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第九章 トゥカラーク大陸
第193話 神は死んだ!
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ライトの光で照らされた海面には、無数の魚面が浮かんでいた。
「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
パブ「ディープワン」で魚面たちから保護した女性三人が、それを見て狂乱状態に陥ってしまった。
彼女たちはその目を一杯に見開き、口から泡を吹き、お互いに突き飛ばし合って、とにかくこの場から離れようと暴れ出した。
「トルネアお姉ちゃん!」
今にもここから逃げ出そうとする三人を見て、ライラがトルネアに声を掛けた。
「お任せくださいまし!」
勢いよくライラに返事したラミア族のトルネアは、その長い蛇体を伸ばし、尻尾を使って三人の身体をまとめて巻き上げた。
「「「ぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
突然、身動きが取れなくなったために、三人はより混乱してしまった。
「シンイチさま!」
「任せて!」
ライラの声を受けて、シンイチが女性ひとり一人に手を当てて【幼女化】していく。
「【幼女化】(意識も幼女。継続1時間)!」
ボンッ! ボンッ! ボンッ!
トルネアの尻尾に巻かれた三人の幼女が、ポカンと口を開けて立ちすくんでいた。
とりあえず絶叫が止んだので、その場の全員の注意が本来向くべき方へ、つまり海の方へと戻る。
桜井船務長を始め、全員が海へと目を向けると……
「「「ぬわぁっ!」」」
「「「ギョギョッ!!」」」
後ろに突っ立っている三人の半魚人を見て、またしても絶叫が上げた。
そう言えば、こいつらのことをすっかり忘れてた。
真っ先にショックから立ち直った桜井が半魚人たちに声を掛ける。
「貴様たちは、ダゴン教団とは関係ないということだったが、ダゴン教団というのは今我々が倒した連中であるということで間違いないか!」
「間違いないギョ!」
「むしろダゴン教団の奴らとは敵対してんだギョ!」
「ギョギョー!」
桜井が顎先を動かして、半魚人たちの背後にある海を示した。
「海面で顔を出している連中はお前たちの仲間か? 彼らもダゴン教団とは関係ないと?」
「そうだギョっ!」
「みんなダゴン教団は大嫌いなんだギョ!」
「ギョエェェ!」
桜井たちと半魚人たちの間に緊張した空気が漂う中、シンイチがインカムを通じて私に通信を入れてきた。
「艦長」
「どうしたシンイチ?」
「ダゴン教会の中に残党がいるみたいです。たぶん地下から上がってきているんだと思いますが、今もどんどん増えてます」
「増えてる? それが分かるのか?」
「あっ、俺のスキルに【索敵】というのがあって、それで敵や味方の位置を確認できるんです」
ゴーン! ゴーン! ゴーン!
突然、教会の鐘が響いた。
「愚かなる豚ども、我らの声を聞くがよい! ダゴンの声に耳を傾けよ! ヒュドラの前にひれ伏せよ!」
シンイチの言っていた通り、教会の中から続々と魚面どもが現れ始めた。
「貴様らなどダゴンの餌にしてくれる! 大いなるダゴンの怒りを恐れるがよい! 母なるヒュドラに引き裂かれるがよい!」
オコゼ頭の魚面が正面に立ち、私たちに向って大きな身振りで、説教を始めた。
「イア! イア! ダゴン! 父なるダゴン! 母なるヒュドラ! イア! イア!」
教会から次々と現れる魚面たちも、オコゼ頭に合わせて不気味な呪文を唱え始める。呪文が繰り返される毎に、不穏な空気が濃くなっていくように感じられる。
その声を聞いた三人の半魚人たちが身体を震わせて怯え始めた。海面の魚面にも動揺が走っているのが見える。
「父なるダゴン! 敵を屠り給え! 母なるヒュドラ! 敵を喰らい給え! イア! イア!」
彼らがイアイア叫んでいる間に、私はシンイチに教会建物内に誰かいるかを尋ねた。
「地上階より上には誰もいません。地下の方は……まだいますね」
「わかった。それだけわかれば十分だ」
私はインカムを通じて桜井とフワーデに指示を送る。
私の指示を受けた桜井が、オコゼ頭に向って声を張り上げる。
「貴様らの神、ダゴンとヒュドラは死んだぞ!」
一瞬にして、ダゴン教団たちの声が鎮まる。
「もう一度言う! 貴様らの神、ダゴンとヒュドラは死んだぞ!」
「ギョギョ!?」
「ダゴン様が死んだ!? そんなギョとがあるのか?」
「戯言だ! 邪教との声に耳を傾けるでない!」
オコゼ頭が後ろに続くダゴン教徒たちを怒鳴りつけると、彼らは再びイアイア叫び始めた。
「イア! イア! ダゴン! 父なるダゴン! 母なるヒュドラ! イア! イア!」
彼らは再現なくイアイアを繰り返す。
だがいくらイアイア叫んでも、ダゴンとヒュドラが現れることはもちろん、風一つ吹くことはなかった。
桜井たちの前にいる三人の半魚人たちが、何か違和感を感じているようだった。
「おかしいギョ。いつもならダゴンが現れて暴れているはずだギョ」
その声がオコゼ頭にも聞こえたのか、彼は一層大きな声を張り上げてイアイア叫ぶ。
だが一向に何も起こらない。
イアイア叫んでいるダゴン教徒たちにも、少しずつ動揺が広がって行った。
そこへ桜井がもう一度大きな声を張り上げる。
「貴様らの神は死んだ! 我らの神、フワーデ様がダゴンとヒュドラを滅ぼされたのだ!」
桜井の言葉を受けて、フワーデがダゴン教徒たちの前に進み出た。
「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
パブ「ディープワン」で魚面たちから保護した女性三人が、それを見て狂乱状態に陥ってしまった。
彼女たちはその目を一杯に見開き、口から泡を吹き、お互いに突き飛ばし合って、とにかくこの場から離れようと暴れ出した。
「トルネアお姉ちゃん!」
今にもここから逃げ出そうとする三人を見て、ライラがトルネアに声を掛けた。
「お任せくださいまし!」
勢いよくライラに返事したラミア族のトルネアは、その長い蛇体を伸ばし、尻尾を使って三人の身体をまとめて巻き上げた。
「「「ぎゃゃぁぁぁぁぁぁぁ!」」」
突然、身動きが取れなくなったために、三人はより混乱してしまった。
「シンイチさま!」
「任せて!」
ライラの声を受けて、シンイチが女性ひとり一人に手を当てて【幼女化】していく。
「【幼女化】(意識も幼女。継続1時間)!」
ボンッ! ボンッ! ボンッ!
