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来世は空気を希望します!
16.兄さんが可愛いです
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いやしかし今感じてるこのどきどきはあれですよ、恋愛感情的なあれじゃなくて、生理的な反応? 条件反射? みたいなやつ! きゃあーっていうよりひょえーって感じの!
大体兄だし! そういう感情抱いたら言葉ちゃんたちの立場を危うくしてしまう。仲良し兄妹としての近親カプは需要ありますけども! ここに!
「ああそうだ言葉、春休みのうちに帰省しようと思ってるから、母さんに伝えておいてくれないか。あとで俺からも連絡はするけど」
「あっうん、分かった」
そうだよね、長期休みだもん帰ってくるよね。
「こちらから伝えておきたいことはこれで全てだ。言葉と枝折からは何かあるか? 質問とか」
「あーっと……。私はないかな」
「俺もないです」
「そうか。あーじゃあええともう帰るか……?」
「あっうん、帰ろうかな」
綴くんの歯切れが急に悪くなった。どうしたの?
心の中で首を傾げていたら、座っていた亜玖璃くんが声を上げた。
「つづりん話振るのへったくそー。妹ちゃんとナイトくん困ってんじゃん」
「あっすまない!」
「ごめんねー妹ちゃん。まあ座ってよ。つづりんてばもう少し君たちとお喋りしてたいのにどう言っていいのか分からないんだよ」
「そんなことは……! なくも、ないが……」
ええー。可愛い。
「……言葉。にやにやするな」
「えっごめん顔に出てた?」
いかんいかん。慌てて顔を両手で抑える。
わがままが下手な綴くん可愛いなーと思いながら再びソファに腰掛けた。そういえば亜玖璃くんが出してくれたお茶とお菓子にも手をつけていなかったし。
「今日君たちが来るの、つづりんものすごく楽しみにしてたんだよー。ねー標?」
「うっす! めっちゃ仕事気合い入ってました!」
「余計なことを言うな六之宮……!」
「ええオレですか!? 亜玖璃先輩じゃなくて!?」
「亜玖璃には言ったところで無駄だ!」
「ひどーい」
私たちに気を使って生徒会室の端っこで黙々と書類仕事をこなしていた標くんも巻き込んで大騒ぎになってしまった。本当に言葉ちゃんのこと大切にしてくれてるんだなあ、綴くん。枝折くんのことも信頼してるし。
「生徒会の人たち、仲がいいんだな」
「そうだね」
枝折くんがそっとこちらに小声で話しかけてきたので頷きながら返答する。
あ、お茶美味しい。お菓子も。
「あー……。そんなわけで、その、なんだ、元気にしているか」
「兄さん久しぶりに孫に会ったおじいちゃんみたい」
「おじいちゃん!?」
「うん。ふふ」
綴くんはこういうところが可愛い。推せる。照れたり驚いたり、気を許した相手の前ではソツのない生徒会長の顔じゃなくて高校生の顔をしてくれる。
元気か、か。今日言葉ちゃんになったばっかりの私が答えていいものかな。まあ元気だし元気って言っておこう。
「ちゃんと元気にしてるよ。兄さんは?」
「ああ、俺も元気だよ」
「嘘つけー。いつも生徒会の仕事とか何やらでへとへとでーす」
「亜玖璃! 頼むから少し口を閉じてくれ!」
「あはは、はーい」
やっぱり大変なんだなあ。教師とかを除いたらこの学園のトップだし。身体が資本だよ、綴くん。
「あんま無理しないでください。入学したら俺たちも綴さんのこと助けます」
「ありがとう枝折。期待はしてるが、お前たちこそ無理はするなよ。入学直後が一番しんどいからな。授業に課題に寮生活にっていろいろ慣れないことが重なる。休めるときはしっかり休め。まあ、協力を要請した俺が言うことではないか」
「はい。綴さんはちゃんと休めてますか」
「俺? 俺はまあ、……それなりにやってるよ」
「……ほんと、身体に気をつけてくださいね」
「ああ」
枝折くんが大人しく引いた。うん、この感じは綴くん全然休んでないね。でも言っても改善しないし意地になっちゃう感じのやつだ。倒れたりしないといいんだけど……。あれ、というか。
「そんなに忙しいのに私たちに時間割いてて大丈夫なの?」
「大丈夫だ。大丈夫にした」
「ええ……」
不安げなリアクションをしたら、綴くんはちょっと恥ずかしそうに目線を彷徨わせてから苦笑いした。そういう顔は年齢相応な男の子の顔になるのズルいなあ。
「さっき亜玖璃にバラされたけど、会いに来てくれるって言うからすごく楽しみにしてたんだ。仕事をいろいろ前倒しにしたり亜玖璃たち他の役員にも手伝ってもらったりして時間を作った。……ああくそっ、こんなこと言うつもりじゃなかったんだが。恰好悪い」
うーん健気。可愛い。
「全然恰好悪くなんてないよ。嬉しい。ありがとう兄さん。実は私もちょっと緊張してたんだけど、笑う?」
「笑わない。というか何を緊張することがあるんだ」
「だって久しぶりに会うし。ね? それと一緒だよ。全然恰好悪くない」
「……そうか。ありがとう」
……うん。今のは言葉ちゃんっぽかったんじゃないでしょうか。でもちょっと上から目線過ぎたかな。加減難しい。
「でも本当に無理はしないでね!」
「分かった。なるべく気をつける」
「なるべく?」
「……ちゃんと」
「はいよろしいです。ふふっ」
一段落ついたかな、ってところで壁にかかっていた時計が鳴った。えっもう一三時?
