2 / 21
その②きっかけ
しおりを挟む
愛海が学生時代の友人雅美と久しぶりに会ったのは、およそ二カ月前の事だった。
愛海と雅美は同じ女子大でアナウンス部に所属し、女子アナを目指し、競い合った仲だった。
愛海はテレビ局の最終面接まで進んだが、夢はそこで終わりだった。不合格通知を受け取ったときは泣いた。
が、理由はなんとなくわかっていた。身長が高すぎて、横に並んだ時に自分だけ浮いてしまうのだ。小さなテレビ画面の中で働く者には不適格だということだ。
今は幼少時から続けたピアノの経験を生かしてスタジオに勤務し、ミュージシャンのバックで演奏したり、アレンジをしたり、ライブ企画を設定したりと言った仕事にかかわっていた。
雅美は運よくテレビ局に入社したが、社内の審査で、『声がマイクを通すとよくない』とアナウンス部には配属されなかった。
二人はとも夢破れた形となり、それゆえにいまだに交流が続いているのかもしれなかった。
雅美は、その美貌でテレビ局の受付に勤務し、セレブ達とのかかわりも持っていた。
そんな雅美から、ある話を聞いたのだった。
「競り市?」
「そう」
雅美はワイングラスを片手に返事をした。
「セレブたちの集まりでそういうものが流行っているんだって。ライブハウス会場みたいなところを借り切って昔の奴隷市場みたいに、舞台の上に女を並べて金額をつけて競りにかけるんだって。そしてその会場内で体験もするの。……え?体験って何って……。そうねえ、この場合、体の試験ってことかしら?
会員制で、紹介があった人間だけが参加可能なの。もちろん審査もあるよ。男性は全員セレブ。年収も審査されるし品行も方正であること。反社の人間なんて入り込みようがない。女性はとにかく美人で品があって、知性もそこそこあること。それから女性の方は年齢制限もあって20代から30代前半まで」
愛海と違い、雅美は交流グレードが高い分、愛海の驚くような情報を持っていることもあった。
「そんなの……ただの売買春じゃない」思わず愛海は言った「しかも乱交」が雅美は笑い
「マッチングパーティーだよ」と言った。
「マッチングパーティー?」
「そう、安心、健全なお試しパーティー」
「だって、分からないじゃない服の上からじゃ。健康な人間かどうか。見えないところに注射針の後のあるやつだったらどうするの?体が……あっちが合わなかったら? 結婚してからそんなことがわかったら? ううん、それ以前に密室で二人っきりになってからそういう相手だって分かったら?」
「セレブは名誉なんかもあるから、そういう変なのにはめられたら取り返しがつかないでしょう?」
「雅美は参加したの?」
「まさか。だって私には決まった相手がいるもの。愛海だってそうでしょう。孝文さんと一緒になりたいんだよね」
雅美はワイングラスを傾け、中身を飲み干した。
「参加する男女比があまりにも釣り合わないと困るから、女性で該当する人がいたら紹介してって言われてるだけ。愛海なら絶対審査に合格だから、一応教えただけ」
そう言って雅美は連絡先を紙に書いて見せた。
「メモしたりなんかの記録は禁止なの。今見て覚えて」
愛海は言われるまま目の前のアドレスを暗記した。
雅美は紙を小さく千切るとコップの水に入れた。水溶性らしいインクは溶けて消えていった。
愛海と雅美は同じ女子大でアナウンス部に所属し、女子アナを目指し、競い合った仲だった。
愛海はテレビ局の最終面接まで進んだが、夢はそこで終わりだった。不合格通知を受け取ったときは泣いた。
が、理由はなんとなくわかっていた。身長が高すぎて、横に並んだ時に自分だけ浮いてしまうのだ。小さなテレビ画面の中で働く者には不適格だということだ。
今は幼少時から続けたピアノの経験を生かしてスタジオに勤務し、ミュージシャンのバックで演奏したり、アレンジをしたり、ライブ企画を設定したりと言った仕事にかかわっていた。
雅美は運よくテレビ局に入社したが、社内の審査で、『声がマイクを通すとよくない』とアナウンス部には配属されなかった。
二人はとも夢破れた形となり、それゆえにいまだに交流が続いているのかもしれなかった。
雅美は、その美貌でテレビ局の受付に勤務し、セレブ達とのかかわりも持っていた。
そんな雅美から、ある話を聞いたのだった。
「競り市?」
「そう」
雅美はワイングラスを片手に返事をした。
「セレブたちの集まりでそういうものが流行っているんだって。ライブハウス会場みたいなところを借り切って昔の奴隷市場みたいに、舞台の上に女を並べて金額をつけて競りにかけるんだって。そしてその会場内で体験もするの。……え?体験って何って……。そうねえ、この場合、体の試験ってことかしら?
会員制で、紹介があった人間だけが参加可能なの。もちろん審査もあるよ。男性は全員セレブ。年収も審査されるし品行も方正であること。反社の人間なんて入り込みようがない。女性はとにかく美人で品があって、知性もそこそこあること。それから女性の方は年齢制限もあって20代から30代前半まで」
愛海と違い、雅美は交流グレードが高い分、愛海の驚くような情報を持っていることもあった。
「そんなの……ただの売買春じゃない」思わず愛海は言った「しかも乱交」が雅美は笑い
「マッチングパーティーだよ」と言った。
「マッチングパーティー?」
「そう、安心、健全なお試しパーティー」
「だって、分からないじゃない服の上からじゃ。健康な人間かどうか。見えないところに注射針の後のあるやつだったらどうするの?体が……あっちが合わなかったら? 結婚してからそんなことがわかったら? ううん、それ以前に密室で二人っきりになってからそういう相手だって分かったら?」
「セレブは名誉なんかもあるから、そういう変なのにはめられたら取り返しがつかないでしょう?」
「雅美は参加したの?」
「まさか。だって私には決まった相手がいるもの。愛海だってそうでしょう。孝文さんと一緒になりたいんだよね」
雅美はワイングラスを傾け、中身を飲み干した。
「参加する男女比があまりにも釣り合わないと困るから、女性で該当する人がいたら紹介してって言われてるだけ。愛海なら絶対審査に合格だから、一応教えただけ」
そう言って雅美は連絡先を紙に書いて見せた。
「メモしたりなんかの記録は禁止なの。今見て覚えて」
愛海は言われるまま目の前のアドレスを暗記した。
雅美は紙を小さく千切るとコップの水に入れた。水溶性らしいインクは溶けて消えていった。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
クリスマスに咲くバラ
篠原怜
恋愛
亜美は29歳。クリスマスを目前にしてファッションモデルの仕事を引退した。亜美には貴大という婚約者がいるのだが今のところ結婚はの予定はない。彼は実業家の御曹司で、年下だけど頼りになる人。だけど亜美には結婚に踏み切れない複雑な事情があって……。■2012年に著者のサイトで公開したものの再掲です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる