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<29・Operations>
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とにかく状況を整理してみましょう、と。ゴートンのホテルの部屋に着くなりジルは切り出した。
「サリーさんとゾウマさんが、勇者パーティの最終決定権を持っている。そうですね?」
「ああ。正確にはサリーだな。ただ、サリーはゾウマの進言なら耳を貸す。そういう意味では、マリオンの意見を聞くこともあったわけだが。俺やノエルの提案はほとんど通らなかった。俺達五人は、最初から対等なんかじゃなかったんだ」
「なるほど。これからどのようなやり方で貴方を襲ってくるのかについては、サリーさんの性格次第というわけですか」
王都ラミカルシティとメリーランドタウンの距離はそこまで離れているわけではない。ただし道の全てが舗装されているわけではないことも相まって、この国の自動車や馬車では多少手間がかかるのも事実だ。徒歩ならさらに時間がかかるだろう。
また、ノエルとマリオンが到着した直後に、道の一部が土砂崩れで埋まってしまったという情報も入っている。最短距離を取ることもできないので、王都からこの町に来るまではさらに時間がかかるだろう。
「まず時間の猶予の計算です。女神様から、特別な移動道具なんかを貰っていませんか?」
今までの勇者パーティの動向からして、彼らは一般的な交通機関と徒歩しか使っていないらしいということはわかっている。つまり貴族が使うような馬車や自動車か徒歩のどちらかということだ。が、緊急時に超速移動できる道具を持っていないとは言い切れない。なんせ、彼らには女神の加護がついているのだから。ジルとしては重要な点だった。
「いや……そういうものは、なかったはずだ。サリー達は俺やノエルを見下してやがったが、だからって女神から貰った道具を独り占めとはかしてねえだろう。女神から最初に説明を聞いた空間は、五人一緒だった。こっそりものを貰うようなタイミングもなかったはずだしな」
「風の噂で、ラミカルシティへの道が土砂崩れで塞がって撤去作業中という話も聞いています。土砂を撤去するにせよ、回り道をするにせよ……一般的な交通機関だと三日ほど猶予がありそうですね。多少希望的観測が入っていますが」
「ああ。でも念のため、二日以内にはこの町を出たいと思ってる……」
顔色は悪いが、思っていたよりもゴートンは冷静なようだった。ふむ、とジルは暫く考える。
サリーとゾウマは、遅かれ早かれゴートンを探して抹殺しようとするだろう。ノエルは少し躊躇うかもしれないが。
――そのノエルに関しても気になる。この町に留まったみたいだから、ゴートンが普通にこの町を出て行ったらノエルに動向がバレそうなんだよな。
今のところ、ノエルもサリー達の味方とみて間違いない。この町を出るのであれば、ノエルの目をかいくぐる必要はあるだろう。
そして、あともう一つ考えるべきことは、サリー達をどこで迎え撃つかということである。
この町に留まって迎え撃つか。
あるいは別の場所に誘導して戦うか、だ。
「……ゴートンさんにお尋ねします」
やがて長考の末、ジルは口を開く。
「私は……ゴートンさんが殺されるくらいなら、相手を殺すこともやむなしと思っています。というか、ゴートンさんが死ぬくらいならこの手を汚す覚悟もできています」
「ジニー……」
「ゴートンさんはどうですか?いざという時、もともと仲間だった勇者達を殺すことができますか?あるいは……話し合いで分かってもらえる可能性はあると思いますか?」
「そ、それは……」
ゴートンも、本来答えは出ているはずである。サリーの残酷で苛烈、プライドの高い性格は誰よりわかっているはずなのだから。
「……話し合いは、無理だと思う。俺がどんな説明をしてもサリーは……自分のモノを奪った俺を許さないと思う。サリーがそう決めたらゾウマも止めないだろうし、ノエルは気が弱いから止められねえだろうな……」
