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来世は空気を希望します!
19.一日目が終わりました
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どうも上手に思い出せない部分が多いなあ……。まだ混乱してるんだと考えればそれまでだけど。
まあきっと、落ち着いてひとつずつ考えていけば思い出せるし何とかなるよね。うん。
あとは特に用事もイベントもないしちょっと早いけどこれにて全予定終了! かな?
学園を出て、来た道を枝折くんと戻る。午後の電車は空いていて二人ともゆったり座れた。朝の満員電車を思い出して内心ちょっと気が気じゃなかったけど枝折くんには秘密です。絶対内緒。
疲れたねなんて言い合いながらうとうとしていたら駅まであっという間。電車を降りて話しながら歩いていけば、すぐに「観月」の表札のかかった言葉ちゃんの自宅に到着です。さりげなく送ることに成功している辺り、ソツがないんだよね枝折くん。ただちょっと不遇なだけで。
「今日はお疲れ。また連絡する」
「うん。送ってくれてありがとう。気をつけてね」
「うん」
枝折くんの家は言葉ちゃん家から十分くらいのところにあるんだったかな。二人が学園の寮に入寮する前、子どもの頃のことを描いた特別なショートストーリーで見た気がする。
玄関から歩いていく枝折くんの背中を見送る。角を曲がって姿が見えなくなったら中に入ろうと思っていたけど、ふと枝折くんが振り返った。一瞬目を見開いた後、花がほころぶようにふわっと笑ってこちらに手を振る。ええ……。すごい、スチルみたい……。半ば呆然としながら反射的に手を振り返す。イケメンってすごい。手を振るだけでエモーショナル。それから数分してようやく枝折くんの姿が角の奥に消えた。好きな人が自分を見送っててしかも手を振ってくれたら確かに嬉しいか。それは納得できるんだけど前見て歩かないと危ないよ枝折くん……。
さーて無事帰宅です。詩穂さんただいまー!
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
奥から詩穂さんの声がした。ただいまの声に返事があるの、嬉しい。リビングへ行けば、洗濯物を取り込んだばかりなのかタオルや衣類をせっせと畳む詩穂さんがいた。ふわんと柔軟剤のいい匂いがする。
「おかえり言葉。お疲れ様。お昼ご飯食べてきた?」
「あっ忘れてた」
いや本当に忘れてた。気づいたら急にお腹すいてきたぞ。私でこれなんだから育ち盛りの枝折くんなんかもっと腹ぺこだったんじゃ。
「忘れてたって、あらあらもう。ちょっと待ってね、何か作るわ。食べたいものある?」
「うーん、特にないかな。ごめんねお母さん、すっかりご飯のこと忘れてて」
「ちゃんと食べなきゃ駄目でしょう。うーんと、オムライスでいい?」
「うん」
オムライス、大好物です。冷蔵庫を開ける詩穂さんにわくわくしながら洗面所で手洗いうがいする。一旦二階の言葉ちゃんの部屋へ戻ろう。あ、でもその前に。
「お母さん」
「なあに?」
「見て見て、首席のブローチ、兄さんに付けてもらった」
キッチンに立つ詩穂さんの背中に向かって話しかける。詩穂さんは料理の手を止めると、こちらを見てくれた。制服の上着を引っ張って胸ポケットを主張する。
「首席? 言葉が一番だったの?」
「うん、入試の成績が一番良かったんだって。それで、首席の人はブローチが貰えるんだよ。これがそう」
「すごいじゃない! 言葉すごい! 頑張ったね!」
大きな声を上げた詩穂さんがぎゅうと抱き締めてくれた。柔らかいしいい匂いするしあったかい! わわわ、一日で二度も美男美女に抱き締められてしまった。
「今晩はご馳走にしなくちゃね! 張り切っちゃう!」
「えへへ。うん。あっお母さん、兄さんが来週くらいに帰ります、日付はまた連絡しますって」
「そう! ああじゃあ、ご馳走は綴くんが帰ってきてからの方がいいかしら。言葉はどっちがいい?」
「兄さんがいる日の方がいいな」
「そうね、そうしましょうか。何食べたいか考えておいてね。今はとりあえずオムライス美味しいの作るわ」
「うん、ありがとう。荷物置いて着替えてくるね」
「ええ、洗濯物は出しておいてね」
「はあい」
ハグしてくれた腕が離れる。高校生にもなって母親の温もりが名残惜しいとかマザコンかな。そんなことはないと信じたい。
鞄を持って二階の言葉ちゃんの自室へ。部屋の扉を閉じれば、朝目が覚めたときぶりのひとりきりだ。ふう。お疲れ様、私。
まあきっと、落ち着いてひとつずつ考えていけば思い出せるし何とかなるよね。うん。
あとは特に用事もイベントもないしちょっと早いけどこれにて全予定終了! かな?
