4 / 33
<第四話・車>
しおりを挟む
「ミソちゃん、飲酒運転だけはやめてくれたまえよー」
琴子は開口一番にそう言った。車に乗せて貰っておいて、最初に言うことはそれかいな!と思ったが。自分がアル中に片足突っ込んでいる自覚があるゆえ、美園は何も言うことが出来ない。
何処からどう見てもオンナノコなのに、美園ってば中身はオッサンだよねー、というのは昔から言われていることである。煙草は吸わないがビールが大好き。どう見ても父の影響である。子供の頃から父に付き合ってこっそり飲んでいました、とは流石に今のご時世で堂々と公言できることではないが。
「昨日から飲んでませんよーだ。余計なこと言うと助手席から放り出すけどよろしい?」
「よろしくなーい!ので、大人しくしてるー」
「わかればいいのよ、わかれば」
A駅近くで彼女を拾っていざT県笹下村へ。どれくらいの時間で着けるかどうかは、高速道路の混み具合とご相談である。一応祖父母には遊びに行く旨を伝えてあった。相変わらずのんびりまったりした祖母だが、電話で話すと話が長いことだけが難点である。まあ、自分も琴子との電話で普通に二時間消費とかもザラにあるため、人のことは全く言えないわけだが。
取材という名目であるものの、二人ともちょっとした田舎観光の気分なのは間違いない。なんといっても、見知った土地である。琴子を連れていったことはないが、人懐こい祖母は友人を連れていくことにあっさりとオーケーを出してくれた。そして四十分は近況報告やら雑談やらで長電話である。そりゃ、緊張感が薄れるのも致し方あるまい。
ヤバイ風習のある閉鎖的な村、ならばそうそうよそ者を連れてくることにいい顔をしたりはしないはずである。取材という名目はあるが、これは本当に掲示板の彼の姉はたまたま事故にでも巻き込まれただけかな、と思い始めていた。あまりにも、生け贄を捧げるアレな農村のイメージと、実際の笹下村のイメージがかけ離れ過ぎているためである。
――まあ、ハズレだったらもうそれでもいいや。事故だろうと消えたお姉さんとやらのご遺体の一部でも見つかれば十分面白いわけですし?
不謹慎と言いたければ言え、赤の他人が消えたことに対してどうこう思うほど情の深い性格でもないのである。とにかく今大事なことは、久々に祖父母の顔を見ることと、あのイケ好かない部長を見返してやることだけなのだから。
「サービスエリアこまめに寄ってね、あたしトイレ近いし」
車が動き出してからずっと、助手席で携帯電話を弄ってばかりの琴子である。全くナビゲートする気はないらしい。まあ、方向音痴の彼女に斜め上すぎるナビをされても正直困るのだが。なんといっても彼女は、駅から徒歩一分の店に一時間かけて到着したというとんでもない前科がある人間である。
「盆前のこの時期だし今日土曜日だし、それなりに混んでるでしょ道。早めに出発はしたけどもさ」
「早起きするぞーって意気込んでおいて人にモーニングコールまで頼んだくせに、しっかり寝坊して遅刻したのは誰だっけ?」
「よく言うよ、そういう美園は前の晩に飲むと全然早起きできなくなるくせにー。コンスタンストに起きれないあたしの方がマシですー」
いやそんなことはないだろ、と内心ツッコむ美園である。前に大型トラックが来てしまったので、ウインカーを出して追い越し車線に移ることに決める。車であちこち遠出をすることもある美園だが、かといって運転に自信があるかと言われればそういうわけではないのだ。ただ自由に遠くまで行けるから電車より好き、というそれだけの理由である。高速道路も、出来ればあまり走りたくない質であったりする。
トラックの後ろは視界が悪くなるから苦手、というドライバーは多分少なくないだろう。同時に、一般道を走っている時、バイクに抜かれるのもあんまり好きではないという者も。抜かれてそのまま走り去ってくれればいいのだが、抜いてそのまま前をチンタラ走る奴がいるのが苦手なのだ。酷いと後ろの車に、まとめて二台抜きされることもあるくらいなのだから。
「誘ったの私だけどさ、一応琴子、言われたカメラとか道具とか持ってきたんだよね?気休めのお塩含めて」
声をかけると琴子は隣で、ばっちりですぅ!と派手に両手を上げて見せた。飲んでもいないのに随分とハイテンションだ。
「まあ、ガチの悪霊が出てきた時、食卓に乗せてるようなお塩がどこまで役に立つかは知らんけどね。つか、そういう美園はどうなのよ。トランク見たけどあのでっかいフリーザーバッグは何かなー?飲酒運転はダメって言ったけどー?」
「お、おじいちゃんとおばあちゃんもビール好きだから!ただのお土産だし!一緒に飲もうとか思ってないし思っててもちゃんとお酒抜けてから運転するつもりだし!」
「うんわかった、今日は泊まりね美園。飲酒運転イクナイ」
「なんで夜まで飲む前提なのよもう!」
まあ、確かにちょっと危ないのはわかりきったことだが。夜まで飲んじゃったら、これは泊まっていくしかないなと思っていたし、その可能性は非常に高いわけだったが。
そもそも、美園はどうしても琴子のある一点だけが理解できないのである。彼女もお酒を飲まないわけではないが、甘いカクテルやサワーオンリーであることを常々公言しているのだ。甘くないお酒なんて無理!ビールなんて何が美味しいのかマジわかんない!と堂々と言い放ってくれた経緯がある。全く訳がわからない。あの苦味と鼻から抜けるような旨味の良さがわからないなんて、人生なんと損をしていることだろうか!
