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<4・沈黙の鳥籠>
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多分、本来の涼貴という少年は、けしてお喋りな方ではないのだろう。歩いて移動する傍ら、彼が凛音に教えてくれたのは“戦い”に関することばかりだった。彼自身のパーソナルデータに関しては、高校一年生ということと、都内のちょっとびっくりするくらい頭のいい学校の生徒である、ということしかわからない。
一体この“戦い”について、どういう経緯で理解したのかも含めて。
「何処に行くつもりなんだ?駅の方に向かってるみたいだけど……遠いの?」
急いで着替えることはしたものの、慌てて出てきたので所持品は少ない。というか、寂しい寂しい給料日前なので、手持ちのお金そのものが残念であったりする。なるべく電車で、定期券の範囲外に行くのを避けたいと思ってしまうくらいには。
案に“お金持ってないんで勘弁して”と言ってるのが伝わったのかどうなのか。彼は駅前広場まで来たところで足を止めて振り返る。――美少年はこういう時にお得だ。振り返るだけの動作一つさえ、随分と様になって見えるのだから。
「電車に乗りたいわけではないです、人が多いところに来た方がわかりやすいと思ったので」
「わかりやすい?」
「順を追って説明しましょうか」
最寄りの“月島平駅”は、典型的な“東側から発展した町”の中心にある。何故か駅ができると、西口より東口の方が栄える謎の法則があり、この場所もその例に漏れないというわけだ。
凛音の自宅アパートは、駅の東口から十五分ほど歩いたやや閑静な住宅街にあるが。駅前広場ともなれば、月島平は非常に賑やかである。特に今日は休日、昼間に此処に遊びに来る若者は少なくない。ちょっとお洒落なショッピングモールも近くにあるから尚更だ。
「“物語”の転生者はそれぞれ固有の能力を持ってますが、一部共通の力があります。それが“沈黙の鳥籠”。一定の範囲の空間を切り取り、自分のフィールドに変える能力。そうすることで、一般の無関係な人々や、現実の世界を巻き込まずに済むようになるというわけです」
「……あ。それってひょっとして……」
「気がつきましたか?あのピーターパンも、加賀美さんを拉致した時に使っていたのではないかと」
そういえば、あの時裏通りとはいえ、不自然なほど人が歩いていなかった。いや、いなかったばかりではない。音そのものが殆ど消失していたように思うのだ。だからこそあれだけ距離があるのに、ピーターパンの声がやけに通って聞こえたのだから。
「アニメや漫画がお好きなら想像がつくでしょう?魔法やらなんやらを、都会のど真ん中でぶっぱなしたらどんなことになるか。最低でも騒ぎになるのは免れられません。怪我人が出なくても、凄まじいスピードでの移動やらバトルやらが目撃されたなら後々面倒なことになります。なんせ、僕らは物語の転生者とはいえ、現代では普通に人間としての生活があるわけですからね」
そりゃそうだ、と凛音も頷く。異世界ファンタジーが異世界たるのは、現実と切り離された夢の世界を見てみたいという現代人の願望もあるだろうが――同じだけ、現実でやらかすと色々と問題のある派手なバトルを実現させたいからというのもあるに違いない。なんせ――自分で言っていても悲しくなるが、東京というヤツは狭いのだ。建物も人もびっしりと存在しているわけで。
「僕も物語の端くれ……一応はその力を使うことができます。今から貴女にもお見せしましょう」
駅前広場。人で溢れ、みんなが待ち合わせに使う犬の銅像の前のベンチに座って――涼貴は呟いた。
「“沈黙の鳥籠”発動……!」
刹那――周囲の景色が、反転した。
いや、正確には目の前の光景が左右逆になったとか、モノクロになったなんてわかりやすいものではないのだが。少なくとも凛音には、すべての音が裏側に“食われた”ような、まるで吸い込まれて裏返ったような――そんな感覚を覚えたのである。
空気が、どこか重たい。
何よりさっきまですぐ傍を歩いていた青年も、ビラ配りをしていた女性も、むっすりとした顔でスマホを睨んでいた少女も手を繋いだ家族連れも――みんなみんな、一瞬にして消失してしまっている。
雑踏の中にいたはずなのに、今は自分と涼貴の姿しかない。
凛音はここでやっと理解した。何故涼貴がこんな場所にわざわざ自分を連れてきたのか。――この、明らかに非現実だとわかる光景を、はっきりと自分に見せるためであったのだということが。なるほど、人気がない静かな場所でやっても、はっきりとした効果は得られなかったに違いない。それこそ自分の部屋でやっても意味がなかったことだろう。
「ほ、ほんとに、こんなのあるんだ……!?」
凛音の喉から漏れたのはそんな、とにかくありきたりで捻りもなにもない感想だけである。沈黙の、鳥籠。一部の空間だけが切り取られた状態。これでもう、半信半疑だった全てを納得せざるを得なくなった。
自分に、本当に特別な力があるかどうかなんてわからない。でも。
信じられないような現実は確かに今――目の前に、あるのだ。
「現実の世界の裏側に、よく似たもう一つの空間を形成し……そちらに、特定の人間だけを転送する。それが、この鳥籠の能力です。敵と戦闘をしていて周囲を巻き込みたくない時などに便利ですよ。同時に、相手を遠方へ逃がさない効果もあります」
「ふへえ……私も使えるようになるのか?」
「ええ、きちんとした覚醒をすれば……固有の能力と一緒に、貴女にもね」
と、ここまで説明を聞いて凛音は思った。いきなり有無を言わさず瑠衣を攫ったりとやりたい放題してくれたピーターパンだが、この能力を使ったということは他の一般人を巻き込まないようにした可能性が高い。
つまり、根は悪い奴ではないのかもしれなかった。世界が乗っ取られるのを防ぐため、“魔王”と戦おうとしているのだから、そもそも悪人ではないとも言えるが。
「この能力は便利ですが、対象に指定した人物が誰かに触れていると、その人物も一緒に反転世界に引っ張り込んでしまうことがあります。多分、ピータパンは本来加賀美さんだけ引きずりこみたかったところ、貴女と接触していたせいで貴女に目撃される羽目になってしまった可能性が高いかと。まあ、未覚醒とはいえ“物語”は引き合う傾向にありますし、それで無意識に自分から踏み込んだ可能性もありますけどね」
さて、と言いながら涼貴はそっと自分の左手を差し出し――その上に、何かを出現させてみせた。水色の光がきらきらと踊り、やがて西洋風の、馬に乗った兵隊達を形作る。
「ご紹介しましょう。僕の……“シンデレラ”の能力の一つ。“王廷騎士団”。同じ物語の転生者達を捜すために用いた僕の能力です。高い調査能力があります」
「へえ」
思わず近づいて、まじまじと見つめてしまう。デフォルメされた可愛らしい白馬に、銀色の甲冑を纏った勇ましい騎士が乗っている。ただし、その騎士もアニメのようにデフォルメされたデザインなので、かっこいいというよりは非常に可愛らしく目に映る。
何で王子の騎士、と聞いてピンと来た。物語というからには、基本的に自分達の能力は、その物語に準じたものやそこからイメージされたものになるのかもしれない。彼は自らを“シンデレラ”と言っていた。ガラスの靴を落として消えた娘を探し、王子は自らの足で兵を率いて、片っ端から同じくらいの年頃の娘でガラスの靴が合う少女を捜して回っていたはずだ。少なくとも、自分が知るシンデレラはそういうストーリーである。
なるほど、そこをモチーフにしたというのなら。シンデレラの力が“調査力”に結びつくというのも、わからない話ではなかった。
