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<第三十話>
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何を言われているのか、とっさにキャサリンは理解できなかった。だが、幸か不幸かキャサリンの普通の人間より優れた聴覚は、傍聴席のひそひそ声を聞き取るには充分だったのである。
「なあ、あれ、何か変だったか?俺らが見た映像そのまんまだったよな?」
「うん、そうだったと思う。トリアスは、ずっと砂漠の中で喋ってたと思うけど……森って、どういうこと?」
嘘だ、と言いたかった。そして思わず検察側の――ボルガの方に視線を向けてしまった。
ボルガ検事は青ざめた顔で、キャサリンの眼に気づくと――慌てたように視線を逸らしてしまう。それが、何よりの証明であった。嫌でも悟らざるをえない。
自分はたった今、最大の失敗を犯した。自分が見た映像は、実際に放送で流されたものそのままだったということ。では、自分が見た映像は――あれは――。
「この映像の方が正しいことは、国営放送の記憶にも残っていることでしょうし……国営放送の映像を見ていたフラワーメイルの住人全てが証人と言えるでしょう。では、一体証人はどこで、森の中で話す被告人の映像を見たのか?そして、もしそれが真実なら、何故映像が2パターンあったのか?……被告人、実は自分の勘違いでした、は既に通用しませんよ」
「!!」
「お気づきでしょう?この砂漠で話している映像だけでは、彼が話している場所がどこであるかなんてアタリをつけることは不可能なんです。アイリス地方全域に広がっている砂漠、いや砂漠はアイリス地方に限定されるものではない。そして、被告人が話すこの映像では、背景には空と砂、石以外には何も映っていません。とても場所を特定することはできないのです。証人が本当にこの映像しか知らなかったのだとすれば、被告人の潜伏先に見当をつけることさえできなかったんですよ。……でも、もし証人がたった今言った通り、被告人が森の中で話している映像があったのだとすれば。背景に映っている木の種類次第では、どこの森か見極めることも不可能ではありません。実際、盗賊の里がある森は、希少価値の高いアユヒノキが群生していますからね」
そうだ。自分はトリアスの映像の背景、アユヒノキの森を見て、あの森があるあたりにトリアスが潜んでいるのかもしれないと判断したのである。
アユヒノキの森があるのは、ジェンシャンタウンの北を除けば――トリアスの焼けた故郷がある、アネモニ村近辺くらいのもの。アネモニ村の方は、まだ検察関係がうろついていてもおかしくない。トリアスがそちらに戻る可能性は低いと見て、キャサリンはジェンシャンタウンの北の森を目指すことを進言したのである。
思えば、あの時ケイニーとミシェルは不思議そうな顔をしていたような。もしあの反応が、彼らは砂漠の方の映像しか知らなかったがゆえであるのだとしたら。
「……この映像を、よく見てくださいね」
棒を使って、フレイアは映像を止めつつ説明する。
「この映像は、確かに被告人で間違いないものと思われます。が、被告人の視線、正確にはカメラの方を見ていません。カメラよりも少し上の位置を見ています。これは被告人が自ら固定カメラを設置して映像を撮ったのではなく、別に撮影者がいて、カメラではなく撮影者の眼を見て離しているからと推察されます。しかも、この映像ではかなり風の音が入り、時折カメラが揺れているにも関わらず……被告人の長い髪はほとんど靡いていません。不自然なほどにね」
言われてみれば、その通りだ。キャサリンは唇を噛み締める。
わかってしまったのだ。フレイアが、何を言いたいのかということが。
「そして少し早送りをして、この場面」
『…………なるほど?我々の存在が罪であることは歴史が証明していると。くだらん。それはお前達が作り出したまやかしの罪だ。ルネの時がいい例だろう。奴等が彼女を辱しめなければ、彼女の愛するものを壊さなければ……あんな惨劇は起きなかったのだから。……本当にしつこい!だから、俺はお前達が大嫌いなんだ……っ!!』
「ここです。……背景の影と、顔や髪、衣服の影の向きが一致していません。これは、背景の影だけ、編集でつけたしたからだと推察されます。そして……先ほど証人が言った、“同じ台詞で背景が違う映像が存在する”ことの示唆。……この映像は、一度で撮り切られたものではなく、複数の映像を編集で繋いだもの。そして、第三者が、被告人を挑発して宣戦布告に似た台詞を引き出したシーンを盗撮したものであると考えられます」
「異議あり!弁護人は憶測で発言しております!」
「この映像を被告人が個人で撮影し編集することは極めて困難であることは明らかだと申し上げているのです!そもそも、国営放送のセキュリティは非常に難い。そう簡単に一個人が侵入して電波ジャックなどできるはずがないのです。しかも、今はまだ映像を撮影できても、映像を編集するようなコンピューターの類は一般では僅かしか出回っていない。資金のない被告人に購入できるような類のものでもありません。……ならば、この映像を撮影し、編集し、電波で流すことができる者は誰なのか?少し考えれば、簡単に答えは出ると思いませんか?」
ボルガも、キャサリンも――異議を唱える声すら失い、絶句するしかない。
状況証拠ばかり。しかしそれも、ここまで積み重なってしまうと――もはや、印象だけで覆せる代物ではなくなってきてしまう。
全ての事件はもう、フレイアの中で一本の線で繋がってしまっているのだろう。
どうして、アネモニ村の事件を検察は早期にトリアスの仕業と決め打ち、盗賊団をみすみす逃してしまったのか?
