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#02: Fresh men !!
Fresh men !!✤
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禮のマンション。
「ハッちゃん、ハッちゃん」
「…………」
「ハッちゃん起きて。もう時間やよ」
禮はベッドの上で睡眠中の近江の身体を両手で大きく揺さ振った。しかし、近江はなかなか目を覚まさない。
禮はすでに制服に着替えを済ませていた。ベッド脇に置いたテーブルの上の時計を気にしつつ、近江の身体をやや乱暴に揺さ振る。
「ハッちゃん、ハッちゃんて」
近江は瞼を閉じたまま不快そうに眉間に皺を寄せた。う……、と呻き声を上げたが一向に体を起こそうとしない。
時間の猶予はもう然程残されていないのだが、さてどうしたものか。禮が考えこんでいると、不意にガシッと腕を捕まえられた。そのままベッドのほうへ引っ張られたので、禮はベッドの上に腰かけた。
「う……禮……か?」
「ハッちゃん寝惚けてる? ココ、ウチの部屋やよ。昨日泊まったの覚えてへんの」
禮は近江の寝顔を覗きこんでクスッと笑った。いつも無表情の近江が半分寝ぼけている様が可愛かった。
「ガッコ遅刻してしまうよ。早よ起きて」
「ええ……遅刻する」
そう言って近江は目を閉じてしまった。
禮は惘れて溜息を吐いた。禮にとって遅刻とは仕方なくしてしまうものであって堂々と故意でやらかすものではない。
「ほなウチは行ってくるね。朝ゴハンは台所か冷蔵庫にあるヤツ適当に食べてええよ。家のカギ、テーブルの上置いとくから出てくるときはちゃんと閉めてね」
「オウ……」
「ガスと戸締まりだけはしっかりお願いやよー」
近江は聞いているのかいないのか、分かっているのかいないのか、何とも曖昧な返事。禮はくれぐれもと念を押すように近江の耳元で言った。
ベッドから離れようとしたところで近江の手がまだ自分の腕を掴んだままであることを思い出し、今一度ベッドの上に横たわる巨体に目を向けた。
「ハッちゃん。手ぇ放して。ウチ家出られへん」
「禮……」
「何?」
「……俺も、禮と同じがええ」
近江は寝言と間違えそうなくらい小さな声で呟いた。
「昨日、言いそびれた……」
やはり寝惚けている。寝惚けていなければ実に素直にこのようなことを言うなんて近江らしくない。もしかして、らしくないことをしていると自覚があるからバツが悪くて寝惚けている振りをしているのかな。
禮は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満足そうにニコッと笑った。
「ありがと」
禮は近江の頬にキスをした。
それから、近江に見えていないと分かっているが、ゴキゲンで手を振って部屋から出て行った。
§§§§§
私立荒菱館高等学校・一年B組教室。
本日一年生の四限目は、学活。
新入生同士の交流を深めることを目的とした授業であるが、生徒がみな、友好的であるかというと必ずしもそうとは限らない。毎年、いずれかの教室で必ずといってよいほど騒動が起きる。担任教諭にとってはひたすら迷惑な慣例のひとつだ。
しかしながら、一年B組はそのような気配はまだ一切見せていなかった。その理由は、早くも学校随一の美少女と目される女子生徒に全員の意識が集中しているからだ。
教壇に立つ担当教諭は、クラス中の男子生徒たちから発せられる秋波を察知して長い溜息を吐いた。
(去年はダントツの問題児近江のクラスを受け持ち、今年は女子生徒のいるクラスだもんな~。女子のいるクラスなんかゼッタイなんか起こる決まってんじゃん、問題の宝庫じゃん。もしかして俺イジメられてんのかな~。頼むから何も起きないでくれ~~)
如何にその生徒自身が品行方正だろうと、荒菱館高校に於いては女子生徒というだけで或る種の問題児だ。問題のタネだ。禮本人は楽しい学園生活を満喫したいと心から思っているのだけれど。
