ベスティエンⅢ【改訂版】

花閂

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#22:Prinz-Prinzessin 王子姫

Ein Mädchen spricht mit der Bestie. ✤

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 某ゲームセンター。
 天壇青てんだんせいの制服を着た少女たちが率先して入店し、真白い制服の男たちがそのあとに続いた。
 美作ミマサカは少女たちに挟まれてとにかく上機嫌。普段が男だらけの環境だから、いくらか年下とはいえ異性に囲まれる情況に浮かれていた。渋撥シブハツは特に何も考えていなかった。鶴榮ツルエは一人、小首を傾げた。

「まさか石楠セキナンのお嬢さんが行きたいところがゲーセンとはな」

 鶴榮の独り言は、ゲーム機の音で騒がしい店内の喧噪に掻き消された。
 すぐ近くにいた夜子ヨルコにだけは聞こえ、フフフと笑みを溢した。

「もしかしてワシ等に気ィ遣てるか? もちっとええとこでええんやで。今日は金ヅルがいてるし」

 金ヅル――盲目的に従順な後輩――美作は、鶴榮や渋撥から命じられれば何につけても逆らうことがない。本日の少女たちの費用をすべて持てと言われても従う。

「今日は鶴榮はん等がいはるさかい、ちょっと背伸びしましたえ」

「はあ?」

「ゲームセンターは行ったらあかんのどす、校則で」

「まじか」

「それでのォても、みんな何かしら習い事があったりお迎えが来はったりしますさかい、下校がてら遊びに行くことは稀どす。ゲームセンターにはプリがありますさかい、ほんまはみんな行きたがってるんどすえ」

「へぇ~。ガッコ終わってもお嬢は大変やな」

 鶴榮は感嘆を漏らした。
 鶴榮はそのような学園生活は不自由なものだと思ったが、夜子はそのように思っているようには見えなかった。不自由を不自由とも思っていない。十代半ばの少女が、すでに己の人生や生き方を弁えているように振る舞う様は、大したものだと思わされた。

(この世にはこんな風に生きてるジャリもいてるんやな。こりゃほんまに住む世界がちゃうかもな)

「へ~。美作さんは二年生なんですかー」

「みんなは全員中三なんかー」

 前を歩く美作たちから弾むような楽しげな話し声が聞こえてきた。
 鶴榮は目線を前方へと移した。後ろ姿からも分かるくらい美作はゴキゲンだ。何より声の質が異なる。学校でこのように明るいトーンなど聞いたことがない。

「もー全員カオと名前覚えたで。シノブちゃん、モミジちゃん、和々葉ワカバちゃん、夜子ちゃんな。カワエエ子の友だちはカワエエ子いうケド、ほんまやな。みんなカワエエさかいビックリしたわ♪」

「そんなカワエエ言うてくれるの美作さんだけですよ。ほんまに思てないでしょー」

「イヤ、ほんまほんま」

「あ、プリあった。美作さんも一緒に撮りまへんか」

「うん。撮る撮る♪」

 美作は椛と和々葉に挟まれて両手に花状態。スキップしそうなほど軽い足取りだった。
 普段ならば無性に叩きたくなるが今日は勘弁しといてやろう、と鶴榮は思い留まった。

(一番楽しそうやなアイツ。まあ、金出すのアイツやしええか)

「なあ」と鶴榮は渋撥に声をかけ、顎でクイッと合図した。それだけで渋撥は意図を読み取った。

「ワシ等ちょっと充電してくるわ」

 鶴榮がそう言い、レイはコクンと頷いた。
 禮の隣にいた偲は意味が分からず首を傾げた。

「充電?」

「たぶん、タバコ」

「はあッ⁉ 道理でタバコ臭いと思った!」

 偲は大きめの声でハッキリと放言した。

(臭い、は刺さるな~)