「っともうこんな時間か。すまない、引き止めすぎたな。もう帰りなさい」
「うん、そうする。兄さん、帰ってくる日とか時間とか、後でまた連絡してね。家で待ってる」
「ああ、たぶん来週辺りになると思う」
「分かった。じゃあまたね」
「ああ、今日はありがとうな」
「綴さん、また」
「ああ。枝折も来てくれてありがとう。帰り道も言葉のことよろしく頼む」
「はい」
荷物を持ってソファから立ち上がる。時間の流れが早い。
「見送りを……」
「ううん、いいよ。正面玄関までそんなに遠くなかったし。生徒会忙しいでしょ?」
「……じゃあ気をつけて帰るんだぞ」
「うん。……六之宮さん、曙さん、ありがとうございました。お邪魔しました。春からまたよろしくお願いします」
「今日はありがとうございました。入学したらよろしくお願いします」
「ご丁寧にどうもー。またね、妹ちゃん、ナイトくん」
「入学してくるの楽しみにしてます! また!」
頭を下げてから生徒会室を出る。生徒会みんないい人たちだった、良かったー。滑り出しとしてはなかなか好調だったんじゃなかろうか。
大体兄だし! そういう感情抱いたら言葉ちゃんたちの立場を危うくしてしまう。仲良し兄妹としての近親カプは需要ありますけども! ここに!
「ああそうだ言葉、春休みのうちに帰省しようと思ってるから、母さんに伝えておいてくれないか。あとで俺からも連絡はするけど」
「あっうん、分かった」
そうだよね、長期休みだもん帰ってくるよね。
「こちらから伝えておきたいことはこれで全てだ。言葉と枝折からは何かあるか? 質問とか」
「あーっと……。私はないかな」
「俺もないです」
「そうか。あーじゃあええともう帰るか……?」
「あっうん、帰ろうかな」
綴くんの歯切れが急に悪くなった。どうしたの?
心の中で首を傾げていたら、座っていた亜玖璃くんが声を上げた。
「つづりん話振るのへったくそー。妹ちゃんとナイトくん困ってんじゃん」
「あっすまない!」
「ごめんねー妹ちゃん。まあ座ってよ。つづりんてばもう少し君たちとお喋りしてたいのにどう言っていいのか分からないんだよ」
「そんなことは……! なくも、ないが……」
ええー。可愛い。
「……言葉。にやにやするな」
「えっごめん顔に出てた?」
いかんいかん。慌てて顔を両手で抑える。
わがままが下手な綴くん可愛いなーと思いながら再びソファに腰掛けた。そういえば亜玖璃くんが出してくれたお茶とお菓子にも手をつけていなかったし。
「今日君たちが来るの、つづりんものすごく楽しみにしてたんだよー。ねー標?」
「うっす! めっちゃ仕事気合い入ってました!」
「余計なことを言うな六之宮……!」
「ええオレですか!? 亜玖璃先輩じゃなくて!?」
「亜玖璃には言ったところで無駄だ!」
「ひどーい」
私たちに気を使って生徒会室の端っこで黙々と書類仕事をこなしていた標くんも巻き込んで大騒ぎになってしまった。本当に言葉ちゃんのこと大切にしてくれてるんだなあ、綴くん。枝折くんのことも信頼してるし。
「生徒会の人たち、仲がいいんだな」
「そうだね」
枝折くんがそっとこちらに小声で話しかけてきたので頷きながら返答する。
あ、お茶美味しい。お菓子も。
「あー……。そんなわけで、その、なんだ、元気にしているか」
「兄さん久しぶりに孫に会ったおじいちゃんみたい」
「おじいちゃん!?」
「うん。ふふ」
綴くんはこういうところが可愛い。推せる。照れたり驚いたり、気を許した相手の前ではソツのない生徒会長の顔じゃなくて高校生の顔をしてくれる。
元気か、か。今日言葉ちゃんになったばっかりの私が答えていいものかな。まあ元気だし元気って言っておこう。