ビールにハマればきっと、おつまみの美味さも百倍、人と話す楽しさも百倍であるというのに。全く、可哀想な友人もいたものである。確かに飲酒運転はよろしくないが、車で来たことも忘れて飲んでしまうのどの魅力がビールにはあるのだ。――近年焼酎派に転んだ従姉妹には、焼酎飲まずにビールだけなんて!とやたらめったら力説されたが。
――焼酎も美味しいかもしれないけど、やっぱりビールに勝るもんはないのよー。はぁ、ビール仲間もっと欲しい。なんで最近の若い子はビール好きじゃないのかしら。理解できんわ。
先月の飲み会で、一人でひたすらビールをおかわりしまくり、周囲の草食性男子達をドン引きさせてしまったのは苦い思い出である。
――そもそもオカ研なんだから、もっと肉食系のオトコがいたっていいはずなのに!最近のオトコはどいつもこいつもダメダメなんだから!積極性が足りんのよ積極性がー!
そういうところがオッサンと呼ばれる原因なのだが、美園は気づいていなかったりする。(そもそも最近の若い子が、なんて言い出した時点で終わってるよね、BY琴子)。
たべっていると、いつの間にか最初のサービスエリアが近付いてきた。出来れば午前中のうちに到着して祖父母の家で昼御飯を食べたいところだったが、思ったよりも道が混んでいる。出発が遅れたのも痛手だ。これは、お昼を買って車の中で食べるか、あるいはサービスエリア内のレストランを利用するかを考えなければいけないだろう。
ウインカーを出して、車を駐車場に入れる。一般的な子供達の夏休みにブチ当たってしまっていることもあってか、駐車場はそれなりに混んでいた。幸いこちらは軽自動車である。軽専用、と書かれたゾーンが空いていてなんとかそこに停めることができた。問題は、この様子だとトイレもショップもかなり混んでそうということだが。
「まあ、トイレに行っておかない選択肢はないわなー。琴子、お腹はすいてる?」
「まだ大丈夫。ココではトイレだけでいいよ。お昼は次のサービスエリアでよかでしょ、混んでるし」
「まあ、次も混んでるかもだけどねぇ」
車を停めて鍵を抜き、降りて共にトイレの列へ。多少混んでいても、この先を考えるなら寄っておかないと不安だ。並んでいる最中に、せっかくだから実況スレに書き込んでおくことにする。今時流行らないだの、どうせ本当に行ってないんだろなどワイワイ騒がれたが、そのわりにオカルト掲示板は盛り上がっていた。なんだかんだで暇人は多いのだろう。
***
253:記者志望JD
とりあえず現在高速移動中なので報告~。
●●SAで休んでるところです。
笹下村着いたらまた報告するね。希望があれば写真も上げるよー。
***
このテの掲示板はそこまで速い速度で動かないのが定番なのだが、土曜日で夏休みということもあってすぐにレスが来た。どうせなら、彼らにも楽しんで貰えるような報告ができればいいのだが。
「そういえばさぁ」
トイレに並びながら、琴子が言い出した。
「部長からのメール、美園のところにも来たんだよね?めっちゃタイムリーでさすがにあたしビビったんだけど」
「あー、あれ?」
実は出発の前日――つまり、昨日の夜。件の新倉焔部長からメールが着ていたのである。それも美園と琴子、二人一緒に、だ。
内容は簡潔に、一文のみ。
『取材しろとは言ったが、本物に足を突っ込めとは言ってない。
さっさと引き返せ』
まるで、二人がこれから笹下村に向かうことがわかっていたかのようだった。取材にいつ、何処に向かうかなど他の誰にも言っていなかったというのに。
「連絡先は、部長には教えてあるから、メールが来ることそのものはそんなにおかしくないけどさあ。流石にちょっと、気持ち悪いよね。そりゃ、私達を叱ったのは誰かさんですし、そろそろ取材に行くタイミングなのはわかってたと思うけどさあ」
「あー、美園知らない?新倉部長ってさ、“ホンモノ”だって噂がある人なんだよね」
「ホンモノって?」
「幽霊とかそういうの、マジで見えちゃう人ってこと」
あのインテリメガネが?と美園は眉を潜める。列が進み、それに合わせて歩きながら、マジだってマジ!と愉快そうに琴子は告げた。
「頭もいいけど眼もヤバいし、実際に視たものについて論文も書いてるってウワサ。まあ本当なのかは知らんけどね。……あたし達がどこに行くのか、その能力で知りましたーなんてまでいくと、もはや超能力の類いになっちゃうしねぇ」
