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本編

16話 報告①

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話し合いが済み、詳しいことはまた後日ということでランドロフが名残惜しそうにしながらも、取り敢えず帰ろうとしたところでカトリーナがランドロフを呼び止めた。

「ランドロフ様、お待ちください。 お話があるのです。」

要件はもちろん、懐妊についてだった。兄のハワードとランドロフが今後のことについて話している時に口を挟むのははばかられたし、ハワードもカトリーナが自分で伝えたいだろうと思い、話していないのでランドロフはまだカトリーナが懐妊していることを知らない。どきどきとしながら喜んでくれるだろうかと頬を赤らめているとランドロフはカトリーナが近づくにつれてギクシャクとした動きになった。

「あ…いや、その…ハワード殿は?」

「兄様は商会の方に戻られました。あの、少しお時間を頂きたいのですがこの後用事でもございましたか…?」

今すぐに伝えたいのは山々だが、急ぎの用事があるのならまた明日にした方が良いだろうかとカトリーナが眉を下げて残念に思っているとランドロフはカトリーナから逃げるようにゆっくりと後ろに下がりながら手を振って否定する。

「いや…何も無い。だが、その…話は、明日、ハワード殿がいる時では駄目だろうか?」

「駄目ではありませんが…出来れば今、ふたりきりでお話したいです。…私とふたりきりはお嫌なのですか…?」

下がってゆくランドロフを不思議に思って先程から近付くが、近付けば近付くほどランドロフはカトリーナから逃げるように遠ざかっていく、そんな訳で当然ふたりの距離は一向に縮まらない。そんな状況にふと、カトリーナは思ってしまった。自分に近付かれたがらなかったり、ふたりきりになるのを避けようとするランドロフはもしや…まさか本当に辺境で自分よりも好きな人が出来てしまったのでは? と。

「辺境で、好きな方でもできてしまったのですか…?」

客観的に見ればランドロフがカトリーナ以外に興味の欠片も抱いていないのは一目瞭然。カトリーナが想像しているようなことなど有り得るはずがないのだが、カトリーナには自分がランドロフに異様と思えるほど執着されている自覚がない。それに加え、長期間会っていなかったことや妊娠中の精神的に不安定な状態ということもありそのような結論に至っていた。

「俺が生涯愛するのはカトリーナだけだ! …その、あまり近寄られると我慢が出来ないというか…正直、もう限界で…連れて帰りたい。…ふたりきりで、というのはカトリーナも同じ気持ちだと思ってもいいのだろうか…?」

当然、そんな見当違いなことを言われたランドロフは勢いよく否定し、想いを伝える。それから、少し迷って避けるようなことをしてしまった理由を話し出すとカトリーナはみるみるうちに顔を真っ赤に染め上げて、先程とは打って変わってランドロフから逃げ出した。

「あ、あの…わ、わわわ私は、ほんとうに、お話がしたかっただけです!」
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