トルネアの尻尾に巻かれた三人の幼女が、ポカンと口を開けて立ちすくんでいた。
とりあえず絶叫が止んだので、その場の全員の注意が本来向くべき方へ、つまり海の方へと戻る。
桜井船務長を始め、全員が海へと目を向けると……
「「「ぬわぁっ!」」」
「「「ギョギョッ!!」」」
後ろに突っ立っている三人の半魚人を見て、またしても絶叫が上げた。
そう言えば、こいつらのことをすっかり忘れてた。
真っ先にショックから立ち直った桜井が半魚人たちに声を掛ける。
「貴様たちは、ダゴン教団とは関係ないということだったが、ダゴン教団というのは今我々が倒した連中であるということで間違いないか!」
「間違いないギョ!」
「むしろダゴン教団の奴らとは敵対してんだギョ!」
「ギョギョー!」
桜井が顎先を動かして、半魚人たちの背後にある海を示した。
「海面で顔を出している連中はお前たちの仲間か? 彼らもダゴン教団とは関係ないと?」
「そうだギョっ!」
「みんなダゴン教団は大嫌いなんだギョ!」
「ギョエェェ!」
桜井たちと半魚人たちの間に緊張した空気が漂う中、シンイチがインカムを通じて私に通信を入れてきた。
「艦長」
「どうしたシンイチ?」
「ダゴン教会の中に残党がいるみたいです。たぶん地下から上がってきているんだと思いますが、今もどんどん増えてます」
「増えてる? それが分かるのか?」
「あっ、俺のスキルに【索敵】というのがあって、それで敵や味方の位置を確認できるんです」
ゴーン! ゴーン! ゴーン!
突然、教会の鐘が響いた。
「愚かなる豚ども、我らの声を聞くがよい! ダゴンの声に耳を傾けよ! ヒュドラの前にひれ伏せよ!」
シンイチの言っていた通り、教会の中から続々と魚面どもが現れ始めた。
「貴様らなどダゴンの餌にしてくれる! 大いなるダゴンの怒りを恐れるがよい! 母なるヒュドラに引き裂かれるがよい!」
オコゼ頭の魚面が正面に立ち、私たちに向って大きな身振りで、説教を始めた。
「イア! イア! ダゴン! 父なるダゴン! 母なるヒュドラ! イア! イア!」
教会から次々と現れる魚面たちも、オコゼ頭に合わせて不気味な呪文を唱え始める。呪文が繰り返される毎に、不穏な空気が濃くなっていくように感じられる。
その声を聞いた三人の半魚人たちが身体を震わせて怯え始めた。海面の魚面にも動揺が走っているのが見える。
「父なるダゴン! 敵を屠り給え! 母なるヒュドラ! 敵を喰らい給え! イア! イア!」
彼らがイアイア叫んでいる間に、私はシンイチに教会建物内に誰かいるかを尋ねた。
「地上階より上には誰もいません。地下の方は……まだいますね」
「わかった。それだけわかれば十分だ」
私はインカムを通じて桜井とフワーデに指示を送る。
私の指示を受けた桜井が、オコゼ頭に向って声を張り上げる。
「貴様らの神、ダゴンとヒュドラは死んだぞ!」
一瞬にして、ダゴン教団たちの声が鎮まる。
「もう一度言う! 貴様らの神、ダゴンとヒュドラは死んだぞ!」
「ギョギョ!?」
「ダゴン様が死んだ!? そんなギョとがあるのか?」
「戯言だ! 邪教との声に耳を傾けるでない!」
オコゼ頭が後ろに続くダゴン教徒たちを怒鳴りつけると、彼らは再びイアイア叫び始めた。
「イア! イア! ダゴン! 父なるダゴン! 母なるヒュドラ! イア! イア!」
彼らは再現なくイアイアを繰り返す。
だがいくらイアイア叫んでも、ダゴンとヒュドラが現れることはもちろん、風一つ吹くことはなかった。
桜井たちの前にいる三人の半魚人たちが、何か違和感を感じているようだった。
「おかしいギョ。いつもならダゴンが現れて暴れているはずだギョ」
その声がオコゼ頭にも聞こえたのか、彼は一層大きな声を張り上げてイアイア叫ぶ。
だが一向に何も起こらない。
イアイア叫んでいるダゴン教徒たちにも、少しずつ動揺が広がって行った。
そこへ桜井がもう一度大きな声を張り上げる。
「貴様らの神は死んだ! 我らの神、フワーデ様がダゴンとヒュドラを滅ぼされたのだ!」
桜井の言葉を受けて、フワーデがダゴン教徒たちの前に進み出た。
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