来世は空気を希望します！～壁になって推しカプを見守りたい系オタクJK、目覚めたらヒロインでした解釈違いです！〜

来世は空気を希望します！

21.設定を思い出しています

　……ごちそうさまでした。洗い物くらいは自分でやろうとしたけど詩穂さんがお皿をすっと取り上げて荷造りを優先するように言ってくれたので甘えます。ありがたやありがたや。
　さて言葉ちゃんのお部屋に戻ってきましたが。入寮まで確かもう少し日はあったはずだし、急ぎでやることは実はないんだよね。うーん……。今のうちにこれからの方針とか記憶との擦り合わせしておくか。日記帳に書き留めておけば学園にも持って行けるし。
　机から再び言葉ちゃんの日記帳を取り出して、後ろの方の真白いページを開きペンを握る。
　ええと、まずはメインストーリーの流れから確認しとこう。メインストーリーは、新入生として入学した言葉ちゃんが仲間たちと切磋琢磨しながら地天学園を国規模の学校対抗のお祭り『ワーズフェスタ』で優勝させる話。さっきまで学園で話していた綴くんから、首席として学園を優勝まで導くように任命されるのが冒頭部分。円くんとの初対面を果たすのがその次のシーン。うん、ちゃんと順当に来てる。これからどうなっていくんだっけ。今日のシーンは厳密に言えば学園入学前だから、これから入寮して入学式をして、学園の生徒たちをどんどん仲間にして、壁に何度もぶち当たりながらも最終的には見事念願叶って優勝！　やったね！　って流れだったはず。この次のシーンは何だったかな。……そうだ、入学式まで時間が飛んで、言葉ちゃんが新入生代表挨拶をするんだ。それで地天学園では数の少ない女子生徒が首席を取ったことにいちゃもんをつけられて、そこを枝折くんが庇って、他にも庇ってくれたキャラがいて……。ああそうだ、神原かんばら遥はるかくん！　同じクラスになった彼との出会いが次のシーンだ。
　地天学園は一応共学なんだけど男女比率は八対二寄りの七対三くらい。すぐ近くに聖セントロベレテア学院っていう女子校があって、女子生徒はそっちに流れがちなんだよね。落ち目だからね地天学園は……。いくら昔は栄華を誇っていたとはいえ、今はひどい。ワーズフェスタで活躍すればその後の魔術師としての自分の箔になるからね。わざわざ低迷しているような学校と心中してやろうっていう奇特な人はなかなかいない。言葉ちゃんが地天を志望したのには理由があるけど、普通ならたぶん聖ロベレテアに行ってたと思う。ロベレテアに進んだ言葉ちゃんのif二次創作結構好きだったなあ……。
　じゃなくって。入学式は四月だから遥くんと対面するまでもうしばらく猶予がある。その先のこともしっかり思い出して、細かい設定とかも頭から絞り出して、しっかり準備を整えておこう。
　そうそう、この世界、「魔術師」と「魔法使い」は別物なんだよね。魔術は一足す一は必ず二になる数学みたいな感じで、手順を正しく踏めばどんな人でも現象を引き起こせる。この世界に生きてる人は全員魔術師です。でも魔法はそうではなくて、祈るだけでどんな奇跡も可能にしてしまう神秘の力のことをいう。全員が持ってる力という訳ではないんだ。じゃあ魔法使いはおとぎ話の中だけで存在しないのかと言われるといます。います。魔法使いだけど魔術師として暮らしてる人もいます。この辺がややこしい。言葉ちゃんが聖ロベレテアとか他のイケイケな学校ではなくわざわざ地天を志望したのはここに理由がある。