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<第十二話>
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資料によれば。
アイリスタウンでトリアスの犯行を目撃したという商人の娘は、マチルダ・ローズモスというらしい。裁判では検察側の商人として証言台に立つことだろう。二つ結びの赤茶髪を垂らしたソバカスの少女は、まだまだ顔立ちがあどけない。十七歳だが学校には通わず、両親の手伝いをしているのだという。生活は、あまり裕福ではないようだ。というのも彼女達が主に売っているバランベリーが今年は猛暑で不作だったのである。果物を売るのみならず、魔法を使った修理業者のような仕事もしてどうにか食いつないでいる状況らしかった。
『アイリスタウンが襲撃された日も、私達は町にベリーを売りに来ていました。売れ行きですか?……その、あんまり芳しくはなくて、ちょっと困ってたんです』
彼女は辿々しくも、しっかりとした声で証言したそうだ。
『その日は快晴でした。とても風が強くて、砂嵐が酷かったのを覚えてます。町には結界があるので、多少風が強くてもそんなに砂は入ってこないんですけど……町の北側は砂漠ですから。今日は徒歩で他の町に移動するのは難しそうだなって、お父さんと話してました。なんとしてでもこの町でベリーを売り切らないといけない……って。そしたら、砂が混じらない……妙に強い風が吹きはじめたんです』
町に結界がある――これは、フラワーメイルでは皆が知っている常識のひとつである。町をぐるりと囲む壁にはモンスターが嫌う臭いを出す装置が取り付けられ、そして一定以上の悪天候に影響されることのないよう結界師が配備され、常に町の安全を保っているのだ。結果師が担えるのは、魔導師系か召喚士のいずれかだ。当然、アイリスタウンも結界で守られていたのは間違いないことである。
『私は、黒魔法を使って仕事をしてきましたから……魔力というものには、かなり敏感なんです。誰かが魔法を使ったのはすぐに気付きました。どこからだろう、と思って……見上げた先の丘。高台の上に見ました。赤いローブを着た……藍色の長い髪の人を。…………その時は、男性か女性かもわからなくて、顔も見えなかったんですけど。検察の方に、取り調べの様子を見させて貰って……気付きました。あの時感じた魔力と……取り調べを受けている男の人の魔力は同じだって。だから……アイリスタウンを襲ったのは、トリアスさんという方で間違いないと思います……』
「なるほど、ねえ」
うむ、とフレイアはその果物を抱えて頷いた。アイリスタウンで購入し、箱詰めして貰ったバランベリー。一房であってもとても抱えて持っていけるサイズではなかったため、事務所まで郵送して貰ったのである。
箱から取り出して、フレイアはまじまじとその果物観察した。アイリス地方の特産品だが、フレイアはまだ食べたことがなかったのである。というか、実物を見たのも初めてだ。あんな少女が売り歩いているというのだから、てっきりもっと小ぶりのサイズなのかと思っていたのに。青年であるフレイアが両手を使って抱えなければならないほど巨大であろうとは。
「証言者のマチルダって子とお父さん……よくこんなの売り歩けるよなあ。一つ抱えて歩くだけでめっちゃきついべ?」
「この大きさが売りなんですよ、バランベリーは」
フレイアからベリーを受け取り、再び箱に戻すテクノ。小柄なテクノはより抱えるだけでしんどそうである。ある理由があって購入してみたはいいが――果たしてこの量が事務所の冷蔵庫に入ってくれるかが問題だ。少なくとも野菜室には押し込めなさそうである。
「一粒が、フラワーベースボールのボールくらいの大きさがあります。身がみっちりと詰まっていて栄養価も高く、冷蔵保存さえすれば長持ちするので保存食にもいいんだとか。一粒食べてみます?フレイアさん」
「おう、せっかくだしな。テクノも食うか?」
「はい。お皿出しますね」
