ゾルダーテン ――美女と野獣な上下関係ファンタジー物語

花閂

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Kapitel 07

余焔 02

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 三本爪飛竜騎兵大隊隊舎・トレーニングルーム。
 午後が近くなってきた時分、トレーニングルームの最も奥にて、ヴァルトラムは自主トレーニングで身体を動かしていた。
 壁に向かって立ち、円形の標的が視界いっぱいに光る。その標的一つ一つには規則性無く数字が振られており、特殊な小規模《牆壁》も施されている。それにより標的自体の耐久性を高め、また衝撃の感触を人体に近付けている。標的はランダムに明滅するので、瞬時に発見して殴ってもよいし蹴ってもよい。充分なダメージを与えうる衝撃であれば当該標的は消灯し、素早く次なる標的が明滅する。
 ドスンッ、ズドォンッ、とても生身の打撃とは思えない重たい衝撃音が室内に響く。隊員たちは自身のトレーニングの手を停めてヴァルトラムのほうへ目線を移動させた。

 ナンバー01、クリティカルヒット、耐久上限に達しました。
 ナンバー03、クリティカルヒット、耐久上限に達しました。
 ナンバー24、クリティカルヒット、耐久上限に達しました。
 ナンバー12、クリティカルヒット、耐久上限に達しました。

 ヴァルトラムが攻撃する度にマシンから人工的な音声ガイダンスが流れる。
 ああ、もうマシンのほうが悲鳴を上げている。軍用訓練品として相応の耐久性があるはずのマシンがもうやめてくださいときたものだ。
 とある二人の隊員は、呆然として顔面を引き攣らせた。

「昨日前線から帰ってきたばっかりなのにキレッキレだな歩兵長」

「だからだろ。戦場に出たから気が昂ぶってんだよ」

「あ~、急な出撃だったからクスリが完全には抜けてなかったんじゃないかって話だろ。今頃抜けてんだな」

「それこそ関わりたくねーなー」

「マシン壊れる寸前じゃねーか。また大隊長の機嫌が悪くなるぞ。もうトレーニングルームじゃなくて工廠行ってくれよ」

「あんま見てっと格闘訓練に付き合わされるぞ」

 気付いたときには時既に遅し。褐色の歩兵長とバッチリ目が合ってしまった。二人の隊員は一瞬ビクッとしたあと、えへへと愛想笑い。歩兵長はニタリと笑った。

「オイ、お前等ちょっとこっち来い。丁度動く的が欲しかったところだ」

(ほら~~~!)

 勘弁してください。マシン相手に息も切らさず汗一つ浮かべていない化け物と対人格闘など、こちらがアーマーをフル装備だったとしても回避したい。

「イヤ、俺たちこれから屋外で訓練があるんで~」

「いいから付き合え。命令だ」

(ヒイイイイイッ!)

 ヴァルトラムは、硬直してしまった隊員二人に対し、チョイチョイと手招きした。完全にロックオンされている。上官からの命令には絶対服従。頭をフル回転させて拒否する正当な理由を探すが上手く出てこないものだ。
 歩兵長、とフェイの声が割り込んできた。カツカツとヒールの音を鳴らし、トレーニングルームを突っ切ってヴァルトラムがいる最も奥の壁際までやって来た。

緋姐フェイチェ~~❤」

 二人の隊員は、緋がヴァルトラムに「少しいいか」と話しかけ、正直助かったと思った。

「オメエがトレーニングに付き合ってくれんのか?」

「また今度な」

 緋はそう言ってヴァルトラムが打撃していた壁を見た。マシンの標的には衝撃緩衝の為に《牆壁》が施されているのに、それを通り越して壁には亀裂が走っていた。隊員たちと同様に、苦い顔をする大隊長と騎兵長が脳裏に浮かんできた。

「ビシュラは」

 緋は壁と天井の境界を見ながらヴァルトラムに尋ねた。
 ヴァルトラムは軽く顎を左右に振った。

「まだ寝てんだろうよ。朝方までぶっ続けだったからな」

「……加減してやれよ」

 緋には、昨日ヴァルトラムがビシュラを運んでいったあとの展開は想像できた。ビシュラのプライベートの為にも、昨日何があったのか詳細は訊かないことにした。歩兵長にはデリカシーの概念などないから、訊かれたらペロッと話してしまうに違いない。
 様子はどうだ、と緋は漠然とした質問をした。

「ケガはねェ。だが今は使い物にはならねェ。頭の固いバカが、あんなひよっこから目を離すからああなる」

「トラジロもそうなると思って行かせたわけじゃない。トラジロは誰よりも大隊のことを考えているし、常に隊員を思って行動している。ビシュラをシュヴューリンゲンに遣ったのも必要と考えてだ。ウチにいる以上、非戦闘員であれいつ実戦配備になるかは分からない。そうなった場合の生存確率を上げる為だ」

 いきなりの前線送りはかなり運が悪いが……、と緋は大きな溜息を吐いた。

「生きて帰ってきたんだ。あまりトラジロを責めるな」

「別に責めちゃいねェ。俺も、イイモン見たからな」

「いいもの?」

 ヴァルトラムは上機嫌にニヤリと笑った。
 緋としては、歩兵長と騎兵長がこれ以上もめないのなら願ったり叶ったりだが、理由も分からず機嫌のよい歩兵長などあまりよい予感はしなかった。自分の与り知らないところで悪事でも働いているのではないか。

 落ち着けって、お前がキレてどうする、と知った声で何やらトレーニングルームの入り口のほうが騒がしいなと気付き、緋はそちらを振り返った。
 肩を怒らせて早足で近付いてくるトラジロと、それを宥めようとしているズィルベルナー。悪い予感が彼方のほうからやって来た。
 勿論、ヴァルトラムは逃げも隠れもせず腰に手を当ててトラジロを待ち構えた。トラジロはヴァルトラムの真正面で停止してギロッと睨んだ。

「アンタ、監禁罪で訴えますよ!」

 これは開口一番聞こえが悪い。緋は溜息を吐いて額を押さえた。
 抑えられなくてごめ~ん、とズィルベルナーは緋に向かって苦笑して両手を合わせた。

「ビシュラを返しなさい。昨日戻ってきてビシュラを自分の部屋に連れ込んでそのままだそうですね。前線から無事に連れ帰ってきたからといって、それを恩に着せて何したっていいわけじゃないんですよ。若い娘を部屋に閉じ込めているなど非常識にも程があるッ!」

「ピイピイうるせー」

「はあぁッ⁉💢」

 トラジロの語気が益々強まった。ズィルベルナーはまあまあと背中を摩って宥めた。

「別に閉じ込めてねェ。起きて動けねェだけだ」

 トラジロとズィルベルナーは「は?」は一瞬ポカンとしたが、緋から察しろという目線を送られてピンと来た。

「アンタねえ、いい加減にしなさいよ。自分とあの娘が違うことくらい分かるでしょう。少しはビシュラの意思を――」

「昨夜はアイツもその気だったぜ」

 トラジロは、発言を遮ってまで何を言うのかと片方の眉を引き上げた。此方は心底真面目に言っているというのに、下品な冗談でなあなあにされるのは腹立たしい。眉間に深い皺を刻んでギリギリとヴァルトラムを睨んだ。
 ヴァルトラムは騎兵長からの針のような眼光など何処吹く風、親指で自分の後方、トレーニングルームの壁を指して「修理頼むァ」と一言。
 トラジロは顔を顰めて壁一面を隅から隅まで注視した。そして複数の亀裂を発見し、ふるふると肩を震わせた。

「大概にアンタの給金から引きますよッ」

 ヴァルトラムはクックッと笑いながらトラジロの横を通り過ぎた。
 ヴァルトラムがトレーニングルームから出て行き、緋とズィルベルナーはとりあえず争いの火種が去ったことに安堵した。
 まったく、と零してトラジロは腕組みをした。

