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<17・思いがけぬ再会>
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建物の内装は、予選を行った場所と似通ったものだった。赤い絨毯が敷かれ、入口にはカウンター。長い長いエレベーターがあって、ワンフロアごとにそれぞれいくつかずつ会場として使える部屋があるようだ。
――ここ、いつも人狼にだけ使われてるの?それとも他にも何か用途があるのかな……?
自分達が行くように指示された部屋以外は、覗くことができない。普段がホテルのような宿泊施設に使われているのか、それともなんらかの会議場になっているのかはカンナにはさっぱりわからなかった。ただ、この塔以外にも複数それらしき建物は見えていた。よほど人狼ゲームが盛んで中継が頻繁に行われているのか、それとも転生者というものがしょっちゅうやってくるのか。廊下を歩きながら、天井にぶら下がっている監視カメラらしきものに気づいて、なんだか居心地が悪くなってくるカンナである。
「あら?」
エレベーターを待っていると、後ろから声がかかった。振り向けば、見慣れた黄色のドレスを着た女性がいるではないか。
「キャサリンにカロリーヌ?驚いた、二人もこの会場だったのね」
「ミラ!」
本来ならばさん付で呼ぶべき場面なのかもしれないが、最初の流れのまま呼び捨てになってしまっている。今更呼称を変えるのもなんとなく気まずい。ミラも特に気にした様子がないので、多分問題はないのだろうが。
「何階?部屋番号は?」
私は1201よ、と彼女はひらひらと受付で渡されたカードを見せてきた。カンナは目を見開く。自分とキャサリンが渡されたカードも同じであったからだ。もしかしたら、日本からの転生者はなるべく同じ会場に集められたのだろうか。
どうやら自分達は、またしても同じゲームを戦うことになるらしい。敵になるのか味方になるのかは定かではないが。
「あら、同じ部屋とは。短い別れだったわねえ。これ、また試合が一緒になりそうね」
「三人ともまた一緒とは、思ってもみなかったな。今回は何人村になるんだろうか」
「次は普通村だっていう話だし、前より人数多いでしょ。同じ陣営になれるといいわね、貴女達が味方だったら心強いわ」
「有り難く受けとっておくよ」
そんな雑談をしながら、三人揃ってエレベーターに乗り込む。味方だったら心強い――それは、カンナにとっても同じだ。ミラもキャサリンも同じ陣営であったなら、多少手ごわいメンバーがいても勝ち抜くことができそうである。ただ、それはあくまで“同陣営であったなら”の話だ。極端な話、自分と絆=キャサリンは別陣営でも問題ない。お互いの情報をお互いに漏らすようなルール違反はしないが、それでもどちらかが勝てばどちらかが地獄落ちしても救済できる見込みがあるからだ。
ミラは違う。勿論、自分達から“自分達が助かったらミラも救ってくれるよう女王様に頼む”ことは可能だろうが。そんな自分達の言葉を、会ったばかりの彼女が信じてくれるかどうかはまったく別問題である。
この様子だと、彼女はこの世界に一人でやってきたらしい。きっと、自分達よりずっと心細い思いをしていたはずだ。疑心暗鬼になっていてもおかしくない。予選を共に戦ったというだけで、人を信用するのは非常に難しいことだろう。
――予選。私は、顔見知りは一人もいないと思ってた。だから、メタ推理の類を挟む余地がなかったけれど……今回は違う。二人も知っている人間がいる。向こうも同じだ。以前とは前提からして大きく違う。
メタ推理は本来推奨されないものであるが、それも状況次第である。
例えば、今回のゲームでは夜時間に何も聞こえないので関係ないが、吠えメタというものを使うことがあるのは確かだ。WEB人狼ではよくあるものである。狼は、吠えを行うことによって仲間と会話をする。狼以外の人間には吠える声はただ“ワオーン!”と鳴いているようにしか見えないが、狼が“どれだけ話しているのか”という分量だけは分かる仕組みになっているのだ。村人を狼の吠えの量を見て、戦略を予想することがある。逆に狼も、村人を欺くためにわざと吠えを抑えたり、吠えを増やして残り狼数を誤魔化したりするのである。
