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Kapitel 05
獣の王子 04
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フローズヴィトニルソン王城内・執務室。
ウルリヒはデスクに座し、ルディはウルリヒの正面に立ち、仮想ディスプレイで書簡の内容を整理していた。ルディの後ろには数人の部下が控えている。
現在、フローズヴィトニルソンの国政は王太子と重鎮家臣たちによって支えられている。年老いて身体を悪くすることが多くなった国王に代わり、王太子・ウルリヒはこの国の次期国父として多くの国務を負う。ルディは将軍として友人として、ウルリヒの右腕として能力を発揮した。王太子としての生活にウルリヒには何の不満もなかった。己は多大な期待や重責を負う身であることを理解し受け容れ、家臣や国民に誇られる立派な王太子でありたいと願っている。故に懸命に取り組んだ。
しかしながら、今日のウルリヒの様子は少々異なっていた。ルディが読み上げる書簡の内容を聞いているのかいないのか、先ほどからデスクの表面を鋭い爪先でトントントントンと叩き、かと思えば頭を抱えて深い溜息を吐いた。心此処に在らず。集中していないのは誰の目にも明らかだ。
ルディは書簡を読み上げるのを中断した。
「今日は公務に身が入っていらっしゃいませんね、殿下」
「そんなことはない」
ルディはチラッとウルリヒの手許を見た。
ウルリヒはハッと気づいてバツが悪そうな表情を見せ、指を畳んで拳を造った。
ルディは、自分の後ろに控えていた部下たちに執務室から下がるように命じた。部下たちが退室してウルリヒとふたりだけとなってから、はあ~~ッ、と心底深い溜息を吐いた。
「使用人に何度も何度もレディのご機嫌を探らせるなど、みっともない真似はおやめください」
「ウッ! 何故それを」
「殿下は分かりやすいのです、行動も表情も性格も。まあ、少なくとも城内では私の目が届かぬ処などないとお思いください」
ルディはキッパリと言い切った。
ウルリヒは面白く無さそうな顔で椅子に深く凭れかかった。
「アキラはまだ怒っていると思うか?」
「使用人は何と?」
「よく分からない、と。使用人の前では特に機嫌が悪いということもなく変わらない様子だそうだが」
「御婦人の真意は一見して分かりにくいこともございますからねえ……」
ふむ、とルディは自分の顎髭を撫でた。
「いつまでも公務に身が入らないでは困ります。早急に解決されたほうがよろしいかと」
「公務には手を抜かず励んでいる」
「私にはそうは見えません。部下たちからもです。殿下がそのような御様子では部下たちをいたずらに緊張させます。早急に、ご対応を」
ウルリヒはブスッとしてルディに目を遣った。
「俺が悪かったのか? 俺は何か間違ったことを言っていたか、ルディ」
「殿下が間違っていることなどございませんとも。レディが仰有るのはレディの国でのやり方。生まれや育ちが違うのですから、躾の方法が異なるのは当然です。しかし……」
ルディはクフッと笑みを零した。
「御婦人を大声で怒鳴ったのは、よろしくありませんでしたね」
「だよな」
ウルリヒはデスクに突っ伏し、はあ~~、と後悔たっぷりの深い溜息を吐いた。
アキラに対して声を荒げてしまったとき、しまったと思った。しかし、自身の正義を押し通すために退くに退けなかった。自身の正しさを示すにはもっとよい方法があったはずだとすぐに後悔した。それこそアキラの言うとおり、言葉を尽くして説明すればよかった。
「しかしながら、貴男様はフローズヴィトニルソンの王太子にして次期国王陛下。囚われの姫ごときに嫌われても問題ない、力尽くで物にするから関係ない、とお考えならば御機嫌伺などおやめになっておしまいなさい」
「そんなこと考えるかッ」
ウルリヒは大きな声を出してドンッとデスクを叩いた。
「そうなさっても構わないのですよ。殿下はこの国の誰に何を咎められる御身分ではございませんから」
「咎められるかどうかが問題ではない。そのような真似は俺の良心が許さん。俺はアキラには強制することなく自然と、すッ、好かれたい……!」