「ビシュラがその気だったなど見え透いた嘘を。恥を知らない男だ」

「そんなの分かンねーじゃん」

「絶対に有り得ないとは言い切れないな。二人きり、ベッドの上での話だ。本当のところは二人にしか分からないさ」

 だよねー、とズィルベルナーは緋に同意を求め、緋も頷いた。
 トラジロは目を大きくして心底意外そうな表情を見せた。それを見てまた緋とズィルベルナーは微かに笑った。本当にこの騎兵長は生真面目というか、頭が固い。

「しかしあのビシュラですよ」

「SEXは男だけが支配してるものじゃない。女にとっても、SEXは存在価値と実存性を確認できる手段だよ。自分で自分を最低のヤツだと思ったら、誰でもいいから受け入れられたい気分になったりすることもあるさ」

「最低とは?」

 トラジロから聞き返され、緋は溜息を吐いた。

「ビシュラを庇って曹長が一名戦死したそうだ。ビシュラの教官をしていた男だ。得意の《牆壁》も回復プログラムも実戦では満足に使えなかったことを悔いていてもおかしくはない。寧ろ……そうに違いない。あの娘は優しいからな」

「新兵が戦力にならないなど分かり切ったことです。それほど気に病まなくとも」

「戦場で人が死ぬなんて当たり前のことなのになー」

 トラジロは何だそんなことかという風にサラリと放言した。
 ね、とズィルベルナーは無邪気に笑った。
 緋は二人の顔を並べてみて、何とも言えない表情で沈黙した。この二人は正反対の性格をしているようで根本的には似通っている。別の方向性でしっかり屈折している。

「何ですか緋姐フェイチェ。その顔は」

「大隊長がお前たちの面倒を見た弊害を思い知ってる」

「?」



 ヴァルトラムは、隊舎を出て自分の部屋へと戻った。
 室内は出て行ったときのままだった。出て行ったときと寸分変わらず、頭部に長い耳が生えた生き物が白い肌を晒してベッドに横たわり、サイドテーブルに置かれたミネラルウォーターのボトルは1ミリたりとも動かされていなかった。
 ヴァルトラムはベッドの端で眠るビシュラに目を落とした。微かな寝息を立て、肩を上下させ、呼吸をして生きている。大きな怪我をしていないことは昨夜白い肢体を隅々まで確認した。この真面目な娘が昼を過ぎても目を覚まさないのは、純粋に余程疲れているらしい。
 サイドテーブルの上からボトルを取り上げてキャップを開けた。ビシュラの小さな唇にボトルの口を当ててミネラルウォーターを注ぎ込んだ。
 とくとくとく……

「ぷわぁっ!」

 ビシュラは跳ねるように寝返りを打ち、パチッと目を開けた。水を注がれて覚醒しないでか。
 ゲホッゴホッ、と咳き込んで上半身を起こした。自分の胸元が目に入ってハッとして咄嗟にシーツを手繰り寄せた。

「なっ、何をなさるんですか! 溺れるかと思った……」

「オメエが飲まねェからだ」

 ビシュラはベッドサイドに立っているヴァルトラムを見上げた。窓から差し込む陽光を背にして巨躯の輪郭が白くぼやけていた。しかしながら、戦場で纏っていた仄淡い光とはまったく異なる。見てしまったから分かる。あれは何らかの光を反射しているのではない、ヴァルトラム自身が光っているのだ。
 ヴァルトラム自身が放つネェベル――血液と同様の、恣意的な利用が可能という点ではそれ以上の価値を持つ、生命の金貨の輝き。燐光は生命力そのものだから、地獄の淵でそのようなものを見せ付けられたら、人は無性に惹きつけられるのかもしれない。

(あれがオタカルさんが仰有っていた、燐光……)

 ビシュラは褐色の巨躯をボーッと見上げていた。その半開きの唇の隙間に、ヴァルトラムは無言でボトルの口を突っ込んだ。
 飲め、と命じられてビシュラは素直に注がれるものを嚥下した。懸命に飲み下しても飲み下しても、それは絶え間なく注がれ続けた。
 ビシュラは眉根を寄せ、ヴァルトラムの手を押し返した。

「んぅ……こんなにいっぱい……も、飲めないです」

 ヴァルトラムはボトルをサイドテーブルの上に戻した。ベッドの上に片膝を乗せ、ベッドのヘッドレストが接着している壁に手をついた。ビシュラの唇に口吻くちづけを落とした。

(??? なんで今キスされ?)

 ビシュラは唇が離れるとすぐにヴァルトラムから顔を背けた。深く考えると真っ赤になりそうだ。そもそも、冷静になれば昨日からずっと異性の部屋にいると考えただけで火を噴きそうだ。何がどうなって現在に至ったのか、ビシュラには正確な記憶が無かった。

「歩兵長。わたし、今日は自分の部屋に……」

「ここは職場か、今は仕事中か」

 ヴァルトラムはビシュラの頬に手を添えて自分のほうへ向かせた。機嫌を伺うように、細い眉をハの字にして困った表情をするのが愛らしかった。

「……ヴァリイさま?」

「イイ子だ」

 ヴァルトラムはビシュラを押し倒した。後頭部を枕に押し付けるかのように深いキスをした。薄く開いた歯列の隙間から口腔内に舌を押し込んだ。震える舌を舐めて吸い上げると、唾液がじゅるると音を立てた。角度を変えて舌を侵入させる度、ビシュラの舌が動揺してピクピク跳ねるのが愉快だった。
 ビシュラが深い口付けに気を取られている隙に、いつの間にか大きな手の平がシーツのなかに潜り込んでいた。体温の高い手の平が下腹部に触れ、ビクッとしてしまった。そこから先の展開を知っているが故の反応だった。
 ビシュラが自分にのしかかる大きな両肩を押し戻し、ヴァルトラムは唇を解放した。

「ヴァリイさま、昨日からもう何度も……。なので、あの……」

 ビシュラは頬を赤らめて目を合わせることもできなかった。「先の展開」を昨夜何度も体験していると自ら認めるのは羞恥の極みだった。

「今更らすな。オメエは俺のモンなんだろ」

「それは、部下として歩兵長に尽くすという意味です。恋人でもないのに何度も……その、こういうことを受け容れるという意味ではなくて……」

「ンなこたァどうでもいい。オメエが俺のモンだと認めるなら同じことだ」

 ヴァルトラムは無碍に放言し、再びビシュラの唇を塞いだ。
 中指を秘密の茂みに突っ込んでまさぐり、小さな肉芽を掘り当てた。それは指先でカリカリと引っ掻くと徐々に固くなった。存在を主張する肉芽を指で捏ねて翻弄した。「んっ、んんっ」とくぐもった甘い声が口腔内に響いた。

(だめっ、キスしながらイジられるの、ホントだめっ)

 ビシュラは敏感な箇所を刺激され、反射的に身を捩ろうとした。そのような反射は男を喜ばせるだけだった。
 執拗に執拗に、固くなった肉芽を引っ掻かれ、腰元に快楽が蓄積していく。たまらなくなったビシュラは下腹部に置かれた大きな手を払い除けようとした。しかしながら岩石のように硬い手の甲はビクともしなかった。

「ヴァリイさま、もうやめてください……っ」

「やめてくださいだァ?」

 ぐぷ、とヴァルトラムはビシュラの聖裂のなかに指を差し込んだ。ビシュラから「あぁっ」と声が漏れ、腰がぴくんと跳ねた。ずぷずぷと、ヴァルトラムは肉のなかに埋めるように長い中指を深く押し込んだ。太くて長い指は大した抵抗なく呑み込まれていった。
 ヴァルトラムはビシュラの秘肉に中指を根元まで埋めて満足そうにニヤリと笑った。

「ここはまだハメられたそうだがなァ」

「そんなっ、ちがっ……」

「違う? 締めてくるクセによ」

 ヴァルトラムが指をクイクイと折り曲げて内壁を擦ると応じるように締め付けてきた。持ち主の理性とは裏腹に、貪欲な内部はもっともっとと刺激を求めていた。昨夜、この男によって教え込まれた刺激を、肉体はまだ覚えている。
 ビシュラは口を一文字に結び、頬を紅潮させて刺激に耐えた。

「昨夜教えたろ。声抑えんな。イイときはイイって言え」

 ヴァルトラムは二本の指を揃えて秘肉のなかに押し込んだ。一本の指で充分緩んだそこは、倍の太さになっても難なく受け容れた。
 指を引き抜くとべっとりと愛液が纏わり付いていた。だから再度ゆっくりと指を肉壁の奥へと埋めた。ずぷずぷ~と差し込み、内壁を擦りながらじっくりと引き抜く。それを数回繰り返せば、黒い茂みは湿り、抜き差しされる度にビシュラの身体はピクッピクッと小さく跳ねた。

「んっ、ふぅっ、んん❤」

「まだガマンするか、ん? 昨日のほうが素直だったなア?」

 ヴァルトラムはすでにビシュラの弱点を見抜いていた。内側の少し膨らんだ箇所、そこに狙いをつけて二本の指で猛烈に刺激した。ビシュラの腰が大きく跳ね上がったが構わず責め続けた。聖裂からトロトロと蜜液が溢れ出してヴァルトラムの手を濡らし、ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぶちゅっ、と卑猥な水音が大きく鳴った。

「オラ、イイんだろ。濡れてるじゃねェか」

「あっあっあっ❤ も、来っちゃう、から……だめっ……だめえっ❤」

「素直なほうがかわいいぞ。ほら、イッていいぞ」

「イッちゃ――……あーっ💕💕」

 ビシュラは枕に口を押し付け、甘高い嬌声を殺した。
 自らの秘所はヴァルトラムの指をキュウキュウといやらしく締め付け、名残惜しそうにしていることなど知りもしないで。
 ビシュラが枕に顔を伏せて肩で息をしている隙に、ヴァルトラムはズボンのファスナーを下ろした。怒張した自身を取り出し、ビシュラの聖裂に宛がった。
 くちゅ、蜜液で濡れそぼったそこは、雄肉の鈴口を当てられ鳴いた。ヴァルトラムには期待されているとしか思えなかった。蜜液を溢れさせ、自身に貫かれるときを今か今かと待ち構えるなどいじらしいことだ。

「待っ、ヴァリイさまっ……待ってください……いまはまだ……」

「待てねェなァ」

 ヴァルトラムはビシュラの内部へ鈴口を埋め、太い幹を埋めた。

「おら、入ってくぞ。気持ちイイだろ」

「あぅっ、苦し……っ」

 指の何倍もの太さがある雄肉を押し込まれ、ビシュラの聖裂の皮膚はぴんと突っ張って裂けそうだった。とてつもない異物感に自分の一番奥をこじ開けられる感覚。固いのに柔らかいものに内部を埋め尽くされる質量感。最早痛覚よりも快感が勝った。
 ビシュラは全身を震わせながら声を噛み殺した。気を抜いたらいやらしい声を上げてしまいそうだった。

「ふーっ、ふーっ、ふーっ……❤」

 ヴァルトラムは自身を根元までビシュラの内部に埋めた。ビシュラは声を殺していたが頬は紅潮し、何より雄肉をギュウギュウに締め付けてくることから、感じていることは明らかだった。

「おー、ナカがうねってやがる」

 ぞりぞり、とヴァルトラムは自身のカギの部分で内壁をへずるようにわざとゆっくりと引き抜いた。鈴口が出口ギリギリまで近付いたところで、また一気に奥まで差し込んだ。
 ぞりぞりぞり、ぐちゅん。ぞりぞりぞり、ぐちゅん。

「締めるじゃねェか。そんなに気持ちイイか」

(ゆっくりされるとナカ、ぜんぶなぞられてるみたいでっ……感じっ……)

 ヴァルトラムは、ビシュラが声を上げないのが物足りなかった。上半身をビシュラの上に倒し、ビシュラの腰を捕まえた。固い雄肉を最奥にぐりぐりと押し付けた。

「あんっ❤ ああっ……奥ぅ❤」

「んー? 奥が好きだろ」

「やっ、だめだめだめ❤」

 快感に煽られたビシュラは、弓形になり腰を浮かせた。
 ヴァルトラムは、ビシュラの腰とベッドの間に手を滑り込ませた。細い腰を固定し、最も感じる奥に自身を打ち付けた。
 ずちゅっ、ばちゅんっ。ずちゅっ、ばちゅんっ。

「ひっ、あっ、急に動かないでっ……ヴァリイさまっ……ヴァリイさまっ……ンん!」

 ビシュラは堪らず咄嗟にヴァルトラムにしがみついた。じっくりゆっくりなぞられることに馴れてきたところ、突然荒々しく打ち付けられ、快感の類が急転したことが堪らなかった。

「そんなにせがんでかわいいヤツだ」

「そこっ……そこダメ❤ また来ちゃっ……!」

「イキそうだろ。ほら、イケ」

 ビシュラの高まりに合わせるようにヴァルトラムのピストンは激しくなった。
 全身を揺さ振られながら太い雄肉を激しく打ち付けられ、ビシュラは嬌声を堪えられなかった。奥の奥をノックされる度、意思に反して快感が体の芯のほうに蓄積していく。だめ、もう抑えていられない。ビシュラ自身はどうなってしまうかもう分かっているのに、ヴァルトラムはやめてはくれない。否、分かっているからこそ律動を緩めなかった。

「だめっ、イクっ……イッちゃう、イッちゃ……やあああーっ💕💕」

 溜まりに溜まった快感が爆発し、ゾゾゾゾと背骨を一気に駆け上り、脳幹に達した。

 ビシュラは四つん這いの体勢にさせられ、尚も硬度を失わないヴァルトラムの雄肉を差し込まれていた。先程、自分でも触れたことのない奥の奥を突かれていると思ったのに、この体勢はさらに奥をこじ開けられているようだった。

「この角度で突かれるの好きだろ」

「やだ、も、やだ……さっきからずっと……無理ぃ」

 ビシュラはぶるぶると震えて力の入らない手で懸命に枕を握りしめた。もう全身に力が入らず、ヴァルトラムの為すがままになるしかなかった。先程達してからずっとゾクゾクが続いている。膣内がゾクゾクしている。
 ぶちゅっ、ぶちゅるっ、ヴァルトラムが腰を打ち付ける度、ビシュラの聖裂は蜜液を垂れ流した。少しの刺激でも腰が逃げそうなほど気持ちがいいのに、太いものに埋め尽くされて貫かれるのは堪らなかった。
 ヴァルトラムは、ビシュラの背中に広がる黒い髪の毛を撫でるように退かし、白い肌を晒した。腰を回してビシュラの内壁すべてに自身をぐりぐりと押しつけた。自分が与える快感によって白い背中が素直に艶めかしくビクッビクッと痙攣するのを鑑賞した。
 ビシュラから「ひあっ」と一際甲高い声が上がった。

「またイクか?」

 ビシュラは首を力なく左右に振ったが、聞き入れられるわけがなかった。
 ヴァルトラムはビシュラの腰を捕まえて前後運動を早めた。悦ぶ箇所を責め立てると、内壁は雄肉をギチギチと締め上げてきた。

「も、イキたくな――……ああああっ💕」

「おー、ナカがスゲエビクビクしてやがる。そんなにイイか、ビシュラ」

「はー、はー……❤」

 もう幾度目かの快感が臨界に達したあとも、内壁は雄肉を包み込んでうねっていた。膣内がキュウキュウと痙攣してしまうのはビシュラの意思ではどうしようもなかった。
 そのように恋しそうにされたのでは離れるのが名残惜しいではないか。ヴァルトラムは自身を抜かなかった。小刻みな律動が再開し、ビシュラはハッとした。

「イキまくってかわいいなオメエは」

 背中にぺたりと手の平を置かれただけでビシュラからは「ふぅっ」と声が漏れた。

「い、いま、触らないで……っください。イッたばっかり……! う、動かないで……。もう無理ですヴァリイさま……許して……」

「俺ァまだだからよ。もちっと付き合え」

「やだっ、もうやだやだ……ヴァリイさま……っ」
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