どうして、アイリスタウンでトリアスの犯行を見た目撃者が現れたのか?何故マチルダは嘘の発言をしたのか?
どうして、キャサリンは一般で出回っているはずのない情報を知り得たのか?
そしてどうして――鉄壁であるはずの国営放送の電波がやすやすとジャックされ、フラワーメイル全土に映像が流れてしまったのか?
全ては、一つの事実を示している。そしてキャサリンは――本当は、最初から全てを知っていた、一人であったのだ。
「……裁判長。証拠画像No.6を提示させてください」
ぐるぐると考えるキャサリンに、追い打ちをかけるがごとくフレイアの追求は続く。ふらふらと顔を上げたキャサリンの眼に飛び込んできたのは、モニターに映る小さな金色のバッジの画像だ。
中央に十字架と薔薇が掲げられているそれには見覚えがある。自分は、それをつけた人達と話をしたことがあるからだ。あれは――政府軍に所属する者の、証明バッジだ。
「先日。盗賊の里を調べていた私と私の相棒であるテクノ・オーキッドは。謎の獣使いの集団に襲撃を受けました。テクノは軽傷を負い、里の者にも負傷者が出ています。……その時、襲撃者の一人が落としていったのがこのバッジです。この薔薇の複雑な彫り込みは、専用の職人だけが掘れる特別なもの。複製できるような代物ではありません。私達の調査を邪魔するために、政府が刺客を送ってきたというわけです。何故か?……魔王・トリアスが全ての犯人!それ以外の真実を、闇に葬るためです!!」
まさか、とキャサリンは思う。確かに、自分もトリアスを死刑にするために動いてはいたが――まさか、その弁護人を襲撃するなんて。政府が、そこまでのことをしていたなんて。
ボルガを見てももう彼は――キャサリンと、視線を合わせようともしてこない。
「………それ、でも…」
何かを言わなければ、ならない。わなわなと唇を震わせながらも、キャサリンは口を開いた。もう誰も、助けてはくれない。それでもまだ自分には意地がある。政府のやり方が強引すぎると感じたとしても、多少無茶をしてでも戦うことを決めたのは自分自身だ。
だって、自分の中の悲しみや怒りは消えていない。魔王ルネに――叔母が殺されたことだけは、まごうことなき事実ではないか。魔王と呼ばれる存在は残虐で残酷で、けして野放しにしてはいけないもの。例えたまたまトリアスがそうではなかったのだとしても、他の魔王はきっとそうであるに決まっている。多くの者達を救い、助けるためには。僅かばかりの犠牲を、躊躇していいはずがないではないか。
「それでも……魔王という存在は、許されていいものじゃない……っ!魔王・トリアスは、死刑にならなければならないのよ!!今回がどうであっても、いずれ大きな犯罪を起こす可能性があることは確かで、一体誰がそれを否定できるっていうの……っ!!」
自分は勇者だ。
魔王を倒す、勇者。それが自分が、世界に望まれている役目であるはずではないか。
「本当にそうでしょうか、キャサリンさん」
「そうよ!だって実際、あたしの叔母は、ルネに殺された!!拷問されて、生き地獄を散々味わった挙句、ぐちゃぐちゃにされて殺されたのよ!!罪もない人が、魔王という存在のせいでこれからも死ぬかもしれない……少くとも今までたくさん死んできた、それは事実じゃないの!!」
「では。……魔王って、なんなのでしょう」
え、とキャサリンは戸惑う。予想外すぎる質問に、理解が追いつかない。魔王とは?そんなもの――悪の化身たる、恐ろしい力の持ち主のことではないか。
