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<17・翼折れるにはまだ早く。>
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アンガス王とその兄弟の悲劇。真実を聞いたレネは、絶句する他なかった。
事故と病気で死んだ現皇帝の兄弟姉妹。――実際は全然違うではないか。まさか“殺し合いで死んだ”なんて噂や冗談が本当であったとは。
実際に手を下したのは、末の弟以外はみんな皇子・皇女たちの私設兵や傭兵たちなのだろうが。
「……まるで呪いなのですよ」
ルーイは疲れた顔で言った。
「誰だって、できることならば血の繋がった兄弟と殺し合いなどして、血まみれの帝位が欲しいわけではありません。しかし、自分がそのようにして皇帝になってしまった者は呪いを受ける。アンガス皇帝も同じ。ご本人は一人も殺していない可能性が高く、しかもできれば末の弟の助命手段を最後まで探していたはずだったというのに……息子、娘たちには同じことを教えるわけです。強い者だけが生き残ることができ、皇帝になることができる。強くない者に生きる価値はなく、皇帝になる資格もない、と」
「……自分が、そのようにして生き残ったから。その制度を否定したら、兄弟姉妹の死が無駄になると思ってしまう、と」
「そういう風に私は解釈しています。そして、呪われた系譜はえんえんと続いてきました。……アイザック皇子は、それを変えたいと強く望んでおいでです。そのような恐ろしいこと、先代で終わりにしたいのだと。ですが、ご両親の教育に強く影響を受け、兄弟間での殺し合いに積極的な者がいるのもまた事実」
その“積極的な誰か”がアイザックを狙ったというわけらしい。
少なくとも三年前、レネを狙って自宅に襲撃をかけてきたのが第一皇女・ガブリエラがケツモチをするマフィアであったことまではわかっている。彼女が恐らくは、この殺し合いに積極的だろうということも。
今回も、ガブリエラの手によるもの、なのかもしれない。
元よりガブリエラはアイザックと仲が悪い。というより、幼少期から兄に猫っかわいがりされているアイザックのことが気に食わなくて一方的につっかかってくるということらしい。
そして、実は第一皇子マイルズが腹の底ではアイザックのことが嫌いで狙っていた――というわけでないのなら。今回手榴弾を投げ込んできた男は、マイルズ皇子以外の誰かの手のものということになる。
ただ、アンガス皇帝の時は、それぞれの皇子・皇女に心酔する者が独断で行動を起こした可能性もあるという。
皇子・皇女が命令していないのに支援者が勝手なことをした可能性もゼロではないのかもしれない。
「覚悟はしていたし、そのためにミカエルがあるのも事実。でも、今回は本当に肝が冷えたんです。……私は、あの方が……アイザック様がいなければ生きていけない」
ルーイは顔を伏せる。
「私の人生は、あの方に出会えなければ始まらなかった。あの方がいなければ私の人生には何の価値もない。私など、あの方なしでは……っ」
「ふざけんなよ」
思わずレネは、そんなルーイに口をはさんでいた。価値がない。それはルーイに一番言ってほしくないものだった。例えその対象が、ルーイ自身であるとしても、だ。
「あんた、俺になんて言ったのか忘れたのか」
『私がお仕えする方は、身分や階級が命の価値さえ決めてしまう世界を変えようとしている。それは、あの方が人の本当の価値は目に見えるものではないとわかっているからこそ』
『貴方は、価値のない人間なんかではないですよ。……けして』
身分や階級が命の価値を決めてしまう世界を変えたい。
本当の価値は目に見えるものではない。そう言ったのは、レネに言ってくれたのはルーイだ。
「あんたが何でそんなに、アイザック皇子に心酔しているのかは知らない。あんたにとってアイザック皇子がどういう存在なのか……てのは、訊いたら駄目なやつなんだろ?踏み込まれたくないんだろ?だから訊かない。でもな。アイザック皇子がいなければ自分に価値がないなんて、その言葉だけは取り消してもらおうか」
