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<29・カロリーヌの反撃>
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絆=キャサリンは言った。
どんな人間でも、完全に嘘をつくことはできないと。
カンナも同じことを思う。人は己の本質を、完全に偽りで塗り固めて誤魔化すことなどできないのだ。無理をすれば、必ずどこかにボロが出るものである。――3-1で真占い師のダリルに騙り占い師の狼だったエイダが補足され、結果狼の計画が大きく狂った時。いくらザカライアが冷静な性格であったとしても、相当焦りがあったのは間違いないのだ。自分を切らせることで、エイダの信用を上げるという作戦が使えなくなってしまったのだから。
一見冷静に見える行動をしていたザカライアだが、こうしてログを見直してみれば確かにボロが出ている。そのうちの一つがまず、これだ。
「ザカライア。二日目朝のことを思い出してもらおうか。私はミラに随分突っかかられていたけど、実際エイダ吊りに賛同した者が大半だった。ザカライア、君も積極的にエイダを吊りたいと言っていた一人だった。そうだね?」
「それが何か問題でも?村の総意に従っていますし、実際エイダさん吊りが安定進行であることをは貴女も言っていたでしょう」
「そうだ。エイダ吊りそのものはなんの問題もなかった。問題は、君のこの台詞だ」
『私目線でも、人外濃厚なエイダさんを吊ってもらいたいですね』
これは、ザカライアを吊りたい、占いは吊らない方がいいとテレンスがごねた後の発言である。まるで、テレンスを説得するように彼はこの言葉を被せてきたわけだが。
「……あの時は気づけなかったよ、テレンス。この台詞はどう考えてもおかしい。君は、村人なんだろう?ならばそこに“黒を出しているエイダが人外でないはずがない”。それなのに何故君は“人外確定”ではなく“人外濃厚”と言った?人外以外の可能性なんかないはずなのに」
「!」
流石にこれは、本人も気づいていなかった失言であったのだろう。彼のプレイングからして、人狼に慣れていない人間とは思えない。こんな瑣末な、誤解されかねない言葉を選ぶほど頭が悪いとは思わなかった。
つまりこれは。作戦失敗と路線変更を与儀なくされ、あまつさえ仲間狼であるテレンスがついてこれていないことに焦りを感じたゆえの、動揺の現れではないか。
「霊能結果を見るまでもなく、君の視点ではエイダが人外だと言い切れないとおかしいんだよ。他の参加者より、この時だけは君が一番“村として”内訳が見える状況であったのに……この言葉は違和感しかない。さらに、加えてもう一つ。君はこの台詞のあと、こう続けているんだ」
『そして、把握漏れしているのかわざとなのか、どうにも発言が怪しいテレンスさんもぜひ吊っていただきたい位置です。まあ、占いローラーした後で、ということにはなりますけれど』
ザカライアは、困惑したように首を傾げた。どうやらこっちの意図はまだ気づいていないらしい。
「……この台詞は、何がおかしいのかわかりませんね。テレンスさんは他の方からも怪しまれていたでしょう?そこを、私が吊りたいと言い出すことの何かおかしなことがあるでしょうか。実際彼は狼で、あの状況で私吊りを言い出すというおかしなことをしていました。怪しまれても仕方ないことをしていたと思いますけれど」
人の意見に便乗していたのが怪しいというのなら、それは仕方ないですけどね、と彼は肩をすくめる。
やはり、まだわかっていないようだ。自分が何に失敗したのか、ということに。
「……そう。テレンスは狼だった。しかも、こう言ってはなんだけど、狼陣営の足を引っ張っていたと思うんだ。状況が変わったのに、既定路線通りザカライアを吊ろうと固執して悪目立ちした。……狼が、いくら仲間でもこの人物をいつまでも身内に残しておくのは危険だと、そう判断してもおかしくないくらいにはね」