「魔王とは、我々フラワーメイルの住人が持ちうるジョブ才能のうちの一種です。ですが、他のジョブ才能とは違い、非常にオールマイティな力を持っています。実質、全てのジョブ才能を持った天才的素質の持ち主と言っても過言ではありません。ゆえに、多くの者達が、魔王であることを知られないように他のジョブを装って生活していると聞きます。……それでは、どうして大人になってから、“実は魔王だった”というのが露呈する者が出るのでしょうか?魔王が魔王だと発覚するのは、どういう時だと思いますか?魔王だとバレてしまえば偏見や差別に遭う。ゆえに、魔王の力の保持者は、発覚しないように精一杯気をつけて生活しているにも関わらず、です」
魔王が、魔王だとバレる原因?キャサリンは困惑しながらも、考える。言われてみればルネもトリアスも、犯行が露呈した時には“彼らは魔王だった”が政府でも共通見解になっていた。そして、ルネも“魔王である”ゆえに嫌われていたのではなかったか。しかし、じゃあ何故魔王だとバレた?本人が口にしたわけではないのだとしたら――。
「魔王の能力を持つ人間は、身体的に特徴を持っている。魔王を判別する方法は簡単。服を脱がせて、その身体を調べることです。魔王だけが、両性具有の肉体を持って生まれてくるのですから」
その時。フレイアは笑みを消し――初めてと言っていいほど、冷たい視線でキャサリンを、そしてボルガを睨みつけたのだった。
「魔王ルネも、魔王トリアスも、同じ理由で魔王だと露呈した。……彼らの身体を強引に調べ、性的な暴力を加えた者達がいたのです」
「なあ、あれ、何か変だったか?俺らが見た映像そのまんまだったよな?」
「うん、そうだったと思う。トリアスは、ずっと砂漠の中で喋ってたと思うけど……森って、どういうこと?」
嘘だ、と言いたかった。そして思わず検察側の――ボルガの方に視線を向けてしまった。
ボルガ検事は青ざめた顔で、キャサリンの眼に気づくと――慌てたように視線を逸らしてしまう。それが、何よりの証明であった。嫌でも悟らざるをえない。
自分はたった今、最大の失敗を犯した。自分が見た映像は、実際に放送で流されたものそのままだったということ。では、自分が見た映像は――あれは――。
「この映像の方が正しいことは、国営放送の記憶にも残っていることでしょうし……国営放送の映像を見ていたフラワーメイルの住人全てが証人と言えるでしょう。では、一体証人はどこで、森の中で話す被告人の映像を見たのか?そして、もしそれが真実なら、何故映像が2パターンあったのか?……被告人、実は自分の勘違いでした、は既に通用しませんよ」
「!!」
「お気づきでしょう?この砂漠で話している映像だけでは、彼が話している場所がどこであるかなんてアタリをつけることは不可能なんです。アイリス地方全域に広がっている砂漠、いや砂漠はアイリス地方に限定されるものではない。そして、被告人が話すこの映像では、背景には空と砂、石以外には何も映っていません。とても場所を特定することはできないのです。証人が本当にこの映像しか知らなかったのだとすれば、被告人の潜伏先に見当をつけることさえできなかったんですよ。……でも、もし証人がたった今言った通り、被告人が森の中で話している映像があったのだとすれば。背景に映っている木の種類次第では、どこの森か見極めることも不可能ではありません。実際、盗賊の里がある森は、希少価値の高いアユヒノキが群生していますからね」
そうだ。自分はトリアスの映像の背景、アユヒノキの森を見て、あの森があるあたりにトリアスが潜んでいるのかもしれないと判断したのである。