「それじゃあ、学活の時間は好き勝手に自己紹介でもして仲良くするよーに。ボクは職員室にいるから何かあったら呼んでください。あ、極力何もないように過ごしなさいよ」
教師はそう言い残し、そそくさと教室から出ていった。
荒菱館高校では喧嘩など日常茶飯事。生徒同士の小競り合いに巻きこまれて怪我でもこさえるなんて、とんだ貧乏クジだ。無限の体力を持つ生徒たちに逐一付き合っていたのでは身が持たない。大人はとっとと職員室に引き隠ってしまうが吉だ。
ねえねえ、と禮の前の席の斎藤川原君がクルッと振り返った。
「覚えてくれた? 俺の名前」
「うん、覚えたよ。サイトーガワラシノグ君やんね」
「そうそう、俺シノグ君♪ なァ、禮ちゃんて呼んでええ?」
「ええよ」
フレンドリーな斎藤川原は、先陣を切って早々に愛称で呼ぶことを許され、にんまりと得意気な顔になった。
「なー。禮ちゃん、趣味ってある? 最近何かおもろいモンある?」
「急に趣味の話?」
「いやぁー、仲良くなるための初歩的な質問、みたいな? ほら、センセーも仲良うせえ言うてたやん」
「趣味かー。最近何が好きかなあ。う~ん……」
禮が天井を仰いで考えこむとほぼ同時に、ガタッ、ガタガタッと教室の幾つかの席が動いた音がした。すると、あれよあれよと言う間に数人の男子生徒たちが禮を取り囲んだ。
「オイ。アイツらってもしかして……」
「あ。見たことある。アレ士幌……と由仁と、確か遠別」
「ゲ。マジでか。アイツら三人揃って荒菱館受かったのかよ~~」
「あの子とは仲良くしたいけど、あんな連中と張り合うのはカンベンだな」
「うわっ、ほかにも見たコトあるヤツいるぜ。このクラス一体どうなってんだよ」
禮を取り囲むのは、誰も彼も中学では喧嘩が強いと名が通っていた有名人ばかり。近づきがたいクラスメイトたちは、彼らを遠巻きに観察することにした。
禮は椅子に座ったまま彼らの顔を見上げてキョトンとした。無論、世情に疎い禮は、彼らが何者であるか知る由もない。
「ドーモなァ。俺、士幌虎徹言うねや。同じクラスになったのも何かの縁やで、これからぎょうさん仲良うしてなー♪」
髪の毛をツンツンに逆立てた男が、禮に向かって愛嬌のある笑顔を向けた。人懐っこい笑みだから禮もつられてヘラッと愛想笑いを返した。
「俺は大鰐や。お前、名前何ていうんや」
今度はその男の反対側から声をかけられた。吊り目がちで目付きの鋭い黒髪の少年。
「オイ。お前でしゃばんなよ。いま虎徹が話してんだろ」
士幌虎徹の隣にいる長髪の男が、大鰐の肩を掴んだ。
「何や」
「でしゃばんなって言ってんだ」
「邪魔すんなロン毛ェ……」
ふたりは口を一直線に噤んで互いに一歩ずつ近づき、至近距離で相手を睨みつける。その場の空気が一気にピリピリと張り詰めた。
「なぁなぁ、中学ドコやったん? ちゅうかキミめちゃめちゃカワエエなー💕」
士幌は、そのふたりを無視して禮に話しかけた。
「ちょっと待った、虎徹くん」
じゃっかん小柄な少年が、士幌を押し退けて前に出てきた。禮に向かって爽やかにニカッと白い歯を見せた。
「俺、由仁大樹。ヨロシクな」
士幌は由仁大樹の肩を掴み、自分の後ろへとグイッと押し退けた。
「退いてぇ大樹。いま俺が話してんねん」
「俺も話してるやん。今まさに話してる最中やん」
「大樹が一方的に喋っとるだけでこの子は何も返事してへんやん。大樹の一方通行やん。キャッチボールちゃうのは話してるとは言いマセンー。独り言デスー」
「虎徹くんかて返事されてへんやろ!」
「俺は笑顔返されたっちゅうねん!」
禮は男子高生の弾丸のような勢いに圧倒されてパチパチとまばたきをした。
(なんや賑やかな人らやなぁ。ウチずっと女子校やったさかいよお分からんけど、これが男のコのフツー? ハッちゃんも鶴ちゃんもこんな感じちゃうけど……)
「そんなアホ共の相手せんでええで」
またひとつ声が増え、士幌と由仁は弾かれたように顔を上げた。
「アホやとッ……⁉」
禮もふたりに吊られて顔を引き上げた。背筋がピンと伸びた厳つい強面の男が立っていた。
禮は男の顔を見てまた目をパチクリさせる。
(ちょおっとだけハッちゃんに似てる)
「幸島や。ヨロシクな」
彼はほかの男共は一切相手にせず、禮にだけ向けて言った。
「あっ。えっと……ウチ相模禮、デス。ヨロシク」
禮の表情が自然と綻んだのは、彼の背格好や雰囲気が近江によく似ていたから。そのようなことで簡単に気を許してしまう、意外と現金な性格だった。
「相模禮、か……。聞いたことあれへんな。中学はどこやった?」
彼は禮の笑顔に気を良くして、自己紹介ついでに話を続けた。
「ウチ、中学校まではずっと石楠」
「石楠て、石楠女学院か?」
禮の答を聞き、幸島の背後から斎藤川原がひょこっと顔を出した。幸島が机に腰かけているので大変邪魔だが、どう考えても自分より腕っ節が強そうなのでハッキリと文句は言えない。
「石楠言うたらかなりなお嬢様やな」
幸島はフッと笑いながら言った。
「石楠のお嬢ッ⁉」
士幌に由仁、大鰐とその相手の長髪の彼まで啀み合うのを已めて、全員同時に禮に詰め寄った。
「うわ~! 超絶御嬢様やんッ」
「ほんまモンのお嬢なんて俺初めて見るわ~✨」
「石楠なんてガチかよ~ッ」
「ちょ……何でそんなヤツが荒菱館に」
「カ、カレシは! カレシいてるッ?」
「訊くの早ェーよ」
禮の机に齧りつくように前のめりになって問い詰めた由仁の頭を、遠別脩一がパーンッと叩いた。
唐突に彼氏の有無を問われた禮は、驚いて咄嗟に口篭もってしまった。禮が頬を染めて確答しないのをよいことに、全員が自分に都合良く「いない」と解した。
「じゃ、じゃあ、好きなタイプ訊いてもええッ?」
由仁から続け様に質問され、禮はまた「えーと」と呟きながら天井を仰ぎ見た。
「好きなタイプ……えーと……」
好きなタイプと言われても、盲目的に恋する乙女の禮にはただのひとりしか思い当たらない。自分でも恥ずかしいと思いながらも、脳内に近江を思い浮かべて口を開くしかなかった。
「背が高くて……」
由仁と大鰐はガクッと落胆した。大鰐の身長は170センチに満たず長身とは言えない。由仁に至っては禮より背が低いくらいだ。
「筋肉質で、力持ちで、正直で、強くて」
全員、自信が有るとばかりにニヤッと笑った。みな喧嘩で少しは名が通った有名人。ここぞとばかりに得意気だ。
「いっつも眉間にシワ寄せとって、無口で無愛想で滅多に笑わへん人……かなあ」
禮は理想のタイプを述べ終わり、気恥ずかしそうにえへへとはにかんだ。
対照的に、彼らは不思議そうに眉をひん曲げた。
(……???)
「……滅多に笑わない人が、良いの?」
遠別が確認の意味で問い返すと禮はコクンと頷いた。
士幌と由仁はクルッと禮に背中を向けた。
「どうする? 滅多に笑わん男がええて」
「虎徹くん、生まれついてのニヤケ面やもんな」
「やかましい」
スパンッ、と士幌は由仁の頭を叩いた。
あいてて……、と由仁は自分の後頭部を摩ったあと、うーん、と腕組みをした。
「何や変わった子やな。女のコはフツーあんなんタイプ言わんやろ」
「そやなー。それにしてもそんなヤツどっかで見たトキあるよな無いよな……」
士幌と由仁は、ふたり並んで考えこんだ。
優に数十秒ののち、士幌はハッとして顔を上げた。
「あーーーッ‼」
士幌が突然奇声を発し、隣で背中を丸める由仁はビクッとした。
士幌はバッと勢いよく幸島を振り向いた。幸島は「何やねん」と士幌の顔を見返した。士幌はビシィッと幸島を指差した。
「お前かーッ!」
何を叫ばれたか分からない幸島は眉を顰めた。
すぐに由仁も士幌と同じように「あーッ!」と大声を上げて幸島を指差した。
遠別は騒々しいふたりに非難の目を向け、決まりが悪そうにチッと舌打ちした。
「アイツらはしゃぎやがって……」
「ワレの連れ、なかなかおもろいな。見せ物に丁度ええやん」
それは明らかに侮蔑の意味だった。遠別はムッとして大鰐の肩を掴んだ。
「何だと? も一遍言ってみろよ」
「何マジなっとんねん。ホメ言葉やで? たーぶーん」
大鰐は遠別の手を振り払いもせずに、またフフンッと鼻で笑った。それがまた遠別の神経を逆撫でした。
「テメェぶっ殺……」
「脩一、やめとけや。せっかく女のコと仲良うなれるチャンスやのに」
由仁の一声が遠別を制止した。
遠別はチッと舌打ちして投げ捨てるように大鰐から手を放した。
「ヘタレが」
「こっのヤロー……」
遠別は今にも噛み付きそうな目付きで大鰐を睨んだ。殴りかかりそうなその肩を、今度は士幌が捕まえて制止した。
大鰐は遠別にしっかりと視線を合わせて挑発的にクックッと笑った。
「何や、ちぃっと聞いたことある名前やからどんなモンかと思ったら、ケンカのひとつもでけんビビリかいな。期待して損したわ」
「テメーはッ……」
ギギギギッ。
遠別が無為に挑発する大鰐に対して口を開こうとした瞬間、禮が椅子を引いて立ち上がった。先ほどは彼氏の話題になっただけで頬を染めたくせに、その場の全員の視線が注がれるなか、毅然と立った。
禮は真っ直ぐに大鰐を見据えた。
「アホ」
「んなッ……⁉」
意表を突かれた大鰐の表情が崩れた。
「何やとォッ⁉ この女……!」
「高校生にもなってやたらめったら人ォ挑発してケンカしようとして、アホやん。アホでお子様やん。髪長いお兄ちゃんや爆発したお兄ちゃんのほうがアンタなんかよりよっぽど人間でけてる」
(爆発? ソレ俺のコトかー)
禮に悪意がないことは分かるのだが、士幌は堪らず苦笑を漏らした。
面と向かって罵倒された大鰐の眉間が、ピクッピクッと痙攣した。
「誰に向かってンなナメた口きいとるか分かっとんかコラァ」
「知れへんよ」
大鰐は禮を睨みつけるが、禮は一歩も退かなかった。微塵も怯まなかった。
「アンタがなんぼ有名でも、ウチはアンタのコトなんて知らん」
「ナメくさって!」
ガタガタッ。――激昂した大鰐は、禮に殴りかかった。
禮は後方に数歩スッと下がった。直情的な大鰐は狙い通り禮に付いてきてくれた。自分の有利な地点に陣取った禮は、悠然と大鰐を待ち構えた。
「黙らしたるァッ!」
大鰐は怒声を張り上げて禮に迫った。
禮は身構えることもなくただ大鰐の目を真っ直ぐに見詰め続けた。同じように大鰐が見詰める禮の瞳は、気味が悪いほど静まり返っていた。
(コイツ、女のクセに全然ビビれへんやんけ!)
ヒュオッ、と風を切る音。考え事が過ぎ気が逸れた刹那、大鰐の視界の外で何かが動いた。
ガキィンッ!
禮は大鰐の顎を真下から高く蹴り上げた。
「なッ⁉ ガハッ……!」
天頂が激しく上下に揺さぶられた大鰐は、天地の方向を見失った。足が床に着いているのか宙に浮いているのかも分からずに、ただ本能的に闇雲に重力を探そうとするが捕捉できない。
次にやってくるのは暗転。急に目の前が真っ暗になり、途端に一度は失った重力が全身にのし掛かった。
どさん。――大鰐は床に崩れ落ちた。
禮は小さな息をひとつ吐き、床に俯せに這い蹲る大鰐を見下ろす。
禮の所業に、その場にいた全員が驚愕して声を失した。中学時代から喧嘩で鳴らした男を、見るからに可憐な少女がいとも簡単に一蹴した。目の前の光景をにわかには信じられなかった。
「スゴ……」
遠別が感嘆を零した次の瞬間、禮はハッと我に返ったように突然頭を抱えた。
「あかーん💦 やってしもたーっ💦💦」
禮はクルリと振り返って慌てて幸島の学生服を掴んだ。
「お願い! このコト先生には黙っといて~っ💦💦」
四限目学活の終了時刻。
担任教諭はのこのこと姿を現し、すこぶる安堵した様子でへらへらと笑った。
「いやぁ~今年の新入生は優秀だなー。モメ事を起こさず済んだのうちのクラスだけじゃないか?」
ギクッ! ――禮はビクッとした。
身を低くして前の席の斎藤川原君の陰に隠れようとする。
「アレ? あそこの席、今日休みだったっけ?」
担任教諭は大鰐の席を指差し、はてと首を傾げた。
「ま、いっか。どうせサボりだろ」
さしてこだわることなく無人の席から目線を外した。
こうして一年B組の学活は、クラスメイトの協力のもと、何事も起きなかったこととなって無事終了した。そして禮は、クラス名の記憶に色濃く残る鮮烈デビューを果たしたのだった。
「ハッちゃん、ハッちゃん」
「…………」
「ハッちゃん起きて。もう時間やよ」
禮はベッドの上で睡眠中の近江の身体を両手で大きく揺さ振った。しかし、近江はなかなか目を覚まさない。
禮はすでに制服に着替えを済ませていた。ベッド脇に置いたテーブルの上の時計を気にしつつ、近江の身体をやや乱暴に揺さ振る。
「ハッちゃん、ハッちゃんて」
近江は瞼を閉じたまま不快そうに眉間に皺を寄せた。う……、と呻き声を上げたが一向に体を起こそうとしない。
時間の猶予はもう然程残されていないのだが、さてどうしたものか。禮が考えこんでいると、不意にガシッと腕を捕まえられた。そのままベッドのほうへ引っ張られたので、禮はベッドの上に腰かけた。
「う……禮……か?」
「ハッちゃん寝惚けてる? ココ、ウチの部屋やよ。昨日泊まったの覚えてへんの」
禮は近江の寝顔を覗きこんでクスッと笑った。いつも無表情の近江が半分寝ぼけている様が可愛かった。
「ガッコ遅刻してしまうよ。早よ起きて」
「ええ……遅刻する」
そう言って近江は目を閉じてしまった。
禮は惘れて溜息を吐いた。禮にとって遅刻とは仕方なくしてしまうものであって堂々と故意でやらかすものではない。
「ほなウチは行ってくるね。朝ゴハンは台所か冷蔵庫にあるヤツ適当に食べてええよ。家のカギ、テーブルの上置いとくから出てくるときはちゃんと閉めてね」
「オウ……」
「ガスと戸締まりだけはしっかりお願いやよー」
近江は聞いているのかいないのか、分かっているのかいないのか、何とも曖昧な返事。禮はくれぐれもと念を押すように近江の耳元で言った。
ベッドから離れようとしたところで近江の手がまだ自分の腕を掴んだままであることを思い出し、今一度ベッドの上に横たわる巨体に目を向けた。
「ハッちゃん。手ぇ放して。ウチ家出られへん」
「禮……」
「何?」
「……俺も、禮と同じがええ」
近江は寝言と間違えそうなくらい小さな声で呟いた。
「昨日、言いそびれた……」
やはり寝惚けている。寝惚けていなければ実に素直にこのようなことを言うなんて近江らしくない。もしかして、らしくないことをしていると自覚があるからバツが悪くて寝惚けている振りをしているのかな。
禮は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに満足そうにニコッと笑った。
「ありがと」
禮は近江の頬にキスをした。
それから、近江に見えていないと分かっているが、ゴキゲンで手を振って部屋から出て行った。
§§§§§
私立荒菱館高等学校・一年B組教室。
本日一年生の四限目は、学活。
新入生同士の交流を深めることを目的とした授業であるが、生徒がみな、友好的であるかというと必ずしもそうとは限らない。毎年、いずれかの教室で必ずといってよいほど騒動が起きる。担任教諭にとってはひたすら迷惑な慣例のひとつだ。
しかしながら、一年B組はそのような気配はまだ一切見せていなかった。その理由は、早くも学校随一の美少女と目される女子生徒に全員の意識が集中しているからだ。
教壇に立つ担当教諭は、クラス中の男子生徒たちから発せられる秋波を察知して長い溜息を吐いた。
(去年はダントツの問題児近江のクラスを受け持ち、今年は女子生徒のいるクラスだもんな~。女子のいるクラスなんかゼッタイなんか起こる決まってんじゃん、問題の宝庫じゃん。もしかして俺イジメられてんのかな~。頼むから何も起きないでくれ~~)
如何にその生徒自身が品行方正だろうと、荒菱館高校に於いては女子生徒というだけで或る種の問題児だ。問題のタネだ。禮本人は楽しい学園生活を満喫したいと心から思っているのだけれど。
「それじゃあ、学活の時間は好き勝手に自己紹介でもして仲良くするよーに。ボクは職員室にいるから何かあったら呼んでください。あ、極力何もないように過ごしなさいよ」
教師はそう言い残し、そそくさと教室から出ていった。
