旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ

文字の大きさ
上 下
14 / 21
本編

11話 話し合い

しおりを挟む
「マルク、明日から昼間の時間は応接室を一つ事前に準備しておいてくれ。だいたい昼食の時間が過ぎてからハウゼン侯爵が来るからな。」

連日のランドロフの訪問にどう追い返そうかと思いつつも一応相手は侯爵なのだから紅茶くらいは出さなければならない。その対応をマルクに指示しながら他の書類も片付けていく。オープン間近の商会の会頭の片付けるべき仕事は多い。それに加えて最近はカトリーナの調子が悪く、連日医師を呼んでいるような状態だ。

「かしこまりました。」

「それと、これは…」

マルクとハワードがそれぞれ商会の諸々の処理などを終わらせ、マルクが執務室から出ていくとカトリーナが入れ替わりで入室してきた。昼間は倒れてしまって、しばらく意識が戻らなかったというのにマルクが出てすぐに入ってきたところを見ると暫く外で待っていたようだ。ハワードとしては用事があるのなら部屋で待っててくれれば自分から行くし、いつ倒れるか分からないのに疲れるような行動は心臓に悪いのでなるべくやめてほしいのだがカトリーナはこればかりはあまり聞いてくれない。

「兄様…あの、ランドロフ様は今日も来ていらしたんですか?」

「…ああ、そうだ。だがカトリーナは気にしなくていい、それと話がしたいのなら呼んでくれれば俺が行く。また倒れたらどうするんだ。」

ソファに座らせて軽く注意するとカトリーナは眉を下げながらも今は体調が良いから、と言うが既にその手はハワードに通用しなくなっている。押しに負けて素直に謝ると、カトリーナは少し改まったようにして話し出す。

「あの、兄様。私が…ランドロフ様とお話しして来ます。」

恐らく、先程マルクとハワードが話していた内容も聞いていたのだろう。連続でもう何日もランドロフが訪れていることを指摘して自分が直接話すと言い出すカトリーナにハワードは眉をひそめて首を横に振る。カトリーナは最近は尚更に体調が悪く、何度も気を失っている。そんな状態のカトリーナをランドロフに会わせる気などハワードには欠片もない。

「駄目だ、お前はただでさえ体調も優れないし…話をして更に悪化したらどうするんだ。」

「いいえ、兄様。私、最後に自分でお話できなかったことに…後悔があるんです。それに、ランドロフ様が何故毎日来られているのかも、知りたいです。」

ランドロフが来ているのは殆ど何も教えられていないカトリーナが考えても明らかにカトリーナが原因だ。それなのに忙しい兄が毎日相手をしている、と考えると理由も気になるし迷惑をかけてしまっていると思っているのだ。それを読み取ったハワードは少し考えて、前にランドロフが送ってきた手紙の内容と今連日来ている理由だけは教えることにした。あまり気にさせるのも良くないだろう。

「侯爵には会わせない。だが、来ている理由は教える。自分の事だ…気になるだろう。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

処理中です...