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来世は空気を希望します!
27.探索終了しました
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じり、とその場から一歩下がる。
下がったと同時に、私は一目散に元来た方へ駆け出した。
敵前逃亡じゃないから! これは撤退、そう一時的撤退! 戦略的撤退ってやつだから!
数分走って走って、ようやく角まで戻ってきた。
っはあ、ここまで来たらもういいかな。
あー、怖かった!
気持ちはへろへろなのだけど、身体は全力疾走したにも関わらずあまり疲れていない。言葉ちゃんフィジカルも強いんだ……好き……。
荒い息を吐き出しながらゆっくり歩いて家へと戻る。もう探索どころじゃないよ……。
そう思いつつも、玄関を開ける直前に悪い好奇心が頭をもたげた。
……向こう側もこうなのかな。見えない壁に阻まれて、やっぱり誰もいないんだろうか。
玄関扉に手をかけながら、逡巡する。
……行くか! 壁に行きあったり他に不思議なことが起きたりしたらダッシュで戻ろうそうしよう。
扉から手を離し、とんとんとんと階段を下りる。
さっき進んだ方向とは反対側を見据えて、ふーっとため息にも似た深呼吸をひとつ。
こっちは駅に繋がるんだよなあと思いながらゆっくり歩き出した。またぶつかったらたまったもんじゃないし。
前に手を伸ばしておっかなびっくり、そろそろと足を進める。
……はい、探索して三十分程経過。
しばらく道を変えてあちこち進んでみた。でもこっち側は全然何にもぶつからない。駅のほうまで足を伸ばしたけど、透明な壁には一向に行き当たらない。
ただ、人が全くいないのはこちら側も一緒。
静まり返ってる町って不気味。生活感があるんだかないんだかよく分からなくて、誰もいないっぽいってことに気づいてしまったから背筋がぞわぞわする。
そろそろ挙げてる腕も疲れてきたなと思って下ろそうとしたら、指先がこつんと何かに触れた。
車が来ないことをいいことに意識して車道の中心を歩くようにしてたから、そんな場所を歩いててぶつかるものなんか、壁一択だ。
手のひらをぺたりと触れされる。やっぱり見えないし、継ぎ目も無いし、凸凹もない。
うーん、ここはこれ以上ダメだ。進めない。
そうやって壁を見つけたら別の道に入る、また別の道に行くを繰り返していたら、あらかた周辺が掴めてきた。
観月家を中心に、駅に繋がる道を除いた全ての道が、一キロメートル四方くらいのところで見えない壁に阻まれている。
そして人がいない。まっったくいない。
何なのこれ?
首をひねりひねり帰宅します。
気づけば最初に定めた午後一時に近くなってたし、歩いたり走ったり怖がったりしてお腹が空きました。
「ただいまー」
「おかえりー」
はあ、詩穂さんの声安心する。
リビングに戻ったら、詩穂さんがこちらを見てちょっと驚いた顔をした。えっ、何?
「顔色が悪いわね、今日暑いし熱中症かしら」
顔に触れてみたけど、分からない。
でも、あれ……、なんか、心配する詩穂さんの顔を見てたら……、あれ?
へなへなっと足から力が抜けて、その場に座り込んでしまった。
「あらあらやだ、大丈夫!?」
「うん、大丈夫……」
思ってたより怖かったみたいだ。
自分以外の人を見て気が緩んだんだなあ。
心配した詩穂さんが寝なさいと言って支度を整えるのをぼんやり見ながら、そうだ、分からないことがあるなら今度の日曜日に絵巻様に聞けばいいんだと気づいて、私はリビングの壁に気疲れした身体をぐったり預けた。
下がったと同時に、私は一目散に元来た方へ駆け出した。
敵前逃亡じゃないから! これは撤退、そう一時的撤退! 戦略的撤退ってやつだから!
数分走って走って、ようやく角まで戻ってきた。
っはあ、ここまで来たらもういいかな。
あー、怖かった!
気持ちはへろへろなのだけど、身体は全力疾走したにも関わらずあまり疲れていない。言葉ちゃんフィジカルも強いんだ……好き……。
荒い息を吐き出しながらゆっくり歩いて家へと戻る。もう探索どころじゃないよ……。
そう思いつつも、玄関を開ける直前に悪い好奇心が頭をもたげた。
……向こう側もこうなのかな。見えない壁に阻まれて、やっぱり誰もいないんだろうか。
玄関扉に手をかけながら、逡巡する。
……行くか! 壁に行きあったり他に不思議なことが起きたりしたらダッシュで戻ろうそうしよう。
扉から手を離し、とんとんとんと階段を下りる。
さっき進んだ方向とは反対側を見据えて、ふーっとため息にも似た深呼吸をひとつ。
こっちは駅に繋がるんだよなあと思いながらゆっくり歩き出した。またぶつかったらたまったもんじゃないし。
前に手を伸ばしておっかなびっくり、そろそろと足を進める。
……はい、探索して三十分程経過。
しばらく道を変えてあちこち進んでみた。でもこっち側は全然何にもぶつからない。駅のほうまで足を伸ばしたけど、透明な壁には一向に行き当たらない。
ただ、人が全くいないのはこちら側も一緒。
静まり返ってる町って不気味。生活感があるんだかないんだかよく分からなくて、誰もいないっぽいってことに気づいてしまったから背筋がぞわぞわする。
そろそろ挙げてる腕も疲れてきたなと思って下ろそうとしたら、指先がこつんと何かに触れた。
車が来ないことをいいことに意識して車道の中心を歩くようにしてたから、そんな場所を歩いててぶつかるものなんか、壁一択だ。
手のひらをぺたりと触れされる。やっぱり見えないし、継ぎ目も無いし、凸凹もない。
うーん、ここはこれ以上ダメだ。進めない。
そうやって壁を見つけたら別の道に入る、また別の道に行くを繰り返していたら、あらかた周辺が掴めてきた。
観月家を中心に、駅に繋がる道を除いた全ての道が、一キロメートル四方くらいのところで見えない壁に阻まれている。
そして人がいない。まっったくいない。
何なのこれ?
首をひねりひねり帰宅します。
気づけば最初に定めた午後一時に近くなってたし、歩いたり走ったり怖がったりしてお腹が空きました。
「ただいまー」
「おかえりー」
はあ、詩穂さんの声安心する。
リビングに戻ったら、詩穂さんがこちらを見てちょっと驚いた顔をした。えっ、何?
「顔色が悪いわね、今日暑いし熱中症かしら」
顔に触れてみたけど、分からない。
でも、あれ……、なんか、心配する詩穂さんの顔を見てたら……、あれ?
へなへなっと足から力が抜けて、その場に座り込んでしまった。
「あらあらやだ、大丈夫!?」
「うん、大丈夫……」
思ってたより怖かったみたいだ。
自分以外の人を見て気が緩んだんだなあ。
心配した詩穂さんが寝なさいと言って支度を整えるのをぼんやり見ながら、そうだ、分からないことがあるなら今度の日曜日に絵巻様に聞けばいいんだと気づいて、私はリビングの壁に気疲れした身体をぐったり預けた。
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