「覚醒した物語と近づけば、僕らはなんとなくその相手がわかります。ただし、未覚醒の相手ならばそうもいかないし……相手が物語だとわかっても、その詳しいパーソナルデータまで調べるのは困難です。僕の力ならば、相手の個人情報を人間の探偵と同じ程度には調べることができるんですよ」
「道理で、私の家とか名前も知ってたのか」
「そうです。正確には、加賀美瑠衣さんを調べていたら貴女が近くにいることに気づいて、一緒にデータを調べておいたというのが正しいですが。僕の力なら“調査対象”にさえすれば、相手が未覚醒の物語でも判別できるものですから」
「へえ……そりゃ便利だわ」
しかも、涼貴の今までの物言いからすると――相手が何の物語であるのかも、調査すれば分かる様子である。まさに調査力チートというやつだ。
まあ、本当に凛音が“かぐや姫”であるのかどうかは――正直なところ、凛音自身が一番半信半疑であるのだけれど。なんといっても、ここまで色々見たというのに、その前世の記憶とやらが蘇ってくる気配が微塵もないのだから。
「僕の能力は魔法や補助に偏っているので、物理アタッカー型の仲間が欲しいと思っていたのですよね。加賀美瑠衣さんはまさにその能力を持っているので、是非とも仲間にと思っていたのですが……残念ながらピーターパンに先手を打たれてしまったようで。代わりに、貴女に白羽の矢が立ったというわけです。むしろ、仲間は何人いても足らないほどなのですから」
どうにか、話は理解できた。うんうん、と頷いて凛音は返す。
「わかったけど、それで?私はその前世とか能力とか、まだ全然なーんもないし……本当にそんなものがあるのか疑問で仕方ないんだけども」
「そうでしょうね。なので強制的に覚醒していただこうかと」
「強制的に?」
「ええ、強制的に」
何だろう、この大事なことなので二回言いました、感は。
なんだか嫌な予感がしてきた。凛音はおそるおそる、具体的には?と問う。そうだ、よくよく考えれば彼が沈黙の鳥籠を発動した理由は、単に能力を見せるためだけではないとしたら。
「戦って頂きます、僕と」
そしてあっさりと、涼貴はその端正な顔でにっこり言い放って見せるのである。
「命の危機に陥れば、大抵こういうものは目覚めるって相場が決まってるんですよねえ」
一体この“戦い”について、どういう経緯で理解したのかも含めて。
「何処に行くつもりなんだ?駅の方に向かってるみたいだけど……遠いの?」
急いで着替えることはしたものの、慌てて出てきたので所持品は少ない。というか、寂しい寂しい給料日前なので、手持ちのお金そのものが残念であったりする。なるべく電車で、定期券の範囲外に行くのを避けたいと思ってしまうくらいには。
案に“お金持ってないんで勘弁して”と言ってるのが伝わったのかどうなのか。彼は駅前広場まで来たところで足を止めて振り返る。――美少年はこういう時にお得だ。振り返るだけの動作一つさえ、随分と様になって見えるのだから。
「電車に乗りたいわけではないです、人が多いところに来た方がわかりやすいと思ったので」
「わかりやすい?」
「順を追って説明しましょうか」
最寄りの“月島平駅”は、典型的な“東側から発展した町”の中心にある。何故か駅ができると、西口より東口の方が栄える謎の法則があり、この場所もその例に漏れないというわけだ。
凛音の自宅アパートは、駅の東口から十五分ほど歩いたやや閑静な住宅街にあるが。駅前広場ともなれば、月島平は非常に賑やかである。特に今日は休日、昼間に此処に遊びに来る若者は少なくない。ちょっとお洒落なショッピングモールも近くにあるから尚更だ。
「“物語”の転生者はそれぞれ固有の能力を持ってますが、一部共通の力があります。それが“沈黙の鳥籠”。一定の範囲の空間を切り取り、自分のフィールドに変える能力。そうすることで、一般の無関係な人々や、現実の世界を巻き込まずに済むようになるというわけです」
