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<9・悪徳、悪人、悪趣味。>
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マフィアなりの歓迎。
ろくなものでないのは確かである。あまりそちらに踏み込まないようにしていたので詳しくはないが、噂によれば指を一本ずつ切断させる拷問だとか、トゲトゲに石の上に座らされて少しずつ重石を足される拷問だとか――そういうものを、死ぬまで繰り返されるなんてこともあるとかないとか。
「……わからないね。どういう歓迎をしてくれるんだ?」
なんとかこの場を打開する方法はないものか。レネは頭を回転させる。とりあえずは時間稼ぎ。話をすればするだけ相手の弱点も見えてくるというもの。見たところ、この連中はマフィアの中でも下っ端。そこまで脳みそが詰まっているタイプにも見えない。
「なんだよ、興味あるのか?」
馬乗りになっている痩身の男が、楽し気に嗤う。相手をいたぶること、見下すことが楽しくて仕方ない――そんな目をしている。
「そうだな、お前は男娼やってるんだろう?男の喜ばせ方もよく知ってるだろうし、見た目も女みたいだからな。女扱いして可愛がってやってもいいぜ」
「ふうん、詳しく聞かせてくれよ」
「なあに、簡単さ。代わる代わる突っ込みながら、腕や足の肉をちょっとずっとずつ削り取っていくんだ。ちゃんと、太い血管のあるような場所は避けるとも。最終的にある程度口がきける状態になってりゃ、用事は済む。ダルマになろうがこっちは関係ないからな。突っ込みながら刺してやるとな、男にしろ女にしろいい具合に締め付けてくれてたまらねーんだ。ああ、場合によっては一緒に首も絞めるんだが、首を絞めると相手が喋れなくなるのが難点でなあ。尋問したい時にはちょいと向かねえんだよなあ」
すすすす、と男の手がレネの下半身に伸びる。体を震わせるふりをしながら、ちらり、とその奥に立つ屈強な二人の男達を見た。
新たに人が増えた様子はない。部屋に潜んでいたのは合計三人とみて間違いなさそうだ。そもそも、隠れられる場所がそう多いわけでもない。大きなクローゼットも置いてない部屋だ。ベッドの下に、痩身とはいえ成人男性が一人隠れていただけでもすごいと言える。その状態で何時間も待っていたんだとしたら、よっぽどの執念だとしか思えない。まあ、ものすごく待たされた、というのも本当かどうかはわからないが。
力技でこいつをはねつけるのは正直難しい。相手の機嫌を取るためには言葉を使うしかない。
うまい具合に相手を“その気”にさせてしまうことはできないものか。早い話、自分を“レイプしよう”という気にさせてしまえばこっちの土俵に持ち込める――それが己だ。
理由は簡単。一度でもイケば、睡魔が襲ってくるのはどんな屈強な兵士でも避けられるものではないからである。好きにやらせて、疲れさせることができればあるいは逃げる隙もできよう。
場合によっては、この部屋に隠してある武器や薬を用いることもできるかもしれない。
「女の場合は、穴が二つあって便利なんだよな」
さっさと仕事しろ、とせっつかれているわけでもないのか。男はへらへらしながらやたらと喋る。
「例えばマ●コに突っ込んだ状態でな、ケツに道具をちょっとずつ突っ込んでいってやるわけだ。どんな道具か?媚薬と下剤をたっぷり含んだながい、ながーいディルドやチューブを使うのがおれは好きだなあ。そうすると、どんどん腹が痛くなるせいでな、女の顔が白くなったり青くなったりおもしれえんだ。それでいて、媚薬がきいてくるもんだからどんどんマ●コも濡れてきてよお、感じてるせいで喘ぎ声とうめき声が混じる混じる。涎みたいにマ●コから汁も垂れ流してるし、段々腹がいてえのも気持ちよくなるらしくってなあ?」
「へえ……」