 鶴榮は床のほうへ顔を背けて苦笑した。
 美作は慌てて自分の制服を引っ張って嗅いだ。

「俺も臭い?」

「まあ、多少……」

 椛と和々葉は目を伏せて遠慮がちに答えたが、美作はガーンッとショックを受けて肩を落とした。如何せん臭いという単語自体の攻撃力が高い。
 禮は、臭いかなあ、とぼんやり考えつつ渋撥の顎の稜線をジーッと見詰めた。渋撥とは毎日会うわけではない。確かに再会する度に煙草のニオイを嗅ぎ取ってはいた。不思議と偲のように臭いと感じたことは無かった。これが渋撥のニオイなのだなあと思っていただけで。
 禮からの視線に気づき、渋撥は小首を傾げた。最早、煙草の香は渋撥の体自体に染みついていると言ってもよい。自分の体臭を嗅ぎ分けるなど達人の域だ。

「タバコ臭いか? 分からん」

「ハッちゃんいつも吸ってるから。吸ってへんときある?」

「風呂ンときと寝とるときや」

 禮は渋撥の返答を無邪気にアハハと笑った。
 しかしながら、偲はそうはいかなかった。良心に照らしても許容しがたいし、何より王子の恋人として突如出現したこの強面を腹の中で非情に憎からず思っているのだから。

(この男~~ッ! 高校生のクセにヘビースモーカーだとお? 法律も許さへんしウチも許さへん! 禮にニオイが移ったらどうしてくれるん💢 王子がタバコ臭いなんて大スキャンダルやッッ)



 鶴榮と渋撥は喫煙スペースへと移動した。プリントシール機のコーナーと同じフロア内の隅にあり、外界とは透明の板でほぼ真四角に区切られている。灰皿と、腰掛けられる簡易なバーが設置されていた。普段なら制服だろうが目があろうがお構いなしに喫煙するところだが、今日はお嬢様たちを連れているからそうはいかないという鶴榮の配慮だ。
 スペース内は鶴榮と渋撥の二人だけだった。鶴榮は心置きなくフーッと盛大に紫煙を吐き出した。

「女のコに臭い言われるんは効くな」

「そんなん気にしとったら吸われへん」

「お前も禮ちゃんに言われたら効くやろ」

「…………」

「わっはっはっ」と鶴榮は口を開けて笑った。
 黙り込んだ渋撥を馬鹿正直な男だと思った。表情は少ないがこういう点は非常に分かりやすい。

「禁煙でもはじめてみるか?」

「お前が已めたら考えたる」

 鶴榮と渋撥が喫煙スペースへと、椛と和々葉はプリントシール機へと向かった。
 椛と和々葉は美作の腕を一本ずつ引き、禮ちゃんも、と手招きしてプリントシール機のほうへ近付いていった。美作が女の子からの誘いを断るはずがなく、禮は友人からの誘いを気さくに承諾した。
 偲と夜子はゲームセンターの壁際に移動した。本日の偲はプリントシール機を楽しむ気分ではなかった。夜子は偲を一人にしておけないから付き合うことにした。
 偲と夜子の位置から喫煙スペースは一直線上。喫煙スペースの間仕切りは透明のアクリル板であり、煙草を呑んでいる渋撥と鶴榮の姿はよく見えた。
 偲は忌々しげにきつい目付きを渋撥と鶴榮のほうへ向けた。学生服で喫煙する厚顔振りが腹立たしくてしようがない。

「ほんまに制服でガンガン吸ってるやん。信じられへん」

 未成年の喫煙は悪いこと。その点については夜子も異論はない。偲のように仇敵に向ける目はしなかったが、過剰なフォローをするつもりもなかった。

「夜子ッ」と呼んだその声には明らかに苛立ちがあった。

「禮のカレシ、どこがええ人なん。堂々とタバコ吸うは、人蹴り飛ばすは、通報されるは、カオめっちゃ恐いは! あんなん禮とぜんぜん釣り合わへんッ」

「そうねえ。渋撥はんの表面だけ見ると悪い人みたいやねえ。せやけど、好きになってしもたら釣り合う・合わへんなんて話は野暮やし」

「好きになったらって、大体それ本気? 禮はあの男のこと本気で好きなん? 世間知らずやから騙されてとか、勢いで押されて付き合うてるとか、カレカノに興味出てきたとか、勘違いで付き合うてるんちゃうの」