学園を出て、来た道を枝折くんと戻る。午後の電車は空いていて二人ともゆったり座れた。朝の満員電車を思い出して内心ちょっと気が気じゃなかったけど枝折くんには秘密です。絶対内緒。
疲れたねなんて言い合いながらうとうとしていたら駅まであっという間。電車を降りて話しながら歩いていけば、すぐに「観月」の表札のかかった言葉ちゃんの自宅に到着です。さりげなく送ることに成功している辺り、ソツがないんだよね枝折くん。ただちょっと不遇なだけで。
「今日はお疲れ。また連絡する」
「うん。送ってくれてありがとう。気をつけてね」
「うん」
枝折くんの家は言葉ちゃん家から十分くらいのところにあるんだったかな。二人が学園の寮に入寮する前、子どもの頃のことを描いた特別なショートストーリーで見た気がする。
玄関から歩いていく枝折くんの背中を見送る。角を曲がって姿が見えなくなったら中に入ろうと思っていたけど、ふと枝折くんが振り返った。一瞬目を見開いた後、花がほころぶようにふわっと笑ってこちらに手を振る。ええ……。すごい、スチルみたい……。半ば呆然としながら反射的に手を振り返す。イケメンってすごい。手を振るだけでエモーショナル。それから数分してようやく枝折くんの姿が角の奥に消えた。好きな人が自分を見送っててしかも手を振ってくれたら確かに嬉しいか。それは納得できるんだけど前見て歩かないと危ないよ枝折くん……。
さーて無事帰宅です。詩穂さんただいまー!
「ただいまー」
「おかえりなさーい」
奥から詩穂さんの声がした。ただいまの声に返事があるの、嬉しい。リビングへ行けば、洗濯物を取り込んだばかりなのかタオルや衣類をせっせと畳む詩穂さんがいた。ふわんと柔軟剤のいい匂いがする。
「おかえり言葉。お疲れ様。お昼ご飯食べてきた?」
「あっ忘れてた」
いや本当に忘れてた。気づいたら急にお腹すいてきたぞ。私でこれなんだから育ち盛りの枝折くんなんかもっと腹ぺこだったんじゃ。
「忘れてたって、あらあらもう。ちょっと待ってね、何か作るわ。食べたいものある?」
「うーん、特にないかな。ごめんねお母さん、すっかりご飯のこと忘れてて」
「ちゃんと食べなきゃ駄目でしょう。うーんと、オムライスでいい?」
「うん」
オムライス、大好物です。冷蔵庫を開ける詩穂さんにわくわくしながら洗面所で手洗いうがいする。一旦二階の言葉ちゃんの部屋へ戻ろう。あ、でもその前に。
「お母さん」
「なあに?」
「見て見て、首席のブローチ、兄さんに付けてもらった」
キッチンに立つ詩穂さんの背中に向かって話しかける。詩穂さんは料理の手を止めると、こちらを見てくれた。制服の上着を引っ張って胸ポケットを主張する。
「首席? 言葉が一番だったの?」
「うん、入試の成績が一番良かったんだって。それで、首席の人はブローチが貰えるんだよ。これがそう」
「すごいじゃない! 言葉すごい! 頑張ったね!」
大きな声を上げた詩穂さんがぎゅうと抱き締めてくれた。柔らかいしいい匂いするしあったかい! わわわ、一日で二度も美男美女に抱き締められてしまった。
「今晩はご馳走にしなくちゃね! 張り切っちゃう!」
「えへへ。うん。あっお母さん、兄さんが来週くらいに帰ります、日付はまた連絡しますって」
「そう! ああじゃあ、ご馳走は綴くんが帰ってきてからの方がいいかしら。言葉はどっちがいい?」
「兄さんがいる日の方がいいな」
「そうね、そうしましょうか。何食べたいか考えておいてね。今はとりあえずオムライス美味しいの作るわ」
「うん、ありがとう。荷物置いて着替えてくるね」
「ええ、洗濯物は出しておいてね」
「はあい」
ハグしてくれた腕が離れる。高校生にもなって母親の温もりが名残惜しいとかマザコンかな。そんなことはないと信じたい。
鞄を持って二階の言葉ちゃんの自室へ。部屋の扉を閉じれば、朝目が覚めたときぶりのひとりきりだ。ふう。お疲れ様、私。
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