自分でも、テレンスは早々に切るだろうな、と思うのである。ザカライアも同じであったはずだ。彼はさっさと見捨てた方がいい。むしろ、ラインが繋がっているともなれば、彼が霊能結果で狼と判明した後で自分が怪しまれるのは目に見えている、と。
ゆえに、墓穴を掘った。
「二日目、吊り先はエイダで確定していた。その状況で確かにテレンスは失言したけど、彼は即座に吊れる位置になかった。他のみんなもそれはわかっていたのだろうさ。……テレンスが他の人達にも怪しまれていたって?じゃあ、もう一度みんなの二日目の発言を見直してみなよ。テレンスがザカライアを吊りたいと言い出した時の、みんなの反応だ」
『おいおい、君は何を言っているんだ。何故黒は黒でもザカライアの方を吊る?ザカライアに黒を出したエイダが真占い師と決まったわけでもないだろうに。エイダが偽占い師だったら、ここで貴重な吊り余裕を浪費することになりかねんぞ。勿論、エイダが偽占いであったとしても、ザカライアが村人という保証はどこにもないわけだがね。狂人の誤爆も狼の特攻もあるわけだから』
「これが、ウォーレン」
『ウォーレンの言う通りだ。占い師二人ならその選択もあっただろうが、ここはもっと他に吊るべき位置がある。ここはエイダを吊るのが最も情報が落ちる吊りだ、わからないか?エイダはグレーのザカライアに黒を出している。ダリルは対抗占い師のエイダに黒を出している。この差は非常に大きいよ。明らかにダリルの方がグレーが狭い。対して、エイダ視点では人外四人中三人が露出していることになる。彼女が真占い師なら、殆ど仕事は終わってるんだよ。真であったとしても、充分立て直しができると思わない?』
「これが、私」
『しかも、エイダはダリルに黒を出されている占い師よ?彼女を吊って霊能結果を見て、もし黒が出なかったら?ダリルも破綻することになる。翌日の吊り先もそれで確保できるのよ。非常に安定した進行だと思うけど』
「これが、ミラ。ちなみに、これはテレンスが、狩人の護衛ぶらしにもなり得る発言をしてしまう前のことだ。……もうわかるだろう?君は勘違いしているんだよ、ザカライア。みんな揃ってテレンスの発言にツッコミを入れているが、あくまで言っているのは“ザカライアを吊るよりエイダの方が安定進行だ”ということだけ。発言したテレンスそのものに言及している人物はいないんだ……ただ、一人を除いてはね」
もう言いたいことはわかるだろう、とカンナは続ける。
「ザカライア。……君だけなんだよ、初日から“テレンスを吊りたい”とまで言っているのはね。君だけが、初日から露骨に狼二人とラインを切っている。実に不自然だ。君は疑われないためにライン切りを徹底していたんだ……違うかい?」
これが、必勝の一手。
狼は身内切りで猫炙りをしようとしたができなかった。ザカライアが役職炙りをしなかったのは、彼の村アピールにはけして成り得ない。そして、人外確定ではなく濃厚とぼかす明らかな失言――不自然な仲間との身内切り。
ここまで揃えば、ウォーレンの眼から見ても明らかなはずである。
「君が、狼だ。全ての状況が、それを証明している……!……私の意見は、以上だ」
「…………私は……」
ザカライアはやがて、ゆっくりと瞬きをした。そして彼が何かを言おうとした、その時。
『時間となりまシタ。皆様、投票をお願いしマス!』
ゲームマスターの無慈悲な宣告。時間切れである。ザカライアの言葉の続きを聴くことはできなかった。全員がタブレットを操作し、投票作業に入ることとなる。
「……素晴らしい論戦だった。ザカライア、カロリーヌ。君たちに敬意を表する」
ウォーレンが厳かな声で、告げた。
「私も腹をくくった。……狼は、君だ」
<投票結果>
1のウォーレン(0)→8のザカライア
8のザカライア(2)→11のカロリーヌ
11のカロリーヌ(1)→8のザカライア
『投票が終わりまシタ。8のザカライアさんが吊られます』
タブレットをそっとテーブルに置いて、ザカライアが眼を閉じる。自分の運命を悟った者の顔だった。同時に――覚悟を決めることを選んだ者の。
「……ありがとうごいざいます、カロリーヌさん。全力で、私と戦ってくれて。やはり貴女を、最終日の相手に選んだのは正解でした。人生の最後に、最高の試合ができたと思います。心から、御礼申し上げますよ」
「ザカライア……」
「そんな顔をしないでください。私達は互いの運命のために、全力で戦ったまで。誰も悪いわけではりません……当然、貴女もね。どうか、ご自分を責めるようなことはおやめになってください」
ザカライアは、恨み言一つ言わなかった。どうして、とカンナは泣き出したいような気持ちになる。確かに、運命を賭けたゲームで手を抜くことは許されない。ましてや、自分達は全員、他の同陣営の者達の運命をも背負って此処にいるのだ。自分だけの責任で、他の者達を巻き込むことなどできないのである。
それでもだ。彼に引導を渡したのは、カロリーヌであるのは間違いない。自分が彼を地獄に突き落とすという結果にはなんら変わりはないのだ。何故その相手を眼にして、こうも優しく微笑むことができるのだろう――彼は。
彼もまた、罪喰いに無残に喰われ。それでも運命を諦めることができず、このゲームでもう一度元の世界へ帰ることを選んだはずで。
これでもう、その望みが叶わなくなったことは明白であるというのに。
「これが、私の運命だったのです。潔く受け入れます。そして……心のどこかで安堵もしているんですよ」
ザカライアは、少しだけ泣きそうな笑みで、静かに告げたのです。
「人数の多い、村人陣営の方が勝って良かったのです。……ひとりでも多くの人が、救われて本当に良かったと。カロリーヌさん、貴女はたくさんの仲間を救った。どうかそれを、誇りに思ってください」
本当は、死ぬほど怖いはずなのに、どうして。
カンナが叫ぶよりも早く、無情にゲームマスターは終了を告げるのだ。
『おめでとうございマス!……吊られた8のザカライアは人狼!よって、村人陣営の勝利でございマス!』
そう、負けた者達にとっては紛れもない、死刑宣告に等しい言葉を。
どんな人間でも、完全に嘘をつくことはできないと。
カンナも同じことを思う。人は己の本質を、完全に偽りで塗り固めて誤魔化すことなどできないのだ。無理をすれば、必ずどこかにボロが出るものである。――3-1で真占い師のダリルに騙り占い師の狼だったエイダが補足され、結果狼の計画が大きく狂った時。いくらザカライアが冷静な性格であったとしても、相当焦りがあったのは間違いないのだ。自分を切らせることで、エイダの信用を上げるという作戦が使えなくなってしまったのだから。
一見冷静に見える行動をしていたザカライアだが、こうしてログを見直してみれば確かにボロが出ている。そのうちの一つがまず、これだ。
「ザカライア。二日目朝のことを思い出してもらおうか。私はミラに随分突っかかられていたけど、実際エイダ吊りに賛同した者が大半だった。ザカライア、君も積極的にエイダを吊りたいと言っていた一人だった。そうだね?」
「それが何か問題でも?村の総意に従っていますし、実際エイダさん吊りが安定進行であることをは貴女も言っていたでしょう」
「そうだ。エイダ吊りそのものはなんの問題もなかった。問題は、君のこの台詞だ」
『私目線でも、人外濃厚なエイダさんを吊ってもらいたいですね』
これは、ザカライアを吊りたい、占いは吊らない方がいいとテレンスがごねた後の発言である。まるで、テレンスを説得するように彼はこの言葉を被せてきたわけだが。
「……あの時は気づけなかったよ、テレンス。この台詞はどう考えてもおかしい。君は、村人なんだろう?ならばそこに“黒を出しているエイダが人外でないはずがない”。それなのに何故君は“人外確定”ではなく“人外濃厚”と言った?人外以外の可能性なんかないはずなのに」
「!」
流石にこれは、本人も気づいていなかった失言であったのだろう。彼のプレイングからして、人狼に慣れていない人間とは思えない。こんな瑣末な、誤解されかねない言葉を選ぶほど頭が悪いとは思わなかった。