この吠えの数、を推理に組み込むことを“吠えメタ”といい、これは許可されることが多いのだ。吠えの数で駆け引きをするのも醍醐味と考える人間が多いからである。
もう一つ、メタをしても基本的に許されるとされていることが、占い師及び騙り占い師の初日占い先である。初日の占い先は、全く情報がない状態で決定するしかないものだ。ゆえに、知り合いがいればその知り合いを占いたくなるものである。普段の素行やプレイスタイルを知っているからこそ、優先して占いたくなるのが人の性というもの。これは責められるようなものではない。
何が言いたいのかと言えば。ワンナイトでカンナが“人狼に慣れているかどうか”という試合前のマリー達の発言を推理に組み込んだのは実はかなりグレーゾーンで(材料の少ないワンナイトだったからこそ許されたとも言える)、しかしながら知り合いが増えれば増えるほどメタが多少入ることは避けられないということである。
例えばミラが占い師になったなら。自分とキャサリンが、初手で占われる可能性は相当高いものになるだろう。ミラが占いで自分達のどちらかが人狼であった場合、初日で補足される可能性が高いということである。こればかりは、運を天に任せるしかないのが辛いところだが。
「なあ、ミラ」
エレベーターが動き出したところで、絆が口を開いた。相変わらずこのエレベーターは遅い。到着まで少々時間がかかりそうである。
「あんたは元々は男だったと言っていたな。しかも日本人。……どんな状況で化け物に襲われたんだとか、そういうことは聴いていいのか?」
「んー……」
絆としては、少しでもミラのことを探っておきたい気持ちがあるのかもしれない。あるいはただの世間話のつもりだろうか。ミラは長い髪をくるくるといじりながら、そうねえ、と続けた。
「まあ、ちょっとくらい話してもいいかな。……学校の帰りに襲われたのよ、ぶっちゃけると」
学校。その言い方からすると、小学校から大学のいずれか。非常に範囲が広いが、若い人であるというのは間違いなさそうである。大人びた雰囲気からして、さすがに小学生ということはないだろうが。
「男の子の友達と一緒に帰宅中でね。その子と別れて自分の家に向かおうとしていたら、角からのっそり出てきた怪物とご対面よ。最初は何の冗談かと思ったわ。まさに、アニメとか漫画とかに出てきそうな怪物なんだもの。ほら、人気のやつにあったじゃない?どこかの屋敷に閉じ込められて、でっかい巨人に襲われて逃げ回るゲームとか」
「ああ、確かに」
「ひっどい目に遭ったわよ。脚の速さにはそこそこ自信あったんだけど、さすがにああもしつこく追い回されて、しかも最終的に二体目が出て挟み撃ちにされたんじゃどうしようもないわ。二体がかりで生きたまま内臓喰われる経験なんて二度としたくないものね」
「うわ……」
カンナは自分が死んだ時のことを思い出してしまい、思わず口元を抑える。あの化物の最悪なところの一つが、獲物を即死させてくれないということだ。腹を裂かれて、自分の腸がはみ出してくる恐怖と激痛といったらない。ミラの最期も、似たようなものであったらしい。
「……気がかりなのは、あの時死んだのが私だけだったのかっていうこと。少し前に別れた友達がどうなったのか、私にはわからないのよ。だからゲームに勝つことができたなら、女王様に尋ねるつもり。あの子はどうなったのかって。もしあの子も死んでいて、この世界にどこかにいるというのなら……あの子のことも救ってくれるように女王様に頼んでみるつもりよ」
それとね、とミラは続ける。
「もう一つ気になっていることがあって。……私、かなり長い時間化け物に追い回されたのよ。慣れた住宅街を、結構縦横無尽に逃げ回ったのに。で、一体をどうにか撒こうと頑張っていたらもう一体出てきて挟み撃ちにされたんだけど。……あの住宅街の近くには、いくつも小学校や中学校があったのよね。つまり、子供は私だけじゃなかったはずなの。その学校の子達も襲われたのかもしれないけれど……それにしても、随分私一人、しつこく追われたなって印象があって」