「……あ。それってひょっとして……」
「気がつきましたか?あのピーターパンも、加賀美さんを拉致した時に使っていたのではないかと」
そういえば、あの時裏通りとはいえ、不自然なほど人が歩いていなかった。いや、いなかったばかりではない。音そのものが殆ど消失していたように思うのだ。だからこそあれだけ距離があるのに、ピーターパンの声がやけに通って聞こえたのだから。
「アニメや漫画がお好きなら想像がつくでしょう?魔法やらなんやらを、都会のど真ん中でぶっぱなしたらどんなことになるか。最低でも騒ぎになるのは免れられません。怪我人が出なくても、凄まじいスピードでの移動やらバトルやらが目撃されたなら後々面倒なことになります。なんせ、僕らは物語の転生者とはいえ、現代では普通に人間としての生活があるわけですからね」
そりゃそうだ、と凛音も頷く。異世界ファンタジーが異世界たるのは、現実と切り離された夢の世界を見てみたいという現代人の願望もあるだろうが――同じだけ、現実でやらかすと色々と問題のある派手なバトルを実現させたいからというのもあるに違いない。なんせ――自分で言っていても悲しくなるが、東京というヤツは狭いのだ。建物も人もびっしりと存在しているわけで。
「僕も物語の端くれ……一応はその力を使うことができます。今から貴女にもお見せしましょう」
駅前広場。人で溢れ、みんなが待ち合わせに使う犬の銅像の前のベンチに座って――涼貴は呟いた。
「“沈黙の鳥籠”発動……!」
刹那――周囲の景色が、反転した。
いや、正確には目の前の光景が左右逆になったとか、モノクロになったなんてわかりやすいものではないのだが。少なくとも凛音には、すべての音が裏側に“食われた”ような、まるで吸い込まれて裏返ったような――そんな感覚を覚えたのである。
空気が、どこか重たい。
何よりさっきまですぐ傍を歩いていた青年も、ビラ配りをしていた女性も、むっすりとした顔でスマホを睨んでいた少女も手を繋いだ家族連れも――みんなみんな、一瞬にして消失してしまっている。
雑踏の中にいたはずなのに、今は自分と涼貴の姿しかない。
凛音はここでやっと理解した。何故涼貴がこんな場所にわざわざ自分を連れてきたのか。――この、明らかに非現実だとわかる光景を、はっきりと自分に見せるためであったのだということが。なるほど、人気がない静かな場所でやっても、はっきりとした効果は得られなかったに違いない。それこそ自分の部屋でやっても意味がなかったことだろう。
「ほ、ほんとに、こんなのあるんだ……!?」
凛音の喉から漏れたのはそんな、とにかくありきたりで捻りもなにもない感想だけである。沈黙の、鳥籠。一部の空間だけが切り取られた状態。これでもう、半信半疑だった全てを納得せざるを得なくなった。
自分に、本当に特別な力があるかどうかなんてわからない。でも。
信じられないような現実は確かに今――目の前に、あるのだ。
「現実の世界の裏側に、よく似たもう一つの空間を形成し……そちらに、特定の人間だけを転送する。それが、この鳥籠の能力です。敵と戦闘をしていて周囲を巻き込みたくない時などに便利ですよ。同時に、相手を遠方へ逃がさない効果もあります」
「ふへえ……私も使えるようになるのか?」
「ええ、きちんとした覚醒をすれば……固有の能力と一緒に、貴女にもね」
と、ここまで説明を聞いて凛音は思った。いきなり有無を言わさず瑠衣を攫ったりとやりたい放題してくれたピーターパンだが、この能力を使ったということは他の一般人を巻き込まないようにした可能性が高い。
つまり、根は悪い奴ではないのかもしれなかった。世界が乗っ取られるのを防ぐため、“魔王”と戦おうとしているのだから、そもそも悪人ではないとも言えるが。
