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来世は空気を希望します!
24.不穏な気がします
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昨夜、ベッドに座ったところまでは覚えてる。
あー……そっか、そのまま寝ちゃったんだな。
記憶ではそのはずなのに頭は枕に乗っていたし布団もかけられてたから、たぶん、いや十中八九詩穂さんが直してくれたんだ。
ありがとうお母様、おかげで風邪ひかずに済みました。
それにしてもよく寝たー。体がものすごくすっきりしている。
ベッドから下りて肩をぐるぐる回す。ついでに腰もぐるぐる回す。なんちゃってストレッチ。
お腹空いたなー。一階行って詩穂さんのお手伝いしよっと。
ドアに向かって歩き出せば、鏡台に自分の姿が映る。
……おっわあ何!?
細くて指通りのいい髪はちょっとぐちゃっとなっているものの、寝起きすぐとは思えないほど完璧な美貌の銀色が映って思わず飛びずさる。
鏡に映った銀色も同じように驚いた顔をしていて、そうだこれは今は自分の姿なのだと思い出した。
そろそろと鏡に寄る。
えっ……? 言葉ちゃん強すぎ……? 起き抜けからこんな可愛いの……?
この可愛さ美しさは正気じゃないよ、さては言葉ちゃん天使? 女神? 私たち俗物を導くために遣わされた聖なる存在なのでは?
最の高、さすが学年代表、最強、愛情、裁縫、マイボール、何と、南東、ラップしちゃうぜ、イエー!
っはー。起きて初めて見る顔が鏡越しの最推しのお顔とか、前世の私どんな善行を積んだの? ありがとう!
そういえば今私死にかけてるんだし、前世の私って言い回しシャレにならないな。もう使わないようにしよ。言霊言霊。くわばらくわばら。
それと鏡見つめて顔面に見とれるのも学園では止めなくちゃ。
地天学園一年生首席観月言葉は自分の顔が大好きなナルシスト、なんて噂されたら社会的に死ぬ。
気をつけよう。気を引き締めてかからなきゃね。
両頬を叩いて気合いを入れ直す。言葉ちゃんの国宝級のお顔に万一にも傷はつけられないのでかるーくです。
さ、ご飯ご飯! 今朝のメニューは何かなーっと!
キッチンに降りていけば、そこでは詩穂さんが支度をしていた。
はあ……たまらん。今日も美女……。
ほけーっと料理をする後ろ姿を眺めていたら、突然詩穂さんの姿に異常が起きた。
ノイズというのか、ジジっとラグが起きて、ところどころモザイクみたいに見える。
えっ? な、何?
慌ててゴシゴシと目を擦れば、そこには何の変哲もない詩穂さんの姿があった。ふと冷蔵庫を開けようと振り返りこちらに気づく。
「おはよう。よく眠れたみたいね、顔色がいいわ」
開けた冷蔵庫から卵を取り出しながら笑って彼女は言う。日常の何でもない会話だ。
「……おはようお母さん。夜もしかして布団かけてくれた? ごめんね、ありがとう」
見間違い……かな。睫毛に埃でも絡まったのかも。
何事も無かったかのように料理を続ける詩穂さんを見ていたら、とても大したことのようには思えない。
とことこ寄っていって、コップにコーヒーを注ぐ詩穂さんを後ろから抱き締める。
……あったかい。……当たり前か。
「やだ危ない言葉。零しちゃう」
見間違いか、目にゴミが入ったんだきっと。
もうすぐ寮生活でこの家出なきゃいけないし、ナーバスになってるのかも。昨日会ったばかりの「お母さん」だけど、私はもうこの人が大好きだ。
「お母さん」
「うん?」
「寮入っても、連絡するね」
「ええ。うふふ、荷造り始めたらもう寂しくなっちゃったの?」
「うん、そんなところ」
「そう。よしよし。寮生活になっても、お母さんは言葉のこと想ってるからね。……さ、朝ご飯食べましょ! もう準備整ってるわ」
「はーい」
最後に向き直られて正面からぎゅっと抱き締め返してもらった。
この人はちゃんとここに存在してる。あんな……ゲームのプログラミングバグみたいなノイズは私の気のせいだ。
きっと、そうだ。
あー……そっか、そのまま寝ちゃったんだな。
記憶ではそのはずなのに頭は枕に乗っていたし布団もかけられてたから、たぶん、いや十中八九詩穂さんが直してくれたんだ。
ありがとうお母様、おかげで風邪ひかずに済みました。
それにしてもよく寝たー。体がものすごくすっきりしている。
ベッドから下りて肩をぐるぐる回す。ついでに腰もぐるぐる回す。なんちゃってストレッチ。
お腹空いたなー。一階行って詩穂さんのお手伝いしよっと。
ドアに向かって歩き出せば、鏡台に自分の姿が映る。
……おっわあ何!?
