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その⑧交渉
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「あ……はい。ちょうど始まりそうなので」そう言って見上げると、何やら見知った顔のような気がしてドキッとした。
が、知り合いなどではなく、テレビで見た顔だったのだ。
「あの、俳優の……?」佐藤俊哉さん、と言おうとして遮られた。
「良く似てるって言われて迷惑してるんだ」
愛海の頭の中にこの間、このパーティーの事を話してきた時の雅美の声が聞こえてきた。
「会場内ではその人の名前とか個人情報の詮索はなしだよ」
しまった、ミスっちゃったと愛海は思い、そして、薄暗がりの中でもう一度相手の顔を見て、確かに似ているけれど違う人かも、と思い始めた。妙に疲れてやつれた顔をしている。テレビの中の佐藤俊哉はもっと晴れやかな顔だった。それに俳優の佐藤には三年前に結婚した二つ年上の相沢雅という愛妻がいた。蘭ちゃんという二歳になる娘もいて、イケメン子煩悩パパとしてもマスコミに騒がれていた。
―――こんなところにくるわけがない。
愛海はそう思った。
そして、そんな風に佐藤俊哉の情報をよく知っているのも、愛海が相沢雅に似ていると言われることがあるからでもあった。顔だけでなく、自分の就活ではマイナスポイントになったであろう、ショーモデル出身の相沢雅とほぼ同じほどもある高身長や、笑った顔やしぐさなどの雰囲気も近いと言われていた。
ぼんやりとそんなことを考えていた愛海に佐藤俊哉に似た男が言った。
「競り、出ないでもらえるかな。次は僕ってことで」
が、知り合いなどではなく、テレビで見た顔だったのだ。
「あの、俳優の……?」佐藤俊哉さん、と言おうとして遮られた。
「良く似てるって言われて迷惑してるんだ」
愛海の頭の中にこの間、このパーティーの事を話してきた時の雅美の声が聞こえてきた。
「会場内ではその人の名前とか個人情報の詮索はなしだよ」
しまった、ミスっちゃったと愛海は思い、そして、薄暗がりの中でもう一度相手の顔を見て、確かに似ているけれど違う人かも、と思い始めた。妙に疲れてやつれた顔をしている。テレビの中の佐藤俊哉はもっと晴れやかな顔だった。それに俳優の佐藤には三年前に結婚した二つ年上の相沢雅という愛妻がいた。蘭ちゃんという二歳になる娘もいて、イケメン子煩悩パパとしてもマスコミに騒がれていた。
―――こんなところにくるわけがない。
愛海はそう思った。
そして、そんな風に佐藤俊哉の情報をよく知っているのも、愛海が相沢雅に似ていると言われることがあるからでもあった。顔だけでなく、自分の就活ではマイナスポイントになったであろう、ショーモデル出身の相沢雅とほぼ同じほどもある高身長や、笑った顔やしぐさなどの雰囲気も近いと言われていた。
ぼんやりとそんなことを考えていた愛海に佐藤俊哉に似た男が言った。
「競り、出ないでもらえるかな。次は僕ってことで」
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