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その⑳告げられた真実
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俳優佐藤俊哉と相沢雅の離婚発表があったのはそれから一週間後だった。
財産分与無し、慰謝料無し、そして養育費の取り決めも無しということで様ざまな憶測が飛び交った。
その間に愛海にもある事実が判明していた。
「久しぶり」長く連絡のつかなかった池谷と会えたのは一か月たってからだった。池谷はやっと自分が佐藤俊哉だと名乗ってくれた。
あの一か月前のあの日、佐藤の娘のDNA鑑定の判定が届いた、ということを教えられた。
「本当に心の底から可愛がっていたんだが……」およそ三カ月ほど前に娘が軽い肺炎を起こし、これからの万一のためにも事前に知っておいた方がいいと医師に勧められ、血液型を調べることになった」
佐藤がソファに愛海と並んで腰を掛けながら言った。
「ありえない血液型でね。愕然としたよ」
それでも何かの間違いではないかと打ち消し続けた佐藤だったが、思い切って妻には隠したままDNA鑑定を依頼した。
あの日、DNA検査の結果が送られてそのことは疑いようのない事実となった。
「妻を問い詰めたら、元夫の子どもだというんだ」
佐藤は初婚だったが妻の雅は再婚だった。
「ありえないだろう?もう別れて5年もたっているのに……。好きなのはあの人だけだ、事件を起こしたあの人と無理やり周りに別れさせられたけど、ずっと好きだったって……」
雅の前夫、ドラマーの瀬戸裕也は、薬物がらみの事件を起こし、傷害の前科があったこともあって三年の実刑を受けていた。
「瀬戸が出所した時、たまらず会いに行ってできた子らしい……。そのころ友人づきあいをしていた俺の子ということにすればいいと思って俺と付き合い始めたそうだ。……今考えれば、確かに、それまで俺が持っていた雅のイメージと違って、急に体の関係になったんだよ」
それから三年、自分自身のこどもと思い、生まれる前から愛情を注ぎ続けてきた。
「子どもの親権が欲しかったけど、渡さないと言われて話し合いが難航して……結局勝てなかったよ。もう子どもに一切かかわってほしくないから養育費も要らないってさ」
池谷だった佐藤は遠い目をした。
愛海は巷で噂になっていることが、たがわず事実だったことに驚きを隠せなかった。
ワイドショーでも週刊誌でも、そしてネットやSNSでも、二人の間の子どもが本当は雅の前夫との間にできた子で、それを隠すために雅は佐藤と慌てて結婚したのだと言われていた。何処から情報が漏れるのか、またなぜ瞬く間に皆が知るところとなるのか。愛海は有名人の私生活を守ることの難しさを思い知った。
「完全に芸能界から引退して、瀬戸と生きて行きたいと言われた。一生をかけて償いますので幸せになることを許してくださいって。向こうから慰謝料を提示された。かなり高額で向こうの真摯さが伺えた。その額は確かに芸能界を引退した後に賄い続けるにはかなり苦労するほどの額だったよ……もちろんそれは断ったけどね」
その切なさは愛海の胸を打った。
佐藤は目を閉じ、
「女神みたいに思っていたんだ。あんなに美しい人はいないって。年上のあこがれていた女性。その人が俺の妻になってくれるんだって、結婚するときは舞い上がった。蘭も本当にかわいくて」
ついに佐藤は顔を両手で多い嗚咽した。
愛海はそんな佐藤の手を握りしめ
「失恋したんだね」と言った
佐藤も、そしておそらく雅も私と同じだと愛海は思った。恋人を失って失恋の痛みを忘れるために、他の異性に体を預けたんだ。切なくて悲しくて、それでも明日を生きて行くために。自分をごまかしてでも生きて行くために。
財産分与無し、慰謝料無し、そして養育費の取り決めも無しということで様ざまな憶測が飛び交った。
その間に愛海にもある事実が判明していた。
「久しぶり」長く連絡のつかなかった池谷と会えたのは一か月たってからだった。池谷はやっと自分が佐藤俊哉だと名乗ってくれた。
あの一か月前のあの日、佐藤の娘のDNA鑑定の判定が届いた、ということを教えられた。
「本当に心の底から可愛がっていたんだが……」およそ三カ月ほど前に娘が軽い肺炎を起こし、これからの万一のためにも事前に知っておいた方がいいと医師に勧められ、血液型を調べることになった」
佐藤がソファに愛海と並んで腰を掛けながら言った。
「ありえない血液型でね。愕然としたよ」
それでも何かの間違いではないかと打ち消し続けた佐藤だったが、思い切って妻には隠したままDNA鑑定を依頼した。
あの日、DNA検査の結果が送られてそのことは疑いようのない事実となった。
「妻を問い詰めたら、元夫の子どもだというんだ」
佐藤は初婚だったが妻の雅は再婚だった。
「ありえないだろう?もう別れて5年もたっているのに……。好きなのはあの人だけだ、事件を起こしたあの人と無理やり周りに別れさせられたけど、ずっと好きだったって……」
雅の前夫、ドラマーの瀬戸裕也は、薬物がらみの事件を起こし、傷害の前科があったこともあって三年の実刑を受けていた。
「瀬戸が出所した時、たまらず会いに行ってできた子らしい……。そのころ友人づきあいをしていた俺の子ということにすればいいと思って俺と付き合い始めたそうだ。……今考えれば、確かに、それまで俺が持っていた雅のイメージと違って、急に体の関係になったんだよ」
それから三年、自分自身のこどもと思い、生まれる前から愛情を注ぎ続けてきた。
「子どもの親権が欲しかったけど、渡さないと言われて話し合いが難航して……結局勝てなかったよ。もう子どもに一切かかわってほしくないから養育費も要らないってさ」
池谷だった佐藤は遠い目をした。
愛海は巷で噂になっていることが、たがわず事実だったことに驚きを隠せなかった。
ワイドショーでも週刊誌でも、そしてネットやSNSでも、二人の間の子どもが本当は雅の前夫との間にできた子で、それを隠すために雅は佐藤と慌てて結婚したのだと言われていた。何処から情報が漏れるのか、またなぜ瞬く間に皆が知るところとなるのか。愛海は有名人の私生活を守ることの難しさを思い知った。
「完全に芸能界から引退して、瀬戸と生きて行きたいと言われた。一生をかけて償いますので幸せになることを許してくださいって。向こうから慰謝料を提示された。かなり高額で向こうの真摯さが伺えた。その額は確かに芸能界を引退した後に賄い続けるにはかなり苦労するほどの額だったよ……もちろんそれは断ったけどね」
その切なさは愛海の胸を打った。
佐藤は目を閉じ、
「女神みたいに思っていたんだ。あんなに美しい人はいないって。年上のあこがれていた女性。その人が俺の妻になってくれるんだって、結婚するときは舞い上がった。蘭も本当にかわいくて」
ついに佐藤は顔を両手で多い嗚咽した。
愛海はそんな佐藤の手を握りしめ
「失恋したんだね」と言った
佐藤も、そしておそらく雅も私と同じだと愛海は思った。恋人を失って失恋の痛みを忘れるために、他の異性に体を預けたんだ。切なくて悲しくて、それでも明日を生きて行くために。自分をごまかしてでも生きて行くために。
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