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<18・曲者だらけの本戦>
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案内されたのは、ワンナイトを行った時よりも随分広い部屋だった。どうやらカンナ達は後発組であったらしい。開始時間の十分前だというのに、大きな丸テーブルの椅子は全て埋まっている。
即座にカンナは椅子と、それに座っている人々の数を数えていた。――十一、だ。
――十一人村?……いや、初日犠牲者を含んで、十二人村?……良かった、そこまで大人数の村じゃない……!
心の中で胸を撫で下ろしたのが見抜かれたのか、あるいは待たされていることへの不快感か。やってきたカンナ=カロリーヌ、絆=キャサリン、ミラの三人を睨むように声を上げてきた人物が一人。
「ちょっとちょっとお?遅れてきたというのに、随分余裕ぶっこいてらっしゃるのねえ?」
ベージュのドレスを着たマダム風の中年女性が、扇でぱたぱたと自身を仰ぎながら告げる。化粧が濃すぎるのか香水が強すぎるのか、彼女がしゃべるとツンとした匂いが漂った。目の前には“2のエイダ”というネームプレートが置かれていた。
前のワンナイトの時には、全員が色を与えられていた。ドレスや服装に応じて“赤のカロリーヌ”“青のキャサリン”といった具合にである。どうやら今回は色の代わりに、それぞれ数字が与えられているらしい。
――ついでに、この世界では全員横文字の名前なんだな。……う、覚えるられるかな。今回は十一人もいるし。
幸い、自分を除いた二人は顔を知っているので、新たに覚える必要もないのだけれど。
「余裕ぶっこくって、随分品のない言葉遣いね。貴女、前世は男性だったりするのかしら?ああ、それともとても出自が低い方ってだけ?お里が知れるわね」
「何ですって!?」
うっわ、とカンナは顔を引きつらせる。あっさり挑発に乗ったミラ、相変わらず口が回るものである。この人本当はいくつなんだろう、と思わざるをえない。女言葉にそろそろ疲れてきたと言いつつ、しっかり継続させているあたりも流石というべきか。
「十分前に来たのに、遅いだなんて文句言われる筋合いないのよ。勝手に早く来て待っておきながらぐだぐだクレーム言うなんて、ほんといい年しておいてみっともないったら。あ、もしかしたら中身は幼稚園児の方だったのかしら?だったらごめんあそばせー」
青筋立てながらにこにこと皮肉を紡ぐミラ。わあお、と絆が小さく拍手をしている。頼むから止めて、とカンナは頭を抱えた。2のエイダ、はわなわなと肉がたっぷりついた拳を震わせている。もしかしてこの人もとってもイライラしていたりするんだろうか、なんてことを思った。若い人であったのに、おばちゃんっぽい姿に転生してしまったのだとしたら、気の毒だとしか言い様がない。なんせ、前世で彼女がどんな性別のどんな年齢の人間であったのかなど、まったく分からないことであるのだから。
「ちょっとちょっと!暴力反対なんだぞ!」
そのエイダの隣で、ドン引いたような可愛らしい声が上がる。サスペンダーをくいくい引っ張りながら言うのは、まだ小学生程度に見える少年だ。金色の髪をしっかりセットした様は、良いところのおぼっちゃんといった風体である。
「戦うならゲームで、にしないと!そのために僕達は此処にいるんだからさ!」
ネームプレートに書かれているのは、“3のダリル”。ふと、カンナはある法則に思い至った。
