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<22・金太郎の業>
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「おらおらおらおら!いつまでそうやって隠れてる気だあ?最終的にジリ貧になるのがどっちなのか、わかってんだろぉ!?もっとあたしを楽しませろよ!!」
金太郎こと、安曇愛加は吠える。吠えながら、斧をモコモコの壁にぶつけ続ける。一見無駄な行動に見えるが、多少なりに母山羊の魔力を削り取れていることはわかっていた。こっちはただ腕力を振り回しているだけである。ガンガン殴って削れば、どれほど膨大な魔力があろうと最終的に削られるのはあちらだ。
同時に、彼らにはもう一つタイムリミットがあると知っている。沈黙の鳥籠は、誰が張ったところで一定時間が過ぎれば必ず自動で解除される仕組みになっているのだ。桃太郎と母山羊とピーターパンの誰が仕掛け人かはわからないが、彼らは鳥籠が解除される前にケリをつけたいはずである。なんせ、解除されたら最後、自分達の圧倒的な暴力は現実の世界に及ぶことになるのだから。
最初に壊されるのは、彼らが住んでいたこの建物であろうが。ここを壊したら、次は外の町が標的になるというのはこちらが宣言しなくても明らかなことだろう。つまり、最初から愛加達は、自分達に優位な戦いを仕掛けているのである。こちらはいくらでも暴れられるし迷惑なんぞを気にしなくてもいいのに対し、あちらはそうではないのだから。
――ほんと、さっさと表に出てきてくれよ。こっちは退屈してんだ。
薬に溺れ、落ちぶれた元女子プロボクサー。それが安曇愛加という人間だった。あの時の審判――あいつが、あんな不平等な判定など下さなければ、自分は忌々しいあの女を打ち破ってチャンピオンになれたというのに。腹が立ち、審判に拳を向けてしまったことが転落の始まりだった。協会から追放され、薬が手放せなくなった愛加に残っていたのは――恵まれた大きな体と、長年培った“力”だけであったのである。
愛加は薬を手に入れるため、ヤクザの売人さえもボコボコにしながら地下をさまよっていた。男でも到底叶わぬ圧倒的な“暴力”を持つ愛加に、歯向かうことができる者など誰もいなかったのである。だが、勿論そんなことをしていれば、いずれ地域を取り締まる“大人”が出てくるのは明白だった。――銃を持った相手に追われ、逃げていた時だ。愛加の中に眠る、伝説の“物語”の力が目覚めたのは。
金太郎といえば、童話ならば“優しくて力持ち”のイメージが強いだろう。しかし愛加の中に目覚めた伝説は例に漏れず――残酷で、罪に満ちた物語であったのである。
同時に。今の愛加にぴったりの、素晴らしい“暴力”に満ちた前世でもあったのだ。
――金太郎の子供時代の物語は、童話として伝えられているものと対して変わらない。けれど金太郎は、大人になって自分が“神の子”として遣わされた存在であることを思い出してしまうんだ。そして、そんな自分が何故、人間と足並みを揃えて生きなければいけないのかと疑問を抱いてしまうことになる。
世界に恩恵を齎す筈の神の子は、記憶を取り戻すと同時に神としての傲慢さを手にして――人間に仇なす悪魔へと変わったのだ。
自分と母が、幼い頃に山で貧乏な暮らしをしなければならなかったのは。母があらぬ罪を着せられ、父と共に山へと追いやられたせい。都を追われた元豪族の父は失意から病気になって死に、母は女手一人で金太郎を育てなければならなくなった。
自分と母の不遇も。森の動物達がみんな死んでいくのも、全ては傲慢な人間のせい。ならば、人間達が全て死ねば自分達にとってもっとも素晴らしい“本物の平和な世界”が出来上がるはずである。そう結論した金太郎は、一度は忠誠を誓った源氏の君に反旗を翻すことになる。そして金太郎対人間達の、長きに渡る戦争が幕を開けたのだ。
――あたしは間違ったことなんか言ってない、してない……前世でも現世でもそうだったってのによ!誰もあたしの本当の声なんちゃ聞いてなかった……全部全部、テメェのことしか考えねえくだらない連中のせいだ!