ウルリヒの返答はルディの思ったとおりだった。ルディは肩を揺すって笑った。
「では、何かミスをしたとお考えならば、早々にフォローをなさったほうがよろしいですね」
「フォロー? どんな?」
ルディはサッと手の平で撫でるようにして仮想ディスプレイを消した。
「ふむ。下準備が必要ですね。御婦人というものは御機嫌を損ねてしまうと、こちらがいくら真摯に謝罪してもそれだけでは許してくれないものです」
「そうなのか? 謝っても許してもらえないのでは困るな」
ウルリヒは耳をピーンッと立てて聞き返した。
「ルディは女に詳しくて頼りになる。俺は上手くできる自信がない」
「王族として殿下にもこの程度のマナーは身に付けていただきたいものです」
「ルディは大したものだ。同じように育ったのに俺はお前のようにスマートにはできん」
「殿下は国中の御婦人方の羨望の的だというのに、武芸ばかり嗜んでいらっしゃるからですよ」
王子が夜の散歩を御所望である――。夕食後、使用人が部屋にやって来てそう伝えた。アキラは迎えにきた使用人に連れられて庭に出ることにした。
アキラとビシュラは囚われているとはいえ特に不自由なく生活できているが、鎖に繋がれているから基本的には部屋から出ることはない。アキラが自室とウルリヒと食事をした部屋以外の王城内を目にするのは初めてのことだ。王城の内装はヴィンテリヒブルク城と遜色ない豪華さであり、ウルリヒと食事をした部屋が特別簡素だったのだなと知る。あの部屋はきっとウルリヒの人柄の反映だ。
使用人は腰の上で手を組んで歩き、アキラを先導した。シャリ、シャリ、と鎖を引き摺りながら石畳の床を歩いていった。
庭に出る扉の前に、ウルリヒが待っていた。ピンと背筋を伸ばした立ち姿は、少し離れたところから見ると、豊かな毛並みの上からでも分かるほど筋肉が隆起し、ゴツゴツした岩のような形状にも見えた。
使用人はアキラをウルリヒに届け、スッと頭を下げて何処かへ消えた。
ウルリヒはアキラに赤い布を差し出した。
「これを……。外は冷えるからな」
「また新しい服?」
ウルリヒは手に持った布をバサリッと広げて見せた。
それは大きなフードが付いた外套。手触りのよい真紅の布地に金糸の縁取りや刺繍があしらわれ、裾が床についてしまうほど長い。
ウルリヒはそれを手ずからアキラに羽織らせた。アキラよりも何倍も太い指を器用に動かして胸元で蝶々結びをしてやった。
ウルリヒはやや腰を折ってアキラの顔を覗きこんだ。
「どうだ。気に入ったか?」
「かわいい」
「そうか、気に入って良かった。ヒトの服を扱っている者を探して大急ぎで仕立てさせたのだ」
ウルリヒはアキラが素直に返答してくれたので内心安堵した。使用人から聞いたとおり、あからさまに不機嫌そうにされて針の筵という事態はなさそうだ。
アキラの反応はまあまあ満足のゆくものだった。ウルリヒは得意気な表情で扉を押し開いた。
開いた瞬間に風がビュウッと吹きこんできた。アキラはキュッと身を縮めて手と手を擦り合わせた。
サク、サク、サク。
アキラとウルリヒは、夜の庭園をゆっくりと進んだ。
ウルリヒは片手にアキラの手を取り、もう一方の手に鎖を持ち上げてくれた。積雪のなか、鋼鉄製の鎖を引き摺って歩くのは難渋するに違いない。
庭園は一面真っ白。整然と並んだ石像にも石造りのベンチにも雪が積もっている。深く息を吸いこむと肺が痛いくらいに空気が冷たい。このようななかを散歩に誘うくらいだから、ウルリヒとアキラでは体感温度が異なるのだろう。
「ほら、アキラ。空を見てみろ」
アキラは言われたとおり夜空を振り仰いだ。
そこには、真っ黒のキャンバスに光の帯が横たわっていた。チカチカチカと青白く瞬くものが、夜空を帯状に横断する。よく見ると、一粒一粒が移動しており星ではないようだ。
アキラは、うわあと感嘆を漏らした。
夜空に映える仄蒼い燐光は、月や星とはまったく異なり幻想的な風景だ。このようなものは〝向こう〟ではおろか、この世界にやって来てからも初めて見た。
「虫?」
「蝶だ。何万、何十万と群れを成して飛ぶ。今の時期しか見れん」
「夜でも飛ぶんだ」
「綺麗だろう」
「うん。こんなの初めて見た」