マチルダ達は山盛りにしたベリーを、リアカーに積んで売り歩いていたようだ。こんな大荷物では、なるほど砂嵐が吹き荒れる砂漠を抜けてくることなど困難だろう。電車を使ったのか、それとも売り物は売り歩く先の町に先んじて送っておくのだろうか。
「彼女達は、前日にもバランベリーを売って歩いていました。その時にはそこそこ売れたそうですよ。……はい、どうぞ」
テクノは相変わらず器用だ。紫色の皮を剥くと、中からはぷるんとした淡い緑色の果肉が飛び出してくる。それをナイフとボークで切ってフレイアは口に運んだ。
瞬間。固いゼリーのような食感と、弾けるような酸味が口の中に広がる。
「うお、これうめぇな。……めっちゃ酸っぱいけど、めっちゃ後引く。ビール欲しいビール」
「一応まだ仕事中だってことをお忘れなく」
「わーってるよ」
栄養価が高い、というのは本当らしい。一粒食べただけでかなりお腹一杯になってしまった。取りあえず、残りは冷蔵庫先生に頑張ってもらって押し込めるしかあるまい。
「……フレイアさんに頼まれたことですが。……調べてみると、フレイアさんが言った通りでしたよ」
ベリーの房をハサミで切り分けながら、どうにか小さくしていくテクノ。幸いにして、大きさの割りにバランベリーの枝は太くないのだ。それでもあの重さの実を支えていられるのは、柔軟にしなることで衝撃を吸収できるからかのだと聞いている。
「あの話が事実なら……目撃証言を覆すことができます。そして、うまくいけばトリアスさんのアリバイを証明することも不可能ではないかもしれません」
「そこは検証してみるしかねぇな。体張るのしんどいけどよ」
「でも、問題はまだありますよ?トリアスさんだけ容疑者ではない、犯行が難しいと証明しただけでは……トリアスさんの疑いを完全に晴らすのは難しいかもしれません。真犯人が誰か、僕達の手で突き止めないと……」
「わかってる」
テクノを手伝って、残りのベリーを冷蔵庫に突っ込むことに成功する自分達。暫くオヤツはあの果物オンリーだな、なんてことを思いつつ。次の課題を考え始めるフレイアである。
トリアスが本当の犯人である可能性は、これでほぼ消えたと言っていい。だが、それならば誰が大量殺人を行い、町を破壊して回ったというのだろうか?
――そして殺人犯とは別に、黒幕がいる可能性が濃厚になってきやがったな。……この裁判、どこから駒を進めるかで大きく流れが変わってくることになる。できれば、俺達にメリットのある証言をしてくれる証人の一人や二人、見つけておきたいところではあるが……。
黒幕。――この事件を、なんとしてでもトリアスの犯行にしておきたい奴がいる、ということだ。トリアスの――ひいては、魔王の。
残念ながらその動機が政府にはあるのだ。今まで多くの魔王ジョブが起こす事件に振り回されてきた政府。本音を言うのなら一刻も早く、全ての魔王を生まれた直後から監視し、管理できる体勢を整えたいはずである。
だが、現行の法律では、特に何の罪も犯す前から人間を拘束しその自由を奪うことはできない。そもそも魔王ジョブの全てが必ず犯罪者になるわけでもないし、未来に犯罪を起こす可能性があるのは何も魔王に限った話ではないのだ。
法律を変えるために、まずは世論を味方につけておきたい。自分達がやってきたことを棚上げして、魔王職の人間を自由に拘束できる法律を制定させる――悲しいかな、そんな過激なことを考える人間は少なくないと知っている。
「……真犯人の手懸かりは、おおよそ二つ、だ」
ぴしっ、と指を二本立てるフレイア。
「一つは三つ目の事件……トリアスの宣戦布告映像。そして、最初のアネモニ村から消えた金品の行方、だ」
宣戦布告の映像も一応資料として提供されている。後でじっくり観察する必要があるだろう。トリアス本人に覚えがないと言っていたとすると、映っている人物はトリアスではない誰かか、もしくは合成してトリアスに見せかけているかのどちらかということになる。
「トリアスさんには、映像を作る技術なんてなさそうですよね。というか……」
