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<6・支配者と獲物の宴。>

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 そもそも、一方的に触られて、イカされている状況が非常にまずい。なんとか自分も相手に奉仕する形に持っていけないだろうか。
 快感に弱くない人間などいない。それがレネの持論である。
 ルーイの方も気持ちよくさせてしまえば、それで主導権を取り戻すこともできるはず。ならば次が来る前に、強引に懐に飛び込んでキスでもしてしまえばいい。こちとら、五歳の時から商売をさせられてるのだ。その気になれば、キスだけでも相手を絶頂させられるだけのスキルは持っているつもりだった。
 だが。

――ち、畜生!

 最初に触らせてしまったのが大失敗だった。体がだるくてまったく主通りに動いてくれない。息もすっかり上がっている。横たわったこの姿勢のまま待っていたら、次の攻めをただ待つばかり。抵抗せずに耐えるのが大正解にしても相手に奉仕しないでやられっぱなしになるのが正解というわけではないのだ。
 というか、基本的にこういうことは、向こうをイかせない限り終わらない。だから早く、一刻も早く起き上がって体勢を立て直さないといけないのに。

「うっ……!」

 まずいと思った時にはもう、ルーイの手がするりとレネの臀部に這っていた。そのままさわさわと尻を撫でられる。

「ふっくらしていて可愛いお尻だって言われません?男の子だからもっと固いかと思っていたのに、筋肉がつきすぎてない。ああ、男性に好かれるために、わざとそうしてるんですかね?」
「だ、黙れって、言ってるだろ……!」
「おやおや、まだそんな減らず口を叩く余裕があるなんて。おっぱいだけで無様にイカされたくせに。欲情がどうのとか、そんなこと言ってませんでしたっけ?結局一方的に絶頂させられたのは誰ですかねえ」
「うう、ううううっ……!」

 下腹部に散った精液を、ぬるぬると臍の下に塗り込まれる。向こうに体液をかけられたわけでもないのに、腹を揉まれるだけでぞくぞくと背筋が泡立ってしまう。まるでその下に子宮でもあって脈打っているかのように、欲しいという気持ちが強くなってしまう。
 あくまで生き残るために身に着けた“快感”であったはずなのに。前後不覚になるほど沈むことなどあってはならないと、そう思ってきたはずなのに。
 力が抜けて緩んだ足の間に、ルーイの手が滑りこんできた。さわ、とお尻の谷間に触れられて息がつまる。

「ああ、ここですね。貴方がたくさんたくさん、男の人をくわえこんできたところ」

 蕾の上を、くり、くり、と指で撫でられて転がされる。それだけで無意識に穴がひくつき、指先を飲み込もうと収縮してしまう。

「可愛い。ひくひくしていますよ。そんなに欲しいんですか、中に」
「そんなわけ、あるかっ……!」
「そんな強がり、言えないようにしてあげますよ。もう気づいているでしょう?私だってね、男性とシた経験がないわけじゃないってこと。男の子がどうすればキモチヨクなってしまうのか、もうわかってるんですよ?いや……女の子もココで感じる人は存外多いものですけどね。お尻の中から子宮を持ち上げられるのは結構いいみたいです。貴方はどうでしょうねえ」

 ぬるん、と精液でぬるついた指が滑り込んできた。一度イカされた体液を潤滑剤代わりにして、一本の指が腹の中をまさぐってくる。しかも、その指が動けば動くほどぬるつきが増してくるのだ。――それはレネの体質だった。濡れないと痛い思いをするから、いわば生存本能のようなものなのだろう。男なのに、触られると徐々に濡れてくるのである。気持ちよいと思ってしまえば思ってしまうほどに。

「ふぐっ……!」

 このままでは、と思ってももう遅い。指が後孔の中の、敏感な部分をぐうっと押し上げていた。バレないようにと思っても、反射的に跳ねてしまった腰は誤魔化せない。ふっくらとした前立腺を、くい、くい、と繰り返し持ち上げられる。それだけで、さっき一度精を吐き出したはずの股間のものがゆるく立ち上がってくるのが見えた。ああ、こっちには一度も触られていないというのに。

「男性は女性以上に誤魔化しがきかないですよねえ、気持ちがいいのが。というか、なんだか少し濡れてません?男の人に抱かれるために、体が随分健気な努力をしているようで」
「や、やかましい……ああっ!」
「いつのまにか、すっかり柔らかくなってきましたね。指、増やしてもいいですよね。まあ貴方の同意なんて必要ないんですけど」

 増やしてもいいですよねといいながら、もうすでに指は二本になっている。人差し指と中指が、くいくいと的確にお尻の中の気持ちの良いところを刺激してくる。さっきからちっとも痛みがない。異物感はあるが、それだけだ。口では鬼畜なことばかり言うくせに、どうしてこう手つきが優しいのだろう。
 まるで本当に恋人同士だと、勘違いしたくなってしまうではないか。自分達はあくまで、利用する者と利用される者、それだけの関係であるはずなのに。
 指がさらにもう一本増やされたのもわかった。三本を咥えこんだ穴の淵がひくひくと震え始める。もっと太いものをくわえたことがある腹が、足らないと訴え始めている。もっといっぱいに満たしてほしい。もっと大きなもの、熱いものでなければ満足できない――。

――いく、ま、またイッて……!