自分はカンナで、“カロリーヌ”という名前になった。絆は“きずな”で“キャサリン”である。ひょっとしたら、転生後の名前は転生前の名前の頭文字をそのまま受け継ぐことになるのかもしれない。二人しかわからないので何とも言えないが、ダリルというあの少年も前世は“だいすけ”とか“だ”で始まる名前であるのかもしれなかった。
しかし、予想はしていたが、全員年齢も性別もバラバラだった。前回は女性の方が割合が多かったが、今回はおおよそ半分ずつといった印象である。
――えっと、私達の席はラスト三つ、か。
まず、“1のウォーレン”。髭をもっさりと蓄えた恰幅の良い紳士は、先ほどから隣で行われている騒ぎに対して我関せずといった様子である。町で買ったと思しき新聞を熱心に読み込んでいるようだ。この世界の文字は、果たして自分達にも読めるものなのだろうか。そういば、プレートの文字は全て日本語で書かれているし、予選の時もそうだった。この国の言語=日本語とは到底思えないので、彼らの言葉を自動で母国語に変換できるシステムでもあるのかもしれない。これも調べておけば良かったかな、とカンナは思う。
2のエイダは、制止されても不満そうにミラを睨んでいる。
3のダリルは、エイダの行動にややイラついているようだ。
そのダリルの隣に座っているのは、“4のテレンス”。眼鏡をかけたノッポの男性は、おどおどと周囲を見回している。青ざめ、汗をかいた顔は気の毒なほどだ。よくゲームに参加することを承諾したものである。
その隣は、“5のヘンリエッタ”。どうやら、ダリルと同じくらいの年齢の少女らしい。エプロンドレスを着ているせいか、まるで不思議の国のアリスのようだ。無言でじっとテーブルの中央を見つめている。可愛らしい顔立ちだが、驚くほど表情というものがない。
――どの人も癖が強そうだなあ。
自分の席に座りながら、カンナはその次の人物をゆっくりと観察した。
“6のジェフ”。この人物は大物なのかもしれかった。年齢は二十前後だろうか。可もなく不可もなくな地味な容姿の青年は、席に座ってこっくりこっくりと船を漕いでいる。
“7のクラリッサ”。この女性も眼鏡をかけている。名前こそ西洋風ではあるが、おかっぱのその顔立ちは完全に日本人のそれだ。手元で文庫本を広げているのが、なんだか非常に様になっている。
“8のザカライア”。穏やかそうな青年だ。彫りが深く、整った顔立ちをしている。さっきから起きている騒ぎにも動じず、にこにことエイダ達を見つめている。一体何を思っているのだろう。
そして最後だ。“9のミラ”、“10のキャサリン”、“11のカロリーヌ”で席が一周することになる。カロリーヌが座るのは、一番末尾の席であった。
「意味わかんないわ」
どうやら、2のエイダの怒りは収まらないらしい。
「遅れてきたのにイヤミしか言わない人間を相手に、なんでわたくしが我慢しないといけないんですの?一発ぶん殴っても許されるんじゃなくて?」
「あらあら野蛮!え、何?喧嘩していいの、いいの?私としてもそっちの方が話が早くて助かるわ。必要な文字数も論戦より少なくてすみそうだし、作者も疲れなくてすみそうよ!」
「ちょっとメタ!メタいから!!」
ええええ、とカンナは青ざめる。立ち上がってぶんぶん腕を振り回す中年女性のエイダと、腕まくりをして嬉しそうにしている美人のミラというなんともシュールな図である。しかもしれっとメタ発言までかましていった。確かに殴り合いの喧嘩で終わった方が、複雑な論戦を描かなくて済む分作者も楽ではあるが――そういうことではなくて!
