186 / 195
第九章 トゥカラーク大陸
第184話 ピンチの巨人と緑の血
しおりを挟む
護衛艦フワデラが、CIWSファランクスの射程範囲に妖異を捉えた頃には、巨人はオコゼ顔の巨大な妖異ダゴリーヌに伸し掛かれて、完全にその動きを封じられていた。
見た目がほぼ同じダゴンは、岩礁の上に身を乗り上げ、巨大な上半身を持ち上げて、巨大な腕で何度も巨人の頭を攻撃している。
鋭い爪で攻撃を受けているにも関わらず、巨人の身体には傷一つついていないように見える。かなり頑丈な素材でできているようだ。
だが身動き一つとれない状態では、いずれは妖異に倒されてしまうかもしれない。
「待ってて銀ちゃん! もうすぐ助けるから!」
ホログラム・フワーデが、空中でじたばたと手足を動かして走っていた。
護衛艦フワデラは、岬に向って全速力で進み続ける。
「石井! 射程内に入ったぞ!」
「レーダーで2体とも捕捉! いつでも撃てます!」
ぐったりとして動かなくなった巨人から、ダゴンが急に興味を失ったように背を向けた。
ダゴンが振り返った先には、黒く巨大な石碑が立っている。
その石碑をダゴンはしばらくジッと見つめた後、急にスピードを上げて、石碑に向って突進していった。
ドゴーンッ!
勢いを付けたダゴンの頭が石碑に激突する。
石碑は倒れこそしなかったものの、アレを何度も繰り返されたら、そのうち破壊されてしまうだろう。
ダゴンの行動に気が付いた巨人が動こうとするが、相変わらずダゴリーヌに伸し掛かれたまま身動きが取れないようだった。
だが――
ダゴンが巨人から離れた!
「ダゴンを撃て!」
「目標ダゴン! ってぇぇぇ!」
「了!」
桜井船務長の号令に、石井砲雷長が返事をする。艦橋にいる私からは見えないが、CICにいる石井の口元は今ニヤリと笑っているはずだ。から揚げ定食を賭けてもいい。
ウィィィィン!
護衛艦フワデラの艦橋下にある白い円筒が音を立てて、その照準をダゴンに合わせた。
ブッー-----!
次の瞬間、唸るような音がして、高性能20mm機関砲ファランクスが火を噴いた。
火線が一直線にダゴンに向って伸びていき、ダゴンの身体を貫いた。
「ぐおぉぉぉおおぉおおん!」
ダゴンが巨大な身体をのけぞらせる。
ダメージは大きいように見えるが、まだ致命傷には到っていないようで、ダゴンは海の中に逃れようとして、石碑から離れた。
ブッー-----!
ブッー-----!
ブッー-----!
だがダゴンがどこに移動しようとも、CIWSは正確にその動きに追随し、毎分1500発の発射速度で弾丸を叩き込んで行く。
「ぐおぉぉぉおおぉおおん!」
ブッー-----!
ブッー-----!
ブッー-----!
ダゴンの前腕が吹き飛んだとき、ダゴリーヌがようやく事態の深刻さに気が付いたらしく、ダゴンに向って咆哮を上げた。
だが、巨人が拘束を逃れようと動きを再開したため、ダゴリーヌの注意は巨人に向う。
ブッー-----!
ブッー-----!
ブッー-----!
ダゴンの身体が徐々に削れ始める。
そして、そこに――
「フワーデ! ってぇぇぇえぇ!」
私の声に、フワーデが満面の笑みで応える。
「わかったー! 銀ちゃん! お待たせ! フワーデちゃん、行きまーす!」
十二機の飛行型戦闘ドローン・イタカが、ダゴリーヌの背後に迫っていた。
ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン!
ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン!
ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン!
ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン!
ドローン・イタカが、射線に巨人が入らないようにダゴリーヌの側面に回り込む。
そして、ドローンに搭載されている機銃が一斉に火を噴いた。
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
巨大なオコゼの顔を歪め、ダゴリーヌは身体を巨人から放して岩礁の上に転がった。
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
露わになったダゴリーヌの白い腹部に、イタカの機銃が弾丸を叩き込んでいく。
一方で、CIWSも未だ大量の弾丸をダゴンに叩き込み続けている。
ブッー-----!
ブッー-----!
ブッー-----!
巨人に目を移すと、ダゴリーヌの巨体からようやく解放されて、立ち上がろうとしていた。
「巨人に当たってはまずい。CIWSを止めろ」
「射撃止めぇぇ!」
「了!」
ヴイイィィン……。
CIWSが停止すると、全身各所と頭の半分が消し飛んだダゴンは、そのまま岩礁の上に倒れて、そのまま動かなくなった。
緑色の血が海に流れ出ている。
立ち上がった巨人が、ダゴンに向って走り出した。
それに気が付いたダゴリーヌが、巨人に向って咆哮を上げる。
だがイタカの激しい掃射を受け続けているため、ダゴリーヌは巨人を追うことができなかった。
巨人がダゴンの遺骸に近づき、そして、通り過ぎた。
どうやら巨人の目的は、ダゴンではなく黒い石碑だったようだ。
何をするつもりなのかは分からないだが、ダゴリーヌからは百メートル以上の距離が開いた。
「巨人がダゴリーヌから離れた! 主砲で止めを」
「目標ダゴリーヌ! 主砲ってぇぇえ!」
「了!」
ドォン!
