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本編

11話 話し合い

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「マルク、明日から昼間の時間は応接室を一つ事前に準備しておいてくれ。だいたい昼食の時間が過ぎてからハウゼン侯爵が来るからな。」

連日のランドロフの訪問にどう追い返そうかと思いつつも一応相手は侯爵なのだから紅茶くらいは出さなければならない。その対応をマルクに指示しながら他の書類も片付けていく。オープン間近の商会の会頭の片付けるべき仕事は多い。それに加えて最近はカトリーナの調子が悪く、連日医師を呼んでいるような状態だ。

「かしこまりました。」

「それと、これは…」

マルクとハワードがそれぞれ商会の諸々の処理などを終わらせ、マルクが執務室から出ていくとカトリーナが入れ替わりで入室してきた。昼間は倒れてしまって、しばらく意識が戻らなかったというのにマルクが出てすぐに入ってきたところを見ると暫く外で待っていたようだ。ハワードとしては用事があるのなら部屋で待っててくれれば自分から行くし、いつ倒れるか分からないのに疲れるような行動は心臓に悪いのでなるべくやめてほしいのだがカトリーナはこればかりはあまり聞いてくれない。

「兄様…あの、ランドロフ様は今日も来ていらしたんですか?」

「…ああ、そうだ。だがカトリーナは気にしなくていい、それと話がしたいのなら呼んでくれれば俺が行く。また倒れたらどうするんだ。」

ソファに座らせて軽く注意するとカトリーナは眉を下げながらも今は体調が良いから、と言うが既にその手はハワードに通用しなくなっている。押しに負けて素直に謝ると、カトリーナは少し改まったようにして話し出す。

「あの、兄様。私が…ランドロフ様とお話しして来ます。」

恐らく、先程マルクとハワードが話していた内容も聞いていたのだろう。連続でもう何日もランドロフが訪れていることを指摘して自分が直接話すと言い出すカトリーナにハワードは眉をひそめて首を横に振る。カトリーナは最近は尚更に体調が悪く、何度も気を失っている。そんな状態のカトリーナをランドロフに会わせる気などハワードには欠片もない。

「駄目だ、お前はただでさえ体調も優れないし…話をして更に悪化したらどうするんだ。」

「いいえ、兄様。私、最後に自分でお話できなかったことに…後悔があるんです。それに、ランドロフ様が何故毎日来られているのかも、知りたいです。」

ランドロフが来ているのは殆ど何も教えられていないカトリーナが考えても明らかにカトリーナが原因だ。それなのに忙しい兄が毎日相手をしている、と考えると理由も気になるし迷惑をかけてしまっていると思っているのだ。それを読み取ったハワードは少し考えて、前にランドロフが送ってきた手紙の内容と今連日来ている理由だけは教えることにした。あまり気にさせるのも良くないだろう。

「侯爵には会わせない。だが、来ている理由は教える。自分の事だ…気になるだろう。」
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