琴子は開口一番にそう言った。車に乗せて貰っておいて、最初に言うことはそれかいな!と思ったが。自分がアル中に片足突っ込んでいる自覚があるゆえ、美園は何も言うことが出来ない。
何処からどう見てもオンナノコなのに、美園ってば中身はオッサンだよねー、というのは昔から言われていることである。煙草は吸わないがビールが大好き。どう見ても父の影響である。子供の頃から父に付き合ってこっそり飲んでいました、とは流石に今のご時世で堂々と公言できることではないが。
「昨日から飲んでませんよーだ。余計なこと言うと助手席から放り出すけどよろしい?」
「よろしくなーい!ので、大人しくしてるー」
「わかればいいのよ、わかれば」
A駅近くで彼女を拾っていざT県笹下村へ。どれくらいの時間で着けるかどうかは、高速道路の混み具合とご相談である。一応祖父母には遊びに行く旨を伝えてあった。相変わらずのんびりまったりした祖母だが、電話で話すと話が長いことだけが難点である。まあ、自分も琴子との電話で普通に二時間消費とかもザラにあるため、人のことは全く言えないわけだが。
取材という名目であるものの、二人ともちょっとした田舎観光の気分なのは間違いない。なんといっても、見知った土地である。琴子を連れていったことはないが、人懐こい祖母は友人を連れていくことにあっさりとオーケーを出してくれた。そして四十分は近況報告やら雑談やらで長電話である。そりゃ、緊張感が薄れるのも致し方あるまい。
ヤバイ風習のある閉鎖的な村、ならばそうそうよそ者を連れてくることにいい顔をしたりはしないはずである。取材という名目はあるが、これは本当に掲示板の彼の姉はたまたま事故にでも巻き込まれただけかな、と思い始めていた。あまりにも、生け贄を捧げるアレな農村のイメージと、実際の笹下村のイメージがかけ離れ過ぎているためである。
――まあ、ハズレだったらもうそれでもいいや。事故だろうと消えたお姉さんとやらのご遺体の一部でも見つかれば十分面白いわけですし?
不謹慎と言いたければ言え、赤の他人が消えたことに対してどうこう思うほど情の深い性格でもないのである。とにかく今大事なことは、久々に祖父母の顔を見ることと、あのイケ好かない部長を見返してやることだけなのだから。
「サービスエリアこまめに寄ってね、あたしトイレ近いし」
車が動き出してからずっと、助手席で携帯電話を弄ってばかりの琴子である。全くナビゲートする気はないらしい。まあ、方向音痴の彼女に斜め上すぎるナビをされても正直困るのだが。なんといっても彼女は、駅から徒歩一分の店に一時間かけて到着したというとんでもない前科がある人間である。
「盆前のこの時期だし今日土曜日だし、それなりに混んでるでしょ道。早めに出発はしたけどもさ」
「早起きするぞーって意気込んでおいて人にモーニングコールまで頼んだくせに、しっかり寝坊して遅刻したのは誰だっけ?」
「よく言うよ、そういう美園は前の晩に飲むと全然早起きできなくなるくせにー。コンスタンストに起きれないあたしの方がマシですー」
いやそんなことはないだろ、と内心ツッコむ美園である。前に大型トラックが来てしまったので、ウインカーを出して追い越し車線に移ることに決める。車であちこち遠出をすることもある美園だが、かといって運転に自信があるかと言われればそういうわけではないのだ。ただ自由に遠くまで行けるから電車より好き、というそれだけの理由である。高速道路も、出来ればあまり走りたくない質であったりする。
トラックの後ろは視界が悪くなるから苦手、というドライバーは多分少なくないだろう。同時に、一般道を走っている時、バイクに抜かれるのもあんまり好きではないという者も。抜かれてそのまま走り去ってくれればいいのだが、抜いてそのまま前をチンタラ走る奴がいるのが苦手なのだ。酷いと後ろの車に、まとめて二台抜きされることもあるくらいなのだから。
「誘ったの私だけどさ、一応琴子、言われたカメラとか道具とか持ってきたんだよね?気休めのお塩含めて」
声をかけると琴子は隣で、ばっちりですぅ!と派手に両手を上げて見せた。飲んでもいないのに随分とハイテンションだ。
「まあ、ガチの悪霊が出てきた時、食卓に乗せてるようなお塩がどこまで役に立つかは知らんけどね。つか、そういう美園はどうなのよ。トランク見たけどあのでっかいフリーザーバッグは何かなー?飲酒運転はダメって言ったけどー?」