「この能力は便利ですが、対象に指定した人物が誰かに触れていると、その人物も一緒に反転世界に引っ張り込んでしまうことがあります。多分、ピータパンは本来加賀美さんだけ引きずりこみたかったところ、貴女と接触していたせいで貴女に目撃される羽目になってしまった可能性が高いかと。まあ、未覚醒とはいえ“物語”は引き合う傾向にありますし、それで無意識に自分から踏み込んだ可能性もありますけどね」
さて、と言いながら涼貴はそっと自分の左手を差し出し――その上に、何かを出現させてみせた。水色の光がきらきらと踊り、やがて西洋風の、馬に乗った兵隊達を形作る。
「ご紹介しましょう。僕の……“シンデレラ”の能力の一つ。“王廷騎士団”。同じ物語の転生者達を捜すために用いた僕の能力です。高い調査能力があります」
「へえ」
思わず近づいて、まじまじと見つめてしまう。デフォルメされた可愛らしい白馬に、銀色の甲冑を纏った勇ましい騎士が乗っている。ただし、その騎士もアニメのようにデフォルメされたデザインなので、かっこいいというよりは非常に可愛らしく目に映る。
何で王子の騎士、と聞いてピンと来た。物語というからには、基本的に自分達の能力は、その物語に準じたものやそこからイメージされたものになるのかもしれない。彼は自らを“シンデレラ”と言っていた。ガラスの靴を落として消えた娘を探し、王子は自らの足で兵を率いて、片っ端から同じくらいの年頃の娘でガラスの靴が合う少女を捜して回っていたはずだ。少なくとも、自分が知るシンデレラはそういうストーリーである。
なるほど、そこをモチーフにしたというのなら。シンデレラの力が“調査力”に結びつくというのも、わからない話ではなかった。
「覚醒した物語と近づけば、僕らはなんとなくその相手がわかります。ただし、未覚醒の相手ならばそうもいかないし……相手が物語だとわかっても、その詳しいパーソナルデータまで調べるのは困難です。僕の力ならば、相手の個人情報を人間の探偵と同じ程度には調べることができるんですよ」
「道理で、私の家とか名前も知ってたのか」
「そうです。正確には、加賀美瑠衣さんを調べていたら貴女が近くにいることに気づいて、一緒にデータを調べておいたというのが正しいですが。僕の力なら“調査対象”にさえすれば、相手が未覚醒の物語でも判別できるものですから」
「へえ……そりゃ便利だわ」
しかも、涼貴の今までの物言いからすると――相手が何の物語であるのかも、調査すれば分かる様子である。まさに調査力チートというやつだ。
まあ、本当に凛音が“かぐや姫”であるのかどうかは――正直なところ、凛音自身が一番半信半疑であるのだけれど。なんといっても、ここまで色々見たというのに、その前世の記憶とやらが蘇ってくる気配が微塵もないのだから。
「僕の能力は魔法や補助に偏っているので、物理アタッカー型の仲間が欲しいと思っていたのですよね。加賀美瑠衣さんはまさにその能力を持っているので、是非とも仲間にと思っていたのですが……残念ながらピーターパンに先手を打たれてしまったようで。代わりに、貴女に白羽の矢が立ったというわけです。むしろ、仲間は何人いても足らないほどなのですから」
どうにか、話は理解できた。うんうん、と頷いて凛音は返す。
「わかったけど、それで?私はその前世とか能力とか、まだ全然なーんもないし……本当にそんなものがあるのか疑問で仕方ないんだけども」
「そうでしょうね。なので強制的に覚醒していただこうかと」
「強制的に?」
「ええ、強制的に」
何だろう、この大事なことなので二回言いました、感は。
なんだか嫌な予感がしてきた。凛音はおそるおそる、具体的には?と問う。そうだ、よくよく考えれば彼が沈黙の鳥籠を発動した理由は、単に能力を見せるためだけではないとしたら。
「戦って頂きます、僕と」
そしてあっさりと、涼貴はその端正な顔でにっこり言い放って見せるのである。
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