「腸の奥の奥、直腸どころか結腸も超えたところまで突っ込まれてよ?しかも劇薬で、腹がいてえなんてものじゃねえし、ウンコ漏らさないように必死で耐えるしかねえのに、苦しいせいでどんどん締め付けてくれてこっちは天国なんだ。しまいには、出させてくれ、出させてイカせてくれと自分で懇願するようになるわけよ。それがまた最高で……と、お前は男だからその方法は使えねんだよなあ、穴一つしかねえもんなあ。ケツぶっこわしちまったらお楽しみもできねえし、それはもったいねえか。じゃあ、前の方で……」
「あのさ」
聞くに堪えない、サディスティックな趣味。不愉快だが、それ以上にこのまま喋らせ続けるのは得策ではないと判断した。
理由は単純明快、後ろの男たちがイラつき始めた気配を感じたからだ。
本当はもっと話をさせて時間を稼ぎ、隙を作るなりルーイが気付くように仕向けるなりとしたかったわけだが、このままだと後ろの連中が面倒なことをしてくれそうである。
できれば怪我をしたくない。そういう気持ちはレネにもあるのだから。
「確かに、俺はどこぞの皇子様か皇女様の用で呼ばれた。ただ、本人に会ってないもんだから、誰が用があったのかはわからない。だいたい、俺もこの国の上の方の奴らなんか信じてないからな。仕事をしていい相手かどうかなんて、一回話をしただけでわかるはずもないだろ。だからまだ仕事の内容もろくに聞いてないし、引き受けてもいない」
半分は本音だった。まあ、レネの立場上、騙されているかもしれないとわかっていてもルーイに従うしかないなと思っていたのは確かだが。
「だからあんたらに、話せるような情報なんかろくにないんだ。でもな。……これからそういう情報を得られるかもしれないってのは、事実ではあるな」
「何が言いたい?」
「あんたらの方が信用できると思ったら、ついていってもいいって話さ。ただ、条件がある。あんたらにとっても悪い話じゃないと思うが」
条件、なんて言い方をすれば本来相手の機嫌を損ねる。向こうは脅して無理やりレネを連れていくことも殺すこともできる立場なのだから。
あくまでマウントを取りたいわけではない。ほんの少しだけ、いい思いをしたいだけ。そういう風を装って、レネは笑みをこぼした。
「俺と遊んでくれよ、おにーさん」
さっきまでの言動からして、この男は男にまったく興味がないタイプではない。ならば、操ることは十分可能だ。
「わかるだろ?男娼なんて仕事してるのに、オトコと寝るのが好きじゃないわけあるかよ。無論、金がないから仕方なくやってるやつもいるんだろうが俺は違う。元々スキなんだ、そういうのが。で、最近ちょいと、いい男にご無沙汰でな。……あんたが俺を満足させてくれたら、味方についてもいい。なんなら、そこのお二人さんも参加するか?」
「本気で言ってんのか?」
「本気も本気。ああ、でも……イタイのは好きじゃないから、優しくしてくれたら嬉しい、かな?」
子供っぽく、恥ずかしそうに、ちょっとだけ上目遣いを作って。その笑顔だけで男の欲情を誘には十分だと知っていた。
案の定、のしかかってきている男はごくり、と唾を飲み込んでいるし――後ろの男達は明らかに驚いている。まさかここでヤる気か、本気なのか、という顔。
無論、本気でないはずがない。この状況では寝技に持ち込まない限り、こっちに勝ち目なんてないのだから。
「もう、はっきり言わないとわからない?」
男の首に腕を回して、耳元で囁いて言った。
「取引なんて本当はどうでもいい。お兄さんが欲しくなっちゃったの。だからさ、とりあえず抱いてよ。細かい話なんてさ、その後でだっていーじゃん?」
「……ははっ」
そんなレネに、男は乾いた声で笑った。彼はこう理解したはずだ。本当はマフィア側につくことに躊躇いなんてない。でも大義名分は欲しい。ついでに性欲も発散させてほしいからこの場で誘っている。今日会った皇子サマなんぞに愛着も未練も何もないのだから――と。
「いい根性してるぜ、お前!そうだよなあ、お前もわかってんだよなあ、自分の本当の価値ってやつをよお!」
元々性欲が強いタイプなのだろう。あっさり舌なめずりをして、レネのシャツに手をかけてきた。ぶちぶちぶち、とボタンがはじけ飛ぶ音がする。かなり高いシャツを借りていたのにもったいないな、なんてことを頭の隅で思った。
ルーイなら、横着なんてしないでちゃんとボタンを外してくれたというのに。
