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<6・助力。>
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突然、目の前で銀色の光がばちばちと弾けた。花火の体にまとわりついていた大量の人型が、ぶるっと震えたのを感じ取る。そして。
「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
声にならぬ声を上げて、白い人形達が大量に煙のように解けて消えた。何が起きたのだろう。どうやら夜空が駆けつけてくれたらしい、ということまでは理解しているが。
慌てて周囲を見回す花火。目の前に夜空の背中があると思った次の瞬間、いきなり突き飛ばされて尻もちをつくことになる。
「い、痛ぇ!何すんだよ!」
思わず怒りの声を上げると、夜空はちらりとこちらを振り向いて“馬鹿か”と言う。
「奴らが地面に引きずり込めるのは、体育倉庫の裏の“影”の中だけだ。とっととそこから離脱しろ」
「あ……」
確かに、影に踏み込んだ瞬間足を掴まれたのだった。花火は慌てて立ち上がり、倉庫から距離を取る。彼が敵の攻撃の射程圏外に自分を突き飛ばしてくれたのだ、と数秒後に理解した。だとしてももう少し優しく扱ってくれてもと思わなくはないが。これでも一応、女の子ではあるのだし。
「す、涼風……お前、アレが何なのか知ってるのか?」
まだ危機は去っていない。夜空は長い髪の少女の幽霊と、その周りで踊るように蠢いている大量の白い人影と対峙している。さっきどうやら花火を助けるために何かしたようで、多少数は減っているようだが。
「まあな」
夜空は少女にまっすぐ向き直って言う。
「だが、説明は後だ。この場を切り抜けるのが先決。お前、怪我はしてないな?」
「う、うん」
「良かった、それならまだ逃げられるな。俺が合図したら、一気正門まで走れ」
「わ、わかった」
何が何だかわからないが、自分が想像もしなかった不可思議な現象が起きていることだけは間違いない。蹴ったり殴ったりした白い人形の感触も、手首を掴まれたゴムのような感触も本物である。CGでもなければ、幻でもないと思う。幽霊か、それ以外の別の何かであるのか。このスカした転校生が事情を知っているのなら、後でしっかり話を聞かなければ。
残念ながらこの場においては、花火は足手まといでしかないようだけれど。
「……」
長い黒髪の、顔のない少女の霊は。恨めしそうに唇を引き結ぶと、再びさっとその手を持ち上げてきた。また、あの白いぐねぐねとした人形に指示を出すつもりか。じりじりと花火が後ろに後ずさった時だった。
「お前達の相手をしている時間はないんだ、さっさと消えろ」
夜空が、忌々しいと言わんばかりに呟いた。
「“Holly-Rain”!」
「!」
彼がスペルを唱えた瞬間、少女の幽霊の頭上に銀色の魔法陣が浮かび上がる。そして、そこからいくつもの光球が雨あられと少女に、白いたくさんの人形達に降り注いだのだった。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
先ほど、花火を助けてくれたものと同じ色の光だ。光に焼かれ、少女と人形達が揃って絶叫する。
「今だ、走れ!」
「あ、ああ!」
言われるがまま、花火は正門がある方へと走り始めた。考えるのは全て後である。長く尾を引く悲鳴が遠ざかっていき、やがてぷっつりと途絶えるのがわかった。どうやら、追手は来ないらしい。
いつもなら、この程度の距離の全力疾走などまったく苦も無くこなせるはずなのに――今日ばかりは恐ろしいほど息が上がってしまっていた。正門に到着した途端、あまりの疲労感にずるずるとその場に座り込んでしまったほどに。
「た、たす、かった……?」
「ああ」
少し遅れて走ってきた夜空は、後ろをちらりと振りかえってから言った。どうやら、自分達はあのよくわからないバケモノから逃げ切れたということらしい。
「す、涼風ぇ……ちょ、説明。説明して。アレなんなの、マジで?た、助けてくれたのは、ありがとう、だけど……」
息切れと混乱と、今になってどっと押し寄せてきた恐怖と緊張で頭がまったく回らなかった。人形を蹴りまくっている時はアドエレナリンでも出ていたということらしい。あの時は動けていたはずの体は、今は全身石か鉛にでもなってしまったかのようだった。ぜーぜーと息を吐きながら話すせいで、頭も口もまったく回ってくれていない。
「あれ、七不思議のおばけ、なの?うちの学校、そういう幽霊がマジでいたって、こと?」
「違う。その様子だと、あの体育倉庫が七不思議の舞台になっているのは間違いないみたいだけどな」
「う、ん?」
何だろう、話が見えない。七不思議で語られた通りの、髪の長い少女のオバケが出現したのである。ならば当然、アレは七不思議に出てくるクラスメートを殺して自殺した少女の幽霊、とやらになるのではないか?
