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本編

4話 帰還 ※ランドロフ視点

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ランドロフの滞在していた北の辺境から中央のカトリーナが待つ屋敷までは一週間と数日がかかる。できる限り急いでもこの日数、ランドロフが屋敷に着いた時にはカトリーナが屋敷から去って隣国アスファルタ王国に到着してからしばらく経っていた。

「アロン、カトリーナは何処だ?」

出迎えに出た執事長のアロンにそう問いかける。ランドロフは旅の途中にドゥーリッヒからこれまでのアロンのカトリーナに対する態度や疑わしい行動の報告を受け取っており、ランドロフの中では既にアロンの解雇は決定だったが長年仕えてくれたというのもある。信用を失った態度はおくびにも出さずにそう問いかけるとアロンは内心は喜び勇みながらもすぐさま作った悲しげな表情で一枚の書類を取り出す。

勿論、件のカトリーナが書かされた離縁届だ。

「それが…奥様はこちらを残して屋敷を出ていかれてしまいまして…。」

『出ていった』という言葉に反応してランドロフが奪い取るように受け取り、畳まれた書類を広げると真っ先に目に飛び込んでくるのは離縁という文字。それから久方ぶりに見るカトリーナの筆跡だった。

「実は、奥様は前々から外で誰かと会っているようなのです。もしかすると…その者の元に行ってしまわれたのかもしれません。」

アロンは言外に…というか殆ど直球でカトリーナが離縁届を書いて男の元に行ってしまったと言っている。事前にドゥーリッヒからアロンのカトリーナへの言動がおかしいとは聞いてはいたものの、真相はともかくカトリーナが屋敷にいないことや書き残された離縁届けにランドロフは激しく、それはもうかなり激しく動揺していた。

「カトリーナ…!」

勿論、カトリーナの不貞を疑っている訳では無い。ただ、カトリーナの行方が分からないということが激しくランドロフを動揺させていた。途端にランドロフは若干仮面が崩れてにやつき始めたアロンを突き飛ばしてカトリーナの部屋へ駆け上がった。
アロンの妄言であって欲しいと願いを込めて扉を開け放つが当然そこにカトリーナの姿はない。

「カトリーナ…何処に、いるんだ…。」

まさかカトリーナが居ないという事態までは予測していなかったランドロフは常ならば有り得ない方向に妄想が膨らんでいく。アロンの言うように自分に飽きてしまって出ていってしまったのでは、追いかけて嫌がられたら…などなどである。
基本、執着質でストーカー気味のランドロフからカトリーナを取り上げるとこう気味の悪い方向に走ることを予測していた出来る部下ドゥーリッヒはアロンを拘束し、カトリーナの足取りを追うために動き始めていた。

「閣下! 一先ず、アロンを拘束しました。これから情報を吐かせます。奥様の行方は今配下の者に探らせています! だから、馬鹿なこと考えてないで早く働いてください。」



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