幕切れは、あっけないもの。息子が犯した大罪を悔やんだ母が、償うためにと自ら命を絶ってしまったのである。そして金太郎が守りたかった故郷の山と動物達は、気づけば戦いに巻き込まれて焼け野原になってしまっていた。多くの仲間が死に、故郷は失われ、母はいなくなった。気づいた時にはもう、金太郎は全てを失っていたのである。自分が正しいと思ったことを貫こうとした、ただそれだけのことであったというのに。
この世の中は理不尽だ。愛加にはわかる。金太郎もそう、自分もそう。ただ正しいことをしようとしただけなのに、大多数のクズのような人間達のせいで踏み潰され、闇へと追いやられる羽目になる。本当に報われるべき者が報われない、此処はそんな世界なのだ。ヤクザ達を“力”でボコボコにした後で気づいた。これが、この圧倒的な力こそが自分が求め続けていたものであると。
生き残るに相応しい者がいる。
淘汰されるのが当然である者がいる。
自分のこの力ならば、それが実現できる。実現し、そして――今度こそ本当に、守るべきものを守ることができるはずなのだ。
魔王の声が聞こえてきたのは、まさにそんな時であったのである。
――そうだ、弱い奴は狩られるべきなんだ。強い奴の血肉になるために存在している……お前ら草食動物ってのはそういう存在なんだよ!!
何度か既に、物語を手にかけてきている愛加である。一番最初に殺した物語は“何”であったかなんて、今ではもう思い出すこともできない。魔王に従い、理想を実現する気がない者。抵抗する者は全てこの圧倒的な力でひねり潰してきた。そうだあれは、どこぞの可愛らしいお姫様だったか。まあ、実際にリアルの性別も女性であるとは限らないわけだが。
可愛い可愛いもの。美しい美しいもの。そういうものを汚し、踏み潰すことは本当に快感だ。最初かギラギラと殺気を漲らせてステッキを振り回していたお姫様は、最終的に泥と排泄物に塗れて愛加の前を転がる羽目になっていた。わざとトドメを刺さず、とにかく追い掛け回して疲弊させ、狩りを楽しんだ後の結末である。恐怖から脱糞までし、ビリビリに破れたスカートと乳房、性器を晒して逃げようとした彼女に愛加は心底興奮し――ああ、最終的にはどうしたのだっただろうか。
まずは性器と排泄器官に斧をねじ込んで泣き喚かせた後で、両足の肉を少しずつ剥ぎ取ってやったような気がする。ああ、これが自分が求めていたもの、求めていた世界なのだと心底実感したものだ。
――白雪姫みたいに、イケ好かない奴に獲物を譲らないといけねーのは残念だが……まあいいさ。奴らに従ってりゃ、美味しい獲物にありつけるんだからよお。
舌なめずりをして、そして。愛加は再び、斧を振り上げた。
「いつまでも隠れてんじゃねーよ!“不動ノ一撃”」
そろそろ頃合だ。思い切り叩きつけた斧に、確かな感触が伝わってきた。壁に食い込む武器と石礫。そして、ばふっ!と何かが破裂するような音と共に目の前の壁が煙とともに消失する。どうやら、母山羊の魔力が尽きたということらしい。さあ、これでフィナーレといこうじゃないか――もくもくと漂うピンクの煙が緩やかに晴れていく。全身を喜悦に震わせながら、愛加が一歩踏み出した――その時だった。
「んな!?」
目を見開いた。壁の向こうには――母山羊しか存在していなかったからである。金色の髪に、くるんとした山羊の角を生やしたエプロン姿の女は。驚愕する愛加を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「単純ね」
彼女の後ろの壁には――穴。
「あれだけ時間をかけておいて、いつまでも壁の向こうに私達“二人とも”がいると思ってるのが間違いなのよ」
――まさか、さっきの防御壁は……ただの壁じゃなくて、あたしに対するブラインドだったってのか!
母山羊の技、“偉大なる母の守護”は巨大なもこもこの壁を創りだす力である。そう、“巨大”なのだ。その壁の向こうがどうなっているのかなど、2mを超える巨漢である愛加にも窺い知ることはできない状態だった。その向こうに、ずっと彼らが存在する保証はなかったはずだ――いや、技を張っている母山羊は留まる必要があっただろうが、少なくとも桃太郎は。
そして、桃太郎は白雪姫とも並ぶ“物語”のトップクラス。日本昔話の中では随一の知名度を持つ。いかにも物理アタッカーであったし、壁に穴を開けて逃げるくらいは造作もないことであっただろう。
――どこだっ……桃太郎は、どこにっ!?
