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29話∶互いの気持ちを感じるために4※R18

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「っ……」
 
 奥深くまで埋めていた雄を慎重な動きでベートが引き抜くと、名残惜しいと引き止めるように切なく下胎が蠢いた。奥がしきりに訴えてくる物足りなさと寂しさを紛らわせるべく、ヴィンスが腰を捩らせる度に、ぷくりと膨れたシコリが竿で押されて稲妻ほどに激しい快楽が体中を駆け巡る。
 
「は、あっ……あ、うっ……!!」 
 
 痺れる程の悦が再びヴィンスの一度果てた雄に力を与え、ゆるゆると立ち上がらせる。更なる刺激を求める本能に従い、ヴィンスが息を乱しながら自らを慰めようと腕を動かすと、それより早くベートの手がヴィンスの性器を包むように握り、ゆっくりと扱き初めた。
 
「俺が、する――させて」 
 
「あ、はぁっ、あ、うっ――あっ!!」 
 
 熱に酔った口調でベートは呟き、尿道口を小さな円を描くような手つきで触りはじめた。直接的な性器への刺激に加え、半分まで抜かれた雄が再び根本まで埋め込まれる。体中が歓喜で痺れ、寂しがっていた奥壁をベートの亀頭がトンと優しくつついた時、灼熱が爪の先まで駆け巡った。
 
「あ、はっ……ベー、トッ……」 
 
 嬌声と共にヴィンスが名前を呼ぶと、寂しかったと訴える胎内を宥めるように、ベートの昂りによって四方八方に掻き廻される。
 
「ヴィン、ス……」 
 
 どんな風にヴィンスが自分を悦ばせているのかを伝えたい。そんな事でも考えたのだろう。亀頭を刺激していた手を解き、竿全体を包む様な形に変えると、ベートはヴィンスの収縮する腸壁の動きに添うよう手の力に強弱をつけ始めた。
 
「あ、ベー、トっ……それっ……」 
  
 自分の中は、こんなにも離れたくないと甘えるように絡んでいるのか。こんなにも、欲しいとねだっていたのか。中の動き追って手で精巧に再現しているベートの手を、ジワジワと垂れ溢れ流出る先走りが汚していく。
 自分のモノより骨太で鍛えた手が濡れ、滲み出る淫液によりぐちゅぐちゅと水音を響かせるサマは、否応無くヴィンスに自らの貪欲さを突き付けた。
 
「あ、はっ……あぅっ……」 
 
 自分が指を吸う姿を『刺激的だ』と言って、慌てふためいていたベートの気持ちが今になってよく分かる。ただでさえいつ達するかも分からないくらい追い詰められていたのに、濡れる手を見た所為でヴィンスの身体は一気に限界を駆け抜けた。
 
「あ――」 
 
 ヴィンスの視界は純白一色のみに染まり、耐えられずにベートの手の中に精液をタラタラと零した。
 
「っ、ヴィンスの中、凄い……熱くて……食い千切られそう」 
 
 絞り出すような声を出すと、ベートの金色の瞳がギラギラとした猛々しい光を放ってヴィンスを見つめた。段々を激しい動きでヴィンスの中をかき回している雄は、筋から流れる血潮の流れさえ感じ取れそうな程にピクピクと震え益々硬く太くなった。
 
「あ、ぅ……ヴィン、ス」
 
 律動する度に生まれる肉と粘液が混じり合う淫猥な音が互いの息を吐く音と混じり合う。腰に刺さる鋭い爪が、こちらを見つめる金色の瞳の熱い視線が、何度も何度も奥を貫くベートの剛直が。何もかもがヴィンスを煽り、奥腹が益々切なく震えだす。
 
「あ、あ、っ――はぁ、うっ……!!」 
 
 性器で達したばかりの身体は、ベートが与える刺激の一つ一つを丁寧に拾い上げ、快楽へと変えてゆく。奥を突かれる度に腰がガクガクと震え、ひっきりなしに喉から嬌声が漏れ出した。
 
「あ……」 
 
 声が擦れている事に気が付くと、再びベートは身を寄せて熱く湿った舌が口内を掻き乱し始めた。
 
「ん、ふ、ぅ……」 
 
 ジュクジュクと舌が絡む事で生まれた蜜が口の中で満ち、喉を鳴らして嚥下すれば乾いた喉は潤される。だがヴィンスの喉仏はせわしなく上下を繰り返し、ベートを包む肉襞はせわしなく収縮を繰り返し続けていた。
 
(ほ、しい……) 
 
 精を吐きだし、奥で果てても。まだ足りない。早く、ベートの精を注いで欲しい。浅い呼吸を繰り返しながら射精の瞬間を待っていると、一気に引き抜かれ、ヴィンスの雄からタラタラと粘度の薄れた精が溢れる。
 
「――っ」
 
 求めていた内側ではなく、汗で濡れた皮膚にべったりとベートの白濁がまき散らされる。迸る精の熱さもまたエクスタシーを感じるが、これでは物足りない。ヴィンスが瞳を尖らせて無言で抗議をしていると、窘めるような視線を向けられた。
 
「包帯、ちょっとだけど血が滲んでる。怪我人にこれ以上無理はさせられない」
 
「少しだろう。それに私の事は平気だと」
 
「駄目」
 
「私は『嫌だ』とは言っていないが」
 
「『無茶だったら止める』って約束した」 
 
 即座に切り返され、ヴィンスは自分の右腕を見た。ジンジンと傷口に響く様も、今の自分にとっては心地良くて気にはならない。だがそれは、今の自分はタガが外れているという証左でもある。それに唇を引き締めるベートの顔付きを見るに、どう仕掛けようともこれ以上は無理であるだろう事は分かる。
 
「分かった。お前が嫌がる事は、私だってしたくない」 
 
 不承不承ではあるがヴィンスが首を縦に振ると、ベートはほっと息を吐いて表情を緩ませて隣に寝転んだ。
 
「ねえ、ヴィンス」
 
 指で髪を漉きながらベートに語り掛けられ、ヴィンスは顔を向けた。
 
「何だ?」 
 
「怪我が治ったら――俺の全部を受け止めてもらうから」
 
 じっと雄の匂いを纏わりつかせた宣言に、ヴィンスは小さく首を縦に振った。
 
 この国から出て、何があるかは分からない。
 異国の知識を学んだ所で、自分の体質が解明できるかどうかも確約なんてされていない。
 
 だがベートは、自分の隣に居てくれる。それだけでヴィンスの胸からは『恐怖』が消えてゆき、何も分からない未来への恐怖に竦もうとする足を、一歩先へと進める事ができる。
 そう思わせてくれる相手を、見つけ出す事ができた。
 そう思わせてくれる相手が、自分を愛してくれている。

「ベート」
 
 ヴィンスに呼びかけられ、ベートの金色の視線が柔らかく己に向けられる。その瞳を見つめながら、ヴィンスは静かに口を開いた。

「お前が隣に居てくれて、良かった」
 
「!!」

 乱れたシーツの上で笑うヴィンスは幸せと喜びを露にして笑っている。その笑顔が自分一人だけに向けられる喜びに、ベートはヴィンスへと腕を伸ばし、思い切り抱きしめた。
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