「お、おじいちゃんとおばあちゃんもビール好きだから!ただのお土産だし!一緒に飲もうとか思ってないし思っててもちゃんとお酒抜けてから運転するつもりだし!」
「うんわかった、今日は泊まりね美園。飲酒運転イクナイ」
「なんで夜まで飲む前提なのよもう!」
まあ、確かにちょっと危ないのはわかりきったことだが。夜まで飲んじゃったら、これは泊まっていくしかないなと思っていたし、その可能性は非常に高いわけだったが。
そもそも、美園はどうしても琴子のある一点だけが理解できないのである。彼女もお酒を飲まないわけではないが、甘いカクテルやサワーオンリーであることを常々公言しているのだ。甘くないお酒なんて無理!ビールなんて何が美味しいのかマジわかんない!と堂々と言い放ってくれた経緯がある。全く訳がわからない。あの苦味と鼻から抜けるような旨味の良さがわからないなんて、人生なんと損をしていることだろうか!
ビールにハマればきっと、おつまみの美味さも百倍、人と話す楽しさも百倍であるというのに。全く、可哀想な友人もいたものである。確かに飲酒運転はよろしくないが、車で来たことも忘れて飲んでしまうのどの魅力がビールにはあるのだ。――近年焼酎派に転んだ従姉妹には、焼酎飲まずにビールだけなんて!とやたらめったら力説されたが。
――焼酎も美味しいかもしれないけど、やっぱりビールに勝るもんはないのよー。はぁ、ビール仲間もっと欲しい。なんで最近の若い子はビール好きじゃないのかしら。理解できんわ。
先月の飲み会で、一人でひたすらビールをおかわりしまくり、周囲の草食性男子達をドン引きさせてしまったのは苦い思い出である。
――そもそもオカ研なんだから、もっと肉食系のオトコがいたっていいはずなのに!最近のオトコはどいつもこいつもダメダメなんだから!積極性が足りんのよ積極性がー!
そういうところがオッサンと呼ばれる原因なのだが、美園は気づいていなかったりする。(そもそも最近の若い子が、なんて言い出した時点で終わってるよね、BY琴子)。
たべっていると、いつの間にか最初のサービスエリアが近付いてきた。出来れば午前中のうちに到着して祖父母の家で昼御飯を食べたいところだったが、思ったよりも道が混んでいる。出発が遅れたのも痛手だ。これは、お昼を買って車の中で食べるか、あるいはサービスエリア内のレストランを利用するかを考えなければいけないだろう。
ウインカーを出して、車を駐車場に入れる。一般的な子供達の夏休みにブチ当たってしまっていることもあってか、駐車場はそれなりに混んでいた。幸いこちらは軽自動車である。軽専用、と書かれたゾーンが空いていてなんとかそこに停めることができた。問題は、この様子だとトイレもショップもかなり混んでそうということだが。
「まあ、トイレに行っておかない選択肢はないわなー。琴子、お腹はすいてる?」
「まだ大丈夫。ココではトイレだけでいいよ。お昼は次のサービスエリアでよかでしょ、混んでるし」
「まあ、次も混んでるかもだけどねぇ」
車を停めて鍵を抜き、降りて共にトイレの列へ。多少混んでいても、この先を考えるなら寄っておかないと不安だ。並んでいる最中に、せっかくだから実況スレに書き込んでおくことにする。今時流行らないだの、どうせ本当に行ってないんだろなどワイワイ騒がれたが、そのわりにオカルト掲示板は盛り上がっていた。なんだかんだで暇人は多いのだろう。
***
253:記者志望JD
とりあえず現在高速移動中なので報告~。
●●SAで休んでるところです。
笹下村着いたらまた報告するね。希望があれば写真も上げるよー。
***
このテの掲示板はそこまで速い速度で動かないのが定番なのだが、土曜日で夏休みということもあってすぐにレスが来た。どうせなら、彼らにも楽しんで貰えるような報告ができればいいのだが。
「そういえばさぁ」
トイレに並びながら、琴子が言い出した。
「部長からのメール、美園のところにも来たんだよね?めっちゃタイムリーでさすがにあたしビビったんだけど」
「あー、あれ?」
実は出発の前日――つまり、昨日の夜。件の新倉焔部長からメールが着ていたのである。それも美園と琴子、二人一緒に、だ。
内容は簡潔に、一文のみ。
『取材しろとは言ったが、本物に足を突っ込めとは言ってない。
さっさと引き返せ』