「そうとも、そうともさ!お前の価値はそうやって、男に媚び売ることしかねえんだよなあ!そうとも、それがこの世界に定められたお前の価値なんだからしょうがねえ!お貴族様も皇族サマも、そういう風に当たり前に思っていて決めつけてくる筆頭だ。信じるに値するわけがない!そうとも、それが賢い選択だ。おれさの下で腰振ってりゃ、みんな可愛がってくれる。お前の価値なんかそんなもんだもんなあ、ははははは、ははははははははは!」
「おい、本当にここでおっぱじめるつもりか」
「物好きだな、男だろ?」
「なんだよなんだよお前ら。そういうこと言いつつ、この間の乱交パーティには普通に参加してたろ?男相手だっておったててやがったじゃねえか。混ざりたいなら素直に言えって。こいつもOKだって言ってるんだしよお!」
呆れた様子の屈強な男達に、笑いながら告げる痩身の男。この様子だと、この痩身の男が一番地位が高いか、あるいはリーダーといったところなのだろう。こいつさえオトせば、あとはどうにでもなりそうだ。
なんとか虜にして、搾り取って、その隙に必要なものだけ持って逃げなければ。男が嬉しそうに胸元に吸い付いてくる。こんなガキの胸にも興味があるとか普通に変態だな、なんてことを遠くで思った。
数時間前にルーイに抱かれたばかりとはいえ、毎回慣らされないと体に傷がつくのは道理。いきなり突っ込まれたらちょっときついな、なんてことを思ったその時だった。
「まったく、つまらないお話をしていらっしゃるようで」
ぐぎゃ、と濁った声が聞こえた。レネは目を見開く。視界の隅で、屈強な男の一人の体がふわりと宙を舞うのが見えたからだ。
そういえば、玄関の鍵はかけていなかったかもしれない。そこから入ってきた人物に、男が思い切り殴り飛ばされたということだろう。
誰に?
決まっている。たった今口を開いた主に、だ。
「な、なに?」
レネのズボンに手をかけようとしていた痩身の男が声を上げた。次の瞬間、その男の首ねっこを細い腕が掴み上げているではないか。
紫がかった軍服に、ピンクにも見えるような明るい茶髪。見間違えるはずがない。
「ルーイ……」
レネが名前を呼ぶと。こちらを見た青年が、にこりと微笑んでみせたのだった。
ろくなものでないのは確かである。あまりそちらに踏み込まないようにしていたので詳しくはないが、噂によれば指を一本ずつ切断させる拷問だとか、トゲトゲに石の上に座らされて少しずつ重石を足される拷問だとか――そういうものを、死ぬまで繰り返されるなんてこともあるとかないとか。
「……わからないね。どういう歓迎をしてくれるんだ?」
なんとかこの場を打開する方法はないものか。レネは頭を回転させる。とりあえずは時間稼ぎ。話をすればするだけ相手の弱点も見えてくるというもの。見たところ、この連中はマフィアの中でも下っ端。そこまで脳みそが詰まっているタイプにも見えない。
「なんだよ、興味あるのか?」
馬乗りになっている痩身の男が、楽し気に嗤う。相手をいたぶること、見下すことが楽しくて仕方ない――そんな目をしている。
「そうだな、お前は男娼やってるんだろう?男の喜ばせ方もよく知ってるだろうし、見た目も女みたいだからな。女扱いして可愛がってやってもいいぜ」
「ふうん、詳しく聞かせてくれよ」
「なあに、簡単さ。代わる代わる突っ込みながら、腕や足の肉をちょっとずっとずつ削り取っていくんだ。ちゃんと、太い血管のあるような場所は避けるとも。最終的にある程度口がきける状態になってりゃ、用事は済む。ダルマになろうがこっちは関係ないからな。突っ込みながら刺してやるとな、男にしろ女にしろいい具合に締め付けてくれてたまらねーんだ。ああ、場合によっては一緒に首も絞めるんだが、首を絞めると相手が喋れなくなるのが難点でなあ。尋問したい時にはちょいと向かねえんだよなあ」
すすすす、と男の手がレネの下半身に伸びる。体を震わせるふりをしながら、ちらり、とその奥に立つ屈強な二人の男達を見た。
新たに人が増えた様子はない。部屋に潜んでいたのは合計三人とみて間違いなさそうだ。そもそも、隠れられる場所がそう多いわけでもない。大きなクローゼットも置いてない部屋だ。ベッドの下に、痩身とはいえ成人男性が一人隠れていただけでもすごいと言える。その状態で何時間も待っていたんだとしたら、よっぽどの執念だとしか思えない。まあ、ものすごく待たされた、というのも本当かどうかはわからないが。
力技でこいつをはねつけるのは正直難しい。相手の機嫌を取るためには言葉を使うしかない。
うまい具合に相手を“その気”にさせてしまうことはできないものか。早い話、自分を“レイプしよう”という気にさせてしまえばこっちの土俵に持ち込める――それが己だ。
理由は簡単。一度でもイケば、睡魔が襲ってくるのはどんな屈強な兵士でも避けられるものではないからである。好きにやらせて、疲れさせることができればあるいは逃げる隙もできよう。
場合によっては、この部屋に隠してある武器や薬を用いることもできるかもしれない。
「女の場合は、穴が二つあって便利なんだよな」
さっさと仕事しろ、とせっつかれているわけでもないのか。男はへらへらしながらやたらと喋る。
「例えばマ●コに突っ込んだ状態でな、ケツに道具をちょっとずつ突っ込んでいってやるわけだ。どんな道具か?媚薬と下剤をたっぷり含んだながい、ながーいディルドやチューブを使うのがおれは好きだなあ。そうすると、どんどん腹が痛くなるせいでな、女の顔が白くなったり青くなったりおもしれえんだ。それでいて、媚薬がきいてくるもんだからどんどんマ●コも濡れてきてよお、感じてるせいで喘ぎ声とうめき声が混じる混じる。涎みたいにマ●コから汁も垂れ流してるし、段々腹がいてえのも気持ちよくなるらしくってなあ?」
「へえ……」
「腸の奥の奥、直腸どころか結腸も超えたところまで突っ込まれてよ?しかも劇薬で、腹がいてえなんてものじゃねえし、ウンコ漏らさないように必死で耐えるしかねえのに、苦しいせいでどんどん締め付けてくれてこっちは天国なんだ。しまいには、出させてくれ、出させてイカせてくれと自分で懇願するようになるわけよ。それがまた最高で……と、お前は男だからその方法は使えねんだよなあ、穴一つしかねえもんなあ。ケツぶっこわしちまったらお楽しみもできねえし、それはもったいねえか。じゃあ、前の方で……」
「あのさ」
聞くに堪えない、サディスティックな趣味。不愉快だが、それ以上にこのまま喋らせ続けるのは得策ではないと判断した。
理由は単純明快、後ろの男たちがイラつき始めた気配を感じたからだ。
本当はもっと話をさせて時間を稼ぎ、隙を作るなりルーイが気付くように仕向けるなりとしたかったわけだが、このままだと後ろの連中が面倒なことをしてくれそうである。
できれば怪我をしたくない。そういう気持ちはレネにもあるのだから。
「確かに、俺はどこぞの皇子様か皇女様の用で呼ばれた。ただ、本人に会ってないもんだから、誰が用があったのかはわからない。だいたい、俺もこの国の上の方の奴らなんか信じてないからな。仕事をしていい相手かどうかなんて、一回話をしただけでわかるはずもないだろ。だからまだ仕事の内容もろくに聞いてないし、引き受けてもいない」
半分は本音だった。まあ、レネの立場上、騙されているかもしれないとわかっていてもルーイに従うしかないなと思っていたのは確かだが。
「だからあんたらに、話せるような情報なんかろくにないんだ。でもな。……これからそういう情報を得られるかもしれないってのは、事実ではあるな」
「何が言いたい?」
「あんたらの方が信用できると思ったら、ついていってもいいって話さ。ただ、条件がある。あんたらにとっても悪い話じゃないと思うが」
条件、なんて言い方をすれば本来相手の機嫌を損ねる。向こうは脅して無理やりレネを連れていくことも殺すこともできる立場なのだから。
あくまでマウントを取りたいわけではない。ほんの少しだけ、いい思いをしたいだけ。そういう風を装って、レネは笑みをこぼした。
「俺と遊んでくれよ、おにーさん」
さっきまでの言動からして、この男は男にまったく興味がないタイプではない。ならば、操ることは十分可能だ。