アユヒノキの森があるのは、ジェンシャンタウンの北を除けば――トリアスの焼けた故郷がある、アネモニ村近辺くらいのもの。アネモニ村の方は、まだ検察関係がうろついていてもおかしくない。トリアスがそちらに戻る可能性は低いと見て、キャサリンはジェンシャンタウンの北の森を目指すことを進言したのである。
思えば、あの時ケイニーとミシェルは不思議そうな顔をしていたような。もしあの反応が、彼らは砂漠の方の映像しか知らなかったがゆえであるのだとしたら。
「……この映像を、よく見てくださいね」
棒を使って、フレイアは映像を止めつつ説明する。
「この映像は、確かに被告人で間違いないものと思われます。が、被告人の視線、正確にはカメラの方を見ていません。カメラよりも少し上の位置を見ています。これは被告人が自ら固定カメラを設置して映像を撮ったのではなく、別に撮影者がいて、カメラではなく撮影者の眼を見て離しているからと推察されます。しかも、この映像ではかなり風の音が入り、時折カメラが揺れているにも関わらず……被告人の長い髪はほとんど靡いていません。不自然なほどにね」
言われてみれば、その通りだ。キャサリンは唇を噛み締める。
わかってしまったのだ。フレイアが、何を言いたいのかということが。
「そして少し早送りをして、この場面」
『…………なるほど?我々の存在が罪であることは歴史が証明していると。くだらん。それはお前達が作り出したまやかしの罪だ。ルネの時がいい例だろう。奴等が彼女を辱しめなければ、彼女の愛するものを壊さなければ……あんな惨劇は起きなかったのだから。……本当にしつこい!だから、俺はお前達が大嫌いなんだ……っ!!』
「ここです。……背景の影と、顔や髪、衣服の影の向きが一致していません。これは、背景の影だけ、編集でつけたしたからだと推察されます。そして……先ほど証人が言った、“同じ台詞で背景が違う映像が存在する”ことの示唆。……この映像は、一度で撮り切られたものではなく、複数の映像を編集で繋いだもの。そして、第三者が、被告人を挑発して宣戦布告に似た台詞を引き出したシーンを盗撮したものであると考えられます」
「異議あり!弁護人は憶測で発言しております!」
「この映像を被告人が個人で撮影し編集することは極めて困難であることは明らかだと申し上げているのです!そもそも、国営放送のセキュリティは非常に難い。そう簡単に一個人が侵入して電波ジャックなどできるはずがないのです。しかも、今はまだ映像を撮影できても、映像を編集するようなコンピューターの類は一般では僅かしか出回っていない。資金のない被告人に購入できるような類のものでもありません。……ならば、この映像を撮影し、編集し、電波で流すことができる者は誰なのか?少し考えれば、簡単に答えは出ると思いませんか?」
ボルガも、キャサリンも――異議を唱える声すら失い、絶句するしかない。
状況証拠ばかり。しかしそれも、ここまで積み重なってしまうと――もはや、印象だけで覆せる代物ではなくなってきてしまう。
全ての事件はもう、フレイアの中で一本の線で繋がってしまっているのだろう。
どうして、アネモニ村の事件を検察は早期にトリアスの仕業と決め打ち、盗賊団をみすみす逃してしまったのか?
どうして、アイリスタウンでトリアスの犯行を見た目撃者が現れたのか?何故マチルダは嘘の発言をしたのか?
どうして、キャサリンは一般で出回っているはずのない情報を知り得たのか?
そしてどうして――鉄壁であるはずの国営放送の電波がやすやすとジャックされ、フラワーメイル全土に映像が流れてしまったのか?