予想通り、ゴートンはがっくりと肩を落として言った。
「そして殺せるかどうかは……正直、わかんねえ。ただ、サリーとゾウマには少なからずムカついてるし、やろうと思えばできなくはないと思う。身を守るためなら……最悪、やるしかねえよな」
「ノエルさんは?」
「ノエルは……それこそわからねえ。でもあいつは、そんなに非情な奴じゃねえと思うんだよな……だから……」
ぼそぼそと、ゴートンの言葉はどんどん小さくなっていく。確かに、ノエル一人ならばそんなに害はないかもしれないが、自分が殺されるかもしれないという時になんとも甘い男である。
そもそも、この男は長らくチートスキルを使って多くの女性達を自らの奴隷にしてきたのだ。奴隷にされた女性は文字通り彼の思いがままの性奴隷となり、人としての尊厳を踏みにじられてきたことは言うまでもない。それは、ある意味では人を殺すことよりも残酷なのではなかろうか。己の心を殺され、体を辱められ、中には無理なプレイや出産によって死んだ女性がいてもおかしくはあるまい。
――それでも、人を殺すことだけは嫌ってか。
じゃあ何で、二年前に自分たちの父を殺したのか。父は魔族だから、人間ではないから殺してもいいと思ったというのか。
――ふざけんなよ。
怒りで一瞬、脳が沸騰しそうになった。それをギリギリ、持ち前の理性と演技力で封じ込める。ここで自分が魔王の仲間であったとボロを出してしまっては本も子もない。
「……ゴートンさんのお話はわかりました。その上で、私の考えなんですが」
無理やり笑顔を作って、ジルはゴートンに告げる。
「ゴートンさん、ラミカルシティにある豪邸については詳しいですよね?お屋敷にはたくさん罠があって、入るのが大変だという話を聞いたのですが」
「ああ。一応、どんな罠があるが把握しているが」
「もう一つ。ゴートンさんの粛清について、サリーさんたちが国家権力の力を借りると思いますか?」
「いや。……あいつはプライド高いからな、俺の粛清は自分でやりたがるだろう。というか、俺の離反そのものを隠したがると思うぜ。ただでさえ、勇者は信用を失いつつあって王様からも“さっさとヴァリアントをなんとかしろ”ってせっつかれてるからな。これ以上、汚名を被るような状況はギリギリのギリギリまで隠したがるだろう。魔王の残党を討伐できてねえのに、仲間まで離反したなんて大失態だろうからな……」
「……了解しました」
やっぱりそうか、と心の中でほくそ笑むジル。
「でしたら……ゴートンさん。私に考えがあります。実は、私がこっそり使っている移動手段があるのですよね」
***
やはり、サリーとゾウマはゴートンを粛清するつもりだそうだ。自分が報告したこととはいえ、ノエルからすると少々複雑ではある。
あの時は、全裸で倒れているマリオンを見て頭に血が上ってしまったが。ゴートンは何か弁明しようとしていたようだった。せめてその話を聞いてから判断をしてもよかったのではないか。
ゴートンとマリオンが性的関係を持ったのは事実だろうが、マリオンが本気でゴートンと愛し合った可能性も否定できるものではない。裏切った、無理やり凌辱したと決めつけるのは少々早計だったのではないか。
このままでは、サリーとゾウマは問答無用でゴートンを殺すだろう。奴隷にされたマリオンがそれで戻るかどうかも不明だ。そうなればつまり、ノエルが殺したも同然ということになるのではないか。
――本当に良かったのか、これで。
ゴートンは明らかに怯えていた。すぐに町から逃げるかと思ったら、どうやらホテルに籠城する作戦を選んでしまったらしい。ノエルが彼が泊まっているホテルの真正面にある民宿に宿を移して見張っているということにも気づいていないのかもしれなかった。
彼が泊まっている部屋は夜になると明かりがつくし、昼の時間も窓からゴートンの姿をちらちらと確認することができる。何かに怯えるように、しきりに窓の外を気にしているようだった。たくさん食料品を買い込んでいる様子もあった。籠城するつもりというのは本当なのだろう。
――どうせなら、さっさと逃げてくれればいいのに。