「ちゃんと元気にしてるよ。兄さんは?」
「ああ、俺も元気だよ」
「嘘つけー。いつも生徒会の仕事とか何やらでへとへとでーす」
「亜玖璃! 頼むから少し口を閉じてくれ!」
「あはは、はーい」
やっぱり大変なんだなあ。教師とかを除いたらこの学園のトップだし。身体が資本だよ、綴くん。
「あんま無理しないでください。入学したら俺たちも綴さんのこと助けます」
「ありがとう枝折。期待はしてるが、お前たちこそ無理はするなよ。入学直後が一番しんどいからな。授業に課題に寮生活にっていろいろ慣れないことが重なる。休めるときはしっかり休め。まあ、協力を要請した俺が言うことではないか」
「はい。綴さんはちゃんと休めてますか」
「俺? 俺はまあ、……それなりにやってるよ」
「……ほんと、身体に気をつけてくださいね」
「ああ」
枝折くんが大人しく引いた。うん、この感じは綴くん全然休んでないね。でも言っても改善しないし意地になっちゃう感じのやつだ。倒れたりしないといいんだけど……。あれ、というか。
「そんなに忙しいのに私たちに時間割いてて大丈夫なの?」
「大丈夫だ。大丈夫にした」
「ええ……」
不安げなリアクションをしたら、綴くんはちょっと恥ずかしそうに目線を彷徨わせてから苦笑いした。そういう顔は年齢相応な男の子の顔になるのズルいなあ。
「さっき亜玖璃にバラされたけど、会いに来てくれるって言うからすごく楽しみにしてたんだ。仕事をいろいろ前倒しにしたり亜玖璃たち他の役員にも手伝ってもらったりして時間を作った。……ああくそっ、こんなこと言うつもりじゃなかったんだが。恰好悪い」
うーん健気。可愛い。
「全然恰好悪くなんてないよ。嬉しい。ありがとう兄さん。実は私もちょっと緊張してたんだけど、笑う?」
「笑わない。というか何を緊張することがあるんだ」
「だって久しぶりに会うし。ね? それと一緒だよ。全然恰好悪くない」
「……そうか。ありがとう」
……うん。今のは言葉ちゃんっぽかったんじゃないでしょうか。でもちょっと上から目線過ぎたかな。加減難しい。
「でも本当に無理はしないでね!」
「分かった。なるべく気をつける」
「なるべく?」
「……ちゃんと」
「はいよろしいです。ふふっ」
一段落ついたかな、ってところで壁にかかっていた時計が鳴った。えっもう一三時?
「っともうこんな時間か。すまない、引き止めすぎたな。もう帰りなさい」
「うん、そうする。兄さん、帰ってくる日とか時間とか、後でまた連絡してね。家で待ってる」
「ああ、たぶん来週辺りになると思う」
「分かった。じゃあまたね」
「ああ、今日はありがとうな」
「綴さん、また」
「ああ。枝折も来てくれてありがとう。帰り道も言葉のことよろしく頼む」
「はい」
荷物を持ってソファから立ち上がる。時間の流れが早い。
「見送りを……」
「ううん、いいよ。正面玄関までそんなに遠くなかったし。生徒会忙しいでしょ?」
「……じゃあ気をつけて帰るんだぞ」
「うん。……六之宮さん、曙さん、ありがとうございました。お邪魔しました。春からまたよろしくお願いします」
「今日はありがとうございました。入学したらよろしくお願いします」
「ご丁寧にどうもー。またね、妹ちゃん、ナイトくん」
「入学してくるの楽しみにしてます! また!」
頭を下げてから生徒会室を出る。生徒会みんないい人たちだった、良かったー。滑り出しとしてはなかなか好調だったんじゃなかろうか。
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