたくし、女の子には興味がないんですのよ」
「デートですか。僕が知るデートとは随分違うようですけど?彼は随分苦しんでいるように見えますけどね」
「それは貴女の眼が腐っているだけですわ。わたくし達、ちゃんと愛し合ってますのよ。この子がその愛を誤解しているから、こうしてしっかり痛みと共に調教してあげているというだけのこと。そうすれば、きっと頭の固いこの子もわかってくれるはず。わたくしの愛を受け入れ、共に永遠を生きることこそ史上の幸福であるということが……!」
己に酔ったように告げる、白雪姫。すぐに攻撃しないで話を引き伸ばしているのは何故だ、と思ってすぐにピンと来た。彼女は、自らの毒が効くのを待っているのだ。強い力を持っていてもけして驕ることなく、獲物が弱るのを待っているというあたりが実に嫌らしい。先ほど自分を攻撃してきたのも、余計なことを言わせない為だろう。
シンデレラに対して思うことはあるが、だからといって倒されていいなどと考えているわけではないのである。なんとかしなければ――莉緒は必死でそう頭を回していたが。
「貴女の茶番に付き合う気がないんですけどね。一つだけ教えて差し上げます」
少女の姿をした少年は、冷え切った眼で白雪姫を見、そして。
「貴女の目論見は、全て破壊させていただきました。僕の“王子の騎士達”は、隠れている敵を捜すのも得意なのですよね」
「!」
ここで、白雪姫が初めて驚愕に近い表情を浮かべた。シンデレラが床に投げたのは、目を回している、小さな人間のようなもの。
莉緒は気づいた。赤、緑、黄色、青――カラフルな服装を着た彼らが“七人の小人”であるということに。そしてそれぞれ手に、小さな槍のようなものを持っていることに。
「毒物のエキスパートということも調査済み。毒ガスは自分達にも危険が高い上、拡散してしまって効果が薄れる場合もある。だから貴女は確実に毒を回すため、小人達に不意打ちさせることによって標的を仕留めていたのでしょう?このサイズなら、相手は針で刺された程度のダメージにしかならず、毒針を打たれたことにさえ気づかなかったのでしょうね」
「ば、馬鹿な」
「そして、もう一つ教えてあげましょう。もう、勝負はついているといことを」
後ずさりをしようとして、白雪姫はぎょっとしたように自分の足を見る。慌てた様子の彼女に莉緒も気づいた。白雪姫の両足に、溶けた硝子のようなものが絡みつき、動きを完全に封じているということに。
「“硝子の罠”。罠を張ることができるのが、自分だけだとは思わないことです。チェックメイトですよ、白雪姫」
涼貴は凛々しく弓を構え、矢を引き絞る。シンデレラを嫌っていたはずの莉緒でさえ、見惚れるほどの凛々しさで。
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