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第4話【Under control…】
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高い身体能力を得たメロが、目にも止まらぬスピードで、建物の屋根やビルの屋上を飛び越える。
時刻は午後8時。辺りは既に暗くなっていたが、今のメロは暗がりでも人間を識別することが可能だ。これも改造の賜物だろう。
老婆がいないか、移動しながら探していると、
『メロ君!』
ノーラから連絡があった。市内の監視カメラをハッキングし、しらみ潰しに映像記録を調べあげ、老婆の居場所を特定したという。
『鷹海中央公園駅の東口! 場所、わかる?』
「中央公園?」
忘れるはずがない。
幼少期、メロの両親が事故に巻き込まれて亡くなった場所。 そこが鷹海中央公園だった。
「ありがとうございます!」
感傷に浸っている暇はない。腕輪に向かって礼を言った。
ノーラとの通信が切れると、今度は博士の声が。
『勝手に動くな』
「でも、早くしないとばあちゃんが——」
『お話中ごめん。トキシム同士が接触したみたい!』
事態は悪化している。メロの鼓動が早まっていく。
『俺も現場に向かっている。無茶するなよ』
そう告げて博士が通信を切った。
現場の位置はわかっているが、今いる場所からだと少し距離がある。メロは鉄塔に登り、公園の方角を見た。 ノーラが場所を特定するまで待てば良かった。メロが進んでいた方向は、公園から遠ざかるルートだ。
「くそっ」
鉄塔から近くのマンションの壁に飛び付く。幸い、付近には誰もいない。
壁をよじ登って屋上に到達すると、メロは公園に向けてパルクールを再開した。
◇◇◇
鷹海中央公園駅。
東口を出てすぐの所にある広場では、既に老婆とワンピースを着た女性が乱闘騒ぎを起こしていた。 半円形の広場。その地面はレンガで覆われている。半円に沿う形でベンチが設置されており、普段はデートスポットとしても人気を集めている。
今宵は、そんな憩いの場に緊張が走っている。
現場には武装した警官らが到着。銃を構えて様子を伺う。
ただの乱闘ならここまで大きな騒ぎにはならない。
夜の駅前。フラフラと歩く女性の背後から、突如ボロボロのTシャツを着た老婆が飛びかかり、か細い手で何度も殴り始めた。 すると女性は唸り声をあげて老婆を跳ね飛ばし、瞳を赤く光らせて飛びかかったらしい。最初に駆けつけた巡査からの報告だ。
「これは酷い」
駆けつけた警官隊の隊長が、戦っている2人を見てつぶやいた。
ホラー映画のワンシーンのような情景。傷だらけになりながら、人間の姿をしたものが、獣じみた声をあげて戦っている。メルヘンチックな雰囲気の広場に、鉄にも似た重く鼻を突く臭いが漂う。
インターネットを中心に噂される“鷹海のゾンビ”をその目で見ることになるとは思いもしなかった。 部下達は市民の避難を完了させて戻って来た。
「まるで悪夢だ」 1人の新人が呟く。
「ああ。だが残念ながら、これは現実だ」
ワンピースの女性が老婆の上に馬乗りになると、髪を乱暴に掴んでグッと引っ張り上げた。
女性と老婆の顔があらわになる。いずれも傷だらけだが、特に目を引いたのはその瞳。報告通り、ワンピースの女性は真っ赤に、老婆は紫色に光っている。
隊長が指示を出し、部隊が銃を構える。
新人隊員の手が震えている。震えは大きくなり、発砲許可が下りる前に、思わず引き金を引いてしまった。
「おい! 何をしている!」
銃弾は幸い2人には当たらず、近くの街灯に当たったが、その銃声を聞いて女性が老婆から手を離し、警官隊に向けておぞましい唸り声をあげた。威嚇のつもりか。
女性が部隊の方に向かってくる。その後ろで老婆が立ち上がり女性に襲い掛かろうとしている。
襲われる。そう悟った新人は「ひぃ」と悲鳴をあげ、今度は赤い瞳の女性に向けて発砲する。
「よせ!」
闇雲に放った銃弾が女性に向かう。 しかし、その時。
「危ないっ!」
上から声がする。女性達が先に反応して上を見た。