焦る、愛加。そして、愛加が振り返るよりも先に、気配が。
「トドメだっ!」
気づいた時にはもう。愛加のすぐ後ろに、桃太郎の剣が迫っていたのである。
金太郎こと、安曇愛加は吠える。吠えながら、斧をモコモコの壁にぶつけ続ける。一見無駄な行動に見えるが、多少なりに母山羊の魔力を削り取れていることはわかっていた。こっちはただ腕力を振り回しているだけである。ガンガン殴って削れば、どれほど膨大な魔力があろうと最終的に削られるのはあちらだ。
同時に、彼らにはもう一つタイムリミットがあると知っている。沈黙の鳥籠は、誰が張ったところで一定時間が過ぎれば必ず自動で解除される仕組みになっているのだ。桃太郎と母山羊とピーターパンの誰が仕掛け人かはわからないが、彼らは鳥籠が解除される前にケリをつけたいはずである。なんせ、解除されたら最後、自分達の圧倒的な暴力は現実の世界に及ぶことになるのだから。
最初に壊されるのは、彼らが住んでいたこの建物であろうが。ここを壊したら、次は外の町が標的になるというのはこちらが宣言しなくても明らかなことだろう。つまり、最初から愛加達は、自分達に優位な戦いを仕掛けているのである。こちらはいくらでも暴れられるし迷惑なんぞを気にしなくてもいいのに対し、あちらはそうではないのだから。
――ほんと、さっさと表に出てきてくれよ。こっちは退屈してんだ。
薬に溺れ、落ちぶれた元女子プロボクサー。それが安曇愛加という人間だった。あの時の審判――あいつが、あんな不平等な判定など下さなければ、自分は忌々しいあの女を打ち破ってチャンピオンになれたというのに。腹が立ち、審判に拳を向けてしまったことが転落の始まりだった。協会から追放され、薬が手放せなくなった愛加に残っていたのは――恵まれた大きな体と、長年培った“力”だけであったのである。
愛加は薬を手に入れるため、ヤクザの売人さえもボコボコにしながら地下をさまよっていた。男でも到底叶わぬ圧倒的な“暴力”を持つ愛加に、歯向かうことができる者など誰もいなかったのである。だが、勿論そんなことをしていれば、いずれ地域を取り締まる“大人”が出てくるのは明白だった。――銃を持った相手に追われ、逃げていた時だ。愛加の中に眠る、伝説の“物語”の力が目覚めたのは。
金太郎といえば、童話ならば“優しくて力持ち”のイメージが強いだろう。しかし愛加の中に目覚めた伝説は例に漏れず――残酷で、罪に満ちた物語であったのである。
同時に。今の愛加にぴったりの、素晴らしい“暴力”に満ちた前世でもあったのだ。
――金太郎の子供時代の物語は、童話として伝えられているものと対して変わらない。けれど金太郎は、大人になって自分が“神の子”として遣わされた存在であることを思い出してしまうんだ。そして、そんな自分が何故、人間と足並みを揃えて生きなければいけないのかと疑問を抱いてしまうことになる。
世界に恩恵を齎す筈の神の子は、記憶を取り戻すと同時に神としての傲慢さを手にして――人間に仇なす悪魔へと変わったのだ。
自分と母が、幼い頃に山で貧乏な暮らしをしなければならなかったのは。母があらぬ罪を着せられ、父と共に山へと追いやられたせい。都を追われた元豪族の父は失意から病気になって死に、母は女手一人で金太郎を育てなければならなくなった。
自分と母の不遇も。森の動物達がみんな死んでいくのも、全ては傲慢な人間のせい。ならば、人間達が全て死ねば自分達にとってもっとも素晴らしい“本物の平和な世界”が出来上がるはずである。そう結論した金太郎は、一度は忠誠を誓った源氏の君に反旗を翻すことになる。そして金太郎対人間達の、長きに渡る戦争が幕を開けたのだ。
――あたしは間違ったことなんか言ってない、してない……前世でも現世でもそうだったってのによ!誰もあたしの本当の声なんちゃ聞いてなかった……全部全部、テメェのことしか考えねえくだらない連中のせいだ!