「えええ、なんでそうなるのさああ……!?」
「ほっといた方がいいと思う。馬鹿は殴らないと治らないものだし」
「き、君も辛辣だね!?」
3のダリルが頭を抱えていると、それをあっさり突き放す5のヘンリエッタである。どうやらこの幼女、見た目よりずっとクールな性格らしい。いや、確かに子供達で止められるとは思わないが、いいのだろうか放置しておいて。
「ただでさえイライラしてるんですのよ!怪物に突然喰い殺されたと思ったら、全然別人に転生させられて!元の世界に戻るためには人狼ゲームで勝たなければいけないとかわけのわからないこと言われて!仕方なく予選は参加したけど、本当はもう我慢の限界ですの!一発殴って発散でもしなければ気が済みませんわ、済みませんわよー!!」
もしやあのおばさん、エイダの元は男性だったりするのだろうか。これどうすりゃいいの、とカンナがあきれ果てた時だった。
「そこまでにしておきなさい、エイダ」
低すぎず高すぎず、落ち着いた青年の声が響き渡った。
8のザカライアである。
「ミラの言うことは尤もだと私も思います。時間より早く来る選択をしたのは我々です、文句を言う筋合いはないでしょう。ましてや、正論を言われたから暴力で解決しようなどと、実に品が無い行いだと思いませんか?」
「で、でも……!」
「彼女を殴っても、何も解決しませんよ。我々の命運を決めることができるのは女王陛下のみ。ここで騒ぎを起こしてゲーム開始前に失格になる、なんてことになってもよろしいのですか?貴女とて、元の世界に帰りたいから苛立っているのでしょう?」
ねえ?と。ザカライアににこやかにいわれ、エイダは頬を染めると――ぷい、とよそを向いた。元々知り合いというわけではないようだが、エイダはぶつぶつと言いながらも席に戻っていく。それを見て、ミラも追撃する気はないのか自分の席についた。
ふうん、とカンナは思う。短い言葉で、あっさりとエイダを諌めて落ち着かせてみせた。他のメンバーも癖が強いようだが、このザカライアという青年はどこかオーラが違う。この状況で、焦っている様子もない。むしろ、騒ぎが起きたなら起きたで楽しんでいるようにさえ見えた。よく言えば強者の余裕――悪く言えば異質な雰囲気である。
――ひょっとしたらこの人、よっぽど人狼に自信があるの?
もし自分が占い師になったなら、真っ先にミラかキャサリンを占うつもりでいたカンナだが。この様子だと、ザカライアにも注意した方がいいかもしれない。
――ゲーム開始前に目立つと、初日占いの対象になりやすくなるのは言うまでもない。私達三人以外が顔見知りでないのだとしたら尚更なのに。それでもこの人は、自分が目立つのを恐れていないように見える。……初手占いされても、それがどのような結果でも、切り抜けられる自信があるということ?
やはり、気を配っておいた方がいいだろう。
彼が味方であればいいが、もし敵に回ることになったならその時は――。
『それでは皆様、時間でございマス』
やがて、テーブル中央のスピーカーがノイズ混じりの声を発した。
『このたびは本戦への参加を承諾していただき、誠にありがろうございマス。女王様も大層お喜びデス。それでは発表しましょう、今回の配役、それは……』
ごくり、と。唾を飲み込んだのは誰であったか。
『十二人村。初日役欠けありの……12A猫村となりマス!』
即座にカンナは椅子と、それに座っている人々の数を数えていた。――十一、だ。
――十一人村?……いや、初日犠牲者を含んで、十二人村?……良かった、そこまで大人数の村じゃない……!
心の中で胸を撫で下ろしたのが見抜かれたのか、あるいは待たされていることへの不快感か。やってきたカンナ=カロリーヌ、絆=キャサリン、ミラの三人を睨むように声を上げてきた人物が一人。
「ちょっとちょっとお?遅れてきたというのに、随分余裕ぶっこいてらっしゃるのねえ?」
ベージュのドレスを着たマダム風の中年女性が、扇でぱたぱたと自身を仰ぎながら告げる。化粧が濃すぎるのか香水が強すぎるのか、彼女がしゃべるとツンとした匂いが漂った。目の前には“2のエイダ”というネームプレートが置かれていた。
前のワンナイトの時には、全員が色を与えられていた。ドレスや服装に応じて“赤のカロリーヌ”“青のキャサリン”といった具合にである。どうやら今回は色の代わりに、それぞれ数字が与えられているらしい。
――ついでに、この世界では全員横文字の名前なんだな。……う、覚えるられるかな。今回は十一人もいるし。
幸い、自分を除いた二人は顔を知っているので、新たに覚える必要もないのだけれど。
「余裕ぶっこくって、随分品のない言葉遣いね。貴女、前世は男性だったりするのかしら?ああ、それともとても出自が低い方ってだけ?お里が知れるわね」
「何ですって!?」
うっわ、とカンナは顔を引きつらせる。あっさり挑発に乗ったミラ、相変わらず口が回るものである。この人本当はいくつなんだろう、と思わざるをえない。女言葉にそろそろ疲れてきたと言いつつ、しっかり継続させているあたりも流石というべきか。