「禮はボーッとしてるとこもあるけど、大事なことはちゃんとしてる子よ」

 夜子の発言は確信めいていた。
 喫煙スペースを睨んでいた偲は、夜子のほうを振り向いた。

「時間がかかったり迷ったりするかも知れへんし、時間が経ったり知らんこと知ったりして心が変わることもあるかも知れへん。せやけど、真剣に、一生懸命に、ちゃんと考えて決められる子よ。流されてとか勢いとかで大事なこと決めへん。あの子にとって大事なことは、周りの人間や偲が決めることちゃうえ」

 やんわりと、しかしながらハッキリと、あなたが口を出すことではない、と言われた。
 偲には投げ遣りな発言に感じられた。禮のことを第一に考えていない。泣いても悲しんでも自己責任なのだから知ったことではないと、突き放しているように聞こえた。
 わたしはこんなにもあの子のことを大事に想っているのに。

「禮が本気でもあの男は本気ちゃうかも知れんやん。夜子は禮が傷付いてもええのッ」

「ええよ。それが、あの子が決めたことなら」

「っ……ウチはイヤ。禮が傷付けられて泣くとこなんて見たない。それもあんな男にッ」

 偲は一気に込み上げてきた涙をグッと堪えた。すぐに感情的になってしまう性格には自覚があった。このままではこのような公共の場で泣きながら文句を言ってしまう。泣いてしまえば夜子が悪者になってしまうから涙を見せてはダメだ。これは対等な言い合いなのだから。

「そもそも」と夜子から顔を背けて言った。

「夜子の恋愛観は大人っぽすぎるんよ。どんだけ経験したらそんな達観できるんよ。誰だって傷付きたくないに決まってるやん。フツーは恋愛でツライ想いなんてしたないのっ」

「ウチも経験が豊富なわけちゃうけど……」

 夜子は偲の心情を察し、泣いているの、と慰めようとはしなかった。偲の勝ち気な性格を理解しており、敢えて見て見ぬ振りをした。
 偲は一度ズルッと鼻を啜って涙を堰き止め、爆発しかけた感情を平常に持ち直した。


「ねえねえ、キミたちー」と突然話しかけられ、偲と夜子は声のほうへ目を向けた。
 学生服の若い男が二人、偲と夜子の前に立った。

「その真っ青の制服ってさー、もしかして石楠セキナン?」

 石楠女学院の目が覚めるような天壇青てんだんせいのセーラー服は、荒菱館高校の学生服に負けず劣らず目立つ。しかも着用者は必ず品のよいお嬢様。優良物件がマークをつけて出歩いているようなものだ。そこへ一見して可愛らしい顔が乗っかっているとくれば、異性に飢えている少年たちは見過ごさなかった。

「う、うん」と偲は歯切れ悪く答えた。

「ホラな、言ったろ。こんな制服ほかに無いってー」

「へー。石楠生でもゲーセン来たりするんだ。二人で来たの? ほかにも友だち一緒?」

「友だちと、やけど……」

「おっけー♪ じゃあ何して遊ぶー?」

「えっ?」と偲は咄嗟に声が出てしまった。

「イヤ、お前早ぇっつーの。相手は石楠のお嬢様だぞ。ところで今日何時までヒマ?」

「門限とかあるかんじ? 門限まででいいからさー、ちょっと遊ばね?」

 男たちは偲と夜子を逃さないように、一人は肩で壁に凭りかかり、もう一人は手を突いた。
 退路を断たれた偲は、急に不安感と不快感が強くなった。勝ち気な性格でも育ちのよいお嬢様。見知らぬ男に詰め寄られることに慣れていなかった。

(コレ、ナンパかな? どうしよ……この人等中学生? 高校生? 知らん人なのに何でこんな近いん。ちょお恐い……。禮がおったら助けてくれるのに……!)

