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その②きっかけ
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愛海が学生時代の友人雅美と久しぶりに会ったのは、およそ二カ月前の事だった。
愛海と雅美は同じ女子大でアナウンス部に所属し、女子アナを目指し、競い合った仲だった。
愛海はテレビ局の最終面接まで進んだが、夢はそこで終わりだった。不合格通知を受け取ったときは泣いた。
が、理由はなんとなくわかっていた。身長が高すぎて、横に並んだ時に自分だけ浮いてしまうのだ。小さなテレビ画面の中で働く者には不適格だということだ。
今は幼少時から続けたピアノの経験を生かしてスタジオに勤務し、ミュージシャンのバックで演奏したり、アレンジをしたり、ライブ企画を設定したりと言った仕事にかかわっていた。
雅美は運よくテレビ局に入社したが、社内の審査で、『声がマイクを通すとよくない』とアナウンス部には配属されなかった。
二人はとも夢破れた形となり、それゆえにいまだに交流が続いているのかもしれなかった。
雅美は、その美貌でテレビ局の受付に勤務し、セレブ達とのかかわりも持っていた。
そんな雅美から、ある話を聞いたのだった。
「競り市?」
「そう」
雅美はワイングラスを片手に返事をした。
「セレブたちの集まりでそういうものが流行っているんだって。ライブハウス会場みたいなところを借り切って昔の奴隷市場みたいに、舞台の上に女を並べて金額をつけて競りにかけるんだって。そしてその会場内で体験もするの。……え?体験って何って……。そうねえ、この場合、体の試験ってことかしら?
会員制で、紹介があった人間だけが参加可能なの。もちろん審査もあるよ。男性は全員セレブ。年収も審査されるし品行も方正であること。反社の人間なんて入り込みようがない。女性はとにかく美人で品があって、知性もそこそこあること。それから女性の方は年齢制限もあって20代から30代前半まで」
愛海と違い、雅美は交流グレードが高い分、愛海の驚くような情報を持っていることもあった。
「そんなの……ただの売買春じゃない」思わず愛海は言った「しかも乱交」が雅美は笑い
「マッチングパーティーだよ」と言った。
「マッチングパーティー?」
「そう、安心、健全なお試しパーティー」
「だって、分からないじゃない服の上からじゃ。健康な人間かどうか。見えないところに注射針の後のあるやつだったらどうするの?体が……あっちが合わなかったら? 結婚してからそんなことがわかったら? ううん、それ以前に密室で二人っきりになってからそういう相手だって分かったら?」
「セレブは名誉なんかもあるから、そういう変なのにはめられたら取り返しがつかないでしょう?」
「雅美は参加したの?」
「まさか。だって私には決まった相手がいるもの。愛海だってそうでしょう。孝文さんと一緒になりたいんだよね」
雅美はワイングラスを傾け、中身を飲み干した。
「参加する男女比があまりにも釣り合わないと困るから、女性で該当する人がいたら紹介してって言われてるだけ。愛海なら絶対審査に合格だから、一応教えただけ」
そう言って雅美は連絡先を紙に書いて見せた。
「メモしたりなんかの記録は禁止なの。今見て覚えて」
愛海は言われるまま目の前のアドレスを暗記した。
雅美は紙を小さく千切るとコップの水に入れた。水溶性らしいインクは溶けて消えていった。
愛海と雅美は同じ女子大でアナウンス部に所属し、女子アナを目指し、競い合った仲だった。
愛海はテレビ局の最終面接まで進んだが、夢はそこで終わりだった。不合格通知を受け取ったときは泣いた。
が、理由はなんとなくわかっていた。身長が高すぎて、横に並んだ時に自分だけ浮いてしまうのだ。小さなテレビ画面の中で働く者には不適格だということだ。
今は幼少時から続けたピアノの経験を生かしてスタジオに勤務し、ミュージシャンのバックで演奏したり、アレンジをしたり、ライブ企画を設定したりと言った仕事にかかわっていた。
雅美は運よくテレビ局に入社したが、社内の審査で、『声がマイクを通すとよくない』とアナウンス部には配属されなかった。
二人はとも夢破れた形となり、それゆえにいまだに交流が続いているのかもしれなかった。
雅美は、その美貌でテレビ局の受付に勤務し、セレブ達とのかかわりも持っていた。
そんな雅美から、ある話を聞いたのだった。
「競り市?」
「そう」
雅美はワイングラスを片手に返事をした。
「セレブたちの集まりでそういうものが流行っているんだって。ライブハウス会場みたいなところを借り切って昔の奴隷市場みたいに、舞台の上に女を並べて金額をつけて競りにかけるんだって。そしてその会場内で体験もするの。……え?体験って何って……。そうねえ、この場合、体の試験ってことかしら?
会員制で、紹介があった人間だけが参加可能なの。もちろん審査もあるよ。男性は全員セレブ。年収も審査されるし品行も方正であること。反社の人間なんて入り込みようがない。女性はとにかく美人で品があって、知性もそこそこあること。それから女性の方は年齢制限もあって20代から30代前半まで」
愛海と違い、雅美は交流グレードが高い分、愛海の驚くような情報を持っていることもあった。
「そんなの……ただの売買春じゃない」思わず愛海は言った「しかも乱交」が雅美は笑い
「マッチングパーティーだよ」と言った。
「マッチングパーティー?」
「そう、安心、健全なお試しパーティー」
「だって、分からないじゃない服の上からじゃ。健康な人間かどうか。見えないところに注射針の後のあるやつだったらどうするの?体が……あっちが合わなかったら? 結婚してからそんなことがわかったら? ううん、それ以前に密室で二人っきりになってからそういう相手だって分かったら?」
「セレブは名誉なんかもあるから、そういう変なのにはめられたら取り返しがつかないでしょう?」
「雅美は参加したの?」
「まさか。だって私には決まった相手がいるもの。愛海だってそうでしょう。孝文さんと一緒になりたいんだよね」
雅美はワイングラスを傾け、中身を飲み干した。
「参加する男女比があまりにも釣り合わないと困るから、女性で該当する人がいたら紹介してって言われてるだけ。愛海なら絶対審査に合格だから、一応教えただけ」
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「メモしたりなんかの記録は禁止なの。今見て覚えて」
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