細くて指通りのいい髪はちょっとぐちゃっとなっているものの、寝起きすぐとは思えないほど完璧な美貌の銀色が映って思わず飛びずさる。
鏡に映った銀色も同じように驚いた顔をしていて、そうだこれは今は自分の姿なのだと思い出した。
そろそろと鏡に寄る。
えっ……? 言葉ちゃん強すぎ……? 起き抜けからこんな可愛いの……?
この可愛さ美しさは正気じゃないよ、さては言葉ちゃん天使? 女神? 私たち俗物を導くために遣わされた聖なる存在なのでは?
最の高、さすが学年代表、最強、愛情、裁縫、マイボール、何と、南東、ラップしちゃうぜ、イエー!
っはー。起きて初めて見る顔が鏡越しの最推しのお顔とか、前世の私どんな善行を積んだの? ありがとう!
そういえば今私死にかけてるんだし、前世の私って言い回しシャレにならないな。もう使わないようにしよ。言霊言霊。くわばらくわばら。
それと鏡見つめて顔面に見とれるのも学園では止めなくちゃ。
地天学園一年生首席観月言葉は自分の顔が大好きなナルシスト、なんて噂されたら社会的に死ぬ。
気をつけよう。気を引き締めてかからなきゃね。
両頬を叩いて気合いを入れ直す。言葉ちゃんの国宝級のお顔に万一にも傷はつけられないのでかるーくです。
さ、ご飯ご飯! 今朝のメニューは何かなーっと!
キッチンに降りていけば、そこでは詩穂さんが支度をしていた。
はあ……たまらん。今日も美女……。
ほけーっと料理をする後ろ姿を眺めていたら、突然詩穂さんの姿に異常が起きた。
ノイズというのか、ジジっとラグが起きて、ところどころモザイクみたいに見える。
えっ? な、何?
慌ててゴシゴシと目を擦れば、そこには何の変哲もない詩穂さんの姿があった。ふと冷蔵庫を開けようと振り返りこちらに気づく。
「おはよう。よく眠れたみたいね、顔色がいいわ」
開けた冷蔵庫から卵を取り出しながら笑って彼女は言う。日常の何でもない会話だ。
「……おはようお母さん。夜もしかして布団かけてくれた? ごめんね、ありがとう」
見間違い……かな。睫毛に埃でも絡まったのかも。
何事も無かったかのように料理を続ける詩穂さんを見ていたら、とても大したことのようには思えない。
とことこ寄っていって、コップにコーヒーを注ぐ詩穂さんを後ろから抱き締める。
……あったかい。……当たり前か。
「やだ危ない言葉。零しちゃう」
見間違いか、目にゴミが入ったんだきっと。
もうすぐ寮生活でこの家出なきゃいけないし、ナーバスになってるのかも。昨日会ったばかりの「お母さん」だけど、私はもうこの人が大好きだ。
「お母さん」
「うん?」
「寮入っても、連絡するね」
「ええ。うふふ、荷造り始めたらもう寂しくなっちゃったの?」
「うん、そんなところ」
「そう。よしよし。寮生活になっても、お母さんは言葉のこと想ってるからね。……さ、朝ご飯食べましょ! もう準備整ってるわ」
「はーい」
最後に向き直られて正面からぎゅっと抱き締め返してもらった。
この人はちゃんとここに存在してる。あんな……ゲームのプログラミングバグみたいなノイズは私の気のせいだ。
きっと、そうだ。
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