「何故です。貴方はまだ、私のことなんてろくに知らないでしょう」
「そうだな、知らない。あんたがこの三年間、ろくに踏み込ませなかったからな。いつもどこでも腹立つくらい距離があったし」
そして一度は非合意で抱いておいて、それからいっぺんも手を出してこないし――という言葉を飲み込んだ。
「でも、あんたがミカエルの奴らにどんだけ慕われていて、愛されてるのかは知ってる。あいつらは、アンタのことを心底尊敬してるし、感謝してる。あんたにこの部隊に誘ってもらって心底良かったって、そういう話をする奴らばっかだ。さっき部屋に投げ込んだオーガストもな」
『あの人が話したくないことに、無理やり踏み込むのも野暮ってなもんだし。特に、皇子との関係には本当に踏み込まれたくないみたいだしさ。……隊長に感謝してるのは、オレらも一緒だからよ』
一つの事実として。
レネ自身、ミカエルに入るまで知らなかったことだ。軍という、いつ人を殺すか殺されるかという場所にいるはずなのに、あんなに笑顔でいられる場所があるなんてことは。
どんなきつい任務があっても、あの男たちから笑顔が消えることはない。くだらない冗談を言い合い、仲間のことをどつきまわし、時に仲良く夜の町に繰り出す。レネ自身、オーガストたちと一緒にいるのは居心地が良いと感じているのも確かだ。
「……あんたのことを全部信じたわけじゃないが。あの日あんたに拾われなかったら、俺はきっとマフィアにろくな目に遭わされてなかったんだろうし、殺されていた可能性も高い。そしてきっと今日まで、温かいベッドで寝たり、仲間と居酒屋で馬鹿やるなんてこともなかっただろうさ。そういう意味じゃ俺だって……あんたに感謝してるし、恩は感じてるんだ」
どんな意図があったとしても。少なくともこの三年間、ルーイがレネを裏切るような真似は一つもしていない。
他の仲間たち相手にも同様に。
「そんな俺達の気持ちも、笑顔も、頑張りも。あんたには価値がないっていうのか?」
「貴方がたのことは、そんなつもりでは……」
「あんたの過去に何があったのかは知らないし、きっと俺らが想うより苦労もあったんだろうけど。そんでもって今回のことで相当ヘコんでるのも事実だろうけど。だからって、その鬱に他の奴らの気持ちまで巻き込んでんじゃねえよ、そういうのマジで不愉快だぜ。何より……あんたこんなところでうじうじ夜更かししてる場合か?その顔で皇子の前に出るつもりかよ。一番ヘコんでるのが誰なのかわかってんのか?」
「……っ」
間違いなく、命を狙われた当人であるアイザック皇子がショックを受けている。自分だけじゃない、一般市民も巻き込むような人間が自分を狙っているという事実。同時に、皇帝から話を詳細に聞かされていたなら余計感じたはずだ。
自分一人殺されたら、それが“殺し合い”の口火を切ってしまうと。
他の兄弟を守るためにも、何がなんでも死んではならないのだと。
「あんたがやるべきは、今日はぐっすり寝て、明日からきっちり犯人の調査をすること!でもって、俺らと一緒に皇子を守るってことだろ。切り替えろよ、ガキじゃねえんだから!」
結構きついことを言っているのは理解している。でも、今はすごく――すごくすごく、どうしようもなく何かがしたくてたまらないのだ。
ルーイのこんな顔を、いつまでも見ていたくない。天使のように綺麗だけど、落ち込んでいる姿も美しいけれど。
やっぱり、いつものように飄々と笑っている方があっている、なんて。そんな風に思うのだ。いや、アイザック皇子のことで悩んでいるのが悔しいとか、そういう気持ちもないわけではないのだが。
「眠れますかね」
消え入りそうな声でるルーイが言う。まったく、これだけ言っても、嫌味の一つも返してこないとは。重症もいいところだな、と呆れつつ、ルーイは机の上に身を乗り出した。
男娼時代に培ったスキル。相手が男相手に不快感がないと知っているのであれば、これもまた効果あり。すなわち。
「!」
その唇に、真正面からぶつかるようなキスをしたのだ。少し勢いがつきすぎて歯が当たってしまったけれど。