できればゴートンにも死んでほしくないノエルとしては複雑な気持ちである。サリーとゾウマの能力を鑑みれば、どこかに籠城するのは最も愚かな作戦だとわかりそうなものだというのに。というか、ゾウマが力を使えば辺り一面火の海になることは免れられまい。自分が泊まっているホテルの人々や、町の人々が巻き込まれてもいいというのだろうか。
ゴートンのことをサリーたちに報告してから三日後の朝。ノエルが見えている前で、ちらりとゴートンは姿を見せていた。相変わらず怯えるように窓の外を伺い、部屋の中に引っ込んでいく程度だったが、部屋にいるのは間違いなさそうである。
「!」
ノックの音。ノエルは慌ててドアへと飛びついた。今日の朝メリーランドタウンに到着すると、サリーとゾウマから連絡が入っている。
「……ゴートンは?」
ノエルが玄関の鍵をあけると、サリーがずかずかと部屋に上がり込んできた。かなりイライラしているらしい。後ろから続くゾウマもやや疲弊した顔をしている。
「本当にサイアク。瓦礫の撤去が遅れてるっていうから迂回ルートを取ったらそっちも馬車の事故で交通止めって言うじゃない!おかげで徒歩でさらに回り道する羽目になったわ。ツイてないったらありゃしない!」
「た、大変でしたね」
「で、ゴートンはどうなの?逃がしてないでしょうね?」
「え、ええ。ついさっき、窓から姿を見たばかりです」
「そう」
ノエルの言葉に、サリーはずかずかと部屋の窓に近づいていく。そして真正面のホテルをにらみつけた。レースカーテンの向こう、ちらちらとゴートンらしき男が室内を歩いているのが見える。
「不用心だな」
ゾウマが眉をひそめて言った。
「追われている身なのに、レースカーテンにするとは。外から監視されることをまったく警戒していないようだ」
「え」
それはどういうことだ、とノエルが思った時だった。
全員の耳に、軽快なメロディーが聞こえてきたのである。三人ははっとした。それは、勇者の間だけで使える通信機の着信音だ。自分達三人はここにいる。ということは、連絡してきたのは。
『サリー、ゾウマ、ノエル。……聞こえるだろうか』
どういうことだろう。
追われているはずの、ゴートン自らが連絡を入れてくるなんて。
「サリーさんとゾウマさんが、勇者パーティの最終決定権を持っている。そうですね?」
「ああ。正確にはサリーだな。ただ、サリーはゾウマの進言なら耳を貸す。そういう意味では、マリオンの意見を聞くこともあったわけだが。俺やノエルの提案はほとんど通らなかった。俺達五人は、最初から対等なんかじゃなかったんだ」
「なるほど。これからどのようなやり方で貴方を襲ってくるのかについては、サリーさんの性格次第というわけですか」
王都ラミカルシティとメリーランドタウンの距離はそこまで離れているわけではない。ただし道の全てが舗装されているわけではないことも相まって、この国の自動車や馬車では多少手間がかかるのも事実だ。徒歩ならさらに時間がかかるだろう。
また、ノエルとマリオンが到着した直後に、道の一部が土砂崩れで埋まってしまったという情報も入っている。最短距離を取ることもできないので、王都からこの町に来るまではさらに時間がかかるだろう。
「まず時間の猶予の計算です。女神様から、特別な移動道具なんかを貰っていませんか?」
今までの勇者パーティの動向からして、彼らは一般的な交通機関と徒歩しか使っていないらしいということはわかっている。つまり貴族が使うような馬車や自動車か徒歩のどちらかということだ。が、緊急時に超速移動できる道具を持っていないとは言い切れない。なんせ、彼らには女神の加護がついているのだから。ジルとしては重要な点だった。
「いや……そういうものは、なかったはずだ。サリー達は俺やノエルを見下してやがったが、だからって女神から貰った道具を独り占めとはかしてねえだろう。女神から最初に説明を聞いた空間は、五人一緒だった。こっそりものを貰うようなタイミングもなかったはずだしな」
「風の噂で、ラミカルシティへの道が土砂崩れで塞がって撤去作業中という話も聞いています。土砂を撤去するにせよ、回り道をするにせよ……一般的な交通機関だと三日ほど猶予がありそうですね。多少希望的観測が入っていますが」
