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番外編:少し先の話 2 R18
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ヴィンスを寝台に寝かした後、ルンペルは背中を向けてドアに鍵をかけた。
「相手は……ベートじゃ駄目なのか?」
せめてもの守りにシーツを被り、小さくヴィンスが問いかけるが、返ってきたのは無慈悲かつ合理的な説明であった。
「出産って奴は君が想定するより身体の負担が大きいからね。まだ慣れない環境で身体も適応しようと必死な状態で、子を作るなんて余裕は君にはない。それに今のベートが避妊具を使ってだとか、君の身体を考慮しながら交われるとも思えない。今の彼の楔を解けば、確実に君を孕ませにいく。ベートも君も、それは望んでいないだろ?」
「……後者については納得した。だが、前者についてはお前が相手でも変わらない」
益々シーツを掴む手に力を入れながらヴィンスが反論すると、ルンペルは数秒硬直した後、首を傾げた。
「言ってなかったっけ? 私は種無しだから君が孕む事はない」
「……は?」
「子どもの頃、熱病にかかってしまってね。命の対価に神様が私の種を持っていったのさ。その体質のおかげで、番の居ない発情したΩを宥める役なんてのがよく回ってくるんだよ」
「もしかして……時折夜明けごろに甘い香りを漂わせて帰って来るのは……それか?」
「そういう事。君が信じられないなら、避妊具も使おうか?」
下顎に指を添え、俯いている顔をクイと無理矢理上げさせルンペルを見つめさせられる。暗褐色の瞳に見られるだけでも、ジリジリと腰骨から焼かれるような痺れと熱がヴィンスの身体を内側から焦がしてゆく。
「……ぁ、う……」
耐えられずにシーツ越しに爪を立て、ヴィンスは内側から溢れる熱を紛らわそうとするが、微細な痛みは却って一層の熱への渇望に変わるだけだった。
「ひ、あっ……」
下穿きはとうにびちょびちょに濡れ、ズボンにも薄らと蜜の染みが広がっている。座る事もままならずにベッドに身を埋め、乱れた荒い呼吸が喉からひっきりなしにこぼれる。
「う……うぅっ……」
身の内の熱の昂りが、止まらない。眼の前にルンペルが居るのに、これ以上この熱を抑える事ができやしない。ヴィンスは手をそろそろと秘所に導き、縁を指で添った後に蠢く肉孔に指を一本ズブリと入れた。こんな醜態を人の前で晒しても尚、昂りは収まらない。きっとルンペルは色狂いに堕ちた己を愉しみながら、にやにやと嘲るような笑みを浮かべているのだろう。ギリギリと歯ぎしりをしながらヴィンスが視線を向けていると、その視線は真摯に自分の様態を見つめていた。
「段々酷くなっているね――失礼するよ」
「……?」
身を包んでいたシーツを剥がされ、後孔をかき混ぜ続ける自分の指に重ねるように、ルンペルの太く長い褐色の指が入り込む。自分の意のとおりには動いてくれない指は、襞の一つ一つをなぞるように動かしたかと思えば陽根のように伸びて奥へと抽出を繰り返したりと、奔放に動き、快楽をヴィンスに与え続ける。
「ひ、ぅ……ぁっ……」
気づけば肉筒の中の自分の指は動きを止め、時折ルンペルが与える快楽にピクリと痙攣を繰り返すだけだった。カタカタと指を動かせずに身を震わせるだけのヴィンスの指を、ルンペルは引き抜いた。
「んっ……ぅ……!!」
指を抜くと、その分中に空洞ができてしまう。その物足りなさが切なくて、ヴィンスの目からはポロポロと涙が零れ落ちる。スンスンと鼻を鳴らし、涙を溢し続けるヴィンスに、ルンペルはもう片方の手で黒く乱れた髪をそっと撫でて慰めた。
「こらこら、空いた分は私が満たしてあげる。大丈夫だから泣くんじゃない」
自分を宥める様子は、まるで癇癪を起こす子を鎮めようとする親のものに似ている。それに己を宥めるルンペルの手つきは、非常に手慣れていた。彼は発情期を迎えたΩを鎮める役を何度も果たしてきたと言っていた。それが、ルンペルがそう振る舞う理由なのだろうか。
(……本当に、それだけか?)