それって、とカンナは眉をひそめる。もしかして、化け物は襲う獲物を選んでいた、ということなのだろうか。
「……人狼ゲームを知っていて、それなりに腕に覚えのあるやつを選んで襲っていた……なんてことはあるか?」
「は!?」
絆がとんでもないことを言い出した。思わずカンナは素っ頓狂な声を上げてしまう。
「そ、そんなのなんで化物に分かるの!?ていうか、メリットは何!?人狼ゲームが得意な人ばっかり襲っていたんだとしたら、それってまるで……」
この世界の女王様とやらが、化物の襲撃そのものに一枚噛んでいるみたいではないか。
流石にそれは、思っても口にできなかった。既に女王様が管理する施設の中にいるのである。このエレベーターの中にもカメラがあるとみて間違いない。あまり迂闊なことは言わない方が良さそうだ。
勿論カンナが黙っても、あとの二人には言いたいことは充分伝わっただろうが。
「……そのへんのことは、今の時点ではなんとも言えないわね」
険しい顔で、ミラが強引に話を打ち切った。
「この本戦を勝利することができて……女王様とやらに会うことができたなら。その真実を、知ることもできるのかしらね。……ところで」
「ん?」
「……そろそろこの喋り方疲れてきたんだけど、私いつまで頑張って女言葉使わないといけないのかしら。せっかく女に転生したんだから女王様系のキャラやってみようなんて、どうして思っちゃったんだろうと今とっても後悔してるんだけど」
「ぶっ」
思わず吹き出してしまうカンナ。シリアスが一気に吹き飛ぶことになってしまった。やっぱりこのミラという女性(中身は男性らしい?)。実際はとても愉快な性格をしているのではなかろうか。
――実はめっちゃおじいさんだったりする?あ、でも学校帰りなんて言い方してたから、その可能性は低いか?あ、いやいやいや、でも学校の先生ってこともあるかもしれないし、大学生なら年齢は関係ないだろうし……。
「もー……面倒ならなんでそんなキャラにしちゃったんだ……」
カンナが苦笑しながらツッコミを入れた時、ぴーん、という甲高い音とともにエレベーターが到着した。どうやら、部屋がある階に到着したらしい。
「さて」
パン、と。拳と手のひらを合わせて気合を入れて、絆が告げた。
「気合入れるか。行くぞ」
気を引き締めなければいけない。
ここからが、本番である。
――ここ、いつも人狼にだけ使われてるの?それとも他にも何か用途があるのかな……?
自分達が行くように指示された部屋以外は、覗くことができない。普段がホテルのような宿泊施設に使われているのか、それともなんらかの会議場になっているのかはカンナにはさっぱりわからなかった。ただ、この塔以外にも複数それらしき建物は見えていた。よほど人狼ゲームが盛んで中継が頻繁に行われているのか、それとも転生者というものがしょっちゅうやってくるのか。廊下を歩きながら、天井にぶら下がっている監視カメラらしきものに気づいて、なんだか居心地が悪くなってくるカンナである。
「あら?」
エレベーターを待っていると、後ろから声がかかった。振り向けば、見慣れた黄色のドレスを着た女性がいるではないか。
「キャサリンにカロリーヌ?驚いた、二人もこの会場だったのね」
「ミラ!」
本来ならばさん付で呼ぶべき場面なのかもしれないが、最初の流れのまま呼び捨てになってしまっている。今更呼称を変えるのもなんとなく気まずい。ミラも特に気にした様子がないので、多分問題はないのだろうが。
「何階?部屋番号は?」
私は1201よ、と彼女はひらひらと受付で渡されたカードを見せてきた。カンナは目を見開く。自分とキャサリンが渡されたカードも同じであったからだ。もしかしたら、日本からの転生者はなるべく同じ会場に集められたのだろうか。
どうやら自分達は、またしても同じゲームを戦うことになるらしい。敵になるのか味方になるのかは定かではないが。
「あら、同じ部屋とは。短い別れだったわねえ。これ、また試合が一緒になりそうね」
「三人ともまた一緒とは、思ってもみなかったな。今回は何人村になるんだろうか」
「次は普通村だっていう話だし、前より人数多いでしょ。同じ陣営になれるといいわね、貴女達が味方だったら心強いわ」
「有り難く受けとっておくよ」