まるで、二人がこれから笹下村に向かうことがわかっていたかのようだった。取材にいつ、何処に向かうかなど他の誰にも言っていなかったというのに。
「連絡先は、部長には教えてあるから、メールが来ることそのものはそんなにおかしくないけどさあ。流石にちょっと、気持ち悪いよね。そりゃ、私達を叱ったのは誰かさんですし、そろそろ取材に行くタイミングなのはわかってたと思うけどさあ」
「あー、美園知らない?新倉部長ってさ、“ホンモノ”だって噂がある人なんだよね」
「ホンモノって?」
「幽霊とかそういうの、マジで見えちゃう人ってこと」
あのインテリメガネが?と美園は眉を潜める。列が進み、それに合わせて歩きながら、マジだってマジ!と愉快そうに琴子は告げた。
「頭もいいけど眼もヤバいし、実際に視たものについて論文も書いてるってウワサ。まあ本当なのかは知らんけどね。……あたし達がどこに行くのか、その能力で知りましたーなんてまでいくと、もはや超能力の類いになっちゃうしねぇ」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ジャクタ様と四十九人の生贄
はじめアキラ
ホラー
「知らなくても無理ないね。大人の間じゃ結構大騒ぎになってるの。……なんかね、禁域に入った馬鹿がいて、何かとんでもないことをやらかしてくれたんじゃないかって」
T県T群尺汰村。
人口数百人程度のこののどかな村で、事件が発生した。禁域とされている移転前の尺汰村、通称・旧尺汰村に東京から来た動画配信者たちが踏込んで、不自然な死に方をしたというのだ。
怯える大人達、不安がる子供達。
やがて恐れていたことが現実になる。村の守り神である“ジャクタ様”を祀る御堂家が、目覚めてしまったジャクタ様を封印するための儀式を始めたのだ。
結界に閉ざされた村で、必要な生贄は四十九人。怪物が放たれた箱庭の中、四十九人が死ぬまで惨劇は終わらない。
尺汰村分校に通う女子高校生の平塚花林と、男子小学生の弟・平塚亜林もまた、その儀式に巻き込まれることになり……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
鈴ノ宮恋愛奇譚
麻竹
ホラー
霊感少年と平凡な少女との涙と感動のホラーラブコメディー・・・・かも。
第一章【きっかけ】
容姿端麗、冷静沈着、学校内では人気NO.1の鈴宮 兇。彼がひょんな場所で出会ったのはクラスメートの那々瀬 北斗だった。しかし北斗は・・・・。
--------------------------------------------------------------------------------
恋愛要素多め、ホラー要素ありますが、作者がチキンなため大して怖くないです(汗)
他サイト様にも投稿されています。
毎週金曜、丑三つ時に更新予定。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
感染した世界で~Second of Life's~
霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。
物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。
それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
怪異相談所の店主は今日も語る
くろぬか
ホラー
怪異相談所 ”語り部 結”。
人に言えない“怪異”のお悩み解決します、まずはご相談を。相談コース3000円~。除霊、その他オプションは状況によりお値段が変動いたします。
なんて、やけにポップな看板を掲げたおかしなお店。
普通の人なら入らない、入らない筈なのだが。
何故か今日もお客様は訪れる。
まるで導かれるかの様にして。
※※※
この物語はフィクションです。
実際に語られている”怖い話”なども登場致します。
その中には所謂”聞いたら出る”系のお話もございますが、そういうお話はかなり省略し内容までは描かない様にしております。
とはいえさわり程度は書いてありますので、自己責任でお読みいただければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる