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<第七話~宇宙人は卵焼きが好き~>
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思ったとおりと言うべきか、本当にアオの種族というのは少食なのが当たり前らしい。ラーメンを少し取り分けてやっただけなのだが、本人いわく“これだけ食べれば一日はおなかいっぱい”とのことだった。これ以上全く食べられないわけではないが、必要か不必要かと言われたら必要ないというのが実情であるようだった。――どうやら本当に、理音は食費の心配をしなくてもいいらしい。まあ、元々そこまで切迫しているわけでもないのだが。
イラストの仕事でそれなりに収入があるのと同時に、実のところ両親が遺した財産もそのままの額で残っていた。精々数百万円程度だが、殆ど切り崩さないでそのままになっている。持ち家だから家賃はいらないしローンも残っていない、少々ボロい建物であるという以外に何も問題はない。
結果、男一人で食っていくぐらいなら十二分に賄えているというのが実情だった。自分で言うのもなんだが、ギリギリ在宅で食える仕事とできる趣味があって本当に良かったと思っている。
「しかし、そんだけ飯が少ないとなると……つまらなくないか?」
思わず素直な感想を漏らしてしまうと、アオはきょとんとした顔になった。――話すと年齢が迷子になるが、目をまんまるにして固まる時の顔は、中学生どころか完全に小学生の顔である。
「つまらない、とは?」
「いや、その……地球人からするとな。美味しいものを食べるっていうのは人生の楽しみの一部として数えられるからなあ……食わなきゃ生きていけないってのもあるが」
「私達だって全く食べないわけじゃないぞ。さすがに最低でも一週間に一度は何か食べないと倒れてしまうし」
一週間に一度でも保つのかい!と理音は思わず心の中でツッコミを入れてしまう。こうして話していると、ちょっとしたこと一つ一つに大きな種族間ギャップがあるようだ。面白いといえば面白いが。
「まあ、全く食べなくてもやり抜ける方法はある。私達の星は、魔法文明が発展した星だった。私も含め、全員が魔法使いだと思って貰って構わない。私達にも血は流れているが、血は魔力を全身に巡らせるための手段のようなもの。魔力が漲っていれば生き延びることができるのが私達だ。つまり、魔力を供給されていれば何も食べなくても活動できるし腹もすかなくなる。安静にするため、子供を産む直前の母親などはよく食事を絶って魔力の供給だけで数日生活したりもするな」
ただし、と彼は少し苦い顔になる。
「それは、地球人でいうところの、点滴だけで生き延びるようなものに近い。……点滴さえしていれば食べ物を食べなくても問題ないとして。貴方達はそれで満足して生活することができるか?」
「あー……確かにそれはない、な」
「だろう?私達も同じだ。食べる量は少ないが、それでも結構味には拘る。その点、このカップラーメンはなかなかのものだったと思う。地球には美味しいものが多いと聞いた覚えあがるが本当だったのだな。素晴らしい」
そう言いつつ、アオは空っぽになったカップラーメンのカップをくるくるとまわして熱心に文字を読んでいる。翻訳デバイスをつけているというが、それがあると会話のみならず文字の方もしっかり訳して貰えるということなのだろうか。だとしたら非常に便利だ。
今の地球にも、翻訳機能のついた機械やアプリなどは存在している。ただし、正常に違和感なく会話ができるレベルとは程遠いのが実情だ。英語一つとっても、日本語に変換した途端文節がしっちゃかめっちゃかの文章ができあがるのは珍しくもなんともない話である。
――科学技術の方も今の日本……つーか地球より大幅に発展してるっていうのは、間違いない話なんだろうなあ。
それがあったら外国語の勉強をする必要もなくなる。そして外国人とのメールのやり取りも恐ろしく簡単になるのになあ、と理音は少々遠い目になる。
残念ながらというべきか今の仕事では、外国からの依頼を受けるということもゼロではないのだ。いや、仕事を選り好みできるような状況にないのはわかっているけども。今のところ英語だけなので、辞書片手に悪戦苦闘すればギリギリ返信できなくもないが――今後それ以外の言語で対応を要求されたらどうしてくれよう、と思っているのが本心なのである。
北京語とかならまだいい。韓国語やアラビア語なんてものが来てしまったら、自分には完全に模様にしか見えないのである。万が一そんなものが来てしまったら、ごーぐる先生のはちゃめちゃな翻訳を見て、英語で返信するしかないというのが現実だった。
「……ただ、一番美味しかったのは、これではないな」
一通り眺めて満足したのか、アオはコトリとカップをテーブルに戻した。
「貴方が昨日作ってくれた卵焼き。あれは絶品だった。あんなに美味しいものは今まで食べたことがない」
「ま、マジで?いや普通の卵焼きだけど……その、しかも俺の卵焼きは結構しょっぱいし、美味しくないって言われたし……」
「誰にそんなことを?もしそんな人間がいるのなら、その人物の味覚が狂っているとしか思えんな」
「……お前実は結構モノをはっきり言うタイプか?」
思わずツッコミを入れてしまったが――理音としては、正直嬉しくて顔がにやけそうになるのを堪えるので必死であったりする。
美味しくない、と言ったのは母親だった。多分あれは卵焼きどうのというより、息子の問題に頭を抱えてノイローゼ気味になっていたせいでもあるのだろうけども。
母を喜ばせたくて作った卵焼きは、捨てられさえしなかったものの少ししか食べて貰えなかったのだ。彼女ははっきりと美味しくない、と無表情に言い放った。塩気がおおすぎてしょっぱいと。もっと甘くなければいけないと。
いや、それだけなら普通の意見であったのかもしれないが、一番ショックであったのは。
『やっぱり、心が綺麗でまともじゃない人間の料理は美味しくないのよね』
それ以来、誰かに自分の料理を食べて貰うということはしてこなかったのだ。むしろ、食べさせてはいけないとばかり思っていた。自炊している以上ある程度は料理を勉強する必要があったものの、そもそも家に人を呼ぶような機会があったわけでもない。今回は慌てていたせいで全部そういうものがすっぽぬけてしまい、うっかりアオに“まずいであろう”卵焼きをご馳走してしまったわけなのだが。
「……本当に、美味しかった?」
どうしてだろう。アオが来てから慌ただしいのに、なんだか幸せな気持ちばかりを知っているような気がしている。
「嘘をつく必要があるんだろうか?」
アオは真ん丸な目で、不思議そうに首を傾げた。こういう時――こういう時だけは、己の能力が有難いと思ってしまうのである。
彼が本当に“何で疑うんだろう?”と疑問に思っていることも。本気で美味しいと思っていることも、全部肌で伝わってくるものだから。
「私達の星にもニワトリ……に近い生き物はいたが、卵はとてもじゃないが食べられるような味じゃなくてな。地球に来てから驚いたんだ、卵を焼いて食べる習慣があるなどと、と。しかし……以前訪れた時に食べたものより、貴方に作って貰ったものの方が千倍美味しかった。甘くないのがいいし、味がまろやかなお粥のおかずとしても丁度良かった。私がもう少し大食漢なら全部食べられたのに、それだけが本当に残念で」
「そんなに気に入ったなら、今度作り方教えようか?簡単だし」
「本当か!?」
「お、おう」
凄い食付きぶりである。彼は前のめりになり――ここで初めて熱が下がっていないことを思い出したのか、ふらりとふらついてソファーに崩れ落ちた。
「おいおい、無理するなよ。まだ調子悪いんだろ。エアコンもう少し下げた方がいいか?」
正直冷房二十度というのは滅茶苦茶寒かったが、それでもまだ耐えられないほどではない。どちらかというと理音も、寒いより暑い方が苦手なタイプであったからだ。