「そうなんだよ。スフィア鉱石のカメラも、パソコンも、現状じゃかなり大型のものしか売ってない。ついでに滅茶苦茶高い。宿代もケチらなくちゃいけないわうなトリアスには、カメラ自体がまず買えなかっただろうさ。それを編集するコンピューターもな」
あれが出来る人間はその時点で限られている。一般人では手が出ない高い品であるならば、その相手は“一般人”ではないということになるのだから。
「……もう一度、トリアスと会って話をする必要があるな」
もしも、映像が編集されたものであるとしたら。一部の台詞や光景なら、トリアス自身覚えている可能性もある。心当たりが見つかれば、そこを徹底的に調べて証拠を探すことも不可能ではないかもしれない。
そして、トリアスが世話になっていたという盗賊の集落についてもだ。もし、彼らがトリアスの言葉通り、魔王である彼を差別することなく受け入れてくれた者達であるのなら――自分達の味方になって証言してくれる可能性も十二分にあるだろう。
ただ、それは彼らがフレイアの言うことを信じてくれたら、の話である。彼らの信用を得るためにはどうしたらいいか。どう言えばフレイアがトリアスの弁護士だと信じてもらえるか。トリアスの言葉から、そのヒントを探していくしかあるまい。
そして。――トリアスが強盗殺人で起訴されているということはすなわち、村からどんなお宝が消えているのか検察は把握しているということである。犯人ではないトリアスはそんなものを持ち去っていない。普通に考えれば犯人がまだそれを持っているか、あるいはどこかに売り飛ばしたと考えるのが自然である。そのルートを見つけることができれば――フレイアの無実を確定させることができるようになるかもしれない。
――盗賊たちなら、その“犯人”について何か知ってるかもしれねーな。情報もきちっと持って帰らねーと。
どんなに強大な相手でも、折れないハートがあれば負けじゃない。
何がなんでも折れてやるものか。フレイアは改めて自らに誓った。――もはやこれは、単なるトリアスの無実を証明するためだけのものではないのだから。
アイリスタウンでトリアスの犯行を目撃したという商人の娘は、マチルダ・ローズモスというらしい。裁判では検察側の商人として証言台に立つことだろう。二つ結びの赤茶髪を垂らしたソバカスの少女は、まだまだ顔立ちがあどけない。十七歳だが学校には通わず、両親の手伝いをしているのだという。生活は、あまり裕福ではないようだ。というのも彼女達が主に売っているバランベリーが今年は猛暑で不作だったのである。果物を売るのみならず、魔法を使った修理業者のような仕事もしてどうにか食いつないでいる状況らしかった。
『アイリスタウンが襲撃された日も、私達は町にベリーを売りに来ていました。売れ行きですか?……その、あんまり芳しくはなくて、ちょっと困ってたんです』
彼女は辿々しくも、しっかりとした声で証言したそうだ。
『その日は快晴でした。とても風が強くて、砂嵐が酷かったのを覚えてます。町には結界があるので、多少風が強くてもそんなに砂は入ってこないんですけど……町の北側は砂漠ですから。今日は徒歩で他の町に移動するのは難しそうだなって、お父さんと話してました。なんとしてでもこの町でベリーを売り切らないといけない……って。そしたら、砂が混じらない……妙に強い風が吹きはじめたんです』
町に結界がある――これは、フラワーメイルでは皆が知っている常識のひとつである。町をぐるりと囲む壁にはモンスターが嫌う臭いを出す装置が取り付けられ、そして一定以上の悪天候に影響されることのないよう結界師が配備され、常に町の安全を保っているのだ。結果師が担えるのは、魔導師系か召喚士のいずれかだ。当然、アイリスタウンも結界で守られていたのは間違いないことである。