――ていうか、しれっと流しちゃってたけど。結構妙なこと言ってなかったっけ、こいつ。
『せっかく見つけた騎士に、こんなところで死なれるなんて冗談じゃない。仕方ないから、助けてやるよ』
――騎士って、なに?あたしのこと?……だ、駄目だ考えられない。酸素足りてない……。
頭を押さえてふらふらしていると、すっと目の前に差し出されるものがあった。見れば、夜空が250mlの小さなお茶のペットボトルを差し出してくれている。まだ栓も開いていないし、冷たい。自販機かどこかで買ってきてくれたのをくれるというつもりらしい。
「あ、ありがとう……」
「それ飲んで落ち着け。そしたら説明する」
「うん……」
いつの間にか、周囲に車の音や人の声が戻ってきている。門の前でぐだぐだしているのも目立つので、すぐ近くにあったベンチに移動した。うちの小学校は、ところどころ敷地内にベンチが設置されていて休めるようになっているのである。体の弱い生徒への配慮だとか、そんなことを聞いたことがあるような、ないような。
その緑色のベンチに座ったところで、お茶の栓を開けた。ぐいっと飲んでから、そういえば自分のランドセルに水筒入ってたんだっけと思い出す。すっかりぬるくなってしまってそうだが。
「……ごめん。ちょっと落ち着いた」
混乱が収まってくると、次に湧き上がってくるのは疑問と自己嫌悪だった。今でも思い出すと夜空の物言いに腹が立つのは事実だが、それでも言われた言葉は正しかったことが証明されたわけだ。
もし、夜空が助けにきてくれなかったら、あのまま地面に引きずり込まれて死んでいたかもしれない。彼の忠告を、聞かなかったばかりに。
「教えてくれないか、涼風。あの女の子と、白いおばけみたいなのは一体何なんだ。あたし達、何に襲われたっていうんだ。七不思議の幽霊じゃないのか?」
「……そうだな、どこから説明するべきか迷うな」
夜空は少し考え込むような仕草をした。どんな突拍子がない話が来ても驚かないぞ、と花火は身構える。ちょっと前の自分だったなら、オカルトもファンタジーもSFも空想の産物にすぎないと鼻で笑っていたに違いない。が、流石にこうもはっきり見てしまっては否定のしようもないのだ。殴った感触はまだ手に残っている。さすがに、これが幻だとは思えない。
「……異世界」
「え」
「お前は、異世界ってものはあると思っているか?まずはそこから解説するのが妥当だと思ってるんだが」
「……えっと」
おっとそう来たか。花火は戸惑いながらも、一応真剣に考えてみることにはする。最初に思いついたのはやはりアレだ、ラノベでお約束の異世界転生である。
トラックにぶつかったら異世界に転生してチート無双するやつ?とストレートに尋ねてみれば、夜空は少し渋い顔をした。
「完全に間違いじゃないが。……そもそも、ああいうライトノベルとかだと、まるで判で押したように殆どが“中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界”であるのは何故か知っているか?まあ、十中八九ゲームの影響だが」
「ファイナルファンタジーとか、ドラゴンクエストとかそのへん?」
「そうだな。そういう世界に憧れる人が多いこと、死んだあとで退屈な現実とはまったく違う世界に生きたいと思う人が多かったことから、異世界転生系のメディアが大流行しているわけだ。でも、お前も不思議に思ったことはあるんじゃないか?仮に人が死んだら異世界に行くとして……行く世界が必ずしも夢と希望に溢れたファンタジー世界である保証がどこにある?と。ラノベのような主人公補正がついていない、現実の人間なら尚更だ」
「確かに。全然違う異世界も世の中にはあるかもね」
想像するだけならば、いくらでもその余地を広げることはできるだろう。