つまりこれは。作戦失敗と路線変更を与儀なくされ、あまつさえ仲間狼であるテレンスがついてこれていないことに焦りを感じたゆえの、動揺の現れではないか。
「霊能結果を見るまでもなく、君の視点ではエイダが人外だと言い切れないとおかしいんだよ。他の参加者より、この時だけは君が一番“村として”内訳が見える状況であったのに……この言葉は違和感しかない。さらに、加えてもう一つ。君はこの台詞のあと、こう続けているんだ」
『そして、把握漏れしているのかわざとなのか、どうにも発言が怪しいテレンスさんもぜひ吊っていただきたい位置です。まあ、占いローラーした後で、ということにはなりますけれど』
ザカライアは、困惑したように首を傾げた。どうやらこっちの意図はまだ気づいていないらしい。
「……この台詞は、何がおかしいのかわかりませんね。テレンスさんは他の方からも怪しまれていたでしょう?そこを、私が吊りたいと言い出すことの何かおかしなことがあるでしょうか。実際彼は狼で、あの状況で私吊りを言い出すというおかしなことをしていました。怪しまれても仕方ないことをしていたと思いますけれど」
人の意見に便乗していたのが怪しいというのなら、それは仕方ないですけどね、と彼は肩をすくめる。
やはり、まだわかっていないようだ。自分が何に失敗したのか、ということに。
「……そう。テレンスは狼だった。しかも、こう言ってはなんだけど、狼陣営の足を引っ張っていたと思うんだ。状況が変わったのに、既定路線通りザカライアを吊ろうと固執して悪目立ちした。……狼が、いくら仲間でもこの人物をいつまでも身内に残しておくのは危険だと、そう判断してもおかしくないくらいにはね」
自分でも、テレンスは早々に切るだろうな、と思うのである。ザカライアも同じであったはずだ。彼はさっさと見捨てた方がいい。むしろ、ラインが繋がっているともなれば、彼が霊能結果で狼と判明した後で自分が怪しまれるのは目に見えている、と。
ゆえに、墓穴を掘った。
「二日目、吊り先はエイダで確定していた。その状況で確かにテレンスは失言したけど、彼は即座に吊れる位置になかった。他のみんなもそれはわかっていたのだろうさ。……テレンスが他の人達にも怪しまれていたって?じゃあ、もう一度みんなの二日目の発言を見直してみなよ。テレンスがザカライアを吊りたいと言い出した時の、みんなの反応だ」
『おいおい、君は何を言っているんだ。何故黒は黒でもザカライアの方を吊る?ザカライアに黒を出したエイダが真占い師と決まったわけでもないだろうに。エイダが偽占い師だったら、ここで貴重な吊り余裕を浪費することになりかねんぞ。勿論、エイダが偽占いであったとしても、ザカライアが村人という保証はどこにもないわけだがね。狂人の誤爆も狼の特攻もあるわけだから』
「これが、ウォーレン」
『ウォーレンの言う通りだ。占い師二人ならその選択もあっただろうが、ここはもっと他に吊るべき位置がある。ここはエイダを吊るのが最も情報が落ちる吊りだ、わからないか?エイダはグレーのザカライアに黒を出している。ダリルは対抗占い師のエイダに黒を出している。この差は非常に大きいよ。明らかにダリルの方がグレーが狭い。対して、エイダ視点では人外四人中三人が露出していることになる。彼女が真占い師なら、殆ど仕事は終わってるんだよ。真であったとしても、充分立て直しができると思わない?』
「これが、私」
『しかも、エイダはダリルに黒を出されている占い師よ?彼女を吊って霊能結果を見て、もし黒が出なかったら?ダリルも破綻することになる。翌日の吊り先もそれで確保できるのよ。非常に安定した進行だと思うけど』
「これが、ミラ。ちなみに、これはテレンスが、狩人の護衛ぶらしにもなり得る発言をしてしまう前のことだ。……もうわかるだろう?君は勘違いしているんだよ、ザカライア。みんな揃ってテレンスの発言にツッコミを入れているが、あくまで言っているのは“ザカライアを吊るよりエイダの方が安定進行だ”ということだけ。発言したテレンスそのものに言及している人物はいないんだ……ただ、一人を除いてはね」
