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<第三話~非日常の幕開け~>
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これは一体、何がどうなっているのか。自分はついにイライラしすぎて頭のネジでも外れてしまったのだろうか。
理音はびくびくしながらも子供に近づいていく。ゆったりとした服のせいでその体格ははっきりとわからなかったが、多分小学生か中学生か、それくらいの年齢の子供であるのは間違いないだろう。親方、空から女の子が!なんてどこかのアニメの台詞が頭を過ぎって消えていく。――そもそもこの子は、本当に“空から”降ってきたのかも怪しい。だって見上げてみても、そもそも上に飛行物体らしきものも飛んでいない。
「う……」
「!」
小さく呻き声がして、もぞりと子供が身動きする。どうやら死体である、という最悪の結果ではないらしい。
「お、おい?」
とにかく、その――どういう状況で庭に出現したのかわからないが、このままにしておいていいとは思えない。いくら理音が“特殊な事情あり”の大人であるといっても、ぐったりした様子の子供をこのままほったらかしにしてしまうほど人間やめたつもりはないのだ。
もぞ、と動く子供。だが様子がおかしい。呼吸の音は聞こえるが、明らかに息が荒い。もしかして、どこか病気か怪我でもしているのではないだろうか。だとしたら病院に連れて行かなければいけないが――。
いや、そもそもこの場合、まず呼ぶべきは警察の方なのだろうか。ごちゃごちゃと考えながらもしゃがみこみ、子供の顔を覗きこもうとした、その時だった。
「ひっ!」
突然だった。ほっそりとした手が、見かけによらず強い力で――理音の腕を掴んで来たのである。
やってしまった、と思ったのは。その子供の金色の眼と眼が合ってしまった後だった。だが。
――あ、れ?
いつもなら、眼があった直後に流れ込んでくるはずの――他人の感情が。今は一切、聞こえてこない。肌で感じる、断片的な思いだけはいつも通りうっすら見えるがそれだけだ。
そう、伝わってくるのはただ。――目の前の子供が“助けて欲しい”と、そう願っているということだけだった。
「……た、のむ……。警察や、病院に、連絡は……しないで、くれ」
「え!?」
「大変なことに、なる……頼む……」
思ったよりも低い声だった。少年というより、成人男性と言っても差し支えないくらいの。とすると、目の前のこの子供は“少年”なのだろうか。
ずるり、と力が抜けた手が離れていった。掴まれた手は熱かった。どうやら熱があるらしい。このままでは死んでしまうかもしれない。ただ、警察にも病院にも連絡するなとは一体どういうことなのか?それで大変なことになる、とは――?
――ああもう!どうしろっていうんだよ、わけがわかんえーよ!!
自分はお人好しなのだろうか。いやそれとも、深く考えることを放棄しているだけなのだろうか。
とりあえず少年――とりあえず少年ということにしておこう――の身体を抱え上げると、自宅に運び込むことに決めた。周囲に目撃者がいなくて本当に良かったと思う。下手をすれば自分は不審者扱いされているところだ。
男性としてかなり長身とはいえ、痩せている上ここ何年もまともな運動なんてものはしたことのない理音である。幸いだったのはその理音より彼の身体がずっと小さく、非常に軽かったということだろうか。
――と、とりあえず、服は着替えさせた方がいいのか?ちょっと砂まみれになっちゃってるし。俺の子供の頃の服とか残ったまんまになってかなあ……。そもそも着替えさせていいものか?裸見ていいもんか?いやていうかその前にするべきことがあるような気もするしあああどうすればいいんだこれ!?
混乱しつつ、悩んだ末理音が考えたことは、少年をソファーに寝かせて介抱するということだった。幸い、おかゆを作るくらいのスキルはある。最低限だが、冷えピタなど治療に仕えるセットがないわけでもない。
わたわたと準備をしながら、理音は不思議な感覚を抱いていた。――そういえば、こんなに近い距離で他人に触れたり接したことなど、一体何年ぶりであるだろうか、と。
***
『何故なのですか、×××!』
覚えているのは、少女の泣き出しそうな顔。幼い見目ながら、しかし自分よりも遥かに長く生きている彼女は――しかし精神年齢の方はといえば、見た目相当でしかない。なんといっても、長年お飾りの女王様だったのだ。政治のことなど何も知らず、自らの国がどれほど危機的な状況であったのかも理解していなかった。純粋無垢で、それゆえに非常識で残酷だった彼女。
その彼女のために必要な人材としてあてがわれたのが少年だった。――理由などとうに分かっている。寒気がするほど酷い話だ。いくら自分自身、彼女に対して情が湧きつつあったとしてもだ。彼女の国まで、許した覚えなどないのである。そう、忘れるはずなどない。彼らは己の故郷を滅ぼし、大切な仲間を目の前で惨殺した者達の末裔であるのだから。
『何故私の傍にいてくれないのです!確かにおぬしの境遇に関しては同情する、思うこともあります。しかし……いつまでも憎しみに囚われていては何も救うことはできないではないですか、貴方自身も!』
『では、忘れろというのですか』
『そういうわけでは……!』
『貴女の傍にいて役目を全うしろというのは、忘れろと言われることと一体何が違うというのでしょう?』
罪は洗い流せる。復讐は何も生み出さない。憎悪は人を、不幸にするだけ。――優しい幻想ばかりを教え込まれて育った少女は、そんな綺麗事ばかりを当然のように少年に囁いた。
そんなもので本当に救われることなど何もありはしないのに。――むしろ、憎悪さえなかったとしたら自分は、今こうして息をすることさえも叶わなかったのは間違いないことであるというのに。
『貴女の傍にいれば、この国はきっと繰り返す。何故なら貴女は幻想ばかり、理想ばかり。具体的なこの星の未来への政策も、貧困する民の救済策も、人々の不満への対応も何も思いついてはいない。仕事はみんな人任せにして、ただただ綺麗な理想ばかりを叫ぶ。そんなことだから、執政官に牛耳られて、何十年もお飾りの女王様でいるしかなかったのだと何故わからないのですか』
少年の言葉に、不敬であるぞ!と周辺の兵士や側近達が叫ぶ。不敬か、と苦笑いするしかない。
立場上――自分は、彼女の夫であるはずなのに。そのような言葉が出る時点で、認められていないのも当然なのだ。自分は彼女の血をつなぐためだけにあてがわれた生贄にすぎない。自分の意思など、痛みなど、最初からまったく考慮されていないのである。
そう、彼女の夫は自分でなければならない理由があったのだ。何故なら、彼女は。
『リアナ・ファラビア。……私は貴女を許さない。そして、貴女が望むものは何一つ渡さない』
希望など、何処にもありはしなかった。
それでも少年は、逃げなければならないと知っていた。
もはや守りたいものなど、たった一つしか存在していないのだから。
『さようなら』
城から強引に逃げ出し、宇宙船に飛び乗った。――そこから先をどうしたかは、よく覚えていないのだけども。
***
歌が聞こえる。
誰かが、歌っている。――低い声だ。大人の男性の声。大きくはないが穏やかで、それでいて落ち着いた歌がゆるゆると心地よく聴覚を揺さぶっている。
鼻腔をくすぐるのは、どこか美味しそうな匂いだ。何かが焼けるような音がする。これは料理をしているのだろうか。そして自分は、どうやらどこかの場所で横になって眠っているらしい。どこかの場所――一体何処なのだろう、此処は。
――頭が、痛い。
意識が朦朧とする中、少年はゆっくりと目蓋を持ち上げた。途端目に入るのは、照明の眩しい光だ。どこか古風な形の――そう、逆さにしたボウルのような形の照明が天井から吊り下がり、窓から入ってくる風に混じってゆらゆらと揺れている。風はあるが、少し暑い。それはこの場所の気温が実際に高いせいなのか、それとも自分に熱があるせいなのかどちらなのだろう。