それこそ真っ暗闇で何もない世界とか、人間が存在しない世界とか、未だに恐竜の時代にとどまっているような世界もあるかもしれない。それこそ、宇宙人がこの銀河のどこかに、地球以上の文明を持って暮らしているくらいの確率では様々な世界が存在しているのではとは思う。まあ、実際に異世界転生や転移、なんてものがあるかどうかは別として。
「セカイは、不干渉だ。実際はセカイというものは大きなドームのような壁に守られていて、他のセカイとはけして干渉できないようになっている。その壁を乗り越えることは、普通の人間には許されていない。何故か。別の世界の存在が異世界転移なんかしてきた暁には、本来の世界のルールや歴史が滅茶苦茶になってしまうからだ」
桃太郎の世界に魔法少女が転生してきて、桃太郎より先に魔法で鬼退治をしてしまったら物語が壊れてしまうだろう?と夜空。なるほど、それはわかりやすい例えかもしれない。魔法が存在しない“セカイ”に、異世界からやってきた魔法少女は存在するだけで許されない、ということなのだろう。
「ところが。時々、この世界の壁に異変が生じることがある。特異な能力を持つ人間の仕業なのか、異世界の存在の攻撃なのかはわからないが……とにかくこのセカイが、別の異世界と繋がってしまうことがあるんだ。その異世界の穴を、門……特にこの世界に強い悪影響を齎す門を、俺達は“イービル・ゲート”と呼んでいる。発見次第、速やかに封じなければいけない門だ。そこから異世界の、害意ある存在が雪崩こんできてしまうから。そうなったら、この世界の破滅に直結するからだ」
夜空はまっすぐに花火を見つめて、告げたのである。
「俺は、その門を閉じるための専門家……退魔師と呼ばれるもの。この学校に門がある可能性が高いと踏んで、再び封印するために転校してきたんだ」
「キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
声にならぬ声を上げて、白い人形達が大量に煙のように解けて消えた。何が起きたのだろう。どうやら夜空が駆けつけてくれたらしい、ということまでは理解しているが。
慌てて周囲を見回す花火。目の前に夜空の背中があると思った次の瞬間、いきなり突き飛ばされて尻もちをつくことになる。
「い、痛ぇ!何すんだよ!」
思わず怒りの声を上げると、夜空はちらりとこちらを振り向いて“馬鹿か”と言う。
「奴らが地面に引きずり込めるのは、体育倉庫の裏の“影”の中だけだ。とっととそこから離脱しろ」
「あ……」
確かに、影に踏み込んだ瞬間足を掴まれたのだった。花火は慌てて立ち上がり、倉庫から距離を取る。彼が敵の攻撃の射程圏外に自分を突き飛ばしてくれたのだ、と数秒後に理解した。だとしてももう少し優しく扱ってくれてもと思わなくはないが。これでも一応、女の子ではあるのだし。
「す、涼風……お前、アレが何なのか知ってるのか?」
まだ危機は去っていない。夜空は長い髪の少女の幽霊と、その周りで踊るように蠢いている大量の白い人影と対峙している。さっきどうやら花火を助けるために何かしたようで、多少数は減っているようだが。
「まあな」
夜空は少女にまっすぐ向き直って言う。
「だが、説明は後だ。この場を切り抜けるのが先決。お前、怪我はしてないな?」
「う、うん」
「良かった、それならまだ逃げられるな。俺が合図したら、一気正門まで走れ」
「わ、わかった」
何が何だかわからないが、自分が想像もしなかった不可思議な現象が起きていることだけは間違いない。蹴ったり殴ったりした白い人形の感触も、手首を掴まれたゴムのような感触も本物である。CGでもなければ、幻でもないと思う。幽霊か、それ以外の別の何かであるのか。このスカした転校生が事情を知っているのなら、後でしっかり話を聞かなければ。
残念ながらこの場においては、花火は足手まといでしかないようだけれど。
「……」
長い黒髪の、顔のない少女の霊は。恨めしそうに唇を引き結ぶと、再びさっとその手を持ち上げてきた。また、あの白いぐねぐねとした人形に指示を出すつもりか。じりじりと花火が後ろに後ずさった時だった。