「十分前に来たのに、遅いだなんて文句言われる筋合いないのよ。勝手に早く来て待っておきながらぐだぐだクレーム言うなんて、ほんといい年しておいてみっともないったら。あ、もしかしたら中身は幼稚園児の方だったのかしら?だったらごめんあそばせー」
青筋立てながらにこにこと皮肉を紡ぐミラ。わあお、と絆が小さく拍手をしている。頼むから止めて、とカンナは頭を抱えた。2のエイダ、はわなわなと肉がたっぷりついた拳を震わせている。もしかしてこの人もとってもイライラしていたりするんだろうか、なんてことを思った。若い人であったのに、おばちゃんっぽい姿に転生してしまったのだとしたら、気の毒だとしか言い様がない。なんせ、前世で彼女がどんな性別のどんな年齢の人間であったのかなど、まったく分からないことであるのだから。
「ちょっとちょっと!暴力反対なんだぞ!」
そのエイダの隣で、ドン引いたような可愛らしい声が上がる。サスペンダーをくいくい引っ張りながら言うのは、まだ小学生程度に見える少年だ。金色の髪をしっかりセットした様は、良いところのおぼっちゃんといった風体である。
「戦うならゲームで、にしないと!そのために僕達は此処にいるんだからさ!」
ネームプレートに書かれているのは、“3のダリル”。ふと、カンナはある法則に思い至った。
自分はカンナで、“カロリーヌ”という名前になった。絆は“きずな”で“キャサリン”である。ひょっとしたら、転生後の名前は転生前の名前の頭文字をそのまま受け継ぐことになるのかもしれない。二人しかわからないので何とも言えないが、ダリルというあの少年も前世は“だいすけ”とか“だ”で始まる名前であるのかもしれなかった。
しかし、予想はしていたが、全員年齢も性別もバラバラだった。前回は女性の方が割合が多かったが、今回はおおよそ半分ずつといった印象である。
――えっと、私達の席はラスト三つ、か。
まず、“1のウォーレン”。髭をもっさりと蓄えた恰幅の良い紳士は、先ほどから隣で行われている騒ぎに対して我関せずといった様子である。町で買ったと思しき新聞を熱心に読み込んでいるようだ。この世界の文字は、果たして自分達にも読めるものなのだろうか。そういば、プレートの文字は全て日本語で書かれているし、予選の時もそうだった。この国の言語=日本語とは到底思えないので、彼らの言葉を自動で母国語に変換できるシステムでもあるのかもしれない。これも調べておけば良かったかな、とカンナは思う。
2のエイダは、制止されても不満そうにミラを睨んでいる。
3のダリルは、エイダの行動にややイラついているようだ。
そのダリルの隣に座っているのは、“4のテレンス”。眼鏡をかけたノッポの男性は、おどおどと周囲を見回している。青ざめ、汗をかいた顔は気の毒なほどだ。よくゲームに参加することを承諾したものである。
その隣は、“5のヘンリエッタ”。どうやら、ダリルと同じくらいの年齢の少女らしい。エプロンドレスを着ているせいか、まるで不思議の国のアリスのようだ。無言でじっとテーブルの中央を見つめている。可愛らしい顔立ちだが、驚くほど表情というものがない。
――どの人も癖が強そうだなあ。
自分の席に座りながら、カンナはその次の人物をゆっくりと観察した。
“6のジェフ”。この人物は大物なのかもしれかった。年齢は二十前後だろうか。可もなく不可もなくな地味な容姿の青年は、席に座ってこっくりこっくりと船を漕いでいる。
“7のクラリッサ”。この女性も眼鏡をかけている。名前こそ西洋風ではあるが、おかっぱのその顔立ちは完全に日本人のそれだ。手元で文庫本を広げているのが、なんだか非常に様になっている。
“8のザカライア”。穏やかそうな青年だ。彫りが深く、整った顔立ちをしている。さっきから起きている騒ぎにも動じず、にこにことエイダ達を見つめている。一体何を思っているのだろう。
そして最後だ。“9のミラ”、“10のキャサリン”、“11のカロリーヌ”で席が一周することになる。カロリーヌが座るのは、一番末尾の席であった。
「意味わかんないわ」
どうやら、2のエイダの怒りは収まらないらしい。
「遅れてきたのにイヤミしか言わない人間を相手に、なんでわたくしが我慢しないといけないんですの?一発ぶん殴っても許されるんじゃなくて?」
「あらあら野蛮!え、何?喧嘩していいの、いいの?私としてもそっちの方が話が早くて助かるわ。必要な文字数も論戦より少なくてすみそうだし、作者も疲れなくてすみそうよ!」
「ちょっとメタ!メタいから!!」
ええええ、とカンナは青ざめる。立ち上がってぶんぶん腕を振り回す中年女性のエイダと、腕まくりをして嬉しそうにしている美人のミラというなんともシュールな図である。しかもしれっとメタ発言までかましていった。確かに殴り合いの喧嘩で終わった方が、複雑な論戦を描かなくて済む分作者も楽ではあるが――そういうことではなくて!