――どうして、此処にいるのだったか。ダメだ……思い、出せない……。
思考を回すのも酷く億劫だ。このまま寝ていてもいいものかどうか。そもそも、此処は一体何処の惑星だろう。どうにも、見慣れた星ではないような気がするのだけれど――。
「!お、起きた!?」
「!!」
いつの間に近づいて来ていたのか。すぐ近くから声がした。若い男の声だ。その人物は――お盆のようなものを近くに置くと、慌てたようにこちらに駆け寄ってくる。
黒い髪、黄色い肌、ひょろりと高い背。――その外見は、見覚えがある。確か、そう。
「地球の……日本人?」
思わず声に出して呟いた声に。目の前の男は“は!?”と口を“O”の形にぽっかりと開けてみせたのだった。
理音はびくびくしながらも子供に近づいていく。ゆったりとした服のせいでその体格ははっきりとわからなかったが、多分小学生か中学生か、それくらいの年齢の子供であるのは間違いないだろう。親方、空から女の子が!なんてどこかのアニメの台詞が頭を過ぎって消えていく。――そもそもこの子は、本当に“空から”降ってきたのかも怪しい。だって見上げてみても、そもそも上に飛行物体らしきものも飛んでいない。
「う……」
「!」
小さく呻き声がして、もぞりと子供が身動きする。どうやら死体である、という最悪の結果ではないらしい。
「お、おい?」
とにかく、その――どういう状況で庭に出現したのかわからないが、このままにしておいていいとは思えない。いくら理音が“特殊な事情あり”の大人であるといっても、ぐったりした様子の子供をこのままほったらかしにしてしまうほど人間やめたつもりはないのだ。
もぞ、と動く子供。だが様子がおかしい。呼吸の音は聞こえるが、明らかに息が荒い。もしかして、どこか病気か怪我でもしているのではないだろうか。だとしたら病院に連れて行かなければいけないが――。
いや、そもそもこの場合、まず呼ぶべきは警察の方なのだろうか。ごちゃごちゃと考えながらもしゃがみこみ、子供の顔を覗きこもうとした、その時だった。
「ひっ!」
突然だった。ほっそりとした手が、見かけによらず強い力で――理音の腕を掴んで来たのである。
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――あ、れ?
いつもなら、眼があった直後に流れ込んでくるはずの――他人の感情が。今は一切、聞こえてこない。肌で感じる、断片的な思いだけはいつも通りうっすら見えるがそれだけだ。
そう、伝わってくるのはただ。――目の前の子供が“助けて欲しい”と、そう願っているということだけだった。
「……た、のむ……。警察や、病院に、連絡は……しないで、くれ」
「え!?」
「大変なことに、なる……頼む……」
思ったよりも低い声だった。少年というより、成人男性と言っても差し支えないくらいの。とすると、目の前のこの子供は“少年”なのだろうか。
ずるり、と力が抜けた手が離れていった。掴まれた手は熱かった。どうやら熱があるらしい。このままでは死んでしまうかもしれない。ただ、警察にも病院にも連絡するなとは一体どういうことなのか?それで大変なことになる、とは――?
――ああもう!どうしろっていうんだよ、わけがわかんえーよ!!
自分はお人好しなのだろうか。いやそれとも、深く考えることを放棄しているだけなのだろうか。
とりあえず少年――とりあえず少年ということにしておこう――の身体を抱え上げると、自宅に運び込むことに決めた。周囲に目撃者がいなくて本当に良かったと思う。下手をすれば自分は不審者扱いされているところだ。
男性としてかなり長身とはいえ、痩せている上ここ何年もまともな運動なんてものはしたことのない理音である。幸いだったのはその理音より彼の身体がずっと小さく、非常に軽かったということだろうか。
――と、とりあえず、服は着替えさせた方がいいのか?ちょっと砂まみれになっちゃってるし。俺の子供の頃の服とか残ったまんまになってかなあ……。そもそも着替えさせていいものか?裸見ていいもんか?いやていうかその前にするべきことがあるような気もするしあああどうすればいいんだこれ!?