「ああ。でも念のため、二日以内にはこの町を出たいと思ってる……」
顔色は悪いが、思っていたよりもゴートンは冷静なようだった。ふむ、とジルは暫く考える。
サリーとゾウマは、遅かれ早かれゴートンを探して抹殺しようとするだろう。ノエルは少し躊躇うかもしれないが。
――そのノエルに関しても気になる。この町に留まったみたいだから、ゴートンが普通にこの町を出て行ったらノエルに動向がバレそうなんだよな。
今のところ、ノエルもサリー達の味方とみて間違いない。この町を出るのであれば、ノエルの目をかいくぐる必要はあるだろう。
そして、あともう一つ考えるべきことは、サリー達をどこで迎え撃つかということである。
この町に留まって迎え撃つか。
あるいは別の場所に誘導して戦うか、だ。
「……ゴートンさんにお尋ねします」
やがて長考の末、ジルは口を開く。
「私は……ゴートンさんが殺されるくらいなら、相手を殺すこともやむなしと思っています。というか、ゴートンさんが死ぬくらいならこの手を汚す覚悟もできています」
「ジニー……」
「ゴートンさんはどうですか?いざという時、もともと仲間だった勇者達を殺すことができますか?あるいは……話し合いで分かってもらえる可能性はあると思いますか?」
「そ、それは……」
ゴートンも、本来答えは出ているはずである。サリーの残酷で苛烈、プライドの高い性格は誰よりわかっているはずなのだから。
「……話し合いは、無理だと思う。俺がどんな説明をしてもサリーは……自分のモノを奪った俺を許さないと思う。サリーがそう決めたらゾウマも止めないだろうし、ノエルは気が弱いから止められねえだろうな……」
予想通り、ゴートンはがっくりと肩を落として言った。
「そして殺せるかどうかは……正直、わかんねえ。ただ、サリーとゾウマには少なからずムカついてるし、やろうと思えばできなくはないと思う。身を守るためなら……最悪、やるしかねえよな」
「ノエルさんは?」
「ノエルは……それこそわからねえ。でもあいつは、そんなに非情な奴じゃねえと思うんだよな……だから……」
ぼそぼそと、ゴートンの言葉はどんどん小さくなっていく。確かに、ノエル一人ならばそんなに害はないかもしれないが、自分が殺されるかもしれないという時になんとも甘い男である。
そもそも、この男は長らくチートスキルを使って多くの女性達を自らの奴隷にしてきたのだ。奴隷にされた女性は文字通り彼の思いがままの性奴隷となり、人としての尊厳を踏みにじられてきたことは言うまでもない。それは、ある意味では人を殺すことよりも残酷なのではなかろうか。己の心を殺され、体を辱められ、中には無理なプレイや出産によって死んだ女性がいてもおかしくはあるまい。
――それでも、人を殺すことだけは嫌ってか。
じゃあ何で、二年前に自分たちの父を殺したのか。父は魔族だから、人間ではないから殺してもいいと思ったというのか。
――ふざけんなよ。
怒りで一瞬、脳が沸騰しそうになった。それをギリギリ、持ち前の理性と演技力で封じ込める。ここで自分が魔王の仲間であったとボロを出してしまっては本も子もない。
「……ゴートンさんのお話はわかりました。その上で、私の考えなんですが」
無理やり笑顔を作って、ジルはゴートンに告げる。
「ゴートンさん、ラミカルシティにある豪邸については詳しいですよね?お屋敷にはたくさん罠があって、入るのが大変だという話を聞いたのですが」
「ああ。一応、どんな罠があるが把握しているが」
「もう一つ。ゴートンさんの粛清について、サリーさんたちが国家権力の力を借りると思いますか?」
「いや。……あいつはプライド高いからな、俺の粛清は自分でやりたがるだろう。というか、俺の離反そのものを隠したがると思うぜ。ただでさえ、勇者は信用を失いつつあって王様からも“さっさとヴァリアントをなんとかしろ”ってせっつかれてるからな。これ以上、汚名を被るような状況はギリギリのギリギリまで隠したがるだろう。魔王の残党を討伐できてねえのに、仲間まで離反したなんて大失態だろうからな……」
