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#21:A lily of the valley
After a drinking spree. 01 ✤
しおりを挟む昼休み。
私立荒菱館高校・一年B組教室。
杏は、禮の前席の斎藤川原くんを追い出して椅子を占有。クラスメイトのいつものメンバーも、禮の席を中心に集まって休み時間を過ごしていた。
昼食を食べ終えた杏は、禮の机の上に上半身を乗り出して禮の顔をじーっと凝視。顔付きが険しくなるのはガンを飛ばしているのではなく心配からだった。
「禮、ほんまに松葉杖とか突かんでええの?」
「うん。もう普通に歩けるし」
「せやけどヒビ入っとったんやろ」
「ゲッ!」と驚いた由仁が零した。
「ヒビ入っとってあんな動きしとったんか禮ちゃん」
「あん時はアドレナリン出てたから特別やよ。フツーんときはムリ」
禮は困ったように笑いながら、食後のデザートにと購買で買っておいたプリンの蓋をベリッと開けた。
「女子高生がアドレナリンとか言うな。ちゅうか頭突きとかしよる女、マジ引くで」
「へーちゃん、引くとか言わんといてよ」
大鰐は禮の横顔に批判的な視線を向けた。彼は禮の戦い振りを最も近くで見た一人。その強さは想像を超えていた。あのときの純粋な感情は、賞賛よりも驚愕だった。
「女のケンカで頭突きか……」
「エンちゃんほんまに引いてへんっ?」
「引きはせえへんけど、もうちょお自分の体大事にせえ、禮」
大鰐の机の上に腰掛けていた幸島が、そのようなことを言った。
禮はキョトンとして幸島を見上げた。幸島の顔には冗談じみた笑みはなかった。
「なんぼ強い言うても禮が勝てたんは一対一やからや。あんな大人数のケンカ、数で囲まれたらどうにもならんかったで。禮は女なんやからな」
幸島の発言によって全員が一瞬ピタリと停止した。
禮が並の男よりも腕が立ち、その実力は形式的なものではなく実戦的な場面でも遺憾なく発揮され、いざとなれば形振り構わない強さを持っていることは証明された。しかしながら、それは限定的なものだ。女の身であるが故に。
幸島の指摘は正しい。今回の件は結果オーライに過ぎない。脚を負傷したことは明白に不運だが、敵が一対一の対決を選んでくれたのは運がよかった。
「ハルちゃんはお父さんみたいやな。パパって呼んでええ?」
「黙っとけ虎徹。俺はマジメな話してんねん」
冗談みたいにしようとした虎徹を、幸島は素早く制した。彼はこの話を有耶無耶にするつもりはなかった。
「分かってるよ、そんなん」
禮の返答は少々予想外だった。幸島の指摘は自身の強さを自覚している者にはお節介な苦言。放っておいてよと反発されてもおかしくないと思っていたのに。
「ウチ、好きでケンカしてるワケちゃうよ。ケンカに勝ったり人殴ったりしても楽しない。自分の為に人殴っても何にもならへん」
強くなりたいと願ったことはある。理由や目的など無く、ただいたづらに欲した。自分の欲の為に、他人を痛めつけ、踏み躙り、平伏させ、何も感じなかった。――――悪魔だった。
今はもう違う。変わったんだ。わたしはやさしい人になりたい。
「ウチもそれがええ。禮がケガするトコなんか見たない。あんな必死なケンカもう二度とせんでええ」
杏はやや顔を顰めて難しい表情をしていた。
禮はそれが自分を案じてのことだと分かるから、安心させたくてニッコリと微笑んだ。
「うん。ウチも、アンちゃんがケガすんのは嫌やよ。ウチの所為であんなことになったのにアンちゃん心配してくれてありがと」
禮は幸島や大鰐のほうに身体を向けて頭を下げた。
「みんなも助けに来てくれて……ありがとう」
彼等は改めて礼を言われたことが気恥ずかしかった。禮と杏を連れ去られ、彼等が助けねばと動いたことに理由はない。気付かぬうちに、理由なく衝動的に行動してしまうくらいには、仲間と呼べる関係性ができていた。
大鰐は顔を背けてケッと言い捨てた。虎徹はその態度を見てニヤニヤと笑った。
「素直ちゃうなー、へーちゃんは」
「あァ?」
「先頭切って猛ダッシュかましとったクセに。禮ちゃんとアンちゃんがごっつ心配やったんやろ~」
大鰐は、禮と杏の目が自分のほうを向いて居心地が悪くなった。
照れ隠しなのか、椅子から立ち上がって虎徹に掴みかかったとき、丁度校内放送が始まった。
ピンポンパンポーン。
〈三年B組近江渋撥。三年B組近江渋撥――〉
禮は顔を上げて天井付近のスピーカーを見詰めた。
由仁は大きな溜息を吐いた。虎徹はやれやれと首を竦めた。