ウルリヒはアキラの笑顔を見ると胸がきゅぅうと締めつけられた。無意識に尻尾を左右に揺らした。
(なんと愛らしい❤)
「散歩しようって言ったのは、これを見せたかったから?」
「喜んでくれたら嬉しいのだが」
「ありがとう、ウルリヒくん」
しばしの時間沈黙し、ふたりで仄青い蝶の帯を眺めた。
ウルリヒは時偶何度か、アキラを瞥見した。
そのようなはずはないと頭では分かっているが、少女の吐く息は自分のものよりもずっと白く見えた。この静かで穏やかな時間が長く続けばよいと願う反面、脆弱な少女の身体ではこの寒さに長くは耐えられないことも知っている。
ウルリヒが石造りのベンチの上から雪を払い除け、ふたり並んで腰かけた。
アキラは、硬い表面から冷たさが伝わってきて身震いした。両手を擦り合わせて息をハーッと吹きかけた。
ウルリヒはアキラの手を取って両手で挟むように握った。ウルリヒのほうがアキラよりも体温が高く、アキラはじんわりと熱を感じた。
(あ。あったかい)
「アキラは子どもが好きか?」
「え?」
「部屋に招き入れて遊んでいた。俺が怒鳴ったら食って掛かってきた。攫われてきた日ですらそんなことしなかったのに」
アキラはウルリヒが握る自分の手に目を落とし、少し黙りこんだ。
「…………。子どもは嫌いじゃないよ。見てると弟を思い出す」
「弟妹があるのか」
ウルリヒはアキラの手を握る力をグッと強め、何故か楽しそうに訊ねてきた。
「弟がひとり」
「弟か、いいな。俺も弟が欲しかった。可愛いか。アキラに似ているか」
「可愛いよ」
「名は何という」
「銀太」
「いくつだ」
「たぶん、部屋に来た子たちよりはちょっと年上かな。けど、ウルリヒくんに比べたら小さいよ。まだわたしより全然小さいもん。あんなに小さいんだから、もう怒鳴ったりしないでね」
話題が怒鳴りつけた子どもたちへと及び、ウルリヒは一瞬ウッと押し留まった。しかし、好機でもある。此処で有耶無耶に流してしまうべきではないと腹を括った。
「まだ怒っているか?」
「なにを?」
「その、昼間のことだ。その……大きな声を出してしまってすまなかった。アキラを怒鳴るつもりなどなかったんだが……つい」
ウルリヒは大きな肩幅を窄め、チラチラとアキラの顔色を窺った。
「あの後、反省した。猛省した。……許して、くれないだろうか」
アキラは少しだけ驚いた。王子という身分にある者が素直に許してくれなどと口にするとは思わなかった。
我が儘でおっとりしたユリイーシャが反省する姿は想像できない。大貴族の一員だという天尊はそう簡単に自らの過ちを認めるような性情ではない。
「別に怒ってないよ、わたしに怒鳴ったことは。わたしも同じくらい怒鳴ったし。でも、もう小さな子どもに乱暴なことしないで」
ウルリヒはアキラにズイッと顔を近づけた。
「絶対にしないッ」
「無闇に大きな声出すことも」
「しないッ、もう二度と!」
「いま出してるよ」
「あッ」
ハッとしたウルリヒを見て、アキラはクスクスと笑った。
「約束するなら、許してあげる」
「ああ。勿論だ」
ウルリヒはアキラの笑顔を見てホッと安堵の息を吐いた。
嫌われるのが恐いなど、初めて思った。笑ってくれるならどのような約束もしよう。この手の温度は何物にも代えがたい。媚びる行為など王族たる者がしてはいけないと頭では分かっているのに、好かれたいと願ってしまう。民や兵に慕われるよりも、たったひとりの好意を欲するなど許されるのかと自問自答しながらも、この手を離せない。
アキラの手の甲に目を落としたウルリヒは、小さな引っ掻き傷に目が留まった。
「俺もあんなに小さい子どもらを怒鳴りつけるのは大人げないとは分かっているのだ。だがアキラに傷を作ったのを見て、ついカッとなってしまった」
「子どもなんだから力加減を間違えたりすることもあるよ。こんなちょっとの傷であんなに怒らないで」
「怒るに決まっているだろう。アキラに何の配慮もなく乱暴に触れたということだ。おッ、俺でさえまだアキラに触れるのに遠慮しているというのにッ」
アキラがやや目を大きくして絶句したのがウルリヒにも分かった。すぐに何で言ってしまったのだと後悔したが、失言を誤魔化すよい話題は思い浮かばない。
――ああッ、この場にスマートで頼りになる右腕将軍がいてくれたなら!
「触りたいの?」
アキラは目をパチクリさせながら訊ねた。
面と向かって確認されて恥ずかしくなったウルリヒは、項垂れた。しかし、嘘のつけない廉直な男だった。それが所謂、下心であっても。
「ッ……それは、まあ……」
「触りたいって、どのくらい?」
「触れたいと言ってもだな、そんなッ、いきなりまぐわいたいなどと思っているわけではないぞ! 俺はそんな無礼な男ではない。まずは、手を握ったり、抱き締めたり……とか」
ウルリヒはガバッと頭を上げ、必死に釈明した。無遠慮でいやらしい下劣な男だと思われることだけは耐えがたかった。
しかし、急激に無駄なことのような気がして、アキラから目を逸らした。
「……いや、無理を言ってすまない。アキラが本当は俺を好いていないことは分かっている。いきなり攫ってきて城に閉じこめておいて、嫌うなというほうが無理だ」
手に入れたいと思っても、そのようなことをしたら嫌われてしまう。ルディは無理矢理そうしてしまえと言うが、そうした結果に何が残る。憎まれてまで傍に置いて何になる。もし嫌われたらと想像したときの心の痛み、それが何倍にも増すだけではないのか。こうして手を握れるまでに近づいた距離がなかったことになり、軽蔑されて忌み嫌われることになるのではないか。
もし出逢いをやり直せたら、もっと貪欲になれただろうか。手を握って振り払われない幸福を、言葉を交わし笑顔を向けられる幸福を、素直に享受できただろうか。決して起こり得ないことと知りながら、時間が巻き戻ることを願ってしまう。
「いいよ、ちょっとだけなら」
アキラは毛むくじゃらの手と手の間から自分の手を抜き取った。両手を拡げて若干首を傾げて見せた。どうぞ、という意思表示。
ウルリヒは身体にピリリッと電流が走った気がした。
「ッ……!」
ウルリヒは、アキラの気が変わらない内に急いでその小さな身体を腕のなかに抱き留めた。
抱き締めるのは恐くてできなかった。少女は見た目以上に細く、加減無く抱き締めたら崩れてしまいそうだ。苦しがらせたら嫌われてしまう虞もあった。
「どうだ⁉ 嫌ではないかッ?」
「あったかい」
アキラはウルリヒの胸の上に頭を置いてみた。ウルリヒは身を委ねられていることを察知し、尻尾がピーンと強張った。
王太子ともあろう者が、鍛錬にばかり精を出している無骨者が、柄にもなく緊張した。この様をルディが見たら情けないと嘆くか、笑うかするだろう。いいや、そのような瑣末なことは今はどうでもよい。今は腕のなかのこの感触をしかと噛み締めることのみが肝要だ。
「アキラは本当に……《雷鎚》の婚約者、なのか? 飛竜を駆り稲妻をも自在に操るという。エインヘリヤル屈指の猛将だと、このフローズヴィトニルソンにも届いている」
(ティエンは有名人だな)
ウルリヒは腕を緩めてアキラの顔を覗きこんだ。
「あの男はアキラとは随分と歳が離れているだろう。親が決めた縁談か、それとも手籠めにでも」
「てッ、手籠め⁉ ち、違う! ティエンとはまだ何もッ」
アキラの顔が一気にカーッと赤くなった。
(……してないこともないのか)
「《雷鎚》のことを、ティエンと呼んでいるのか」
ウルリヒは胸の奥にチクッと痛みを感じた。
異性を愛称で呼ぶのは、浅からぬ間柄であることを意味する。
うん、とアキラは赤くなった顔を両手で隠してコクッと頷いた。
「嫌ではないのか。あのように歳の離れた男の婚約者にさせられて」
「正式に婚約者ってわけじゃ……。わたしはただの人間だから、この世界の人と本当に結婚するなんて難しいんでしょう?」
「そんなことはないッ。ふたりが真に愛し合っていれば番になれないなどあるはずがなかろう。たとえ困難があっても超えてゆくものだ。もし俺なら……ッ、イヤ、俺は……」
「?」
ウルリヒはコホンッと咳払いをして背筋を伸ばした。
ついアキラの相手に自分を置き換えて熱くなってしまい、バツが悪かった。
「いやいや、そうか。手籠めにされたわけではないのだな、よかった」
「ティエンはわたしが嫌がることはしないよ」
「俺も!」とウルリヒが声を一段階大きくした。
「みっともなく《雷鎚》と張り合うのではないが、アキラが嫌がることは決してしないと誓う。勿論、子どもを怒鳴ることも二度としない。俺がアキラとの約束を守り続けたとして……いつか、俺のような恐ろしい姿をした者をアキラが好いてくれる可能性はあるだろうか。どれだけ時間がかかっても構わん。どんな我が儘も許そう。欲しいものは叶えよう。何でも望むものを用意する。だから、いつかッ……」
ウルリヒはマズルがつきそうなほどアキラに顔を近づけた。
つい言ってしまった、という表情。ウルリヒは口をしっかりと噤んで牙を仕舞い、恥ずかしさを噛み殺した。
アキラはウルリヒが本気で言っているのだなと感じ取った。
ヒトの姿形を好む嗜好を持つとはいえ、何故自分をこうも気に入ったのかまったく見当もつかない。もしかしたら、時間が経てば見飽きて目移りするのかも。しかし、今このときはウルリヒの情熱は本物だと思う。
「ウルリヒくんのことは……好きだよ。だからそんな顔しないでよ」
アキラは眉尻を下げてウルリヒに微笑みかけた。
「すッ、好き⁉ 本当か!」
「うん」
ウルリヒはアキラをガバッと抱き締めた。勿論、力の加減は忘れなかった。
「ありがとう、アキラ。ありがとうッ」
――わたしは嘘を吐くのが得意じゃない。吐いたところで下手な嘘なんてすぐにバレるに決まってる。だから、なるべく本当のことを口にする。
アキラはウルリヒの体をぽんぽんと優しく叩いた。
「あ。そうだ。ワガママを言っていいなら、ひとつだけ」
ウルリヒはデスクに座し、ルディはウルリヒの正面に立ち、仮想ディスプレイで書簡の内容を整理していた。ルディの後ろには数人の部下が控えている。
現在、フローズヴィトニルソンの国政は王太子と重鎮家臣たちによって支えられている。年老いて身体を悪くすることが多くなった国王に代わり、王太子・ウルリヒはこの国の次期国父として多くの国務を負う。ルディは将軍として友人として、ウルリヒの右腕として能力を発揮した。王太子としての生活にウルリヒには何の不満もなかった。己は多大な期待や重責を負う身であることを理解し受け容れ、家臣や国民に誇られる立派な王太子でありたいと願っている。故に懸命に取り組んだ。
しかしながら、今日のウルリヒの様子は少々異なっていた。ルディが読み上げる書簡の内容を聞いているのかいないのか、先ほどからデスクの表面を鋭い爪先でトントントントンと叩き、かと思えば頭を抱えて深い溜息を吐いた。心此処に在らず。集中していないのは誰の目にも明らかだ。
ルディは書簡を読み上げるのを中断した。
「今日は公務に身が入っていらっしゃいませんね、殿下」
「そんなことはない」
ルディはチラッとウルリヒの手許を見た。
ウルリヒはハッと気づいてバツが悪そうな表情を見せ、指を畳んで拳を造った。
ルディは、自分の後ろに控えていた部下たちに執務室から下がるように命じた。部下たちが退室してウルリヒとふたりだけとなってから、はあ~~ッ、と心底深い溜息を吐いた。
「使用人に何度も何度もレディのご機嫌を探らせるなど、みっともない真似はおやめください」
「ウッ! 何故それを」
「殿下は分かりやすいのです、行動も表情も性格も。まあ、少なくとも城内では私の目が届かぬ処などないとお思いください」
ルディはキッパリと言い切った。
ウルリヒは面白く無さそうな顔で椅子に深く凭れかかった。
「アキラはまだ怒っていると思うか?」
「使用人は何と?」
「よく分からない、と。使用人の前では特に機嫌が悪いということもなく変わらない様子だそうだが」
「御婦人の真意は一見して分かりにくいこともございますからねえ……」
ふむ、とルディは自分の顎髭を撫でた。
「いつまでも公務に身が入らないでは困ります。早急に解決されたほうがよろしいかと」
「公務には手を抜かず励んでいる」
「私にはそうは見えません。部下たちからもです。殿下がそのような御様子では部下たちをいたずらに緊張させます。早急に、ご対応を」
ウルリヒはブスッとしてルディに目を遣った。
「俺が悪かったのか? 俺は何か間違ったことを言っていたか、ルディ」
「殿下が間違っていることなどございませんとも。レディが仰有るのはレディの国でのやり方。生まれや育ちが違うのですから、躾の方法が異なるのは当然です。しかし……」
ルディはクフッと笑みを零した。
「御婦人を大声で怒鳴ったのは、よろしくありませんでしたね」
「だよな」
ウルリヒはデスクに突っ伏し、はあ~~、と後悔たっぷりの深い溜息を吐いた。
アキラに対して声を荒げてしまったとき、しまったと思った。しかし、自身の正義を押し通すために退くに退けなかった。自身の正しさを示すにはもっとよい方法があったはずだとすぐに後悔した。それこそアキラの言うとおり、言葉を尽くして説明すればよかった。