気持ちを切り替えるには、突拍子もないことをするに限る。
「……なあ、あんた、なんで三年前に俺を抱いて、それっきりなわけ?」
ルネは上目遣いでルーイを見上げる。
「まさか、子供相手にひどいことしちゃった、とかそんなこと思ってた?悪いけど、俺まったく傷ついてなかったから。あんたのやり方優しかったから全然痛くなかったし、むしろ超気持ち良かったし。大体、本気で嫌だったなら抵抗してるっつーの。むしろ、あれからあんたのこと思い出して結構ツラかったくらいなんだからね?」
「何を……」
「セックス。やったら気持ちよく寝れるっしょ。俺とやろ」
ちょうどいい口実。落ち込んでいるのを利用しているのは、自分でもわかっている。なかなか卑怯だということも。でも。
欲しい、と思っているのは――思い続けていたのは事実だ。これはけして恋愛感情ではないと思う。好きなわけではないと思う。体の相性が良かっただけで、それ以上の意味なんかないはずだ。だから、向こうも向こうでそれでいい。
ただ、これ以上ルーイに苦しんで欲しくないと思うのはきっと、彼が隊長だからというだけで。
「……いつも、こういう風に男を誘ってきたんですか?」
ルーイがやや悔しそうな顔で唇を拭う。レネは笑った。なんで悔しいのかって、さっきのキスで火を灯されたからだろう。自分にはバレバレなのである。
「此処に来てからは誘ってないって。安心しろよ、ミカエルの仲間を誘ったこともない。でも、あんたが必要だって思うならいつでも俺を使えよ。スパイとして男と寝るくらいわけない。俺にしかできねえことだろ?」
「利用されるのは嫌なんじゃなかったんですか?」
「もちろんだ。今でも俺は、あんたを利用してるつもり。でも、お互いそれでなんだかんだうまくやれてるんなら、それでもいいじゃん。だから今日は、俺を利用しとけよ。皇子相手に恋愛感情はないって言ったのはあんただろ。でもって今他に恋人なんかいない、そうだろ」
「…………」
はあ、とルーイは深くため息をついた。そして立ち上がると、レネの顔を見下ろして言ったのである。
「やるなら、ちゃんとベッドの上ですよ?」
事故と病気で死んだ現皇帝の兄弟姉妹。――実際は全然違うではないか。まさか“殺し合いで死んだ”なんて噂や冗談が本当であったとは。
実際に手を下したのは、末の弟以外はみんな皇子・皇女たちの私設兵や傭兵たちなのだろうが。
「……まるで呪いなのですよ」
ルーイは疲れた顔で言った。
「誰だって、できることならば血の繋がった兄弟と殺し合いなどして、血まみれの帝位が欲しいわけではありません。しかし、自分がそのようにして皇帝になってしまった者は呪いを受ける。アンガス皇帝も同じ。ご本人は一人も殺していない可能性が高く、しかもできれば末の弟の助命手段を最後まで探していたはずだったというのに……息子、娘たちには同じことを教えるわけです。強い者だけが生き残ることができ、皇帝になることができる。強くない者に生きる価値はなく、皇帝になる資格もない、と」
「……自分が、そのようにして生き残ったから。その制度を否定したら、兄弟姉妹の死が無駄になると思ってしまう、と」
「そういう風に私は解釈しています。そして、呪われた系譜はえんえんと続いてきました。……アイザック皇子は、それを変えたいと強く望んでおいでです。そのような恐ろしいこと、先代で終わりにしたいのだと。ですが、ご両親の教育に強く影響を受け、兄弟間での殺し合いに積極的な者がいるのもまた事実」
その“積極的な誰か”がアイザックを狙ったというわけらしい。
少なくとも三年前、レネを狙って自宅に襲撃をかけてきたのが第一皇女・ガブリエラがケツモチをするマフィアであったことまではわかっている。彼女が恐らくは、この殺し合いに積極的だろうということも。
今回も、ガブリエラの手によるもの、なのかもしれない。
元よりガブリエラはアイザックと仲が悪い。というより、幼少期から兄に猫っかわいがりされているアイザックのことが気に食わなくて一方的につっかかってくるということらしい。