全ては、一つの事実を示している。そしてキャサリンは――本当は、最初から全てを知っていた、一人であったのだ。
「……裁判長。証拠画像No.6を提示させてください」
ぐるぐると考えるキャサリンに、追い打ちをかけるがごとくフレイアの追求は続く。ふらふらと顔を上げたキャサリンの眼に飛び込んできたのは、モニターに映る小さな金色のバッジの画像だ。
中央に十字架と薔薇が掲げられているそれには見覚えがある。自分は、それをつけた人達と話をしたことがあるからだ。あれは――政府軍に所属する者の、証明バッジだ。
「先日。盗賊の里を調べていた私と私の相棒であるテクノ・オーキッドは。謎の獣使いの集団に襲撃を受けました。テクノは軽傷を負い、里の者にも負傷者が出ています。……その時、襲撃者の一人が落としていったのがこのバッジです。この薔薇の複雑な彫り込みは、専用の職人だけが掘れる特別なもの。複製できるような代物ではありません。私達の調査を邪魔するために、政府が刺客を送ってきたというわけです。何故か?……魔王・トリアスが全ての犯人!それ以外の真実を、闇に葬るためです!!」
まさか、とキャサリンは思う。確かに、自分もトリアスを死刑にするために動いてはいたが――まさか、その弁護人を襲撃するなんて。政府が、そこまでのことをしていたなんて。
ボルガを見てももう彼は――キャサリンと、視線を合わせようともしてこない。
「………それ、でも…」
何かを言わなければ、ならない。わなわなと唇を震わせながらも、キャサリンは口を開いた。もう誰も、助けてはくれない。それでもまだ自分には意地がある。政府のやり方が強引すぎると感じたとしても、多少無茶をしてでも戦うことを決めたのは自分自身だ。
だって、自分の中の悲しみや怒りは消えていない。魔王ルネに――叔母が殺されたことだけは、まごうことなき事実ではないか。魔王と呼ばれる存在は残虐で残酷で、けして野放しにしてはいけないもの。例えたまたまトリアスがそうではなかったのだとしても、他の魔王はきっとそうであるに決まっている。多くの者達を救い、助けるためには。僅かばかりの犠牲を、躊躇していいはずがないではないか。
「それでも……魔王という存在は、許されていいものじゃない……っ!魔王・トリアスは、死刑にならなければならないのよ!!今回がどうであっても、いずれ大きな犯罪を起こす可能性があることは確かで、一体誰がそれを否定できるっていうの……っ!!」
自分は勇者だ。
魔王を倒す、勇者。それが自分が、世界に望まれている役目であるはずではないか。
「本当にそうでしょうか、キャサリンさん」
「そうよ!だって実際、あたしの叔母は、ルネに殺された!!拷問されて、生き地獄を散々味わった挙句、ぐちゃぐちゃにされて殺されたのよ!!罪もない人が、魔王という存在のせいでこれからも死ぬかもしれない……少くとも今までたくさん死んできた、それは事実じゃないの!!」
「では。……魔王って、なんなのでしょう」
え、とキャサリンは戸惑う。予想外すぎる質問に、理解が追いつかない。魔王とは?そんなもの――悪の化身たる、恐ろしい力の持ち主のことではないか。
「魔王とは、我々フラワーメイルの住人が持ちうるジョブ才能のうちの一種です。ですが、他のジョブ才能とは違い、非常にオールマイティな力を持っています。実質、全てのジョブ才能を持った天才的素質の持ち主と言っても過言ではありません。ゆえに、多くの者達が、魔王であることを知られないように他のジョブを装って生活していると聞きます。……それでは、どうして大人になってから、“実は魔王だった”というのが露呈する者が出るのでしょうか?魔王が魔王だと発覚するのは、どういう時だと思いますか?魔王だとバレてしまえば偏見や差別に遭う。ゆえに、魔王の力の保持者は、発覚しないように精一杯気をつけて生活しているにも関わらず、です」
魔王が、魔王だとバレる原因?キャサリンは困惑しながらも、考える。言われてみればルネもトリアスも、犯行が露呈した時には“彼らは魔王だった”が政府でも共通見解になっていた。そして、ルネも“魔王である”ゆえに嫌われていたのではなかったか。しかし、じゃあ何故魔王だとバレた?本人が口にしたわけではないのだとしたら――。
「魔王の能力を持つ人間は、身体的に特徴を持っている。魔王を判別する方法は簡単。服を脱がせて、その身体を調べることです。魔王だけが、両性具有の肉体を持って生まれてくるのですから」
その時。フレイアは笑みを消し――初めてと言っていいほど、冷たい視線でキャサリンを、そしてボルガを睨みつけたのだった。
「魔王ルネも、魔王トリアスも、同じ理由で魔王だと露呈した。……彼らの身体を強引に調べ、性的な暴力を加えた者達がいたのです」
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※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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