4 / 21
本編
1話 実家と隣国
しおりを挟む「カトリーナ? どうしたんだ、何か用事か?」
馬車から下ろしてもらって流石に侯爵邸には見劣りするがそれなりに大きな実家の屋敷に踏み入ると丁度兄様が書類の束を抱えているところだった。…言いたくない、けど言うしかない。
「兄様、私離縁されてしまって出戻りです。」
「そうか…って離縁!?」
なるべく平静を装ってそう言うと兄は手に持っていた書類の束を全て取り落とした。わかりやすい驚き方だ。
「はい、理由は聞かないでくださいね。私も教えられてないですから。」
落とした書類を拾うのを手伝いながらそう言うと兄様は何か感じ取ってくれたのかそれ以上詮索はしてこなかった。
「はあ、まあなんというか…まあ良い、お疲れ様。父様には俺から話しておくよ、それと俺からも話がある。手紙を書こうと思っていたんだが…この度、陛下から男爵位を賜った。やっと貴族の仲間入りだ。これでもっと手軽に事業が広げられるぞ!」
「えぇ! すごいタイミング…」
すごいタイミングだ、だって身分がふさわしくないとかなんとかっていう話だったのにこのタイミングで爵位を賜るなんて。まあ、男爵家と侯爵家でも釣り合いなんて全く取れない…って何を未練がましく考えているの!
「何か言ったか?」
「いえ、何も。じゃあ前から言っていた隣国への進出を始めるのですか?」
兄様と父様は前々からずっと隣国にも商会を広げられたら…なんてことを言っていた。しかし平民の商人では国を跨ぐ際にその度に面倒な手続きが必要であり、爵位を賜りでもしないと現実味は得られなかった話だったのだが…賜ったというのならこれ以上の好機はないだろう。そう思って問いかけると帰ってきたのは肯定だった。
「ああ、そうだ。だが父様はここの商会を経営しないといけないからな、俺が行く予定だ。」
「…それ、私もついて行っていい?」
隣国に行ってみたいのも勿論あるけど、爵位を賜ったなら社交界にも出るだろう。そうなると少なからず顔を見ることになることになるかもしれない。暫くは拗ねていたって文句は言われたくない。
「ああいいぞ、離縁になってしまった以上はそのつもりだ。俺はちっとも似ていないがお前は母様に瓜二つだからな、パーティやら茶会やらで母様の実家の侯爵家と顔を合わせた時に急に引き取るなんて言い出さないとも限らない。」
父様は平民だけど、母様は平民ではなく勘当された元侯爵令嬢だった。二人は駆け落ちの末に結ばれたそうだ、母様の方が最初に好きになったと聞いたけど今考えると中々行動的なご令嬢ね。まあ、元貴族令嬢と言っても勘当されていたから私たちは平民として育ったしランドロフ様と結婚していた時も私の実家が平民ということに変わりはないから社交界には一切出なかったから母様の実家の侯爵家の人達と顔を合わせたことは無かったけどこれからはそうもいかないだろう。母様にそっくりな私も見て引き取ろうと思わないという保証は何処にもない、念には念を入れて姿は見せないべきだろう。
「ああ…そうね。落ち着くまでは隣国に居て姿を見せない方がいいかもしれないわ。」
「そういう事だ、まあ父様が社交界に出るのも最初のうちだけさ。」
454
お気に入りに追加
7,565
あなたにおすすめの小説
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。
「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。
window
恋愛
イリス公爵令嬢とハリー王子は、お互いに惹かれ合い相思相愛になる。
「私と結婚していただけますか?」とハリーはプロポーズし、イリスはそれを受け入れた。
関係者を招待した結婚披露パーティーが開かれて、会場でエレナというハリーの幼馴染の子爵令嬢と出会う。
「新婚旅行に私も一緒に行きたい」エレナは結婚した二人の間に図々しく踏み込んでくる。エレナの厚かましいお願いに、イリスは怒るより驚き呆れていた。
「僕は構わないよ。エレナも一緒に行こう」ハリーは信じられないことを言い出す。エレナが同行することに乗り気になり、花嫁のイリスの面目をつぶし感情を傷つける。
とんでもない男と結婚したことが分かったイリスは、言葉を失うほかなく立ち尽くしていた。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
結婚式で王子を溺愛する幼馴染が泣き叫んで婚約破棄「妊娠した。慰謝料を払え!」花嫁は王子の返答に衝撃を受けた。
window
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の結婚式に幼馴染が泣き叫んでかけ寄って来た。
式の大事な場面で何が起こったのか?
二人を祝福していた参列者たちは突然の出来事に会場は大きくどよめいた。
王子は公爵令嬢と幼馴染と二股交際をしていた。
「あなたの子供を妊娠してる。私を捨てて自分だけ幸せになるなんて許せない。慰謝料を払え!」
幼馴染は王子に詰め寄って主張すると王子は信じられない事を言って花嫁と参列者全員を驚かせた。
旦那様に離縁をつきつけたら
cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。
仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。
突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。
我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。
※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。
※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。
別に構いませんよ、離縁するので。
杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。
他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。
まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる