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本編
15話 交渉
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「ハワード殿、今日は提案をしに来たんだ。」
カトリーナから引き剥がされて、ハワードの隣にいるカトリーナを未練がましくちらちらと見ながらランドロフがそう言うと、ただでさえ冷ややかだったハワードの笑みは消え、代わりに酷く不機嫌そうな表情が覗く。情けないことは分かっていながらも若干怯んでからランドロフは交渉のために口を開いた。
──────
ランドロフが説明する提案を聞き終わって、結論から言えばハワードは悪い提案ではないと思っていた。この先、高位貴族と渡り合う中でハワードに足りない身分というものを侯爵家という後ろ盾で補うことが出来る。それはカトリーナを守る体制をさらに強固にすることができるし、商会も名目だけ侯爵家の持ち物ということにしてしまえば目をつけられて潰される心配はなくなる。
それに、商会の会頭をしながらカトリーナの傍についていられるというのはハワード個人にとってはとても喜ばしい点だった。ランドロフの元にカトリーナを帰したくないという気持ちを除けば悪いことなどひとつも無い提案にどうすべきか考え込む。
ハワードとて、ランドロフがその気になれば強引にカトリーナを奪って帰っていけてしまうことは承知している。ランドロフがそれをしないのはカトリーナに気遣ってのことと、カトリーナの実の兄であるハワードにも婚姻を認めて欲しいとの気持ちがあるのだろうということも理解していた。婚姻は破棄されていないのだからカトリーナはランドロフの妻だ。勿論、カトリーナが少しでも嫌がるのならどんなに良い提案だろうが少しの迷いもなく却下して絶対に帰しなどしないが…カトリーナは寧ろ帰りたがっているし、昨日は泣いてさえもいた。あの様子ではもう、カトリーナはハワードが止めようとしても帰ろうとするだろう。
「どうだろうか…情けない話だが貴方の言う通り俺に力が足りていないのは事実。どうか、了承して頂けないだろうか?」
「私も…兄様と、一緒がいいです。」
大方、納得しかけたところで最後のひと押しにカトリーナがハワードの袖を控えめに掴んでそう言ったところでハワードは遂に落ちた。
「……分かった。その提案を受けましょう、これからは側近としてカトリーナの傍で守らせていただく。」
カトリーナから引き剥がされて、ハワードの隣にいるカトリーナを未練がましくちらちらと見ながらランドロフがそう言うと、ただでさえ冷ややかだったハワードの笑みは消え、代わりに酷く不機嫌そうな表情が覗く。情けないことは分かっていながらも若干怯んでからランドロフは交渉のために口を開いた。
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ランドロフが説明する提案を聞き終わって、結論から言えばハワードは悪い提案ではないと思っていた。この先、高位貴族と渡り合う中でハワードに足りない身分というものを侯爵家という後ろ盾で補うことが出来る。それはカトリーナを守る体制をさらに強固にすることができるし、商会も名目だけ侯爵家の持ち物ということにしてしまえば目をつけられて潰される心配はなくなる。
それに、商会の会頭をしながらカトリーナの傍についていられるというのはハワード個人にとってはとても喜ばしい点だった。ランドロフの元にカトリーナを帰したくないという気持ちを除けば悪いことなどひとつも無い提案にどうすべきか考え込む。
ハワードとて、ランドロフがその気になれば強引にカトリーナを奪って帰っていけてしまうことは承知している。ランドロフがそれをしないのはカトリーナに気遣ってのことと、カトリーナの実の兄であるハワードにも婚姻を認めて欲しいとの気持ちがあるのだろうということも理解していた。婚姻は破棄されていないのだからカトリーナはランドロフの妻だ。勿論、カトリーナが少しでも嫌がるのならどんなに良い提案だろうが少しの迷いもなく却下して絶対に帰しなどしないが…カトリーナは寧ろ帰りたがっているし、昨日は泣いてさえもいた。あの様子ではもう、カトリーナはハワードが止めようとしても帰ろうとするだろう。
「どうだろうか…情けない話だが貴方の言う通り俺に力が足りていないのは事実。どうか、了承して頂けないだろうか?」
「私も…兄様と、一緒がいいです。」
大方、納得しかけたところで最後のひと押しにカトリーナがハワードの袖を控えめに掴んでそう言ったところでハワードは遂に落ちた。
「……分かった。その提案を受けましょう、これからは側近としてカトリーナの傍で守らせていただく。」
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