荒菱館高校では喧嘩など日常茶飯事。生徒同士の小競り合いに巻きこまれて怪我でもこさえるなんて、とんだ貧乏クジだ。無限の体力を持つ生徒たちに逐一付き合っていたのでは身が持たない。大人はとっとと職員室に引き隠ってしまうが吉だ。
ねえねえ、と禮の前の席の斎藤川原君がクルッと振り返った。
「覚えてくれた? 俺の名前」
「うん、覚えたよ。サイトーガワラシノグ君やんね」
「そうそう、俺シノグ君♪ なァ、禮ちゃんて呼んでええ?」
「ええよ」
フレンドリーな斎藤川原は、先陣を切って早々に愛称で呼ぶことを許され、にんまりと得意気な顔になった。
「なー。禮ちゃん、趣味ってある? 最近何かおもろいモンある?」
「急に趣味の話?」
「いやぁー、仲良くなるための初歩的な質問、みたいな? ほら、センセーも仲良うせえ言うてたやん」
「趣味かー。最近何が好きかなあ。う~ん……」
禮が天井を仰いで考えこむとほぼ同時に、ガタッ、ガタガタッと教室の幾つかの席が動いた音がした。すると、あれよあれよと言う間に数人の男子生徒たちが禮を取り囲んだ。
「オイ。アイツらってもしかして……」
「あ。見たことある。アレ士幌……と由仁と、確か遠別」
「ゲ。マジでか。アイツら三人揃って荒菱館受かったのかよ~~」
「あの子とは仲良くしたいけど、あんな連中と張り合うのはカンベンだな」
「うわっ、ほかにも見たコトあるヤツいるぜ。このクラス一体どうなってんだよ」
禮を取り囲むのは、誰も彼も中学では喧嘩が強いと名が通っていた有名人ばかり。近づきがたいクラスメイトたちは、彼らを遠巻きに観察することにした。
禮は椅子に座ったまま彼らの顔を見上げてキョトンとした。無論、世情に疎い禮は、彼らが何者であるか知る由もない。
「ドーモなァ。俺、士幌虎徹言うねや。同じクラスになったのも何かの縁やで、これからぎょうさん仲良うしてなー♪」
髪の毛をツンツンに逆立てた男が、禮に向かって愛嬌のある笑顔を向けた。人懐っこい笑みだから禮もつられてヘラッと愛想笑いを返した。
「俺は大鰐や。お前、名前何ていうんや」
今度はその男の反対側から声をかけられた。吊り目がちで目付きの鋭い黒髪の少年。
「オイ。お前でしゃばんなよ。いま虎徹が話してんだろ」
士幌虎徹の隣にいる長髪の男が、大鰐の肩を掴んだ。
「何や」
「でしゃばんなって言ってんだ」
「邪魔すんなロン毛ェ……」
ふたりは口を一直線に噤んで互いに一歩ずつ近づき、至近距離で相手を睨みつける。その場の空気が一気にピリピリと張り詰めた。
「なぁなぁ、中学ドコやったん? ちゅうかキミめちゃめちゃカワエエなー💕」
士幌は、そのふたりを無視して禮に話しかけた。
「ちょっと待った、虎徹くん」
じゃっかん小柄な少年が、士幌を押し退けて前に出てきた。禮に向かって爽やかにニカッと白い歯を見せた。
「俺、由仁大樹。ヨロシクな」
士幌は由仁大樹の肩を掴み、自分の後ろへとグイッと押し退けた。
「退いてぇ大樹。いま俺が話してんねん」
「俺も話してるやん。今まさに話してる最中やん」
「大樹が一方的に喋っとるだけでこの子は何も返事してへんやん。大樹の一方通行やん。キャッチボールちゃうのは話してるとは言いマセンー。独り言デスー」
「虎徹くんかて返事されてへんやろ!」
「俺は笑顔返されたっちゅうねん!」
禮は男子高生の弾丸のような勢いに圧倒されてパチパチとまばたきをした。
(なんや賑やかな人らやなぁ。ウチずっと女子校やったさかいよお分からんけど、これが男のコのフツー? ハッちゃんも鶴ちゃんもこんな感じちゃうけど……)
「そんなアホ共の相手せんでええで」
またひとつ声が増え、士幌と由仁は弾かれたように顔を上げた。
「アホやとッ……⁉」
禮もふたりに吊られて顔を引き上げた。背筋がピンと伸びた厳つい強面の男が立っていた。
禮は男の顔を見てまた目をパチクリさせる。
(ちょおっとだけハッちゃんに似てる)
「幸島や。ヨロシクな」
彼はほかの男共は一切相手にせず、禮にだけ向けて言った。
「あっ。えっと……ウチ相模禮、デス。ヨロシク」
禮の表情が自然と綻んだのは、彼の背格好や雰囲気が近江によく似ていたから。そのようなことで簡単に気を許してしまう、意外と現金な性格だった。
「相模禮、か……。聞いたことあれへんな。中学はどこやった?」
彼は禮の笑顔に気を良くして、自己紹介ついでに話を続けた。
「ウチ、中学校まではずっと石楠」
「石楠て、石楠女学院か?」
禮の答を聞き、幸島の背後から斎藤川原がひょこっと顔を出した。幸島が机に腰かけているので大変邪魔だが、どう考えても自分より腕っ節が強そうなのでハッキリと文句は言えない。
「石楠言うたらかなりなお嬢様やな」
幸島はフッと笑いながら言った。
「石楠のお嬢ッ⁉」
士幌に由仁、大鰐とその相手の長髪の彼まで啀み合うのを已めて、全員同時に禮に詰め寄った。
「うわ~! 超絶御嬢様やんッ」
「ほんまモンのお嬢なんて俺初めて見るわ~✨」
「石楠なんてガチかよ~ッ」
「ちょ……何でそんなヤツが荒菱館に」
「カ、カレシは! カレシいてるッ?」
「訊くの早ェーよ」
禮の机に齧りつくように前のめりになって問い詰めた由仁の頭を、遠別脩一がパーンッと叩いた。
唐突に彼氏の有無を問われた禮は、驚いて咄嗟に口篭もってしまった。禮が頬を染めて確答しないのをよいことに、全員が自分に都合良く「いない」と解した。
「じゃ、じゃあ、好きなタイプ訊いてもええッ?」
由仁から続け様に質問され、禮はまた「えーと」と呟きながら天井を仰ぎ見た。
「好きなタイプ……えーと……」
好きなタイプと言われても、盲目的に恋する乙女の禮にはただのひとりしか思い当たらない。自分でも恥ずかしいと思いながらも、脳内に近江を思い浮かべて口を開くしかなかった。
「背が高くて……」
由仁と大鰐はガクッと落胆した。大鰐の身長は170センチに満たず長身とは言えない。由仁に至っては禮より背が低いくらいだ。
「筋肉質で、力持ちで、正直で、強くて」
全員、自信が有るとばかりにニヤッと笑った。みな喧嘩で少しは名が通った有名人。ここぞとばかりに得意気だ。
「いっつも眉間にシワ寄せとって、無口で無愛想で滅多に笑わへん人……かなあ」
禮は理想のタイプを述べ終わり、気恥ずかしそうにえへへとはにかんだ。
対照的に、彼らは不思議そうに眉をひん曲げた。
(……???)
「……滅多に笑わない人が、良いの?」
遠別が確認の意味で問い返すと禮はコクンと頷いた。
士幌と由仁はクルッと禮に背中を向けた。
「どうする? 滅多に笑わん男がええて」
「虎徹くん、生まれついてのニヤケ面やもんな」
「やかましい」
スパンッ、と士幌は由仁の頭を叩いた。
あいてて……、と由仁は自分の後頭部を摩ったあと、うーん、と腕組みをした。
「何や変わった子やな。女のコはフツーあんなんタイプ言わんやろ」
「そやなー。それにしてもそんなヤツどっかで見たトキあるよな無いよな……」
士幌と由仁は、ふたり並んで考えこんだ。
優に数十秒ののち、士幌はハッとして顔を上げた。
「あーーーッ‼」
士幌が突然奇声を発し、隣で背中を丸める由仁はビクッとした。
士幌はバッと勢いよく幸島を振り向いた。幸島は「何やねん」と士幌の顔を見返した。士幌はビシィッと幸島を指差した。
「お前かーッ!」
何を叫ばれたか分からない幸島は眉を顰めた。
すぐに由仁も士幌と同じように「あーッ!」と大声を上げて幸島を指差した。
遠別は騒々しいふたりに非難の目を向け、決まりが悪そうにチッと舌打ちした。
「アイツらはしゃぎやがって……」
「ワレの連れ、なかなかおもろいな。見せ物に丁度ええやん」
それは明らかに侮蔑の意味だった。遠別はムッとして大鰐の肩を掴んだ。
「何だと? も一遍言ってみろよ」
「何マジなっとんねん。ホメ言葉やで? たーぶーん」
大鰐は遠別の手を振り払いもせずに、またフフンッと鼻で笑った。それがまた遠別の神経を逆撫でした。
「テメェぶっ殺……」
「脩一、やめとけや。せっかく女のコと仲良うなれるチャンスやのに」
由仁の一声が遠別を制止した。
