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Kapitel 04

05:黒い獣 01

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 領主の邸宅にて挨拶を兼ねた会食があるため、ヴァルトラム、フェイ、ビシュラの三人は前日よりも早めに拠点としているホテルに戻った。
 緋とヴァルトラムは市街に紛れるための軽装の下に隠していた装備を外し、各々ベッドの上やテーブルの上に放った。ビシュラは斜めにかけていたバッグを肩から下ろしながら、先程見た領主の子息リュメルを脳内に思い描いた。

「色白で金髪で、如何にも領主さまの御令息という感じでしたね」

「ああ、リュメルか」

 緋はビシュラの横顔を見てクスッと笑った。

「何だ、ビシュラはああいうのが好みか。確かに女が喜びそうな好青年風だったな」

「好みというわけではないですが、ただの観光客にもお声をかけてくださる気さくな方だと思いましたよ」

「確かに、偉そうに踏ん反り返ってるタイプには見えなかったな。普通のどら息子じゃあないらしい」

 女性二人は金髪の好青年を話題にしているが、ヴァルトラムはそれに加わらずどさっとソファに腰を下ろした。今夜同じテーブルを囲む相手とはいえ男の話などどうでもよい。

「歩兵長もフェイさんも会食までは一旦休憩なさいますよね。お茶でも淹れましょうか」

 そう言ってビシュラが、ホテルに備え付けのポットとティーカップのセットが置いてある一間のほうへ移動したのち、ヴァルトラムは「フェイ」と口を開いた。ソファの配置からしてヴァルトラムは此方に背を向けている。緋は朱色の後頭部を見ることになる。

「領主への挨拶は、俺とお前だけで行く」

 緋はソファの周りをぐるりとしてヴァルトラムの横顔が見える位置まで移動した。

「ビシュラを置いて行くのか。楽しみにしているのに」

「暇なら武器の手入れでもさせとけ」

「……嫉妬か?」

 緋の質問に対し、ヴァルトラムは「あァ?」と聞き返した。緋はわざわざ顔が見える位置まで移動したのにその顔は無表情だった。これは本当にヤキモチなど俗っぽい理由ではないらしい。緋はすぐに「何でもない」と自分の発言を打ち消した。

(言ってはみたが、やっぱり歩兵長に限ってそんなことはないか)

 トレイに三人分のカップを乗せてビシュラがやって来た。ヴァルトラムが座るソファの前にはダイニングテーブル。両膝をつきテーブルの上にトレイを置いた。そしてヴァルトラムの前に湯気が立ち上るカップを置く。

「ビシュラ、歩兵長からの命令だ。お前は領主の邸宅へは向かわずここに残れ」

「えぇッ!」

 ビシュラの手がカップを持ったまま宙でピタッと停まった。緋のほうを振り返り、あからさまに残念そうな顔をする。昨夜の様子とよい、仕事の一環とはいえ豪華な御屋敷でのディナーというものを内心楽しみにしていたのだろう。

「はい。かしこまりました」

 逡巡して逡巡して、仕事なのだからやむなしとでも納得したのだろうか素直な了承が返ってきた。かなり分かりやすくしゅん、と肩を落としているが。


 フレーゲル領主邸宅――――。
 ヴァルトラムと緋は定刻通りに姿を現した。街を見下ろす丘の上に建つ、恐らくは領内で最も大きな邸宅の前に。街から離れているため閑静であり、木々の葉が風にそよいでカサカサと鳴る音が耳障りなほど大きく聞こえる。周囲の木々が作り出す闇苅のなかで煌々と明るい門柱灯がかえって物淋しさを感じさせる。邸宅を囲う黒い鋼の柵には所々に植物の蔦が巻き付き、よい意味で古めかしい雰囲気を醸し出している。
 召使いの案内によって内部へと招かれた。如何にも領主の邸宅らしく、広間には立派な自画像が掲げられていた。来客用の貴賓室と思しき明るい間には燦然と輝くシャンデリア、その下には昼間偶然にも顔を合わせたリュメルと、その父領主が待っていた。
 両名と目が合うと、緋はカッと踵と踵を合わせた。