 しかし、いないものを期待してもしょうがない。偲は勇気を出して口を開いた。

「い、行かへんッ」

「えー。何でよ。ほんと門限まででいいからさー」

「行かへん言うたら行かへんのッ」

「じゃあ一時間だけ。つまんなかったら帰っていいから」

「友だちはどう?」と男は夜子に尋ねた。

「うちもこの子も結構どす。友人も来ましたさかい」

 夜子の伏し目がちな視線が男のほうから真横へとスライドした。
 男は友人と聞いてにわかに期待した。女子が増えるなら大歓迎だ。わくわくして視線を辿り、一人の男に行き着いてギクッとした。
 真白い学生服を着た巨躯。三白眼で真っ直ぐに此方を見据えながら近付いてきて、夜子の傍で足を停めた。煙草を咥えたまま無言で、幼気な少女に迫る男たちを眼下に見下ろした。

「え……友だちって、コレ?」

 男は温和しい美少女と強面の巨躯とが結びつかない様子だった。もう一人の男は即座に青ざめた。

「バ、馬鹿ヤロッ、お前知らねーのか! この人は荒菱館のッ……!」

「ヒッ! すんませんしたッ」

「あ、あ、あの、俺等、アンタのツレと知らなかったんでッ」

「す、すんませんしたーーッ!」

 渋撥が一声も発することなく、男たちは一目散で去って行った。
 偲は渋撥を見上げてポカーンと口を開いて呆然とした。彼女にとっては不安の対象だったのに、一睨みで退散させてしまうとは。

(ヤンキーをビビらせるヤンキー……つまりオブ・ザ・ヤンキース……コレはまさにキング・オブ・ヤンキーなのでは⁉)

 夜子は渋撥にお行儀よくスッと頭を下げた。

「おおきに。渋撥はん」

 偲も、助けてもらったのは事実なのだから礼を言わなくてはと思ったが、渋撥への対抗心が言葉を詰まらせた。

(ウッ。この男、間近に見るとほんま標高高い)

 偲は渋撥の横顔をジッと見詰めた。2メートル近い巨躯は一介の女子中学生には充分に威圧的だ。
 学生服姿で平静に煙草を咥える不貞不貞しさは、礼を言わねばという決心を鈍らせた。否、悪いことを悪いと糾弾するならば、善いことは善いと賞賛せねば、公正ではない。

「…………。お兄はん、意外にええ人?」

 偲は心を決めて礼を言う前段階をしたのに、渋撥からハッと鼻先で嘲弄された。

「俺がええ人に見えるんか。お前も相当育ちがええな」

(はああッ?💢)

 渋撥の傲慢な態度は、偲の決心を覆すに充分だった。このような男にありがとうと言うなど彼女の正義心には耐えられない。
 夜子は、偲がギリギリと拳を握っているのを見て、やれやれと嘆息を漏らした。食ってかからないだけヨシとしよう。

「あ。近江オーミさん、ツルさん。ここにいはったんでっか」

 美作ミマサカがゲーム機の裏からヒョコッと顔を出した。
 鶴榮ツルエは、一人でいる美作に対して、プリントシールを撮りに行ったのではなかったか、と尋ねた。

「撮りましたがな~。せやけど、あの子等続けてぎょうさん撮るんでっせ。俺もそろそろヤニ切れで」

(この人もタバコ? タバコタバコタバコって、煙吸わへんと死ぬの⁉ そんなわけないやん! こんなタバコ類人猿と一緒におったら禮まで悪い影響受ける。禮は世間知らずで純粋なんやからッ)