「お前達の相手をしている時間はないんだ、さっさと消えろ」
夜空が、忌々しいと言わんばかりに呟いた。
「“Holly-Rain”!」
「!」
彼がスペルを唱えた瞬間、少女の幽霊の頭上に銀色の魔法陣が浮かび上がる。そして、そこからいくつもの光球が雨あられと少女に、白いたくさんの人形達に降り注いだのだった。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
先ほど、花火を助けてくれたものと同じ色の光だ。光に焼かれ、少女と人形達が揃って絶叫する。
「今だ、走れ!」
「あ、ああ!」
言われるがまま、花火は正門がある方へと走り始めた。考えるのは全て後である。長く尾を引く悲鳴が遠ざかっていき、やがてぷっつりと途絶えるのがわかった。どうやら、追手は来ないらしい。
いつもなら、この程度の距離の全力疾走などまったく苦も無くこなせるはずなのに――今日ばかりは恐ろしいほど息が上がってしまっていた。正門に到着した途端、あまりの疲労感にずるずるとその場に座り込んでしまったほどに。
「た、たす、かった……?」
「ああ」
少し遅れて走ってきた夜空は、後ろをちらりと振りかえってから言った。どうやら、自分達はあのよくわからないバケモノから逃げ切れたということらしい。
「す、涼風ぇ……ちょ、説明。説明して。アレなんなの、マジで?た、助けてくれたのは、ありがとう、だけど……」
息切れと混乱と、今になってどっと押し寄せてきた恐怖と緊張で頭がまったく回らなかった。人形を蹴りまくっている時はアドエレナリンでも出ていたということらしい。あの時は動けていたはずの体は、今は全身石か鉛にでもなってしまったかのようだった。ぜーぜーと息を吐きながら話すせいで、頭も口もまったく回ってくれていない。
「あれ、七不思議のおばけ、なの?うちの学校、そういう幽霊がマジでいたって、こと?」
「違う。その様子だと、あの体育倉庫が七不思議の舞台になっているのは間違いないみたいだけどな」
「う、ん?」
何だろう、話が見えない。七不思議で語られた通りの、髪の長い少女のオバケが出現したのである。ならば当然、アレは七不思議に出てくるクラスメートを殺して自殺した少女の幽霊、とやらになるのではないか?
――ていうか、しれっと流しちゃってたけど。結構妙なこと言ってなかったっけ、こいつ。
『せっかく見つけた騎士に、こんなところで死なれるなんて冗談じゃない。仕方ないから、助けてやるよ』
――騎士って、なに?あたしのこと?……だ、駄目だ考えられない。酸素足りてない……。
頭を押さえてふらふらしていると、すっと目の前に差し出されるものがあった。見れば、夜空が250mlの小さなお茶のペットボトルを差し出してくれている。まだ栓も開いていないし、冷たい。自販機かどこかで買ってきてくれたのをくれるというつもりらしい。
「あ、ありがとう……」
「それ飲んで落ち着け。そしたら説明する」
「うん……」
いつの間にか、周囲に車の音や人の声が戻ってきている。門の前でぐだぐだしているのも目立つので、すぐ近くにあったベンチに移動した。うちの小学校は、ところどころ敷地内にベンチが設置されていて休めるようになっているのである。体の弱い生徒への配慮だとか、そんなことを聞いたことがあるような、ないような。
その緑色のベンチに座ったところで、お茶の栓を開けた。ぐいっと飲んでから、そういえば自分のランドセルに水筒入ってたんだっけと思い出す。すっかりぬるくなってしまってそうだが。
「……ごめん。ちょっと落ち着いた」
混乱が収まってくると、次に湧き上がってくるのは疑問と自己嫌悪だった。今でも思い出すと夜空の物言いに腹が立つのは事実だが、それでも言われた言葉は正しかったことが証明されたわけだ。
もし、夜空が助けにきてくれなかったら、あのまま地面に引きずり込まれて死んでいたかもしれない。彼の忠告を、聞かなかったばかりに。