警官達も声のした方を確認しようとしたが、それと同時に、前方で大きな破裂音がこだました。
「何だ?」
部隊と凶暴化したゾンビとの間に、1人の若者が降り立った。
時刻は午後8時。辺りは既に暗くなっていたが、今のメロは暗がりでも人間を識別することが可能だ。これも改造の賜物だろう。
老婆がいないか、移動しながら探していると、
『メロ君!』
ノーラから連絡があった。市内の監視カメラをハッキングし、しらみ潰しに映像記録を調べあげ、老婆の居場所を特定したという。
『鷹海中央公園駅の東口! 場所、わかる?』
「中央公園?」
忘れるはずがない。
幼少期、メロの両親が事故に巻き込まれて亡くなった場所。 そこが鷹海中央公園だった。
「ありがとうございます!」
感傷に浸っている暇はない。腕輪に向かって礼を言った。
ノーラとの通信が切れると、今度は博士の声が。
『勝手に動くな』
「でも、早くしないとばあちゃんが——」
『お話中ごめん。トキシム同士が接触したみたい!』
事態は悪化している。メロの鼓動が早まっていく。
『俺も現場に向かっている。無茶するなよ』
そう告げて博士が通信を切った。
現場の位置はわかっているが、今いる場所からだと少し距離がある。メロは鉄塔に登り、公園の方角を見た。 ノーラが場所を特定するまで待てば良かった。メロが進んでいた方向は、公園から遠ざかるルートだ。
「くそっ」
鉄塔から近くのマンションの壁に飛び付く。幸い、付近には誰もいない。
壁をよじ登って屋上に到達すると、メロは公園に向けてパルクールを再開した。
◇◇◇
鷹海中央公園駅。
東口を出てすぐの所にある広場では、既に老婆とワンピースを着た女性が乱闘騒ぎを起こしていた。 半円形の広場。その地面はレンガで覆われている。半円に沿う形でベンチが設置されており、普段はデートスポットとしても人気を集めている。
今宵は、そんな憩いの場に緊張が走っている。
現場には武装した警官らが到着。銃を構えて様子を伺う。
ただの乱闘ならここまで大きな騒ぎにはならない。
夜の駅前。フラフラと歩く女性の背後から、突如ボロボロのTシャツを着た老婆が飛びかかり、か細い手で何度も殴り始めた。 すると女性は唸り声をあげて老婆を跳ね飛ばし、瞳を赤く光らせて飛びかかったらしい。最初に駆けつけた巡査からの報告だ。
「これは酷い」
駆けつけた警官隊の隊長が、戦っている2人を見てつぶやいた。
ホラー映画のワンシーンのような情景。傷だらけになりながら、人間の姿をしたものが、獣じみた声をあげて戦っている。メルヘンチックな雰囲気の広場に、鉄にも似た重く鼻を突く臭いが漂う。
インターネットを中心に噂される“鷹海のゾンビ”をその目で見ることになるとは思いもしなかった。 部下達は市民の避難を完了させて戻って来た。
「まるで悪夢だ」 1人の新人が呟く。
「ああ。だが残念ながら、これは現実だ」
ワンピースの女性が老婆の上に馬乗りになると、髪を乱暴に掴んでグッと引っ張り上げた。
女性と老婆の顔があらわになる。いずれも傷だらけだが、特に目を引いたのはその瞳。報告通り、ワンピースの女性は真っ赤に、老婆は紫色に光っている。
隊長が指示を出し、部隊が銃を構える。
新人隊員の手が震えている。震えは大きくなり、発砲許可が下りる前に、思わず引き金を引いてしまった。
「おい! 何をしている!」
銃弾は幸い2人には当たらず、近くの街灯に当たったが、その銃声を聞いて女性が老婆から手を離し、警官隊に向けておぞましい唸り声をあげた。威嚇のつもりか。
女性が部隊の方に向かってくる。その後ろで老婆が立ち上がり女性に襲い掛かろうとしている。
襲われる。そう悟った新人は「ひぃ」と悲鳴をあげ、今度は赤い瞳の女性に向けて発砲する。
「よせ!」
闇雲に放った銃弾が女性に向かう。 しかし、その時。
「危ないっ!」
上から声がする。女性達が先に反応して上を見た。
警官達も声のした方を確認しようとしたが、それと同時に、前方で大きな破裂音がこだました。
「何だ?」
部隊と凶暴化したゾンビとの間に、1人の若者が降り立った。
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