遠別はチッと舌打ちして投げ捨てるように大鰐から手を放した。
「ヘタレが」
「こっのヤロー……」
遠別は今にも噛み付きそうな目付きで大鰐を睨んだ。殴りかかりそうなその肩を、今度は士幌が捕まえて制止した。
大鰐は遠別にしっかりと視線を合わせて挑発的にクックッと笑った。
「何や、ちぃっと聞いたことある名前やからどんなモンかと思ったら、ケンカのひとつもでけんビビリかいな。期待して損したわ」
「テメーはッ……」
ギギギギッ。
遠別が無為に挑発する大鰐に対して口を開こうとした瞬間、禮が椅子を引いて立ち上がった。先ほどは彼氏の話題になっただけで頬を染めたくせに、その場の全員の視線が注がれるなか、毅然と立った。
禮は真っ直ぐに大鰐を見据えた。
「アホ」
「んなッ……⁉」
意表を突かれた大鰐の表情が崩れた。
「何やとォッ⁉ この女……!」
「高校生にもなってやたらめったら人ォ挑発してケンカしようとして、アホやん。アホでお子様やん。髪長いお兄ちゃんや爆発したお兄ちゃんのほうがアンタなんかよりよっぽど人間でけてる」
(爆発? ソレ俺のコトかー)
禮に悪意がないことは分かるのだが、士幌は堪らず苦笑を漏らした。
面と向かって罵倒された大鰐の眉間が、ピクッピクッと痙攣した。
「誰に向かってンなナメた口きいとるか分かっとんかコラァ」
「知れへんよ」
大鰐は禮を睨みつけるが、禮は一歩も退かなかった。微塵も怯まなかった。
「アンタがなんぼ有名でも、ウチはアンタのコトなんて知らん」
「ナメくさって!」
ガタガタッ。――激昂した大鰐は、禮に殴りかかった。
禮は後方に数歩スッと下がった。直情的な大鰐は狙い通り禮に付いてきてくれた。自分の有利な地点に陣取った禮は、悠然と大鰐を待ち構えた。
「黙らしたるァッ!」
大鰐は怒声を張り上げて禮に迫った。
禮は身構えることもなくただ大鰐の目を真っ直ぐに見詰め続けた。同じように大鰐が見詰める禮の瞳は、気味が悪いほど静まり返っていた。
(コイツ、女のクセに全然ビビれへんやんけ!)
ヒュオッ、と風を切る音。考え事が過ぎ気が逸れた刹那、大鰐の視界の外で何かが動いた。
ガキィンッ!
禮は大鰐の顎を真下から高く蹴り上げた。
「なッ⁉ ガハッ……!」
天頂が激しく上下に揺さぶられた大鰐は、天地の方向を見失った。足が床に着いているのか宙に浮いているのかも分からずに、ただ本能的に闇雲に重力を探そうとするが捕捉できない。
次にやってくるのは暗転。急に目の前が真っ暗になり、途端に一度は失った重力が全身にのし掛かった。
どさん。――大鰐は床に崩れ落ちた。
禮は小さな息をひとつ吐き、床に俯せに這い蹲る大鰐を見下ろす。
禮の所業に、その場にいた全員が驚愕して声を失した。中学時代から喧嘩で鳴らした男を、見るからに可憐な少女がいとも簡単に一蹴した。目の前の光景をにわかには信じられなかった。
「スゴ……」
遠別が感嘆を零した次の瞬間、禮はハッと我に返ったように突然頭を抱えた。
「あかーん💦 やってしもたーっ💦💦」
禮はクルリと振り返って慌てて幸島の学生服を掴んだ。
「お願い! このコト先生には黙っといて~っ💦💦」
四限目学活の終了時刻。
担任教諭はのこのこと姿を現し、すこぶる安堵した様子でへらへらと笑った。
「いやぁ~今年の新入生は優秀だなー。モメ事を起こさず済んだのうちのクラスだけじゃないか?」
ギクッ! ――禮はビクッとした。
身を低くして前の席の斎藤川原君の陰に隠れようとする。
「アレ? あそこの席、今日休みだったっけ?」
担任教諭は大鰐の席を指差し、はてと首を傾げた。
「ま、いっか。どうせサボりだろ」
さしてこだわることなく無人の席から目線を外した。
こうして一年B組の学活は、クラスメイトの協力のもと、何事も起きなかったこととなって無事終了した。そして禮は、クラス名の記憶に色濃く残る鮮烈デビューを果たしたのだった。
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