「い、いやいい。貴方が寒いだろうし……これくらいの気温なら問題ない。魔力もだいぶ回復してきたから、この調子なら数日で全快できるだろう」
「そうか……」
全快。わかっていたことだが、ちくりと胸が痛くなる。理音だって仕事がある。在宅でフリーとはいえ、その分シビアに自分でスケジュール管理していかなければならない立場だ。先日ポシャった機構戦士の仕事以外にもいくつも案件は抱えている。アオにだけ構っていられない、というのは重々承知しているのである。
そしてアオも、明らかになんらかの事情を抱えて此処にいるのは明白だ。記憶を一部失っているというのは本当のようだが、何かまだ隠し事があるのも間違いなさそうである。話したくない、と思っていることまで無理に探ろうとは思わないし、彼の事情も顧みず此処にいろだなんて言える立場でないことはちゃんとわかっているのである。
それでもだ。
初めて出会えたかもしれない――心の声が聞こえない、されど純粋無垢な感情だけが伝わってくる相手に。大きな安心感と居心地の良さを感じているのは事実で。
出来るだけ長く滞在していて欲しい、なんてことを思ってしまうのは――仕方のないことではなかろうか。
「その、な。アオ」
やはり、聞かなければならないだろう。何の前触れもなく去られたら、その方が間違いなくダメージが大きいのもわかっているのだから。
「お前さ、どうしてこの地球に来たのかとか、もうちょっと詳しく思い出せることはないか?夏の日本に来るって時点でだいぶ選択ミスってることはお前もわかってるんだろうしさ。あと、これからどうするのかとか、そういうことは考えてるのか?俺はその……」
お前がいたいなら、ずっと此処に居てくれてもいいけど。
そんな言葉を、どうにか飲み込んだ。それを言ってしまったら、目の前の異星人は間違いなく困ってしまうだろうと感じたからだ。――こんな風に、自分のためではなく誰かに本気で配慮したいと思ったことが、今までにあっただろうか。
「そうだな。……考えてみれば、世話になっているのに貴方にはざっくりとした話しかできていなかったような気がする。よくよく考えてみればそれも失礼だった。申し訳ない」
相変わらず礼儀正しい彼は、ちょこんとソファーに座りなおすと、落ち着いた口調で語り始めたのである。
「まず大前提として話すべきことは一つだ。……私には、故郷がない。私の産まれた故郷の星は、既に消滅している。私の家族も、友人も、全てが」
イラストの仕事でそれなりに収入があるのと同時に、実のところ両親が遺した財産もそのままの額で残っていた。精々数百万円程度だが、殆ど切り崩さないでそのままになっている。持ち家だから家賃はいらないしローンも残っていない、少々ボロい建物であるという以外に何も問題はない。
結果、男一人で食っていくぐらいなら十二分に賄えているというのが実情だった。自分で言うのもなんだが、ギリギリ在宅で食える仕事とできる趣味があって本当に良かったと思っている。
「しかし、そんだけ飯が少ないとなると……つまらなくないか?」
思わず素直な感想を漏らしてしまうと、アオはきょとんとした顔になった。――話すと年齢が迷子になるが、目をまんまるにして固まる時の顔は、中学生どころか完全に小学生の顔である。
「つまらない、とは?」
「いや、その……地球人からするとな。美味しいものを食べるっていうのは人生の楽しみの一部として数えられるからなあ……食わなきゃ生きていけないってのもあるが」
「私達だって全く食べないわけじゃないぞ。さすがに最低でも一週間に一度は何か食べないと倒れてしまうし」
一週間に一度でも保つのかい!と理音は思わず心の中でツッコミを入れてしまう。こうして話していると、ちょっとしたこと一つ一つに大きな種族間ギャップがあるようだ。面白いといえば面白いが。