そんな雑談をしながら、三人揃ってエレベーターに乗り込む。味方だったら心強い――それは、カンナにとっても同じだ。ミラもキャサリンも同じ陣営であったなら、多少手ごわいメンバーがいても勝ち抜くことができそうである。ただ、それはあくまで“同陣営であったなら”の話だ。極端な話、自分と絆=キャサリンは別陣営でも問題ない。お互いの情報をお互いに漏らすようなルール違反はしないが、それでもどちらかが勝てばどちらかが地獄落ちしても救済できる見込みがあるからだ。
ミラは違う。勿論、自分達から“自分達が助かったらミラも救ってくれるよう女王様に頼む”ことは可能だろうが。そんな自分達の言葉を、会ったばかりの彼女が信じてくれるかどうかはまったく別問題である。
この様子だと、彼女はこの世界に一人でやってきたらしい。きっと、自分達よりずっと心細い思いをしていたはずだ。疑心暗鬼になっていてもおかしくない。予選を共に戦ったというだけで、人を信用するのは非常に難しいことだろう。
――予選。私は、顔見知りは一人もいないと思ってた。だから、メタ推理の類を挟む余地がなかったけれど……今回は違う。二人も知っている人間がいる。向こうも同じだ。以前とは前提からして大きく違う。
メタ推理は本来推奨されないものであるが、それも状況次第である。
例えば、今回のゲームでは夜時間に何も聞こえないので関係ないが、吠えメタというものを使うことがあるのは確かだ。WEB人狼ではよくあるものである。狼は、吠えを行うことによって仲間と会話をする。狼以外の人間には吠える声はただ“ワオーン!”と鳴いているようにしか見えないが、狼が“どれだけ話しているのか”という分量だけは分かる仕組みになっているのだ。村人を狼の吠えの量を見て、戦略を予想することがある。逆に狼も、村人を欺くためにわざと吠えを抑えたり、吠えを増やして残り狼数を誤魔化したりするのである。
この吠えの数、を推理に組み込むことを“吠えメタ”といい、これは許可されることが多いのだ。吠えの数で駆け引きをするのも醍醐味と考える人間が多いからである。
もう一つ、メタをしても基本的に許されるとされていることが、占い師及び騙り占い師の初日占い先である。初日の占い先は、全く情報がない状態で決定するしかないものだ。ゆえに、知り合いがいればその知り合いを占いたくなるものである。普段の素行やプレイスタイルを知っているからこそ、優先して占いたくなるのが人の性というもの。これは責められるようなものではない。
何が言いたいのかと言えば。ワンナイトでカンナが“人狼に慣れているかどうか”という試合前のマリー達の発言を推理に組み込んだのは実はかなりグレーゾーンで(材料の少ないワンナイトだったからこそ許されたとも言える)、しかしながら知り合いが増えれば増えるほどメタが多少入ることは避けられないということである。
例えばミラが占い師になったなら。自分とキャサリンが、初手で占われる可能性は相当高いものになるだろう。ミラが占いで自分達のどちらかが人狼であった場合、初日で補足される可能性が高いということである。こればかりは、運を天に任せるしかないのが辛いところだが。
「なあ、ミラ」
エレベーターが動き出したところで、絆が口を開いた。相変わらずこのエレベーターは遅い。到着まで少々時間がかかりそうである。
「あんたは元々は男だったと言っていたな。しかも日本人。……どんな状況で化け物に襲われたんだとか、そういうことは聴いていいのか?」
「んー……」
絆としては、少しでもミラのことを探っておきたい気持ちがあるのかもしれない。あるいはただの世間話のつもりだろうか。ミラは長い髪をくるくるといじりながら、そうねえ、と続けた。
「まあ、ちょっとくらい話してもいいかな。……学校の帰りに襲われたのよ、ぶっちゃけると」
学校。その言い方からすると、小学校から大学のいずれか。非常に範囲が広いが、若い人であるというのは間違いなさそうである。大人びた雰囲気からして、さすがに小学生ということはないだろうが。
「男の子の友達と一緒に帰宅中でね。その子と別れて自分の家に向かおうとしていたら、角からのっそり出てきた怪物とご対面よ。最初は何の冗談かと思ったわ。まさに、アニメとか漫画とかに出てきそうな怪物なんだもの。ほら、人気のやつにあったじゃない?どこかの屋敷に閉じ込められて、でっかい巨人に襲われて逃げ回るゲームとか」