「……了解しました」
やっぱりそうか、と心の中でほくそ笑むジル。
「でしたら……ゴートンさん。私に考えがあります。実は、私がこっそり使っている移動手段があるのですよね」
***
やはり、サリーとゾウマはゴートンを粛清するつもりだそうだ。自分が報告したこととはいえ、ノエルからすると少々複雑ではある。
あの時は、全裸で倒れているマリオンを見て頭に血が上ってしまったが。ゴートンは何か弁明しようとしていたようだった。せめてその話を聞いてから判断をしてもよかったのではないか。
ゴートンとマリオンが性的関係を持ったのは事実だろうが、マリオンが本気でゴートンと愛し合った可能性も否定できるものではない。裏切った、無理やり凌辱したと決めつけるのは少々早計だったのではないか。
このままでは、サリーとゾウマは問答無用でゴートンを殺すだろう。奴隷にされたマリオンがそれで戻るかどうかも不明だ。そうなればつまり、ノエルが殺したも同然ということになるのではないか。
――本当に良かったのか、これで。
ゴートンは明らかに怯えていた。すぐに町から逃げるかと思ったら、どうやらホテルに籠城する作戦を選んでしまったらしい。ノエルが彼が泊まっているホテルの真正面にある民宿に宿を移して見張っているということにも気づいていないのかもしれなかった。
彼が泊まっている部屋は夜になると明かりがつくし、昼の時間も窓からゴートンの姿をちらちらと確認することができる。何かに怯えるように、しきりに窓の外を気にしているようだった。たくさん食料品を買い込んでいる様子もあった。籠城するつもりというのは本当なのだろう。
――どうせなら、さっさと逃げてくれればいいのに。
できればゴートンにも死んでほしくないノエルとしては複雑な気持ちである。サリーとゾウマの能力を鑑みれば、どこかに籠城するのは最も愚かな作戦だとわかりそうなものだというのに。というか、ゾウマが力を使えば辺り一面火の海になることは免れられまい。自分が泊まっているホテルの人々や、町の人々が巻き込まれてもいいというのだろうか。
ゴートンのことをサリーたちに報告してから三日後の朝。ノエルが見えている前で、ちらりとゴートンは姿を見せていた。相変わらず怯えるように窓の外を伺い、部屋の中に引っ込んでいく程度だったが、部屋にいるのは間違いなさそうである。
「!」
ノックの音。ノエルは慌ててドアへと飛びついた。今日の朝メリーランドタウンに到着すると、サリーとゾウマから連絡が入っている。
「……ゴートンは?」
ノエルが玄関の鍵をあけると、サリーがずかずかと部屋に上がり込んできた。かなりイライラしているらしい。後ろから続くゾウマもやや疲弊した顔をしている。
「本当にサイアク。瓦礫の撤去が遅れてるっていうから迂回ルートを取ったらそっちも馬車の事故で交通止めって言うじゃない!おかげで徒歩でさらに回り道する羽目になったわ。ツイてないったらありゃしない!」
「た、大変でしたね」
「で、ゴートンはどうなの?逃がしてないでしょうね?」
「え、ええ。ついさっき、窓から姿を見たばかりです」
「そう」
ノエルの言葉に、サリーはずかずかと部屋の窓に近づいていく。そして真正面のホテルをにらみつけた。レースカーテンの向こう、ちらちらとゴートンらしき男が室内を歩いているのが見える。
「不用心だな」
ゾウマが眉をひそめて言った。
「追われている身なのに、レースカーテンにするとは。外から監視されることをまったく警戒していないようだ」
「え」
それはどういうことだ、とノエルが思った時だった。
全員の耳に、軽快なメロディーが聞こえてきたのである。三人ははっとした。それは、勇者の間だけで使える通信機の着信音だ。自分達三人はここにいる。ということは、連絡してきたのは。
『サリー、ゾウマ、ノエル。……聞こえるだろうか』
どういうことだろう。
追われているはずの、ゴートン自らが連絡を入れてくるなんて。
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