 シノブは、美作ではなく渋撥シブハツに向かってキッと強い目を向けた。彼女の敵愾心は渋撥をロックオンしているのだ。

「禮といてるときはタバコやめてッ」

「あ?」と渋撥はまさに煙草を咥えた姿で聞き返した。

「お兄はん等が吸うのは知ったことちゃうけど、一緒にいてたら禮まで共犯になってまうやん。お兄はんが補導されても大人に怒られてもどーでもええ。せやけど禮を巻き込むなら、絶対カレシとは認めへんからッ」

 渋撥はこの少女から嫌われていることは分かっていたが相手にする気はなかった。子どもの駄々のようなものだと放っておいた。しかし、真正面からカレシとは認めないとまで言われてはスルーできなかった

「何でお前に認められなあかんねん」

「ッ……!」

 勢い任せに強気に放言した偲だったが、咄嗟に言い返せなかった。男二人が視線だけで逃げ出したのだから、大事大事に育てられたお嬢様が渋撥に対して恐怖心を抱くのは当然だ。
 鶴榮が渋撥の腕を叩いた。
 ――禮ちゃんの友だちくらいとは上手くやれ。
 渋撥の脳内には鶴榮のテレパシーが届いたようだった。この幼馴染みは幼い頃から自分の数倍は頭の回転が速くて先を予見している。そうしたほうがよいと言うならそうなのだろう。
 渋撥はプッと煙草を吐き捨てた。「クソ」と小さく愚痴を零し、床に落ちた吸いかけの煙草を靴の裏で押し潰した。

「可愛げないジャリや」

 カチンときた。渋撥の一言は偲の怒りを再燃させた。
 ――悪人に可愛げが無い言われる筋合いあれへんッ💢💢
 偲はビシィッと渋撥を指差した。恐怖心に勝ち気な性格が勝った。

「ウチがお願いしたら、お兄さんなんかスグ禮にフラれるんやからね! ウチは禮の親友なんやから、ほんまにお願いしたら禮は絶対きいてくれるもん。ウチのほうが禮と付き合い長いんやから。禮は絶対お兄さんよりウチをとるんやから!」

 渋撥は小娘一人が何を言ったところで大して気にしないだろうが、それにしてもサスガに言い過ぎだ。
 夜子は偲を、めっ、と諫めた。

「こら、偲。何てこと言うん」

「だってこんな人、禮のカレシに相応しくないもん! 禮は王子様やのにッ」

「王子様?」と渋撥と鶴榮は反射的に聞き返した。
 鶴榮は、偲は随分興奮しているようだから夜子のほうへ尋ねることにした。

「王子っちゅうのは?」

「禮は石楠セキナンでちょっとした人気者どして」

「ちょっとどころじゃない!」と偲は大きな声で言明。

「禮は完璧な王子様✨✨ 強くて、カッコよくて、優しくて、顔はキレエ、スタイルよし、スポーツは何でもでけて、成績もええ、性格は超絶素直。その辺の男なんか足許にも及ばへん。中等部だけやのォて、初等部や高等部にも熱烈なファンがぎょうさんいてるし、先生かてメロメロ。ファンレター、ラブレターは当たり前。告白された回数も数え切れへん。今日かて一人フッて来てる!」

 夜子は頬に手を当てて眉尻を下げた。まるで自分のことのように誇らしげに言うのだから困ったものだ。

「この子はもう。人のプライバシーを」

「ちょっと見いひんくらいにキレエな子とは思うとったが、それほどとはな」

 鶴榮が感心している横で、美作は一人別のことを考えていた。

「観るだけならレズ物アリやけど、リアルになると若干しんどいかも――」

 どっす!
 美作の邪な発想が幼気な少女の耳に入る前に、鶴榮が肘鉄を入れて黙らせた。

「王子とヤンキーじゃ釣り合わへんの!」

 渋撥は偲から顔を背けて深い溜息を吐いた。只でさえ他人の思考を読むことは苦手なのに、これと上手くやれというのは無理難題のように思われた。

「何じゃこのジャリ……」

「お嬢と付き合うっちゅうのはなかなか難儀やな」

 鶴榮は渋撥の背中をパンパンッと叩いて笑った。
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