「しかしながら、貴男様はフローズヴィトニルソンの王太子にして次期国王陛下。囚われの姫ごときに嫌われても問題ない、力尽くで物にするから関係ない、とお考えならば御機嫌伺などおやめになっておしまいなさい」
「そんなこと考えるかッ」
ウルリヒは大きな声を出してドンッとデスクを叩いた。
「そうなさっても構わないのですよ。殿下はこの国の誰に何を咎められる御身分ではございませんから」
「咎められるかどうかが問題ではない。そのような真似は俺の良心が許さん。俺はアキラには強制することなく自然と、すッ、好かれたい……!」
ウルリヒの返答はルディの思ったとおりだった。ルディは肩を揺すって笑った。
「では、何かミスをしたとお考えならば、早々にフォローをなさったほうがよろしいですね」
「フォロー? どんな?」
ルディはサッと手の平で撫でるようにして仮想ディスプレイを消した。
「ふむ。下準備が必要ですね。御婦人というものは御機嫌を損ねてしまうと、こちらがいくら真摯に謝罪してもそれだけでは許してくれないものです」
「そうなのか? 謝っても許してもらえないのでは困るな」
ウルリヒは耳をピーンッと立てて聞き返した。
「ルディは女に詳しくて頼りになる。俺は上手くできる自信がない」
「王族として殿下にもこの程度のマナーは身に付けていただきたいものです」
「ルディは大したものだ。同じように育ったのに俺はお前のようにスマートにはできん」
「殿下は国中の御婦人方の羨望の的だというのに、武芸ばかり嗜んでいらっしゃるからですよ」
王子が夜の散歩を御所望である――。夕食後、使用人が部屋にやって来てそう伝えた。アキラは迎えにきた使用人に連れられて庭に出ることにした。
アキラとビシュラは囚われているとはいえ特に不自由なく生活できているが、鎖に繋がれているから基本的には部屋から出ることはない。アキラが自室とウルリヒと食事をした部屋以外の王城内を目にするのは初めてのことだ。王城の内装はヴィンテリヒブルク城と遜色ない豪華さであり、ウルリヒと食事をした部屋が特別簡素だったのだなと知る。あの部屋はきっとウルリヒの人柄の反映だ。
使用人は腰の上で手を組んで歩き、アキラを先導した。シャリ、シャリ、と鎖を引き摺りながら石畳の床を歩いていった。
庭に出る扉の前に、ウルリヒが待っていた。ピンと背筋を伸ばした立ち姿は、少し離れたところから見ると、豊かな毛並みの上からでも分かるほど筋肉が隆起し、ゴツゴツした岩のような形状にも見えた。
使用人はアキラをウルリヒに届け、スッと頭を下げて何処かへ消えた。
ウルリヒはアキラに赤い布を差し出した。
「これを……。外は冷えるからな」
「また新しい服?」
ウルリヒは手に持った布をバサリッと広げて見せた。
それは大きなフードが付いた外套。手触りのよい真紅の布地に金糸の縁取りや刺繍があしらわれ、裾が床についてしまうほど長い。
ウルリヒはそれを手ずからアキラに羽織らせた。アキラよりも何倍も太い指を器用に動かして胸元で蝶々結びをしてやった。
ウルリヒはやや腰を折ってアキラの顔を覗きこんだ。
「どうだ。気に入ったか?」
「かわいい」
「そうか、気に入って良かった。ヒトの服を扱っている者を探して大急ぎで仕立てさせたのだ」
ウルリヒはアキラが素直に返答してくれたので内心安堵した。使用人から聞いたとおり、あからさまに不機嫌そうにされて針の筵という事態はなさそうだ。
アキラの反応はまあまあ満足のゆくものだった。ウルリヒは得意気な表情で扉を押し開いた。
開いた瞬間に風がビュウッと吹きこんできた。アキラはキュッと身を縮めて手と手を擦り合わせた。
サク、サク、サク。
アキラとウルリヒは、夜の庭園をゆっくりと進んだ。
ウルリヒは片手にアキラの手を取り、もう一方の手に鎖を持ち上げてくれた。積雪のなか、鋼鉄製の鎖を引き摺って歩くのは難渋するに違いない。
庭園は一面真っ白。整然と並んだ石像にも石造りのベンチにも雪が積もっている。深く息を吸いこむと肺が痛いくらいに空気が冷たい。このようななかを散歩に誘うくらいだから、ウルリヒとアキラでは体感温度が異なるのだろう。
「ほら、アキラ。空を見てみろ」
アキラは言われたとおり夜空を振り仰いだ。
そこには、真っ黒のキャンバスに光の帯が横たわっていた。チカチカチカと青白く瞬くものが、夜空を帯状に横断する。よく見ると、一粒一粒が移動しており星ではないようだ。
アキラは、うわあと感嘆を漏らした。
夜空に映える仄蒼い燐光は、月や星とはまったく異なり幻想的な風景だ。このようなものは〝向こう〟ではおろか、この世界にやって来てからも初めて見た。
「虫?」
「蝶だ。何万、何十万と群れを成して飛ぶ。今の時期しか見れん」
「夜でも飛ぶんだ」
「綺麗だろう」
「うん。こんなの初めて見た」
ウルリヒはアキラの笑顔を見ると胸がきゅぅうと締めつけられた。無意識に尻尾を左右に揺らした。
(なんと愛らしい❤)
「散歩しようって言ったのは、これを見せたかったから?」
「喜んでくれたら嬉しいのだが」
「ありがとう、ウルリヒくん」
しばしの時間沈黙し、ふたりで仄青い蝶の帯を眺めた。
ウルリヒは時偶何度か、アキラを瞥見した。
そのようなはずはないと頭では分かっているが、少女の吐く息は自分のものよりもずっと白く見えた。この静かで穏やかな時間が長く続けばよいと願う反面、脆弱な少女の身体ではこの寒さに長くは耐えられないことも知っている。
ウルリヒが石造りのベンチの上から雪を払い除け、ふたり並んで腰かけた。
アキラは、硬い表面から冷たさが伝わってきて身震いした。両手を擦り合わせて息をハーッと吹きかけた。
ウルリヒはアキラの手を取って両手で挟むように握った。ウルリヒのほうがアキラよりも体温が高く、アキラはじんわりと熱を感じた。
(あ。あったかい)
「アキラは子どもが好きか?」
「え?」
「部屋に招き入れて遊んでいた。俺が怒鳴ったら食って掛かってきた。攫われてきた日ですらそんなことしなかったのに」
アキラはウルリヒが握る自分の手に目を落とし、少し黙りこんだ。
「…………。子どもは嫌いじゃないよ。見てると弟を思い出す」
「弟妹があるのか」
ウルリヒはアキラの手を握る力をグッと強め、何故か楽しそうに訊ねてきた。
「弟がひとり」
「弟か、いいな。俺も弟が欲しかった。可愛いか。アキラに似ているか」
「可愛いよ」
「名は何という」
「銀太」
「いくつだ」
「たぶん、部屋に来た子たちよりはちょっと年上かな。けど、ウルリヒくんに比べたら小さいよ。まだわたしより全然小さいもん。あんなに小さいんだから、もう怒鳴ったりしないでね」
話題が怒鳴りつけた子どもたちへと及び、ウルリヒは一瞬ウッと押し留まった。しかし、好機でもある。此処で有耶無耶に流してしまうべきではないと腹を括った。
「まだ怒っているか?」
「なにを?」
「その、昼間のことだ。その……大きな声を出してしまってすまなかった。アキラを怒鳴るつもりなどなかったんだが……つい」
ウルリヒは大きな肩幅を窄め、チラチラとアキラの顔色を窺った。
「あの後、反省した。猛省した。……許して、くれないだろうか」
アキラは少しだけ驚いた。王子という身分にある者が素直に許してくれなどと口にするとは思わなかった。
我が儘でおっとりしたユリイーシャが反省する姿は想像できない。大貴族の一員だという天尊はそう簡単に自らの過ちを認めるような性情ではない。
「別に怒ってないよ、わたしに怒鳴ったことは。わたしも同じくらい怒鳴ったし。でも、もう小さな子どもに乱暴なことしないで」
ウルリヒはアキラにズイッと顔を近づけた。
「絶対にしないッ」
「無闇に大きな声出すことも」
「しないッ、もう二度と!」
「いま出してるよ」
「あッ」
ハッとしたウルリヒを見て、アキラはクスクスと笑った。
「約束するなら、許してあげる」
「ああ。勿論だ」
ウルリヒはアキラの笑顔を見てホッと安堵の息を吐いた。
嫌われるのが恐いなど、初めて思った。笑ってくれるならどのような約束もしよう。この手の温度は何物にも代えがたい。媚びる行為など王族たる者がしてはいけないと頭では分かっているのに、好かれたいと願ってしまう。民や兵に慕われるよりも、たったひとりの好意を欲するなど許されるのかと自問自答しながらも、この手を離せない。
アキラの手の甲に目を落としたウルリヒは、小さな引っ掻き傷に目が留まった。
「俺もあんなに小さい子どもらを怒鳴りつけるのは大人げないとは分かっているのだ。だがアキラに傷を作ったのを見て、ついカッとなってしまった」
「子どもなんだから力加減を間違えたりすることもあるよ。こんなちょっとの傷であんなに怒らないで」
「怒るに決まっているだろう。アキラに何の配慮もなく乱暴に触れたということだ。おッ、俺でさえまだアキラに触れるのに遠慮しているというのにッ」
アキラがやや目を大きくして絶句したのがウルリヒにも分かった。すぐに何で言ってしまったのだと後悔したが、失言を誤魔化すよい話題は思い浮かばない。
――ああッ、この場にスマートで頼りになる右腕将軍がいてくれたなら!