「コレってやっぱ赤菟馬のこっちゃろな~」
「あんだけの人数いきなり消えて何も突っ込まれへんほうがおかしいやろ。マキちゃんと瀧センセいてたしなー」
「お前等何でわざわざ教師の目の前で抜けんの? 見られてなきゃ後から何とでも言い訳できんのに」
「女と遊び行っとって肝心なときにおらんかったヤツが何ぬかす」
「この役立たずッ」
脩一はその場にいもしなかったくせに知ったような口を叩いたから、由仁と大鰐から一斉に批判を喰らった。
〈――――一年B組相模禮〉
禮はまったく心の準備がなかった。不意に名前を呼ばれてピクンッと背筋を伸ばした。
全員の目が禮に集まった。
〈三年B組近江渋撥、一年B組相模禮。以上二名は直ちに教頭室まで来なさい〉
ブツリ、と放送が切れた。
直ちにということは今すぐに、ということなのだろう。禮は蓋を開けただけで手つかずのプリンに目を落として名残惜しそうに椅子から立ち上がった。
「新発売のプリン、今日こそ食べよ思て楽しみにしてたのに」
「禮、ばっくれたほうがええんちゃう?」
「何で?」
「何でて、呼び出された理由分かってへんの?」
「ハッちゃんと一緒に呼び出されるんやから、この前ケンカしたことが原因ちゃうの?」
禮はけろりとしており、杏は口をポカンと開けた。
杏以外の男子生徒諸君も一様に「はぁ~」と深い溜息を吐いた。
「分かっとっても呼ばれりゃ素直に行くんやな、禮は」
「大目玉喰らうて分かってんのによおそんな素直に行けんなあ」
「しかも教頭室って、いいトコ教師共に囲まれて吊し上げだぞ。俺なら行かないね」
「悪かったら?」と禮は脩一に尋ねた。
「停学じゃね?」
「えー……」
「ソレで済めばええけどな、近江さんの場合」
禮が、それは嫌だなあ、と言う前に大鰐が横から放言した。近江さんの場合という言い方をされては聞き流すことはできない。
「なんぼ警察沙汰になってへん言うても四十人越える暴力事件や。事実上、荒菱館と赤菟馬の抗争や。何もかんも全部バレとるんやったら近江さん、退学ンなってもおかしないんちゃうか」
生徒呼び出しの放送の直後の教頭室には、一年B組担任・四谷と三年B組瀧、五十代を過ぎた男性教諭がいた。そして、奥のデスクにはこの部屋の主・教頭が座していた。
教頭はデスクに両肘を突いて口許で左右の手を重ね、黙々と新聞に目を通していた。背にした窓から差し込む陽光が逆光となり表情は見えない。
教頭のデスクの前にはネクタイを締め背広を着込んだ男性教諭が立っていた。年若い二人の教諭は、上司に当たる男性教諭の前に並んで叱責されていた。
「君たちは自分の責任というものをどう考えているッ‼」
この男性教諭は、荒菱館高校の教諭のなかでも口煩い部類の筆頭。怒りのボルテージが上がりやすいことと声量が大きいことに定評がある。今日も今日とて、顔を真っ赤にして怒声を張り上げていた。
「聞いているかね! 四谷先生、瀧先生!」
「はーい」
「はーいって……!」
瀧は粛々と叱責を受け容れていたが、四谷はつい気の抜けた返事をしてしまった。
「そもそも君には教師としての自覚が欠如している! 何度言っても前髪は切らない、ネクタイはしてこない、出勤は毎日HRギリギリ……!」
(うわわっ、俺だけ集中砲火💦💦 ズルイなー瀧先輩。俺より思いっ切り暴れてたクセに素行はいいんだもん)
「君も教師なら身形くらいきちんと整えたまえ。教師とは生徒の模範だ!」
「だって最近気温上がってきたのにネクタイなんかしたら余計暑いじゃないですか」
「では先ず前髪を切りたまえ!」
「前髪はいいんです。どうせ原チャで靡きますから」
「靡くとか靡かないとか、そういう問題じゃない! 指導する側がそういう風体では生徒に示しが付かんだろう! 教師としての自覚を持ちたまえッ」
「山田先生こそ毎日しっかりネクタイ締めてらっしゃいますケド~、今時役所行ったってネクタイ締めてるヤツなんか一人もいませんよ~。我々も一聖職者として温暖化防止に貢献しなければならないかと」
「通勤で排気ガス撒き散らしとる奴が何を言うか!」
四谷が本旨からずれて怒鳴られている隣で、瀧はいつも以上に無表情を維持していた。ひたすら沈黙して台風一過を待てばよいものを、妙に口答えをするから火に油を注ぐのだ。
「まーまー、今日は俺の話じゃなくて~」
「山田先生。四谷先生については後日時間のある時にでも」
背後からお声が掛かり、山田教諭はハッとして振り返った。四谷は心中でホッと胸を撫で下ろした。
「今日はもっと大事な話があるでしょう。一人の生徒が、退学になるかならないかの瀬戸際だ」
教頭は目を通していた朝刊新聞を丁寧に半分ずつ折り曲げ、デスクの端に寄せた。
朝刊には赤菟馬を名乗る二十数名を超えるグループの集団傷害事件の記事が掲載されていた。実名こそ公にはなっていないものの、直近では最も大きな暴力事件の一つとして地元紙に載ってしまった。この大事件に生徒が関与しているとなれば、その生徒に対する処罰は熟慮されるべき事案だ。
「その話につきましては教頭、先程もご説明いたしました通り、あの近江が今回の事件に関わっていることは事実なのですから――」
「そのような事実はありません」
沈黙を決め込んでいた瀧が言葉を発し、山田教諭も教頭も目線を向けた。
「関わってないという証拠は? 自分の受け持ちのクラスから退学者を出したくないという気持ちは解るが、あの学校一の問題児を担任することになったのは運が悪かったと思って諦め――」
「近江は新聞の事件には一切関わっていません」
瀧は再び山田教諭に皆まで述べさせなかった。手を腰の上で組んで胸を張り、まるで軍人のように堂々とした立ち居姿だった。件の生徒の潔白はこの身を見よとでも言わんばかりに。
山田教諭は追及の手を緩めなかった。
「その赤菟馬とかいう暴走族は、過去何度か近江たちと問題を起こしたことのある連中だろう」
「校外学習のその日に、近江と過去に問題を起こしたことのある連中が偶然傷害事件を起こしていた。だからと言ってその事件に近江が関与したと判断するのは安直すぎます」
「偶然? 随分と厚顔な言い訳をするものだな。君は四谷先生とは違うとは思っていたんだがね」
(何でもかんでも俺を引き合いに出すな💦)
四谷は首を竦めて苦笑した。
「能楽堂から近江がかなりの人数を引き連れていなくなったと聞いているが、これについてはどう説明するのかね。君たち二人は引率者でありながら何をしていた。まさか生徒たちがゾロゾロと出て行くのをただ黙って見ていたわけではないだろうな」
(面倒だからって引率にも来なかったくせにエラソーに。大体、何か問題が起こるとスグ俺たちに押し付けるじゃん。好きで武闘派なんて呼ばれてないっつーの。山田先生なんてガチギレの近江の前に立ったら絶対何もできないのにさー。あー、タイミングよく持病の痛風が発症しないかなー)
四谷は顔面には苦々しい笑みを貼り付けながらも胸中は穏やかではなかった。もう子どもでもあるまいし鬱憤をそのまま表情や態度に出すわけにもいかない。腹の中で悪態を吐くのが関の山。
「筋の通る理由でも?」
山田教諭は勝ち誇った表情で瀧に説明を迫った。
「腹痛です」
瀧は堂々と放言した。
山田教諭も四谷も一瞬ポカンと呆気に取られた。数秒後、山田教諭の眉間がピクピクと痙攣し始める。
「本当に、そんな言い訳が罷り通ると思っているのかね、瀧先生」
「事実を述べています」と瀧は不動の無表情。
「四谷先生のクラスの生徒も数名トイレに行っていました」
「ハイ。アイツ等も腹の調子が悪かったんだと思いますよ。便所長かったからなー」
「能楽堂は閉めきった空間に大勢の生徒が集まります。集団で風邪にかかってその初期症状か、もしくは集団食中毒の疑いもあるかと」
「瀧先生、まさか君までもがそんな考えとは……!」
瀧は眼前で怒りに打ち震えている山田教諭ではなく、その向こうの教頭のほうへ目線を向けた。教頭はこの場に於いて最高位の権限と責任を有している。あたかも法廷の裁判長のように沈着に山田教諭と瀧の攻防に耳を傾けていた。
「山田先生の仰有る通り、近江がこの事件に関わっていないという確かな証拠はありません。しかし関わっているという証拠もない。憶測や偏見のみで、悪事を働いたと決め付けるなど教師がすべきではない。少なくとも私は、近江を退学にするなど毛頭考えておりません。今回の件で山田先生や教頭が近江を退学に処するおつもりなら、徹底的に対抗せざるを得ません」
隣に立つ瀧を見詰める四谷の目は、キラキラと輝いた。
(おおぉ瀧センパイ✨ そこまで言うなんてうっかり惚れそうになる✨✨)
「教師たる君がそんな甘い考えでどうする! そんなだから非行に走る生徒が一向に更正もままならないのだよッ」
コンコン。
教頭室のドアを叩いたノックの音。
「今日のところはそれぐらいに」と教頭が教諭たちを宥めた。
山田教諭はネクタイや背広を正した。四谷は、これで叱責から解放された、とフーッと息を吐いて脱力した。
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