昔こんな風に。誰かに撫でてもらった記憶があるような気がする。その撫で方は父やベートのものよりも雑で、けれど確かな情があった。だが自分は父とずっと二人旅をしていて、それ以来はベートくらいしか頭に触れる事はない。だから、そんな風に自分の頭を撫でる相手はいないはずなのに。何故か懐かしい。
「ほらヴィンス。指増やすから、力を抜いて」
「あっ……」
考え込むヴィンスの意識は、二本に増やされたルンペルの指によって途切れてしまった。
「相手は……ベートじゃ駄目なのか?」
せめてもの守りにシーツを被り、小さくヴィンスが問いかけるが、返ってきたのは無慈悲かつ合理的な説明であった。
「出産って奴は君が想定するより身体の負担が大きいからね。まだ慣れない環境で身体も適応しようと必死な状態で、子を作るなんて余裕は君にはない。それに今のベートが避妊具を使ってだとか、君の身体を考慮しながら交われるとも思えない。今の彼の楔を解けば、確実に君を孕ませにいく。ベートも君も、それは望んでいないだろ?」
「……後者については納得した。だが、前者についてはお前が相手でも変わらない」
益々シーツを掴む手に力を入れながらヴィンスが反論すると、ルンペルは数秒硬直した後、首を傾げた。
「言ってなかったっけ? 私は種無しだから君が孕む事はない」
「……は?」
「子どもの頃、熱病にかかってしまってね。命の対価に神様が私の種を持っていったのさ。その体質のおかげで、番の居ない発情したΩを宥める役なんてのがよく回ってくるんだよ」
「もしかして……時折夜明けごろに甘い香りを漂わせて帰って来るのは……それか?」
「そういう事。君が信じられないなら、避妊具も使おうか?」
下顎に指を添え、俯いている顔をクイと無理矢理上げさせルンペルを見つめさせられる。暗褐色の瞳に見られるだけでも、ジリジリと腰骨から焼かれるような痺れと熱がヴィンスの身体を内側から焦がしてゆく。
「……ぁ、う……」
耐えられずにシーツ越しに爪を立て、ヴィンスは内側から溢れる熱を紛らわそうとするが、微細な痛みは却って一層の熱への渇望に変わるだけだった。
「ひ、あっ……」
下穿きはとうにびちょびちょに濡れ、ズボンにも薄らと蜜の染みが広がっている。座る事もままならずにベッドに身を埋め、乱れた荒い呼吸が喉からひっきりなしにこぼれる。
「う……うぅっ……」
身の内の熱の昂りが、止まらない。眼の前にルンペルが居るのに、これ以上この熱を抑える事ができやしない。ヴィンスは手をそろそろと秘所に導き、縁を指で添った後に蠢く肉孔に指を一本ズブリと入れた。こんな醜態を人の前で晒しても尚、昂りは収まらない。きっとルンペルは色狂いに堕ちた己を愉しみながら、にやにやと嘲るような笑みを浮かべているのだろう。ギリギリと歯ぎしりをしながらヴィンスが視線を向けていると、その視線は真摯に自分の様態を見つめていた。
「段々酷くなっているね――失礼するよ」
「……?」
身を包んでいたシーツを剥がされ、後孔をかき混ぜ続ける自分の指に重ねるように、ルンペルの太く長い褐色の指が入り込む。自分の意のとおりには動いてくれない指は、襞の一つ一つをなぞるように動かしたかと思えば陽根のように伸びて奥へと抽出を繰り返したりと、奔放に動き、快楽をヴィンスに与え続ける。
「ひ、ぅ……ぁっ……」
気づけば肉筒の中の自分の指は動きを止め、時折ルンペルが与える快楽にピクリと痙攣を繰り返すだけだった。カタカタと指を動かせずに身を震わせるだけのヴィンスの指を、ルンペルは引き抜いた。
「んっ……ぅ……!!」
指を抜くと、その分中に空洞ができてしまう。その物足りなさが切なくて、ヴィンスの目からはポロポロと涙が零れ落ちる。スンスンと鼻を鳴らし、涙を溢し続けるヴィンスに、ルンペルはもう片方の手で黒く乱れた髪をそっと撫でて慰めた。
「こらこら、空いた分は私が満たしてあげる。大丈夫だから泣くんじゃない」
自分を宥める様子は、まるで癇癪を起こす子を鎮めようとする親のものに似ている。それに己を宥めるルンペルの手つきは、非常に手慣れていた。彼は発情期を迎えたΩを鎮める役を何度も果たしてきたと言っていた。それが、ルンペルがそう振る舞う理由なのだろうか。
(……本当に、それだけか?)
昔こんな風に。誰かに撫でてもらった記憶があるような気がする。その撫で方は父やベートのものよりも雑で、けれど確かな情があった。だが自分は父とずっと二人旅をしていて、それ以来はベートくらいしか頭に触れる事はない。だから、そんな風に自分の頭を撫でる相手はいないはずなのに。何故か懐かしい。
「ほらヴィンス。指増やすから、力を抜いて」
「あっ……」
考え込むヴィンスの意識は、二本に増やされたルンペルの指によって途切れてしまった。
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