『私は、黒魔法を使って仕事をしてきましたから……魔力というものには、かなり敏感なんです。誰かが魔法を使ったのはすぐに気付きました。どこからだろう、と思って……見上げた先の丘。高台の上に見ました。赤いローブを着た……藍色の長い髪の人を。…………その時は、男性か女性かもわからなくて、顔も見えなかったんですけど。検察の方に、取り調べの様子を見させて貰って……気付きました。あの時感じた魔力と……取り調べを受けている男の人の魔力は同じだって。だから……アイリスタウンを襲ったのは、トリアスさんという方で間違いないと思います……』
「なるほど、ねえ」
うむ、とフレイアはその果物を抱えて頷いた。アイリスタウンで購入し、箱詰めして貰ったバランベリー。一房であってもとても抱えて持っていけるサイズではなかったため、事務所まで郵送して貰ったのである。
箱から取り出して、フレイアはまじまじとその果物観察した。アイリス地方の特産品だが、フレイアはまだ食べたことがなかったのである。というか、実物を見たのも初めてだ。あんな少女が売り歩いているというのだから、てっきりもっと小ぶりのサイズなのかと思っていたのに。青年であるフレイアが両手を使って抱えなければならないほど巨大であろうとは。
「証言者のマチルダって子とお父さん……よくこんなの売り歩けるよなあ。一つ抱えて歩くだけでめっちゃきついべ?」
「この大きさが売りなんですよ、バランベリーは」
フレイアからベリーを受け取り、再び箱に戻すテクノ。小柄なテクノはより抱えるだけでしんどそうである。ある理由があって購入してみたはいいが――果たしてこの量が事務所の冷蔵庫に入ってくれるかが問題だ。少なくとも野菜室には押し込めなさそうである。
「一粒が、フラワーベースボールのボールくらいの大きさがあります。身がみっちりと詰まっていて栄養価も高く、冷蔵保存さえすれば長持ちするので保存食にもいいんだとか。一粒食べてみます?フレイアさん」
「おう、せっかくだしな。テクノも食うか?」
「はい。お皿出しますね」
マチルダ達は山盛りにしたベリーを、リアカーに積んで売り歩いていたようだ。こんな大荷物では、なるほど砂嵐が吹き荒れる砂漠を抜けてくることなど困難だろう。電車を使ったのか、それとも売り物は売り歩く先の町に先んじて送っておくのだろうか。
「彼女達は、前日にもバランベリーを売って歩いていました。その時にはそこそこ売れたそうですよ。……はい、どうぞ」
テクノは相変わらず器用だ。紫色の皮を剥くと、中からはぷるんとした淡い緑色の果肉が飛び出してくる。それをナイフとボークで切ってフレイアは口に運んだ。
瞬間。固いゼリーのような食感と、弾けるような酸味が口の中に広がる。
「うお、これうめぇな。……めっちゃ酸っぱいけど、めっちゃ後引く。ビール欲しいビール」
「一応まだ仕事中だってことをお忘れなく」
「わーってるよ」
栄養価が高い、というのは本当らしい。一粒食べただけでかなりお腹一杯になってしまった。取りあえず、残りは冷蔵庫先生に頑張ってもらって押し込めるしかあるまい。
「……フレイアさんに頼まれたことですが。……調べてみると、フレイアさんが言った通りでしたよ」
ベリーの房をハサミで切り分けながら、どうにか小さくしていくテクノ。幸いにして、大きさの割りにバランベリーの枝は太くないのだ。それでもあの重さの実を支えていられるのは、柔軟にしなることで衝撃を吸収できるからかのだと聞いている。
「あの話が事実なら……目撃証言を覆すことができます。そして、うまくいけばトリアスさんのアリバイを証明することも不可能ではないかもしれません」
「そこは検証してみるしかねぇな。体張るのしんどいけどよ」
「でも、問題はまだありますよ?トリアスさんだけ容疑者ではない、犯行が難しいと証明しただけでは……トリアスさんの疑いを完全に晴らすのは難しいかもしれません。真犯人が誰か、僕達の手で突き止めないと……」
「わかってる」
テクノを手伝って、残りのベリーを冷蔵庫に突っ込むことに成功する自分達。暫くオヤツはあの果物オンリーだな、なんてことを思いつつ。次の課題を考え始めるフレイアである。
トリアスが本当の犯人である可能性は、これでほぼ消えたと言っていい。だが、それならば誰が大量殺人を行い、町を破壊して回ったというのだろうか?