幕切れは、あっけないもの。息子が犯した大罪を悔やんだ母が、償うためにと自ら命を絶ってしまったのである。そして金太郎が守りたかった故郷の山と動物達は、気づけば戦いに巻き込まれて焼け野原になってしまっていた。多くの仲間が死に、故郷は失われ、母はいなくなった。気づいた時にはもう、金太郎は全てを失っていたのである。自分が正しいと思ったことを貫こうとした、ただそれだけのことであったというのに。
この世の中は理不尽だ。愛加にはわかる。金太郎もそう、自分もそう。ただ正しいことをしようとしただけなのに、大多数のクズのような人間達のせいで踏み潰され、闇へと追いやられる羽目になる。本当に報われるべき者が報われない、此処はそんな世界なのだ。ヤクザ達を“力”でボコボコにした後で気づいた。これが、この圧倒的な力こそが自分が求め続けていたものであると。
生き残るに相応しい者がいる。
淘汰されるのが当然である者がいる。
自分のこの力ならば、それが実現できる。実現し、そして――今度こそ本当に、守るべきものを守ることができるはずなのだ。
魔王の声が聞こえてきたのは、まさにそんな時であったのである。
――そうだ、弱い奴は狩られるべきなんだ。強い奴の血肉になるために存在している……お前ら草食動物ってのはそういう存在なんだよ!!
何度か既に、物語を手にかけてきている愛加である。一番最初に殺した物語は“何”であったかなんて、今ではもう思い出すこともできない。魔王に従い、理想を実現する気がない者。抵抗する者は全てこの圧倒的な力でひねり潰してきた。そうだあれは、どこぞの可愛らしいお姫様だったか。まあ、実際にリアルの性別も女性であるとは限らないわけだが。
可愛い可愛いもの。美しい美しいもの。そういうものを汚し、踏み潰すことは本当に快感だ。最初かギラギラと殺気を漲らせてステッキを振り回していたお姫様は、最終的に泥と排泄物に塗れて愛加の前を転がる羽目になっていた。わざとトドメを刺さず、とにかく追い掛け回して疲弊させ、狩りを楽しんだ後の結末である。恐怖から脱糞までし、ビリビリに破れたスカートと乳房、性器を晒して逃げようとした彼女に愛加は心底興奮し――ああ、最終的にはどうしたのだっただろうか。
まずは性器と排泄器官に斧をねじ込んで泣き喚かせた後で、両足の肉を少しずつ剥ぎ取ってやったような気がする。ああ、これが自分が求めていたもの、求めていた世界なのだと心底実感したものだ。
――白雪姫みたいに、イケ好かない奴に獲物を譲らないといけねーのは残念だが……まあいいさ。奴らに従ってりゃ、美味しい獲物にありつけるんだからよお。
舌なめずりをして、そして。愛加は再び、斧を振り上げた。
「いつまでも隠れてんじゃねーよ!“不動ノ一撃”」
そろそろ頃合だ。思い切り叩きつけた斧に、確かな感触が伝わってきた。壁に食い込む武器と石礫。そして、ばふっ!と何かが破裂するような音と共に目の前の壁が煙とともに消失する。どうやら、母山羊の魔力が尽きたということらしい。さあ、これでフィナーレといこうじゃないか――もくもくと漂うピンクの煙が緩やかに晴れていく。全身を喜悦に震わせながら、愛加が一歩踏み出した――その時だった。
「んな!?」
目を見開いた。壁の向こうには――母山羊しか存在していなかったからである。金色の髪に、くるんとした山羊の角を生やしたエプロン姿の女は。驚愕する愛加を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。
「単純ね」
彼女の後ろの壁には――穴。
「あれだけ時間をかけておいて、いつまでも壁の向こうに私達“二人とも”がいると思ってるのが間違いなのよ」
――まさか、さっきの防御壁は……ただの壁じゃなくて、あたしに対するブラインドだったってのか!
母山羊の技、“偉大なる母の守護”は巨大なもこもこの壁を創りだす力である。そう、“巨大”なのだ。その壁の向こうがどうなっているのかなど、2mを超える巨漢である愛加にも窺い知ることはできない状態だった。その向こうに、ずっと彼らが存在する保証はなかったはずだ――いや、技を張っている母山羊は留まる必要があっただろうが、少なくとも桃太郎は。
そして、桃太郎は白雪姫とも並ぶ“物語”のトップクラス。日本昔話の中では随一の知名度を持つ。いかにも物理アタッカーであったし、壁に穴を開けて逃げるくらいは造作もないことであっただろう。
――どこだっ……桃太郎は、どこにっ!?
焦る、愛加。そして、愛加が振り返るよりも先に、気配が。
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気づいた時にはもう。愛加のすぐ後ろに、桃太郎の剣が迫っていたのである。
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