「わかるだろ?男娼なんて仕事してるのに、オトコと寝るのが好きじゃないわけあるかよ。無論、金がないから仕方なくやってるやつもいるんだろうが俺は違う。元々スキなんだ、そういうのが。で、最近ちょいと、いい男にご無沙汰でな。……あんたが俺を満足させてくれたら、味方についてもいい。なんなら、そこのお二人さんも参加するか?」
「本気で言ってんのか?」
「本気も本気。ああ、でも……イタイのは好きじゃないから、優しくしてくれたら嬉しい、かな?」
子供っぽく、恥ずかしそうに、ちょっとだけ上目遣いを作って。その笑顔だけで男の欲情を誘には十分だと知っていた。
案の定、のしかかってきている男はごくり、と唾を飲み込んでいるし――後ろの男達は明らかに驚いている。まさかここでヤる気か、本気なのか、という顔。
無論、本気でないはずがない。この状況では寝技に持ち込まない限り、こっちに勝ち目なんてないのだから。
「もう、はっきり言わないとわからない?」
男の首に腕を回して、耳元で囁いて言った。
「取引なんて本当はどうでもいい。お兄さんが欲しくなっちゃったの。だからさ、とりあえず抱いてよ。細かい話なんてさ、その後でだっていーじゃん?」
「……ははっ」
そんなレネに、男は乾いた声で笑った。彼はこう理解したはずだ。本当はマフィア側につくことに躊躇いなんてない。でも大義名分は欲しい。ついでに性欲も発散させてほしいからこの場で誘っている。今日会った皇子サマなんぞに愛着も未練も何もないのだから――と。
「いい根性してるぜ、お前!そうだよなあ、お前もわかってんだよなあ、自分の本当の価値ってやつをよお!」
元々性欲が強いタイプなのだろう。あっさり舌なめずりをして、レネのシャツに手をかけてきた。ぶちぶちぶち、とボタンがはじけ飛ぶ音がする。かなり高いシャツを借りていたのにもったいないな、なんてことを頭の隅で思った。
ルーイなら、横着なんてしないでちゃんとボタンを外してくれたというのに。
「そうとも、そうともさ!お前の価値はそうやって、男に媚び売ることしかねえんだよなあ!そうとも、それがこの世界に定められたお前の価値なんだからしょうがねえ!お貴族様も皇族サマも、そういう風に当たり前に思っていて決めつけてくる筆頭だ。信じるに値するわけがない!そうとも、それが賢い選択だ。おれさの下で腰振ってりゃ、みんな可愛がってくれる。お前の価値なんかそんなもんだもんなあ、ははははは、ははははははははは!」
「おい、本当にここでおっぱじめるつもりか」
「物好きだな、男だろ?」
「なんだよなんだよお前ら。そういうこと言いつつ、この間の乱交パーティには普通に参加してたろ?男相手だっておったててやがったじゃねえか。混ざりたいなら素直に言えって。こいつもOKだって言ってるんだしよお!」
呆れた様子の屈強な男達に、笑いながら告げる痩身の男。この様子だと、この痩身の男が一番地位が高いか、あるいはリーダーといったところなのだろう。こいつさえオトせば、あとはどうにでもなりそうだ。
なんとか虜にして、搾り取って、その隙に必要なものだけ持って逃げなければ。男が嬉しそうに胸元に吸い付いてくる。こんなガキの胸にも興味があるとか普通に変態だな、なんてことを遠くで思った。
数時間前にルーイに抱かれたばかりとはいえ、毎回慣らされないと体に傷がつくのは道理。いきなり突っ込まれたらちょっときついな、なんてことを思ったその時だった。
「まったく、つまらないお話をしていらっしゃるようで」
ぐぎゃ、と濁った声が聞こえた。レネは目を見開く。視界の隅で、屈強な男の一人の体がふわりと宙を舞うのが見えたからだ。
そういえば、玄関の鍵はかけていなかったかもしれない。そこから入ってきた人物に、男が思い切り殴り飛ばされたということだろう。
誰に?
決まっている。たった今口を開いた主に、だ。
「な、なに?」
レネのズボンに手をかけようとしていた痩身の男が声を上げた。次の瞬間、その男の首ねっこを細い腕が掴み上げているではないか。
紫がかった軍服に、ピンクにも見えるような明るい茶髪。見間違えるはずがない。
「ルーイ……」
レネが名前を呼ぶと。こちらを見た青年が、にこりと微笑んでみせたのだった。
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