「マコック少佐からの要請により着任致しました。エインヘリヤル三本爪飛竜リントヴルム騎兵大隊リッター中尉であります」

 女性ながら凜々しく兵士然とした緋と、室内を緩慢に見渡しながら斜めに立つヴァルトラム。この二人は領主とその子息の目には対比的に映ったことだろう。

「此度の任務は主たる活動エリアが市街地でしたので軍装の準備が御座いません。このような恰好での着任の御挨拶をどうか御容赦ください、領主殿」

「栄えあるエインヘリヤルの部隊長殿に御足労いただけるとは、心から嬉しく思います。お二方にもマコック卿にもいくら感謝の言葉を尽くしても足りませんな」

ひとえにマコック少佐と貴殿の昵懇の間柄故。我々に感謝など不要です。我々は兵士。任務に身命を賭すのは当然の義務であり使命です」

 緋の威風堂々とした兵士振りに、領主からは「ほぅ」と感嘆が漏れた。緋としては信頼すべき人材であると印象付けるパフォーマンスも、課せられた任務の一部に過ぎない。つまり領主との会話すらもそぞろにしているヴァルトラムは、上官でありながら最初から責務の一部を放棄していることになるわけだが。

「先程は大変助かりました」

 緋がリュメルのほうに顔を向けると、彼はニコッと微笑んだ。

「マコック卿から派遣していただいた方々と気付かず失礼しました。流石はイーダフェルトを守護するエインヘリヤル。街の破落戸ごろつき程度では何の問題にもなりませんね」

「先程とは?」

「街で旅行者が絡まれていたところをこの方たちに助けていただきました、父上」

 リュメルがそう言うと、父領主は顔を明るくして緋とヴァルトラムに歩み寄ってくる。

「旅行者を守っていただきありがとうございます。旅先で何かあったとなってはこの街のイメージダウンになってしまう。他人に迷惑をかけるような輩が昼間の往来をウロウロしているという時点で多少のイメージダウンではありますが」

「街に活気がある証拠です。栄えている街だから人が集まる。善人も悪人も」

 そして得体の知れない事件も……。とは流石に緋は口にはしなかった。
 挨拶を終えたのち、ダイニングに案内され会食が始まった。先程の貴賓室に吊り下がっていたシャンデリアも立派なものだったが、此処の装飾もまた豪奢だ。晩餐の参加者よりも多い使用人たちが壁沿いに立ち並んでいる。使用人によって重厚な椅子が引かれると、まるで貴人のように其処に腰掛ける。一度に十名は座ることができるであろう大きな縦長のテーブルには染み一つ無い真白いクロスがピンと張られ、その上には銀のカトラリーや燭台。緻密な細工が施された金属製のゴブレットに特産品の果実酒が注がれた。冷めていない純白の皿に盛られた料理からは湯気が立ち上る。
 緋は領主たちと世間話などを交わしつつ、ヴァルトラムは次々に運ばれてくる料理を黙々と食していた。

「大尉殿は寡黙でいらっしゃる」

「ええ、まあ……。歩兵長は普段からあまり饒舌ではあられない。特に今は任務中ですので」

 領主から話を振られたから、というわけでもないが気が向いたのであろう。ヴァルトラムは手を止めて言葉を発することにした。

「この家に、生き物はヒトだけか?」

 ようやっと口を開いたかと思えば突拍子もないことを言う。緋は盛大にチッと舌打ちしそうになった衝動を抑える。
 領主とリュメルは不思議そうにしながらも客人からの質問に答えてくれた。

「勿論厩舎きゅうしゃに馬が数頭、それに犬を室内で飼っておりますが……それが何か?」

「フゥン」

「大尉殿は動物がお好きですか。うちの犬はさる上流貴族から譲り受けたものでして血統も素晴らしくなかなか愛らしい顔をしておりますよ。馬もそれは見事なものを競りで今年は運良く……」

