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来世は空気を希望します!
17.二人で歩いています
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生徒会室の厚い扉を枝折くんが開けてくれた。ありがとう。
廊下の空気がひんやりしてて気持ちいい。生徒会室は人口密度もあってちょっと暑かった。
「それ、似合ってるな」
枝折くんが私の胸元を指さして言う。着けたばかりのブローチのことを言っているのだと気づいて、ブローチに手を当てて返事を返す。
「ありがとう。誇らしいけど、ちょっと恥ずかしいね」
学園での「観月言葉」を構成するパーツとして欠かせない首席のブローチ。一番を示す銀色は嫌でも目を引くけど、言葉ちゃんの銀髪と相まってそこにあることが当たり前のような収まり方だ。さすが私の最推し。天才。
正面玄関で靴を履き替えて、校舎から出る。暖かい日差しとちょっと冷たい風。もう春だ。
さっきは気づかなかったけど、学園は別に静まり返ってはいなくて、グラウンドからは運動部の掛け声が聞こえるし、桜並木の陰では美術部が熱心に絵を描いている。上から降ってくる澄んだ音はたぶん吹奏楽部かな。意外と休みでも賑やかだ。
「部活してる人が結構いるね」
「そうだな」
言葉ちゃんは首席として頼られることが多くて何部にも属さずにあっちこっちでお手伝いというか助っ人してたけど、枝折くんは部活どうするのかな。公式では……あれ、何部だったっけ。ド忘れしちゃった。
「言葉はどこに入るか考えてるのか?」
「私は部活はいいかなあ。ほら、忙しくなりそうだし」
こういうときは本筋を外れちゃいかんのです。部活に入る入らないでバタフライエフェクトが起きたりするかもしれないし。部活やってたので学園の優勝取り逃しましたーってなったら困る。
「そうか。まあそれもそうだな」
「そういう枝折くんは? やりたいこととかないの?」
「俺のやりたいこと? そうだな……言葉と結婚するとか」
「……あはは、まだ結婚できる年齢じゃないでしょ」
真顔で急にぶっ込んでくるなー! こら! 月嶋枝折! そういうとこだぞ!
でもこれ真剣に言ってるんだよな……。思いっきりスルーしちゃったけど傷ついてたり……?
ちら、と顔を見れば全然表情が変わっていない。照れ隠しで顔を引き締めてるって訳でもなさそう。おや?
あーそうか……可哀想に……。ずーっとこうやって口説いてるのスルーされてきたからもう何も言葉ちゃんに期待してないんだ。でも好きなんだな。うわあ不遇! 知ってたけどなんかごめん! 私は応援してるよ枝折くん頑張れ……!
いやでも頑張られると私が応対しなきゃいけないのか。それはちょっとな……。解釈違いだな……。今後のために幽体離脱みたいに視点を動かせるように訓練しといた方がいいかもしれない。どきどきする言葉ちゃんとしての自分と、それを眺めていいぞもっとやれ! ってする自分と。うん、いい案じゃない? 腹話術みたいなノリでやればいける気がする! 問題はそういう状況に陥ったときにちゃんと冷静でいられるかだけど……。うーん、無理かもしれん。朝の電車での枝折くんとの接触であれだけ動揺したしな。うわ、思い出したらまた恥ずかしくなってきた。顔が熱いぞ。
「言葉? 暑いか?」
「えっ!? 暑くないよ!」
「そうか? でも顔が赤……」
「赤くないです!」
「そ、そうですか」
うう、ごめん枝折くん。挙動不審な限界オタクが好きな子の中身でほんとごめんよ。
桜並木を半分くらいまで歩いたところで、赤くなった顔を誤魔化すために鞄からハンカチを取り出す。
そこに突然強い風が吹いて、ハンカチが飛ばされてしまった。
廊下の空気がひんやりしてて気持ちいい。生徒会室は人口密度もあってちょっと暑かった。
「それ、似合ってるな」
枝折くんが私の胸元を指さして言う。着けたばかりのブローチのことを言っているのだと気づいて、ブローチに手を当てて返事を返す。
「ありがとう。誇らしいけど、ちょっと恥ずかしいね」
学園での「観月言葉」を構成するパーツとして欠かせない首席のブローチ。一番を示す銀色は嫌でも目を引くけど、言葉ちゃんの銀髪と相まってそこにあることが当たり前のような収まり方だ。さすが私の最推し。天才。
正面玄関で靴を履き替えて、校舎から出る。暖かい日差しとちょっと冷たい風。もう春だ。
さっきは気づかなかったけど、学園は別に静まり返ってはいなくて、グラウンドからは運動部の掛け声が聞こえるし、桜並木の陰では美術部が熱心に絵を描いている。上から降ってくる澄んだ音はたぶん吹奏楽部かな。意外と休みでも賑やかだ。
「部活してる人が結構いるね」
「そうだな」
言葉ちゃんは首席として頼られることが多くて何部にも属さずにあっちこっちでお手伝いというか助っ人してたけど、枝折くんは部活どうするのかな。公式では……あれ、何部だったっけ。ド忘れしちゃった。
「言葉はどこに入るか考えてるのか?」
「私は部活はいいかなあ。ほら、忙しくなりそうだし」
こういうときは本筋を外れちゃいかんのです。部活に入る入らないでバタフライエフェクトが起きたりするかもしれないし。部活やってたので学園の優勝取り逃しましたーってなったら困る。
「そうか。まあそれもそうだな」
「そういう枝折くんは? やりたいこととかないの?」
「俺のやりたいこと? そうだな……言葉と結婚するとか」
「……あはは、まだ結婚できる年齢じゃないでしょ」
真顔で急にぶっ込んでくるなー! こら! 月嶋枝折! そういうとこだぞ!
でもこれ真剣に言ってるんだよな……。思いっきりスルーしちゃったけど傷ついてたり……?
ちら、と顔を見れば全然表情が変わっていない。照れ隠しで顔を引き締めてるって訳でもなさそう。おや?
あーそうか……可哀想に……。ずーっとこうやって口説いてるのスルーされてきたからもう何も言葉ちゃんに期待してないんだ。でも好きなんだな。うわあ不遇! 知ってたけどなんかごめん! 私は応援してるよ枝折くん頑張れ……!
いやでも頑張られると私が応対しなきゃいけないのか。それはちょっとな……。解釈違いだな……。今後のために幽体離脱みたいに視点を動かせるように訓練しといた方がいいかもしれない。どきどきする言葉ちゃんとしての自分と、それを眺めていいぞもっとやれ! ってする自分と。うん、いい案じゃない? 腹話術みたいなノリでやればいける気がする! 問題はそういう状況に陥ったときにちゃんと冷静でいられるかだけど……。うーん、無理かもしれん。朝の電車での枝折くんとの接触であれだけ動揺したしな。うわ、思い出したらまた恥ずかしくなってきた。顔が熱いぞ。
「言葉? 暑いか?」
「えっ!? 暑くないよ!」
「そうか? でも顔が赤……」
「赤くないです!」
「そ、そうですか」
うう、ごめん枝折くん。挙動不審な限界オタクが好きな子の中身でほんとごめんよ。
桜並木を半分くらいまで歩いたところで、赤くなった顔を誤魔化すために鞄からハンカチを取り出す。
そこに突然強い風が吹いて、ハンカチが飛ばされてしまった。
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