――そして殺人犯とは別に、黒幕がいる可能性が濃厚になってきやがったな。……この裁判、どこから駒を進めるかで大きく流れが変わってくることになる。できれば、俺達にメリットのある証言をしてくれる証人の一人や二人、見つけておきたいところではあるが……。
黒幕。――この事件を、なんとしてでもトリアスの犯行にしておきたい奴がいる、ということだ。トリアスの――ひいては、魔王の。
残念ながらその動機が政府にはあるのだ。今まで多くの魔王ジョブが起こす事件に振り回されてきた政府。本音を言うのなら一刻も早く、全ての魔王を生まれた直後から監視し、管理できる体勢を整えたいはずである。
だが、現行の法律では、特に何の罪も犯す前から人間を拘束しその自由を奪うことはできない。そもそも魔王ジョブの全てが必ず犯罪者になるわけでもないし、未来に犯罪を起こす可能性があるのは何も魔王に限った話ではないのだ。
法律を変えるために、まずは世論を味方につけておきたい。自分達がやってきたことを棚上げして、魔王職の人間を自由に拘束できる法律を制定させる――悲しいかな、そんな過激なことを考える人間は少なくないと知っている。
「……真犯人の手懸かりは、おおよそ二つ、だ」
ぴしっ、と指を二本立てるフレイア。
「一つは三つ目の事件……トリアスの宣戦布告映像。そして、最初のアネモニ村から消えた金品の行方、だ」
宣戦布告の映像も一応資料として提供されている。後でじっくり観察する必要があるだろう。トリアス本人に覚えがないと言っていたとすると、映っている人物はトリアスではない誰かか、もしくは合成してトリアスに見せかけているかのどちらかということになる。
「トリアスさんには、映像を作る技術なんてなさそうですよね。というか……」
「そうなんだよ。スフィア鉱石のカメラも、パソコンも、現状じゃかなり大型のものしか売ってない。ついでに滅茶苦茶高い。宿代もケチらなくちゃいけないわうなトリアスには、カメラ自体がまず買えなかっただろうさ。それを編集するコンピューターもな」
あれが出来る人間はその時点で限られている。一般人では手が出ない高い品であるならば、その相手は“一般人”ではないということになるのだから。
「……もう一度、トリアスと会って話をする必要があるな」
もしも、映像が編集されたものであるとしたら。一部の台詞や光景なら、トリアス自身覚えている可能性もある。心当たりが見つかれば、そこを徹底的に調べて証拠を探すことも不可能ではないかもしれない。
そして、トリアスが世話になっていたという盗賊の集落についてもだ。もし、彼らがトリアスの言葉通り、魔王である彼を差別することなく受け入れてくれた者達であるのなら――自分達の味方になって証言してくれる可能性も十二分にあるだろう。
ただ、それは彼らがフレイアの言うことを信じてくれたら、の話である。彼らの信用を得るためにはどうしたらいいか。どう言えばフレイアがトリアスの弁護士だと信じてもらえるか。トリアスの言葉から、そのヒントを探していくしかあるまい。
そして。――トリアスが強盗殺人で起訴されているということはすなわち、村からどんなお宝が消えているのか検察は把握しているということである。犯人ではないトリアスはそんなものを持ち去っていない。普通に考えれば犯人がまだそれを持っているか、あるいはどこかに売り飛ばしたと考えるのが自然である。そのルートを見つけることができれば――フレイアの無実を確定させることができるようになるかもしれない。
――盗賊たちなら、その“犯人”について何か知ってるかもしれねーな。情報もきちっと持って帰らねーと。
どんなに強大な相手でも、折れないハートがあれば負けじゃない。
何がなんでも折れてやるものか。フレイアは改めて自らに誓った。――もはやこれは、単なるトリアスの無実を証明するためだけのものではないのだから。
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