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【番外編】セシルとオーウェン①
しおりを挟む長い銀の髪の毛は絹のように柔らかい。
「本当にお美しいですわ、奥様」
「ありがとう、セシルが毎日整えてくれるからよ」
鏡越しにリーゼが微笑む。
リーゼは本当に美しい。
元々綺麗だったけど、ギルバートが王になってからますます美しさに磨きがかかっている気がする。
内側から発光する美しさというのだろうか?
前は儚気な印象で、それはそれで綺麗だったけど、最近は幸せそうな雰囲気がさらに彼女を輝かせている。
巷では風の精霊と言われているようだが、たまに本当にそうなのではないかと思う。
人間離れした美しさと神々しさ、そして可憐さが彼女にはある。
「いいなぁ」
思わずぽつりとつぶやいてしまって、慌てて口を押さえる。
リーゼが不思議そうな顔で振り返る。
「いえ!なんでもありません!失礼します」
いけない、仕事中なのに。
廊下に飛び出し、反省する。
下を向いていると声をかけられた。
「お、おつかれ!」
「オーウェン…おつかれ」
そこには幼馴染で恋人のオーウェンが立っていた。
「何?どうかした?」
「なんでもない」
心配そうに顔を覗き込もうとしたオーウェンの視線を避け、侍女室に向かう。
はぁ。やってしまった。
つい心の声が。
羨ましいのはリーゼの綺麗さももちろんだが、その幸せそうな様子である。
ギルバートが一目惚れして連れ帰ってきた奥様のはずだったが、王になってからのギルバートは以前に増してリーゼに激甘だ。
ささいなことでも、何かあればリーゼの元に駆けつけるし、毎日リーゼには綺麗だと囁いているようだ。
しかもリーゼは必死に隠しているが、着替えを手伝う際にちらりと見ると、毎日のように体のあちらこちらにキスマークを見かける。
ギルバートは悪魔の子と呼ばれていたのが嘘のように今は優しい雰囲気を醸し出している。
でも特別優しいのはリーゼに対してだけ。
部下には前より優しくなったが、それ以外の女性には相変わらず冷たい。
しかし、その特別感が羨ましかった。
恋人のオーウェンは昔から優しい。
でも誰に対しても優しくて平等なのだ。
それがひどくもどかしい。
私ってオーウェンにとって特別?
たまたま幼馴染で昔から一緒にいて、私が告白したから付き合ってくれているだけじゃない?
ギルバートが王になって情勢は落ち着いたし、年齢的にもそろそろ結婚を考えてもよさそうだが。
今のところオーウェンとそういう話にはなっていない。
お付き合いだけではなく、結婚まで自分から迫ったら重いだろうか。
いや、そもそも、もしそれでオッケーされても、嬉しいかな?
オーウェンが自分から私と結婚したいと思ってくれなければ、意味はない。
ため息をつく。
結局私は自分に自信がないのだ。
リーゼほど綺麗だったならば、自信も持てたのだろうか。
侍女室の鏡に映った自分を眺める。
仕事が楽なので短く切り揃えた平凡な茶髪。
顔も目は大きい方だけど、鼻が低い。
お世辞にも美人顔ではない。
僻みっぽくなっていることに気付き、プルプルと頭を振る。卑屈な思考を追い出した。
自分の唯一誇れるところは明るいところなのだから。
鏡を見ながら、自分の頬をパチンと叩く。
「よーし!仕事仕事!」
気合を入れて、仕事に戻った。
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