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小話 叱られたマルクと夜空
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パプルグ商会に客人が来て、カトリーナがやむを得ず対応をしたその日。カトリーナに助けを求めたマルクはカトリーナの兄、ハワードに締め上げられていた。
「マルク! カトリーナは体調が悪いと言っただろう、客人くらい自分で対応しろ!」
「すみません、すみません! でも…アスファルタ国王のペンダントをお持ちだなんて高位貴族の方でしょう? しかも僕では会頭の代わりなんて務まりません…!!」
胸ぐらを掴まれているというのにまだ若干言い訳をするマルクにハワードはいっそう怒りが湧く。執務室の床に倒れてそのまま逃げようとするマルクを捕まえるとそのまま持ち上げて怒鳴りつけた。
「そんなのは関係ない! 俺が怒っているのはカトリーナに面倒をかけたことだ!」
「ひいいぃぃ!! すみません!!」
もう逃げられないマルクが長時間のお説教を覚悟した時、救いの天使が現れた。
「に、兄様! 何をしてらっしゃるの?」
マルクがさらに締め上げられているところへ、開けられていた扉からひょっことりとカトリーナが姿を現す。肩には一枚ストールをかけてはいるが過保護でシスコンのハワードからすればそんなものはカトリーナの身を温めるに足りない。
「愚か者を叱っているんだ。それよりも、カトリーナ。こんな寒い夜に部屋の外に出るな、用事があるなら俺が行くから呼べと言っただろう。」
「ご、ごめんなさい…でも、今は体調も落ち着いているし…どうしても兄様と見たいものがあって。」
謝りつつ、ちらっとハワードと安堵に崩れ落ちるマルクを見ながら若干申し訳なさそうにそう言うカトリーナ。すぐさまカトリーナに駆け寄って望みを叶えようとするハワードにマルクは内心、ハワードが重度のシスコンであることに感謝した。
「見たいもの? すぐに行く。…マルク、この件は明日しっかりと反省してもらうからな。」
「終わってなかった…!!」
勝手に終わったと思っていたマルクが絶望するのを無視してハワードはカトリーナに手を引かれるままに部屋を出ていった。
───────
カトリーナに手を引かれて向かったのはテラスだった。それに気がついたハワードが嬉しそうに微笑むカトリーナに大量に毛布やストールをかけてからテラスに出る。
「テラスに何かあるのか?」
「ええ、ほら…空がとっても綺麗なの! 実家だとこんなに見えなかったのに…。」
嬉しそうに夜空を見上げるカトリーナにつられてハワードも見上げると夜空にはたくさんの星が煌めいていた。アスファルタ王国は元々、二人の祖国フェンシュタン王国よりも空気が澄んでいるが今日は格段と言える。
「そうだな…だが、見るなら窓越しにしておこう。ほら、中に入るぞ…顔が冷たくなってる。」
こんなに暖かな服装をさせておいてもまだ足りないのか…と思わなくもないカトリーナだったが、叱られるのは嫌なのでカトリーナは素直に部屋に入った。
「マルク! カトリーナは体調が悪いと言っただろう、客人くらい自分で対応しろ!」
「すみません、すみません! でも…アスファルタ国王のペンダントをお持ちだなんて高位貴族の方でしょう? しかも僕では会頭の代わりなんて務まりません…!!」
胸ぐらを掴まれているというのにまだ若干言い訳をするマルクにハワードはいっそう怒りが湧く。執務室の床に倒れてそのまま逃げようとするマルクを捕まえるとそのまま持ち上げて怒鳴りつけた。
「そんなのは関係ない! 俺が怒っているのはカトリーナに面倒をかけたことだ!」
「ひいいぃぃ!! すみません!!」
もう逃げられないマルクが長時間のお説教を覚悟した時、救いの天使が現れた。
「に、兄様! 何をしてらっしゃるの?」
マルクがさらに締め上げられているところへ、開けられていた扉からひょっことりとカトリーナが姿を現す。肩には一枚ストールをかけてはいるが過保護でシスコンのハワードからすればそんなものはカトリーナの身を温めるに足りない。
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「ご、ごめんなさい…でも、今は体調も落ち着いているし…どうしても兄様と見たいものがあって。」
謝りつつ、ちらっとハワードと安堵に崩れ落ちるマルクを見ながら若干申し訳なさそうにそう言うカトリーナ。すぐさまカトリーナに駆け寄って望みを叶えようとするハワードにマルクは内心、ハワードが重度のシスコンであることに感謝した。
「見たいもの? すぐに行く。…マルク、この件は明日しっかりと反省してもらうからな。」
「終わってなかった…!!」
勝手に終わったと思っていたマルクが絶望するのを無視してハワードはカトリーナに手を引かれるままに部屋を出ていった。
───────
カトリーナに手を引かれて向かったのはテラスだった。それに気がついたハワードが嬉しそうに微笑むカトリーナに大量に毛布やストールをかけてからテラスに出る。
「テラスに何かあるのか?」
「ええ、ほら…空がとっても綺麗なの! 実家だとこんなに見えなかったのに…。」
嬉しそうに夜空を見上げるカトリーナにつられてハワードも見上げると夜空にはたくさんの星が煌めいていた。アスファルタ王国は元々、二人の祖国フェンシュタン王国よりも空気が澄んでいるが今日は格段と言える。
「そうだな…だが、見るなら窓越しにしておこう。ほら、中に入るぞ…顔が冷たくなってる。」
こんなに暖かな服装をさせておいてもまだ足りないのか…と思わなくもないカトリーナだったが、叱られるのは嫌なのでカトリーナは素直に部屋に入った。
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