 あと少しで絶頂できる。精液が上がってくる感覚を覚えた次の瞬間、ずるん、と指が抜かれてしまった。あと少しだったのにどうして、とルーイを見上げ途端、ベッドがぎし、と大きく軋む音を立てる。
 ルーイの全体重がベッドに乗った音だと、気が付いた。

「淫乱」

 耳元に唇を寄せ、囁かれた。

「こんな体で、今までよくまともに仕事ができましたねえ。一歩間違えれば薬漬けにされて、さっさと殺されて捨てられていたでしょうに。よっぽど運が良かったんですね、貴方は」
「そう、かもな……っ」
「ふふふ、息が乱れてますよ。余裕、ないんでしょう?偉そうなこと言っていたくせに。欲しいなら欲しいって、さっさと言ってしまいなさいな」

 ああ、この勝負は負けだ。認めざるをえない。もう最初にあった余裕なんて微塵もない。このまま焦らされて放置されるのが一番最悪だ。腰は揺れてしまっているし、性器は立ち上がって涙を零している。くわえるものがなくなった秘所はひくひくと震えて、埋めてくれるものをずっと待ってしまっている。
 何より。
 耳にかかる吐息が、花の香りが、腹の底から熱を呼び起こさせる。気づいている――なんだかんだいって、こいつも自分に欲情してるのだと。

「欲しい……」

 掠れた声で、レネはルーイに訴えかけた。

「欲しい。お願い、焦らさないで……っ入れて!」

 この勝負は負けだが、完全な敗北でもない。欲しいと言えと言ってくる相手はつまり――そちらもレネの体を欲しがってきている証拠に他ならないのだから。
 ルーイは服を殆ど着たまま、ズボンの前だけ寛げるとレネの両足を抱え上げた。そして、真上からのしかかってくる。ひたり、と欲しくてたまらないところに当たる熱。ひくつく穴が、早く入れてと強請るように先端をくわえうこもとしている。
 ルーイが喉の奥で嗤った、次の瞬間。

「あ、あああああああああああああああああああああああああああああっ……!」

 ずるるるるるるるる、と熱い熱い塊がレネの体を貫いていた。欲しくてたまらなかった後孔の中をいっぱいに満たされる。腹の中を遡ってくるそれは大きく、太く、熱く、びくびくと欲望に脈打っている。
 それだけで、遡情していた。腹の上に二度目の精をぶちまけたところで、男が腰を動かし始める。

「や、やめてくれ、今、イったところ、で」
「関係ないんですよ。だって、貴方のための行為なんかじゃないんですから。あくまで、貴方が私に支配されていると分かっていただくためだけにしていることなんですもの。貴方が泣いて、ごめんなさいと負けを認めて、支配を受け入れるまで終わりません。これはそういうゲームなんですから」
「ふ、ふざけんな、あ、ああっ!」

 最悪なのは、その動きがあまりにも的確だということ。さっき指で探った“良いところ”を正確に抉ってくる。そのせいで、一突きごとに体が跳ねてたまらない。気づけば自分でもかくかくとみっともなく腰を動かしてしまっている。
 いつもなら、入れられてる間にだって余裕があるのに。
 もっと相手と話して、相手の望む言葉を言って、相手に好かれるような演技もして。そして、欲しい情報をいくらでも聞き出すことができるのに。
 三度目の絶頂まで、そう時間はかからなかった。しかもイっている間も向こうは動きを止めてくれないものだから、段々とイっている時とそうでないときの境目がわからなくなってくる。
 腰を掴む力は強いのに。行為は激しいのに。さっきから恋人みたいに鎖骨にキスを落としてくるし、痛みがちっともないせいで勘違いしたくなってしまう。彼が好きな相手はどう考えても自分ではないというのに。

「ふっ……」

 もやがかかる頭で、それでもまだ一矢報いてやりたい気持ちが残っていた。彼の顔が近づいてきたタイミングを見計らって、その唇の噛みつくようにキスをしてやる。
 ルーイの目が見開かれたのがわかった。まさかファーストキスだった、なんてことはないだろうが。

「は、はは……ざまあみろ……んんんんんっ!」

 次の瞬間最奥を突かれて、何度目になるかわからない頂点を極めていた。腹の中に熱いものを吐き出されたのを感じたところで、レネは意識を手放したのである。
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