そして、実は第一皇子マイルズが腹の底ではアイザックのことが嫌いで狙っていた――というわけでないのなら。今回手榴弾を投げ込んできた男は、マイルズ皇子以外の誰かの手のものということになる。
ただ、アンガス皇帝の時は、それぞれの皇子・皇女に心酔する者が独断で行動を起こした可能性もあるという。
皇子・皇女が命令していないのに支援者が勝手なことをした可能性もゼロではないのかもしれない。
「覚悟はしていたし、そのためにミカエルがあるのも事実。でも、今回は本当に肝が冷えたんです。……私は、あの方が……アイザック様がいなければ生きていけない」
ルーイは顔を伏せる。
「私の人生は、あの方に出会えなければ始まらなかった。あの方がいなければ私の人生には何の価値もない。私など、あの方なしでは……っ」
「ふざけんなよ」
思わずレネは、そんなルーイに口をはさんでいた。価値がない。それはルーイに一番言ってほしくないものだった。例えその対象が、ルーイ自身であるとしても、だ。
「あんた、俺になんて言ったのか忘れたのか」
『私がお仕えする方は、身分や階級が命の価値さえ決めてしまう世界を変えようとしている。それは、あの方が人の本当の価値は目に見えるものではないとわかっているからこそ』
『貴方は、価値のない人間なんかではないですよ。……けして』
身分や階級が命の価値を決めてしまう世界を変えたい。
本当の価値は目に見えるものではない。そう言ったのは、レネに言ってくれたのはルーイだ。
「あんたが何でそんなに、アイザック皇子に心酔しているのかは知らない。あんたにとってアイザック皇子がどういう存在なのか……てのは、訊いたら駄目なやつなんだろ?踏み込まれたくないんだろ?だから訊かない。でもな。アイザック皇子がいなければ自分に価値がないなんて、その言葉だけは取り消してもらおうか」
「何故です。貴方はまだ、私のことなんてろくに知らないでしょう」
「そうだな、知らない。あんたがこの三年間、ろくに踏み込ませなかったからな。いつもどこでも腹立つくらい距離があったし」
そして一度は非合意で抱いておいて、それからいっぺんも手を出してこないし――という言葉を飲み込んだ。
「でも、あんたがミカエルの奴らにどんだけ慕われていて、愛されてるのかは知ってる。あいつらは、アンタのことを心底尊敬してるし、感謝してる。あんたにこの部隊に誘ってもらって心底良かったって、そういう話をする奴らばっかだ。さっき部屋に投げ込んだオーガストもな」
『あの人が話したくないことに、無理やり踏み込むのも野暮ってなもんだし。特に、皇子との関係には本当に踏み込まれたくないみたいだしさ。……隊長に感謝してるのは、オレらも一緒だからよ』
一つの事実として。
レネ自身、ミカエルに入るまで知らなかったことだ。軍という、いつ人を殺すか殺されるかという場所にいるはずなのに、あんなに笑顔でいられる場所があるなんてことは。
どんなきつい任務があっても、あの男たちから笑顔が消えることはない。くだらない冗談を言い合い、仲間のことをどつきまわし、時に仲良く夜の町に繰り出す。レネ自身、オーガストたちと一緒にいるのは居心地が良いと感じているのも確かだ。
「……あんたのことを全部信じたわけじゃないが。あの日あんたに拾われなかったら、俺はきっとマフィアにろくな目に遭わされてなかったんだろうし、殺されていた可能性も高い。そしてきっと今日まで、温かいベッドで寝たり、仲間と居酒屋で馬鹿やるなんてこともなかっただろうさ。そういう意味じゃ俺だって……あんたに感謝してるし、恩は感じてるんだ」
どんな意図があったとしても。少なくともこの三年間、ルーイがレネを裏切るような真似は一つもしていない。
他の仲間たち相手にも同様に。
「そんな俺達の気持ちも、笑顔も、頑張りも。あんたには価値がないっていうのか?」
「貴方がたのことは、そんなつもりでは……」
「あんたの過去に何があったのかは知らないし、きっと俺らが想うより苦労もあったんだろうけど。そんでもって今回のことで相当ヘコんでるのも事実だろうけど。だからって、その鬱に他の奴らの気持ちまで巻き込んでんじゃねえよ、そういうのマジで不愉快だぜ。何より……あんたこんなところでうじうじ夜更かししてる場合か?その顔で皇子の前に出るつもりかよ。一番ヘコんでるのが誰なのかわかってんのか?」
「……っ」
間違いなく、命を狙われた当人であるアイザック皇子がショックを受けている。自分だけじゃない、一般市民も巻き込むような人間が自分を狙っているという事実。同時に、皇帝から話を詳細に聞かされていたなら余計感じたはずだ。
自分一人殺されたら、それが“殺し合い”の口火を切ってしまうと。
他の兄弟を守るためにも、何がなんでも死んではならないのだと。
「あんたがやるべきは、今日はぐっすり寝て、明日からきっちり犯人の調査をすること!でもって、俺らと一緒に皇子を守るってことだろ。切り替えろよ、ガキじゃねえんだから!」
結構きついことを言っているのは理解している。でも、今はすごく――すごくすごく、どうしようもなく何かがしたくてたまらないのだ。
ルーイのこんな顔を、いつまでも見ていたくない。天使のように綺麗だけど、落ち込んでいる姿も美しいけれど。
やっぱり、いつものように飄々と笑っている方があっている、なんて。そんな風に思うのだ。いや、アイザック皇子のことで悩んでいるのが悔しいとか、そういう気持ちもないわけではないのだが。
「眠れますかね」
消え入りそうな声でるルーイが言う。まったく、これだけ言っても、嫌味の一つも返してこないとは。重症もいいところだな、と呆れつつ、ルーイは机の上に身を乗り出した。
男娼時代に培ったスキル。相手が男相手に不快感がないと知っているのであれば、これもまた効果あり。すなわち。
「!」
その唇に、真正面からぶつかるようなキスをしたのだ。少し勢いがつきすぎて歯が当たってしまったけれど。
気持ちを切り替えるには、突拍子もないことをするに限る。
「……なあ、あんた、なんで三年前に俺を抱いて、それっきりなわけ?」
ルネは上目遣いでルーイを見上げる。
「まさか、子供相手にひどいことしちゃった、とかそんなこと思ってた?悪いけど、俺まったく傷ついてなかったから。あんたのやり方優しかったから全然痛くなかったし、むしろ超気持ち良かったし。大体、本気で嫌だったなら抵抗してるっつーの。むしろ、あれからあんたのこと思い出して結構ツラかったくらいなんだからね?」
「何を……」
「セックス。やったら気持ちよく寝れるっしょ。俺とやろ」
ちょうどいい口実。落ち込んでいるのを利用しているのは、自分でもわかっている。なかなか卑怯だということも。でも。
欲しい、と思っているのは――思い続けていたのは事実だ。これはけして恋愛感情ではないと思う。好きなわけではないと思う。体の相性が良かっただけで、それ以上の意味なんかないはずだ。だから、向こうも向こうでそれでいい。
ただ、これ以上ルーイに苦しんで欲しくないと思うのはきっと、彼が隊長だからというだけで。
「……いつも、こういう風に男を誘ってきたんですか?」
ルーイがやや悔しそうな顔で唇を拭う。レネは笑った。なんで悔しいのかって、さっきのキスで火を灯されたからだろう。自分にはバレバレなのである。
「此処に来てからは誘ってないって。安心しろよ、ミカエルの仲間を誘ったこともない。でも、あんたが必要だって思うならいつでも俺を使えよ。スパイとして男と寝るくらいわけない。俺にしかできねえことだろ?」
「利用されるのは嫌なんじゃなかったんですか?」
「もちろんだ。今でも俺は、あんたを利用してるつもり。でも、お互いそれでなんだかんだうまくやれてるんなら、それでもいいじゃん。だから今日は、俺を利用しとけよ。皇子相手に恋愛感情はないって言ったのはあんただろ。でもって今他に恋人なんかいない、そうだろ」
「…………」
はあ、とルーイは深くため息をついた。そして立ち上がると、レネの顔を見下ろして言ったのである。
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