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番外編:少し先の話 5R18

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 ヴィンスが目を開くと明るかった窓からの光は夕暮れに染まり、隣に起き上がっているルンペルが、静かなにワインを飲んでいた。

「やあ、君も飲むかい?」

 ルンペルが静かに指さした先には、サイドテーブルに置かれた飲み物とフルーツがある。グラスに浮かぶ水滴に、小さく喉を鳴らしていると、ヴィンスの喉の動きに気付いたルンペルが、サイドテーブルのブドウを一粒つまみ、口元まで運んだ。甘く爽やかな果汁が口の中に広がると、身体の隅々までいきわたるような甘い心地を感じた。
 
「……」

 無言で起きあがったヴィンスはリンゴへと手を伸ばし、シャリシャリ囓った。ヴィンスの食べっぷりをルンペルは静かに観察しながら、水差しから水を注ぐと手渡した。
 
「っ、は――あ」
 
 飢えと乾きが収まると、再びゾクリと背筋が震える。ベッドの上に転がったグラスをサイドテーブルに起き直すと、ヴィンスの肩へと手を伸ばした。

「食べたばかりで激しくするのは身体に負担がかかるから、次はゆっくりやらせてもらうよ」

「え、あっ、は、あっ……!!」

 倒れるようにベッドの上に乗せられ、そしてルンペルの胸に背中をぴったりと重なるように抱き寄せられた。ずぶずぶと緩んだ後孔に ルンペルの雄が焦らすような姿で挿入される。自分の肉筒は覚えが良いのか、ルンペルの形をしっかりと捕らえて精を絞ろうと蠢きを続いている。
 
「は、ぁ……」

 尻の辺りにチクチクとした陰毛が擦れる。皮膚を擦る細やかな刺激にヴィンスが背筋を何度も震わせ耐えていると、宥めるようにルンペルが性器を収めている下腹の辺りを撫でられる。力強く押しつぶすような手つきの時は、暴力的な快楽を与えて何も考えられなくなる。

「揺蕩うように楽しむと良い」

「あ……う、ん……」

 ルンペルに従うまま快楽に身を委ねていると、脳の奥からパチパチと小さな火花が鳴り響く。小さく息を乱しながらルンペルの齎す感触を味わっていると、腹を撫でるルンペルの手が止まった。

「ルン、ペル?」

「ああごめん、こういう事してれば私の『運命』が、出てくれるかなぁって思っていたんだ」 
 
「お前の、運命?」

「ああ。私があんまりにロクデナシだったから、三行半を突きつけられて出ていっちゃって。それから永遠に逢えなくなった」

 はあ、とため息を吐く仕草は演技じみており、彼の感情が本物なのかどうかヴィンスには分からない。ただ、自分を抱きしめる手つきには、自分を通して誰かに触れているような感じがした。

「だらしない事をすれば、窘めに出てくるかとも思って自堕落にしても出てこなくて。だったら君に手でも出せば流石に出てくるかとも思ったけど……それでも駄目だった」

「……何でそこで私が出てくる?」

「ああほら、私って君くらいの子どもが居てもおかしくない年齢だろ? だからいい年して何やってんだって、叱りに来てくれるかなって思って」 
 
「お前のそれは……Ωを助けるための『応急処置』の為、だろう? それを知っているなら、怒っていないんじゃないか」

「試しに……本気で怒る真似をしてみればどうだ?」

「うーん。叱られるのには愛があるけど、怒るって愛がなくても出来るだろ? それはちょっと嫌だなあ」

「意外だな」

「ん?」

「お前は恋愛事に、本気にならないって思ってた」

 ルンペルはヴィンスの言葉をうけ、動きを一瞬止めた後にカラカラと笑い続けた。

「懐かしい。それ、私の運命にも言われたなぁ。『何で本気になんてなったんだ』って言われて、そのまま居なくなっちゃった」

「それは――酷い相手に惚れたものだな」

 ヴィンスの言葉に、ルンペルは静かな笑い声を上げて労うように頭を撫でる。自分に触れるその手つきに何度も既視感を覚え、そして振り返ると暗褐色のルンペルの瞳が静かな哀しみを込めて自分を見つめていた。黙って見つめるヴィンスの視線に気づくと、芝居がかった笑みを浮かべてルンペルは肩を震わせていた。

「はは、君が私の方の肩を持つだなんてねぇ」 
 
 クツクツと笑い続けながら、ルンペルはヴィンスを抱きしめる腕の力を強め続けた。 
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