「イヤ、別に」

 ヴァルトラムは饒舌になりかけた領主の話を途中で断ち切った。そしてまた食事を再開し黙々とフォークを動かす。にっこりにこやかに愛想を振り撒けとまでは言わないが、角が立たない程度に社交性のある会話くらいは意識していただけないものか。緋は「はあ」と溜息を吐いた。


 領主との顔合わせを終え邸宅の外に出た頃には、どっぷりと日は沈み夜空には星がチカチカと瞬いていた。此処から街を見下ろすと赤や白の光が煌々としており、まだまだ繁華街が賑わっているようだ。

「ビシュラに土産でも買っていってやれ、歩兵長」

 完全に理由が解らないというヴァルトラムの表情を見ているとイライラしてくる。緋はチッと舌打ちをした。

「ビシュラは会食を楽しみにしてたのに歩兵長の一声でナシになったんだぞ。何を考えてビシュラを置いてきたのかは知らないがフォローはしといたほうがいいだろう。何でアタシがこんなことにまで気を回さなくちゃいけないんだ、ったく」

「フォローねぇ」

 分かっているのかいないのか生返事。緋は腰に手を当てて深い溜息を吐いた。

「大体、あの訳の分からない質問は何だったんだ。人が折角、雰囲気が悪くならないように努力しているというときに何を考えていた」

「上等な肉だ。温かいメシは美味い。……とかだな」

「聞いてみて損した。仕事中はもう少し仕事してくれ、歩兵長」



 ほぼ同時刻。
 ビシュラは繁華街から少し離れた通りを一人で歩いていた。人々は灯りを求め明るいネオンサインのほうに惹かれるのか、ぽつんぽつんと街灯が照らすだけの薄暗い路地には人気が無い。コツン、コツン、と自分の鳴らす靴音に、遠くから人々の楽しそうな声が混じり、距離を感じさせる。
 何故このようなところに一人でいるのか、それはビシュラが己の無力さを自覚しているからだ。三本爪飛竜騎兵大隊の隊員として相応しい人物になりたいと焦りつつその上、役に立ちたいとやる気を奮起させているからだった。烏滸がましくも功績を挙げたいなどとは願わないが、少しでもヴァルトラムや緋の助けとなりたい。

「御食事会といえど歩兵長もフェイさんもお仕事なさっているのにわたしだけ部屋でのんびりはできないです」

 グッと両手で拳を握りふんすふんすと精一杯の気合いを入れる。

「わたしには情報収集しかできませんが、できることだけでも頑張ることにしましょう。昼間みたいに絡まれたらと考えると正直恐いですが……。今はお二人は会食中なので助けもありませんし。いいえ、きっといざとなれば何とかなるものです」

 丁度、繁華街のほうへと抜ける小道との曲がり角に差し掛かった。角からそっと頭だけを出して向こうを覗き込んでみた。ビシュラは成人しているが繁華街には縁が無く今まであまり足を踏み入れたことがない。ましてや夜間に一人でなど、ちょっとした別世界だ。

「やっぱり部屋に戻ったほうがよいでしょうか……? 待機が嫌なら武器の手入れでもしていなさいとの御命令でしたが……。しかし自分の双剣以外は扱ったことがないので歩兵長のものを触るのは恐いですし……怒らせてしまったらタダでは済まないでしょうし……」