「えええ、なんでそうなるのさああ……!?」
「ほっといた方がいいと思う。馬鹿は殴らないと治らないものだし」
「き、君も辛辣だね!?」
3のダリルが頭を抱えていると、それをあっさり突き放す5のヘンリエッタである。どうやらこの幼女、見た目よりずっとクールな性格らしい。いや、確かに子供達で止められるとは思わないが、いいのだろうか放置しておいて。
「ただでさえイライラしてるんですのよ!怪物に突然喰い殺されたと思ったら、全然別人に転生させられて!元の世界に戻るためには人狼ゲームで勝たなければいけないとかわけのわからないこと言われて!仕方なく予選は参加したけど、本当はもう我慢の限界ですの!一発殴って発散でもしなければ気が済みませんわ、済みませんわよー!!」
もしやあのおばさん、エイダの元は男性だったりするのだろうか。これどうすりゃいいの、とカンナがあきれ果てた時だった。
「そこまでにしておきなさい、エイダ」
低すぎず高すぎず、落ち着いた青年の声が響き渡った。
8のザカライアである。
「ミラの言うことは尤もだと私も思います。時間より早く来る選択をしたのは我々です、文句を言う筋合いはないでしょう。ましてや、正論を言われたから暴力で解決しようなどと、実に品が無い行いだと思いませんか?」
「で、でも……!」
「彼女を殴っても、何も解決しませんよ。我々の命運を決めることができるのは女王陛下のみ。ここで騒ぎを起こしてゲーム開始前に失格になる、なんてことになってもよろしいのですか?貴女とて、元の世界に帰りたいから苛立っているのでしょう?」
ねえ?と。ザカライアににこやかにいわれ、エイダは頬を染めると――ぷい、とよそを向いた。元々知り合いというわけではないようだが、エイダはぶつぶつと言いながらも席に戻っていく。それを見て、ミラも追撃する気はないのか自分の席についた。
ふうん、とカンナは思う。短い言葉で、あっさりとエイダを諌めて落ち着かせてみせた。他のメンバーも癖が強いようだが、このザカライアという青年はどこかオーラが違う。この状況で、焦っている様子もない。むしろ、騒ぎが起きたなら起きたで楽しんでいるようにさえ見えた。よく言えば強者の余裕――悪く言えば異質な雰囲気である。
――ひょっとしたらこの人、よっぽど人狼に自信があるの?
もし自分が占い師になったなら、真っ先にミラかキャサリンを占うつもりでいたカンナだが。この様子だと、ザカライアにも注意した方がいいかもしれない。
――ゲーム開始前に目立つと、初日占いの対象になりやすくなるのは言うまでもない。私達三人以外が顔見知りでないのだとしたら尚更なのに。それでもこの人は、自分が目立つのを恐れていないように見える。……初手占いされても、それがどのような結果でも、切り抜けられる自信があるということ?
やはり、気を配っておいた方がいいだろう。
彼が味方であればいいが、もし敵に回ることになったならその時は――。
『それでは皆様、時間でございマス』
やがて、テーブル中央のスピーカーがノイズ混じりの声を発した。
『このたびは本戦への参加を承諾していただき、誠にありがろうございマス。女王様も大層お喜びデス。それでは発表しましょう、今回の配役、それは……』
ごくり、と。唾を飲み込んだのは誰であったか。
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