「教えてくれないか、涼風。あの女の子と、白いおばけみたいなのは一体何なんだ。あたし達、何に襲われたっていうんだ。七不思議の幽霊じゃないのか?」
「……そうだな、どこから説明するべきか迷うな」
夜空は少し考え込むような仕草をした。どんな突拍子がない話が来ても驚かないぞ、と花火は身構える。ちょっと前の自分だったなら、オカルトもファンタジーもSFも空想の産物にすぎないと鼻で笑っていたに違いない。が、流石にこうもはっきり見てしまっては否定のしようもないのだ。殴った感触はまだ手に残っている。さすがに、これが幻だとは思えない。
「……異世界」
「え」
「お前は、異世界ってものはあると思っているか?まずはそこから解説するのが妥当だと思ってるんだが」
「……えっと」
おっとそう来たか。花火は戸惑いながらも、一応真剣に考えてみることにはする。最初に思いついたのはやはりアレだ、ラノベでお約束の異世界転生である。
トラックにぶつかったら異世界に転生してチート無双するやつ?とストレートに尋ねてみれば、夜空は少し渋い顔をした。
「完全に間違いじゃないが。……そもそも、ああいうライトノベルとかだと、まるで判で押したように殆どが“中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界”であるのは何故か知っているか?まあ、十中八九ゲームの影響だが」
「ファイナルファンタジーとか、ドラゴンクエストとかそのへん?」
「そうだな。そういう世界に憧れる人が多いこと、死んだあとで退屈な現実とはまったく違う世界に生きたいと思う人が多かったことから、異世界転生系のメディアが大流行しているわけだ。でも、お前も不思議に思ったことはあるんじゃないか?仮に人が死んだら異世界に行くとして……行く世界が必ずしも夢と希望に溢れたファンタジー世界である保証がどこにある?と。ラノベのような主人公補正がついていない、現実の人間なら尚更だ」
「確かに。全然違う異世界も世の中にはあるかもね」
想像するだけならば、いくらでもその余地を広げることはできるだろう。
それこそ真っ暗闇で何もない世界とか、人間が存在しない世界とか、未だに恐竜の時代にとどまっているような世界もあるかもしれない。それこそ、宇宙人がこの銀河のどこかに、地球以上の文明を持って暮らしているくらいの確率では様々な世界が存在しているのではとは思う。まあ、実際に異世界転生や転移、なんてものがあるかどうかは別として。
「セカイは、不干渉だ。実際はセカイというものは大きなドームのような壁に守られていて、他のセカイとはけして干渉できないようになっている。その壁を乗り越えることは、普通の人間には許されていない。何故か。別の世界の存在が異世界転移なんかしてきた暁には、本来の世界のルールや歴史が滅茶苦茶になってしまうからだ」
桃太郎の世界に魔法少女が転生してきて、桃太郎より先に魔法で鬼退治をしてしまったら物語が壊れてしまうだろう?と夜空。なるほど、それはわかりやすい例えかもしれない。魔法が存在しない“セカイ”に、異世界からやってきた魔法少女は存在するだけで許されない、ということなのだろう。
「ところが。時々、この世界の壁に異変が生じることがある。特異な能力を持つ人間の仕業なのか、異世界の存在の攻撃なのかはわからないが……とにかくこのセカイが、別の異世界と繋がってしまうことがあるんだ。その異世界の穴を、門……特にこの世界に強い悪影響を齎す門を、俺達は“イービル・ゲート”と呼んでいる。発見次第、速やかに封じなければいけない門だ。そこから異世界の、害意ある存在が雪崩こんできてしまうから。そうなったら、この世界の破滅に直結するからだ」
夜空はまっすぐに花火を見つめて、告げたのである。
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