もう言いたいことはわかるだろう、とカンナは続ける。
「ザカライア。……君だけなんだよ、初日から“テレンスを吊りたい”とまで言っているのはね。君だけが、初日から露骨に狼二人とラインを切っている。実に不自然だ。君は疑われないためにライン切りを徹底していたんだ……違うかい?」
これが、必勝の一手。
狼は身内切りで猫炙りをしようとしたができなかった。ザカライアが役職炙りをしなかったのは、彼の村アピールにはけして成り得ない。そして、人外確定ではなく濃厚とぼかす明らかな失言――不自然な仲間との身内切り。
ここまで揃えば、ウォーレンの眼から見ても明らかなはずである。
「君が、狼だ。全ての状況が、それを証明している……!……私の意見は、以上だ」
「…………私は……」
ザカライアはやがて、ゆっくりと瞬きをした。そして彼が何かを言おうとした、その時。
『時間となりまシタ。皆様、投票をお願いしマス!』
ゲームマスターの無慈悲な宣告。時間切れである。ザカライアの言葉の続きを聴くことはできなかった。全員がタブレットを操作し、投票作業に入ることとなる。
「……素晴らしい論戦だった。ザカライア、カロリーヌ。君たちに敬意を表する」
ウォーレンが厳かな声で、告げた。
「私も腹をくくった。……狼は、君だ」
<投票結果>
1のウォーレン(0)→8のザカライア
8のザカライア(2)→11のカロリーヌ
11のカロリーヌ(1)→8のザカライア
『投票が終わりまシタ。8のザカライアさんが吊られます』
タブレットをそっとテーブルに置いて、ザカライアが眼を閉じる。自分の運命を悟った者の顔だった。同時に――覚悟を決めることを選んだ者の。
「……ありがとうごいざいます、カロリーヌさん。全力で、私と戦ってくれて。やはり貴女を、最終日の相手に選んだのは正解でした。人生の最後に、最高の試合ができたと思います。心から、御礼申し上げますよ」
「ザカライア……」
「そんな顔をしないでください。私達は互いの運命のために、全力で戦ったまで。誰も悪いわけではりません……当然、貴女もね。どうか、ご自分を責めるようなことはおやめになってください」
ザカライアは、恨み言一つ言わなかった。どうして、とカンナは泣き出したいような気持ちになる。確かに、運命を賭けたゲームで手を抜くことは許されない。ましてや、自分達は全員、他の同陣営の者達の運命をも背負って此処にいるのだ。自分だけの責任で、他の者達を巻き込むことなどできないのである。
それでもだ。彼に引導を渡したのは、カロリーヌであるのは間違いない。自分が彼を地獄に突き落とすという結果にはなんら変わりはないのだ。何故その相手を眼にして、こうも優しく微笑むことができるのだろう――彼は。
彼もまた、罪喰いに無残に喰われ。それでも運命を諦めることができず、このゲームでもう一度元の世界へ帰ることを選んだはずで。
これでもう、その望みが叶わなくなったことは明白であるというのに。
「これが、私の運命だったのです。潔く受け入れます。そして……心のどこかで安堵もしているんですよ」
ザカライアは、少しだけ泣きそうな笑みで、静かに告げたのです。
「人数の多い、村人陣営の方が勝って良かったのです。……ひとりでも多くの人が、救われて本当に良かったと。カロリーヌさん、貴女はたくさんの仲間を救った。どうかそれを、誇りに思ってください」
本当は、死ぬほど怖いはずなのに、どうして。
カンナが叫ぶよりも早く、無情にゲームマスターは終了を告げるのだ。
『おめでとうございマス!……吊られた8のザカライアは人狼!よって、村人陣営の勝利でございマス!』
そう、負けた者達にとっては紛れもない、死刑宣告に等しい言葉を。
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