「ああ、確かに」
「ひっどい目に遭ったわよ。脚の速さにはそこそこ自信あったんだけど、さすがにああもしつこく追い回されて、しかも最終的に二体目が出て挟み撃ちにされたんじゃどうしようもないわ。二体がかりで生きたまま内臓喰われる経験なんて二度としたくないものね」
「うわ……」
カンナは自分が死んだ時のことを思い出してしまい、思わず口元を抑える。あの化物の最悪なところの一つが、獲物を即死させてくれないということだ。腹を裂かれて、自分の腸がはみ出してくる恐怖と激痛といったらない。ミラの最期も、似たようなものであったらしい。
「……気がかりなのは、あの時死んだのが私だけだったのかっていうこと。少し前に別れた友達がどうなったのか、私にはわからないのよ。だからゲームに勝つことができたなら、女王様に尋ねるつもり。あの子はどうなったのかって。もしあの子も死んでいて、この世界にどこかにいるというのなら……あの子のことも救ってくれるように女王様に頼んでみるつもりよ」
それとね、とミラは続ける。
「もう一つ気になっていることがあって。……私、かなり長い時間化け物に追い回されたのよ。慣れた住宅街を、結構縦横無尽に逃げ回ったのに。で、一体をどうにか撒こうと頑張っていたらもう一体出てきて挟み撃ちにされたんだけど。……あの住宅街の近くには、いくつも小学校や中学校があったのよね。つまり、子供は私だけじゃなかったはずなの。その学校の子達も襲われたのかもしれないけれど……それにしても、随分私一人、しつこく追われたなって印象があって」
それって、とカンナは眉をひそめる。もしかして、化け物は襲う獲物を選んでいた、ということなのだろうか。
「……人狼ゲームを知っていて、それなりに腕に覚えのあるやつを選んで襲っていた……なんてことはあるか?」
「は!?」
絆がとんでもないことを言い出した。思わずカンナは素っ頓狂な声を上げてしまう。
「そ、そんなのなんで化物に分かるの!?ていうか、メリットは何!?人狼ゲームが得意な人ばっかり襲っていたんだとしたら、それってまるで……」
この世界の女王様とやらが、化物の襲撃そのものに一枚噛んでいるみたいではないか。
流石にそれは、思っても口にできなかった。既に女王様が管理する施設の中にいるのである。このエレベーターの中にもカメラがあるとみて間違いない。あまり迂闊なことは言わない方が良さそうだ。
勿論カンナが黙っても、あとの二人には言いたいことは充分伝わっただろうが。
「……そのへんのことは、今の時点ではなんとも言えないわね」
険しい顔で、ミラが強引に話を打ち切った。
「この本戦を勝利することができて……女王様とやらに会うことができたなら。その真実を、知ることもできるのかしらね。……ところで」
「ん?」
「……そろそろこの喋り方疲れてきたんだけど、私いつまで頑張って女言葉使わないといけないのかしら。せっかく女に転生したんだから女王様系のキャラやってみようなんて、どうして思っちゃったんだろうと今とっても後悔してるんだけど」
「ぶっ」
思わず吹き出してしまうカンナ。シリアスが一気に吹き飛ぶことになってしまった。やっぱりこのミラという女性(中身は男性らしい?)。実際はとても愉快な性格をしているのではなかろうか。
――実はめっちゃおじいさんだったりする?あ、でも学校帰りなんて言い方してたから、その可能性は低いか?あ、いやいやいや、でも学校の先生ってこともあるかもしれないし、大学生なら年齢は関係ないだろうし……。
「もー……面倒ならなんでそんなキャラにしちゃったんだ……」
カンナが苦笑しながらツッコミを入れた時、ぴーん、という甲高い音とともにエレベーターが到着した。どうやら、部屋がある階に到着したらしい。
「さて」
パン、と。拳と手のひらを合わせて気合を入れて、絆が告げた。
「気合入れるか。行くぞ」
気を引き締めなければいけない。
ここからが、本番である。
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