「まあ、全く食べなくてもやり抜ける方法はある。私達の星は、魔法文明が発展した星だった。私も含め、全員が魔法使いだと思って貰って構わない。私達にも血は流れているが、血は魔力を全身に巡らせるための手段のようなもの。魔力が漲っていれば生き延びることができるのが私達だ。つまり、魔力を供給されていれば何も食べなくても活動できるし腹もすかなくなる。安静にするため、子供を産む直前の母親などはよく食事を絶って魔力の供給だけで数日生活したりもするな」
ただし、と彼は少し苦い顔になる。
「それは、地球人でいうところの、点滴だけで生き延びるようなものに近い。……点滴さえしていれば食べ物を食べなくても問題ないとして。貴方達はそれで満足して生活することができるか?」
「あー……確かにそれはない、な」
「だろう?私達も同じだ。食べる量は少ないが、それでも結構味には拘る。その点、このカップラーメンはなかなかのものだったと思う。地球には美味しいものが多いと聞いた覚えあがるが本当だったのだな。素晴らしい」
そう言いつつ、アオは空っぽになったカップラーメンのカップをくるくるとまわして熱心に文字を読んでいる。翻訳デバイスをつけているというが、それがあると会話のみならず文字の方もしっかり訳して貰えるということなのだろうか。だとしたら非常に便利だ。
今の地球にも、翻訳機能のついた機械やアプリなどは存在している。ただし、正常に違和感なく会話ができるレベルとは程遠いのが実情だ。英語一つとっても、日本語に変換した途端文節がしっちゃかめっちゃかの文章ができあがるのは珍しくもなんともない話である。
――科学技術の方も今の日本……つーか地球より大幅に発展してるっていうのは、間違いない話なんだろうなあ。
それがあったら外国語の勉強をする必要もなくなる。そして外国人とのメールのやり取りも恐ろしく簡単になるのになあ、と理音は少々遠い目になる。
残念ながらというべきか今の仕事では、外国からの依頼を受けるということもゼロではないのだ。いや、仕事を選り好みできるような状況にないのはわかっているけども。今のところ英語だけなので、辞書片手に悪戦苦闘すればギリギリ返信できなくもないが――今後それ以外の言語で対応を要求されたらどうしてくれよう、と思っているのが本心なのである。
北京語とかならまだいい。韓国語やアラビア語なんてものが来てしまったら、自分には完全に模様にしか見えないのである。万が一そんなものが来てしまったら、ごーぐる先生のはちゃめちゃな翻訳を見て、英語で返信するしかないというのが現実だった。
「……ただ、一番美味しかったのは、これではないな」
一通り眺めて満足したのか、アオはコトリとカップをテーブルに戻した。
「貴方が昨日作ってくれた卵焼き。あれは絶品だった。あんなに美味しいものは今まで食べたことがない」
「ま、マジで?いや普通の卵焼きだけど……その、しかも俺の卵焼きは結構しょっぱいし、美味しくないって言われたし……」
「誰にそんなことを?もしそんな人間がいるのなら、その人物の味覚が狂っているとしか思えんな」
「……お前実は結構モノをはっきり言うタイプか?」
思わずツッコミを入れてしまったが――理音としては、正直嬉しくて顔がにやけそうになるのを堪えるので必死であったりする。
美味しくない、と言ったのは母親だった。多分あれは卵焼きどうのというより、息子の問題に頭を抱えてノイローゼ気味になっていたせいでもあるのだろうけども。
母を喜ばせたくて作った卵焼きは、捨てられさえしなかったものの少ししか食べて貰えなかったのだ。彼女ははっきりと美味しくない、と無表情に言い放った。塩気がおおすぎてしょっぱいと。もっと甘くなければいけないと。
いや、それだけなら普通の意見であったのかもしれないが、一番ショックであったのは。
『やっぱり、心が綺麗でまともじゃない人間の料理は美味しくないのよね』
それ以来、誰かに自分の料理を食べて貰うということはしてこなかったのだ。むしろ、食べさせてはいけないとばかり思っていた。自炊している以上ある程度は料理を勉強する必要があったものの、そもそも家に人を呼ぶような機会があったわけでもない。今回は慌てていたせいで全部そういうものがすっぽぬけてしまい、うっかりアオに“まずいであろう”卵焼きをご馳走してしまったわけなのだが。