混乱しつつ、悩んだ末理音が考えたことは、少年をソファーに寝かせて介抱するということだった。幸い、おかゆを作るくらいのスキルはある。最低限だが、冷えピタなど治療に仕えるセットがないわけでもない。
わたわたと準備をしながら、理音は不思議な感覚を抱いていた。――そういえば、こんなに近い距離で他人に触れたり接したことなど、一体何年ぶりであるだろうか、と。
***
『何故なのですか、×××!』
覚えているのは、少女の泣き出しそうな顔。幼い見目ながら、しかし自分よりも遥かに長く生きている彼女は――しかし精神年齢の方はといえば、見た目相当でしかない。なんといっても、長年お飾りの女王様だったのだ。政治のことなど何も知らず、自らの国がどれほど危機的な状況であったのかも理解していなかった。純粋無垢で、それゆえに非常識で残酷だった彼女。
その彼女のために必要な人材としてあてがわれたのが少年だった。――理由などとうに分かっている。寒気がするほど酷い話だ。いくら自分自身、彼女に対して情が湧きつつあったとしてもだ。彼女の国まで、許した覚えなどないのである。そう、忘れるはずなどない。彼らは己の故郷を滅ぼし、大切な仲間を目の前で惨殺した者達の末裔であるのだから。
『何故私の傍にいてくれないのです!確かにおぬしの境遇に関しては同情する、思うこともあります。しかし……いつまでも憎しみに囚われていては何も救うことはできないではないですか、貴方自身も!』
『では、忘れろというのですか』
『そういうわけでは……!』
『貴女の傍にいて役目を全うしろというのは、忘れろと言われることと一体何が違うというのでしょう?』
罪は洗い流せる。復讐は何も生み出さない。憎悪は人を、不幸にするだけ。――優しい幻想ばかりを教え込まれて育った少女は、そんな綺麗事ばかりを当然のように少年に囁いた。
そんなもので本当に救われることなど何もありはしないのに。――むしろ、憎悪さえなかったとしたら自分は、今こうして息をすることさえも叶わなかったのは間違いないことであるというのに。
『貴女の傍にいれば、この国はきっと繰り返す。何故なら貴女は幻想ばかり、理想ばかり。具体的なこの星の未来への政策も、貧困する民の救済策も、人々の不満への対応も何も思いついてはいない。仕事はみんな人任せにして、ただただ綺麗な理想ばかりを叫ぶ。そんなことだから、執政官に牛耳られて、何十年もお飾りの女王様でいるしかなかったのだと何故わからないのですか』
少年の言葉に、不敬であるぞ!と周辺の兵士や側近達が叫ぶ。不敬か、と苦笑いするしかない。
立場上――自分は、彼女の夫であるはずなのに。そのような言葉が出る時点で、認められていないのも当然なのだ。自分は彼女の血をつなぐためだけにあてがわれた生贄にすぎない。自分の意思など、痛みなど、最初からまったく考慮されていないのである。
そう、彼女の夫は自分でなければならない理由があったのだ。何故なら、彼女は。
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それでも少年は、逃げなければならないと知っていた。
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歌が聞こえる。
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鼻腔をくすぐるのは、どこか美味しそうな匂いだ。何かが焼けるような音がする。これは料理をしているのだろうか。そして自分は、どうやらどこかの場所で横になって眠っているらしい。どこかの場所――一体何処なのだろう、此処は。
――頭が、痛い。
意識が朦朧とする中、少年はゆっくりと目蓋を持ち上げた。途端目に入るのは、照明の眩しい光だ。どこか古風な形の――そう、逆さにしたボウルのような形の照明が天井から吊り下がり、窓から入ってくる風に混じってゆらゆらと揺れている。風はあるが、少し暑い。それはこの場所の気温が実際に高いせいなのか、それとも自分に熱があるせいなのかどちらなのだろう。
――どうして、此処にいるのだったか。ダメだ……思い、出せない……。
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「!お、起きた!?」
「!!」
いつの間に近づいて来ていたのか。すぐ近くから声がした。若い男の声だ。その人物は――お盆のようなものを近くに置くと、慌てたようにこちらに駆け寄ってくる。
黒い髪、黄色い肌、ひょろりと高い背。――その外見は、見覚えがある。確か、そう。
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