 ビシュラにとってヴァルトラムは恐怖の対象だ。偶に、本当に偶にとても一瞬だけ、優しいのではと勘違いしてしまいそうになるが、目付きも態度も命令もすべてが恐ろしい。今回の任務も緋がいなければヴァルトラムの同行を断っていただろう。
 グルルルルルル……。
 何の音だろう、大型の獣が喉を鳴らすような音。そのようなはずがないとふるふると頭を振った。人が主役の街中では獣は鎖に繋がれているか檻のなかにいるものと相場が決まっている。
 人気の無い路地裏、建物で陰った薄闇苅のなか、何かが光ったのを見付けてビシュラはビクッとした。暗闇に包まれて対になってチカチカと閃く二つの光、喧噪が薄れて静まり返った空間、温暖な気候であるはずなのに妙に寒気がする、このような空気には覚えがある。〝獲物〟として標的にされているときの空気だ。
 ひた、ひた、とゆっくりと地面を踏み締めながら建物の陰から姿を現したには、予想通りのモノだった。できればこのような最悪の予想など外れていてほしかったけれど。

「どうして市街地にこんなに大きな動物がっ……」

 ソレを目にした瞬間、ビシュラはハッと息を呑んだ。
 黒い体毛に覆われた太い四つ足の獣。四つ足の状態でも体高はビシュラの身長近くまである。前足を上げて立ち上がればビシュラより一回りも二回りも巨大な体躯だ。大きな口からはやたらと発達した牙が零れており、それで一噛みされたならビシュラの腹など貫通してしまうだろう。引っ切り無しに喉を鳴らし涎を垂らし、性質は獰猛そうであり、尚且つ食い意地が張っていそうだ。
 ガザッ、と獣が駆け出した。対象との距離など一足飛びで飛び越える。大きく開いた口から鋭い歯列が飛び掛かってきた。
 ガツゥンッ!
 ビシュラに食い付こうとした寸前、獣は何かに衝突して弾かれた。本能的に数歩下がって対象から距離を取った。
 ビシュラは咄嗟に瞑ってしまった眼を開け「はっはっ」と短く息をする。

(あ、危なかった! 任務中はいつでも《牆壁》を発動できるようにしておきなさいって、騎兵長の言い付けを守っていてよかったです)

 獣はすぐさま追撃を仕掛けてくることはなかった。不可視の壁に阻まれたことを警戒しているのか、右へ左へウロウロしながらビシュラの様子を窺っている。距離をとってくれたのは幸いだが、諦める気はないらしい。

(この状況、どうしましょう……次は何をすれば。《牆壁》でガードしながら《重層牆壁ドッペル》の起動準備をっ……違う、落ち着いて)

 落ち着こうとしても体が勝手に震える。ビシュラはギュッと拳を握ったが震えていることを自覚するだけでちっとも収まらない。

(やらなきゃいけないのは《方形牆壁クーブス》で拘束する。それがわたし単体で実現しうるこの場での最善の方策!)

 深呼吸をして覚悟を決めたつもりだったのに、獣を視界の真ん中に据えると震えがぶり返した。このような獰猛な存在に単身で挑む勇気など本来は持ち合わせていない。命の危機を自力で回避する必要などない平穏な暮らしをしてきた。初めてのことを上手くやる自信などない。上手くやれなければ生命に関わるなんて分が悪すぎる。

(タイミング、上手く合わせられるでしょうか……実戦の経験なんてないのに。ないけど、やらなきゃ。自分でやらなきゃ。焦ってはダメです。焦りはミスを生みます。これは実戦。ミスをしたら、死ぬ……!)

 ビシュラはプログラムの準備を始めた。獣にプログラムを解する知能があるとは思えなかったが自然とこそこそしてしまうのは小心者故だろうか。
 ビシュラの行動を理解はできなくても本能的に何かに勘付いたのか、獣は急にピクッと動きをやめた。そして俄にシューッと呻りだしてビシュラを睨み付ける。それに気圧されてビシュラは一瞬ビクッと集中を途切れさせてしまった。
 次の瞬間、獣はまたビシュラに躍り掛かった。ビシュラは眼を大きく見開いた。

(《方形牆壁クーブス》の起動が、まだっ……)

 夜なのに、ギザギザの歯列がギラリと光って見えた。この鋭利さの前には鍛えていない肉など容易に引き裂かれるに違いない。瞬時に己の手足が引き千切られている場面を想像し、ビシュラは咄嗟に目を閉じた。
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