「……本当に、美味しかった?」
どうしてだろう。アオが来てから慌ただしいのに、なんだか幸せな気持ちばかりを知っているような気がしている。
「嘘をつく必要があるんだろうか?」
アオは真ん丸な目で、不思議そうに首を傾げた。こういう時――こういう時だけは、己の能力が有難いと思ってしまうのである。
彼が本当に“何で疑うんだろう?”と疑問に思っていることも。本気で美味しいと思っていることも、全部肌で伝わってくるものだから。
「私達の星にもニワトリ……に近い生き物はいたが、卵はとてもじゃないが食べられるような味じゃなくてな。地球に来てから驚いたんだ、卵を焼いて食べる習慣があるなどと、と。しかし……以前訪れた時に食べたものより、貴方に作って貰ったものの方が千倍美味しかった。甘くないのがいいし、味がまろやかなお粥のおかずとしても丁度良かった。私がもう少し大食漢なら全部食べられたのに、それだけが本当に残念で」
「そんなに気に入ったなら、今度作り方教えようか?簡単だし」
「本当か!?」
「お、おう」
凄い食付きぶりである。彼は前のめりになり――ここで初めて熱が下がっていないことを思い出したのか、ふらりとふらついてソファーに崩れ落ちた。
「おいおい、無理するなよ。まだ調子悪いんだろ。エアコンもう少し下げた方がいいか?」
正直冷房二十度というのは滅茶苦茶寒かったが、それでもまだ耐えられないほどではない。どちらかというと理音も、寒いより暑い方が苦手なタイプであったからだ。
「い、いやいい。貴方が寒いだろうし……これくらいの気温なら問題ない。魔力もだいぶ回復してきたから、この調子なら数日で全快できるだろう」
「そうか……」
全快。わかっていたことだが、ちくりと胸が痛くなる。理音だって仕事がある。在宅でフリーとはいえ、その分シビアに自分でスケジュール管理していかなければならない立場だ。先日ポシャった機構戦士の仕事以外にもいくつも案件は抱えている。アオにだけ構っていられない、というのは重々承知しているのである。
そしてアオも、明らかになんらかの事情を抱えて此処にいるのは明白だ。記憶を一部失っているというのは本当のようだが、何かまだ隠し事があるのも間違いなさそうである。話したくない、と思っていることまで無理に探ろうとは思わないし、彼の事情も顧みず此処にいろだなんて言える立場でないことはちゃんとわかっているのである。
それでもだ。
初めて出会えたかもしれない――心の声が聞こえない、されど純粋無垢な感情だけが伝わってくる相手に。大きな安心感と居心地の良さを感じているのは事実で。
出来るだけ長く滞在していて欲しい、なんてことを思ってしまうのは――仕方のないことではなかろうか。
「その、な。アオ」
やはり、聞かなければならないだろう。何の前触れもなく去られたら、その方が間違いなくダメージが大きいのもわかっているのだから。
「お前さ、どうしてこの地球に来たのかとか、もうちょっと詳しく思い出せることはないか?夏の日本に来るって時点でだいぶ選択ミスってることはお前もわかってるんだろうしさ。あと、これからどうするのかとか、そういうことは考えてるのか?俺はその……」
お前がいたいなら、ずっと此処に居てくれてもいいけど。
そんな言葉を、どうにか飲み込んだ。それを言ってしまったら、目の前の異星人は間違いなく困ってしまうだろうと感じたからだ。――こんな風に、自分のためではなく誰かに本気で配慮したいと思ったことが、今までにあっただろうか。
「そうだな。……考えてみれば、世話になっているのに貴方にはざっくりとした話しかできていなかったような気がする。よくよく考えてみればそれも失礼だった。申し訳ない」
相変わらず礼儀正しい彼は、ちょこんとソファーに座りなおすと、落ち着いた口調で語り始めたのである。
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