「触りたいの?」
アキラは目をパチクリさせながら訊ねた。
面と向かって確認されて恥ずかしくなったウルリヒは、項垂れた。しかし、嘘のつけない廉直な男だった。それが所謂、下心であっても。
「ッ……それは、まあ……」
「触りたいって、どのくらい?」
「触れたいと言ってもだな、そんなッ、いきなりまぐわいたいなどと思っているわけではないぞ! 俺はそんな無礼な男ではない。まずは、手を握ったり、抱き締めたり……とか」
ウルリヒはガバッと頭を上げ、必死に釈明した。無遠慮でいやらしい下劣な男だと思われることだけは耐えがたかった。
しかし、急激に無駄なことのような気がして、アキラから目を逸らした。
「……いや、無理を言ってすまない。アキラが本当は俺を好いていないことは分かっている。いきなり攫ってきて城に閉じこめておいて、嫌うなというほうが無理だ」
手に入れたいと思っても、そのようなことをしたら嫌われてしまう。ルディは無理矢理そうしてしまえと言うが、そうした結果に何が残る。憎まれてまで傍に置いて何になる。もし嫌われたらと想像したときの心の痛み、それが何倍にも増すだけではないのか。こうして手を握れるまでに近づいた距離がなかったことになり、軽蔑されて忌み嫌われることになるのではないか。
もし出逢いをやり直せたら、もっと貪欲になれただろうか。手を握って振り払われない幸福を、言葉を交わし笑顔を向けられる幸福を、素直に享受できただろうか。決して起こり得ないことと知りながら、時間が巻き戻ることを願ってしまう。
「いいよ、ちょっとだけなら」
アキラは毛むくじゃらの手と手の間から自分の手を抜き取った。両手を拡げて若干首を傾げて見せた。どうぞ、という意思表示。
ウルリヒは身体にピリリッと電流が走った気がした。
「ッ……!」
ウルリヒは、アキラの気が変わらない内に急いでその小さな身体を腕のなかに抱き留めた。
抱き締めるのは恐くてできなかった。少女は見た目以上に細く、加減無く抱き締めたら崩れてしまいそうだ。苦しがらせたら嫌われてしまう虞もあった。
「どうだ⁉ 嫌ではないかッ?」
「あったかい」
アキラはウルリヒの胸の上に頭を置いてみた。ウルリヒは身を委ねられていることを察知し、尻尾がピーンと強張った。
王太子ともあろう者が、鍛錬にばかり精を出している無骨者が、柄にもなく緊張した。この様をルディが見たら情けないと嘆くか、笑うかするだろう。いいや、そのような瑣末なことは今はどうでもよい。今は腕のなかのこの感触をしかと噛み締めることのみが肝要だ。
「アキラは本当に……《雷鎚》の婚約者、なのか? 飛竜を駆り稲妻をも自在に操るという。エインヘリヤル屈指の猛将だと、このフローズヴィトニルソンにも届いている」
(ティエンは有名人だな)
ウルリヒは腕を緩めてアキラの顔を覗きこんだ。
「あの男はアキラとは随分と歳が離れているだろう。親が決めた縁談か、それとも手籠めにでも」
「てッ、手籠め⁉ ち、違う! ティエンとはまだ何もッ」
アキラの顔が一気にカーッと赤くなった。
(……してないこともないのか)
「《雷鎚》のことを、ティエンと呼んでいるのか」
ウルリヒは胸の奥にチクッと痛みを感じた。
異性を愛称で呼ぶのは、浅からぬ間柄であることを意味する。
うん、とアキラは赤くなった顔を両手で隠してコクッと頷いた。
「嫌ではないのか。あのように歳の離れた男の婚約者にさせられて」
「正式に婚約者ってわけじゃ……。わたしはただの人間だから、この世界の人と本当に結婚するなんて難しいんでしょう?」
「そんなことはないッ。ふたりが真に愛し合っていれば番になれないなどあるはずがなかろう。たとえ困難があっても超えてゆくものだ。もし俺なら……ッ、イヤ、俺は……」
「?」
ウルリヒはコホンッと咳払いをして背筋を伸ばした。
ついアキラの相手に自分を置き換えて熱くなってしまい、バツが悪かった。
「いやいや、そうか。手籠めにされたわけではないのだな、よかった」
「ティエンはわたしが嫌がることはしないよ」
「俺も!」とウルリヒが声を一段階大きくした。
「みっともなく《雷鎚》と張り合うのではないが、アキラが嫌がることは決してしないと誓う。勿論、子どもを怒鳴ることも二度としない。俺がアキラとの約束を守り続けたとして……いつか、俺のような恐ろしい姿をした者をアキラが好いてくれる可能性はあるだろうか。どれだけ時間がかかっても構わん。どんな我が儘も許そう。欲しいものは叶えよう。何でも望むものを用意する。だから、いつかッ……」
ウルリヒはマズルがつきそうなほどアキラに顔を近づけた。
つい言ってしまった、という表情。ウルリヒは口をしっかりと噤んで牙を仕舞い、恥ずかしさを噛み殺した。
アキラはウルリヒが本気で言っているのだなと感じ取った。
ヒトの姿形を好む嗜好を持つとはいえ、何故自分をこうも気に入ったのかまったく見当もつかない。もしかしたら、時間が経てば見飽きて目移りするのかも。しかし、今このときはウルリヒの情熱は本物だと思う。
「ウルリヒくんのことは……好きだよ。だからそんな顔しないでよ」
アキラは眉尻を下げてウルリヒに微笑みかけた。
「すッ、好き⁉ 本当か!」
「うん」
ウルリヒはアキラをガバッと抱き締めた。勿論、力の加減は忘れなかった。
「ありがとう、アキラ。ありがとうッ」
――わたしは嘘を吐くのが得意じゃない。吐いたところで下手な嘘なんてすぐにバレるに決まってる。だから、なるべく本当のことを口にする。
アキラはウルリヒの体をぽんぽんと優しく叩いた。
「あ。そうだ。ワガママを言っていいなら、ひとつだけ」
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