護衛艦フワデラの前方にある主砲から、重い響きと共に砲弾が発射された。
ゴロン!
巨大な薬莢が甲板の上に落ちる。
ドォン!
ドォン!
ドォン!
主砲が立て続けに火を吹く。
その度に、目標位置に巨大な水柱が上がった。
ドォン!
ドォン!
ドォン!
水柱が落ちる前に、すぐに次の着弾が続き、また新しい水柱が上がる。
「ターゲットキル! 目標、完全に破壊しました」
砲撃が終わったときには、ダゴリーヌの姿は見えず――
海面には、肉片らしきものと緑色の血が広がっていた。
見た目がほぼ同じダゴンは、岩礁の上に身を乗り上げ、巨大な上半身を持ち上げて、巨大な腕で何度も巨人の頭を攻撃している。
鋭い爪で攻撃を受けているにも関わらず、巨人の身体には傷一つついていないように見える。かなり頑丈な素材でできているようだ。
だが身動き一つとれない状態では、いずれは妖異に倒されてしまうかもしれない。
「待ってて銀ちゃん! もうすぐ助けるから!」
ホログラム・フワーデが、空中でじたばたと手足を動かして走っていた。
護衛艦フワデラは、岬に向って全速力で進み続ける。
「石井! 射程内に入ったぞ!」
「レーダーで2体とも捕捉! いつでも撃てます!」
ぐったりとして動かなくなった巨人から、ダゴンが急に興味を失ったように背を向けた。
ダゴンが振り返った先には、黒く巨大な石碑が立っている。
その石碑をダゴンはしばらくジッと見つめた後、急にスピードを上げて、石碑に向って突進していった。
ドゴーンッ!
勢いを付けたダゴンの頭が石碑に激突する。
石碑は倒れこそしなかったものの、アレを何度も繰り返されたら、そのうち破壊されてしまうだろう。
ダゴンの行動に気が付いた巨人が動こうとするが、相変わらずダゴリーヌに伸し掛かれたまま身動きが取れないようだった。
だが――
ダゴンが巨人から離れた!
「ダゴンを撃て!」
「目標ダゴン! ってぇぇぇ!」
「了!」
桜井船務長の号令に、石井砲雷長が返事をする。艦橋にいる私からは見えないが、CICにいる石井の口元は今ニヤリと笑っているはずだ。から揚げ定食を賭けてもいい。
ウィィィィン!
護衛艦フワデラの艦橋下にある白い円筒が音を立てて、その照準をダゴンに合わせた。
ブッー-----!
次の瞬間、唸るような音がして、高性能20mm機関砲ファランクスが火を噴いた。
火線が一直線にダゴンに向って伸びていき、ダゴンの身体を貫いた。
「ぐおぉぉぉおおぉおおん!」
ダゴンが巨大な身体をのけぞらせる。
ダメージは大きいように見えるが、まだ致命傷には到っていないようで、ダゴンは海の中に逃れようとして、石碑から離れた。
ブッー-----!
ブッー-----!
ブッー-----!
だがダゴンがどこに移動しようとも、CIWSは正確にその動きに追随し、毎分1500発の発射速度で弾丸を叩き込んで行く。
「ぐおぉぉぉおおぉおおん!」
ブッー-----!
ブッー-----!
ブッー-----!
ダゴンの前腕が吹き飛んだとき、ダゴリーヌがようやく事態の深刻さに気が付いたらしく、ダゴンに向って咆哮を上げた。
だが、巨人が拘束を逃れようと動きを再開したため、ダゴリーヌの注意は巨人に向う。
ブッー-----!
ブッー-----!
ブッー-----!
ダゴンの身体が徐々に削れ始める。
そして、そこに――
「フワーデ! ってぇぇぇえぇ!」
私の声に、フワーデが満面の笑みで応える。
「わかったー! 銀ちゃん! お待たせ! フワーデちゃん、行きまーす!」
十二機の飛行型戦闘ドローン・イタカが、ダゴリーヌの背後に迫っていた。
ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン!
ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン!
ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン!
ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン! ヴゥゥゥゥゥゥン!
ドローン・イタカが、射線に巨人が入らないようにダゴリーヌの側面に回り込む。
そして、ドローンに搭載されている機銃が一斉に火を噴いた。
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
巨大なオコゼの顔を歪め、ダゴリーヌは身体を巨人から放して岩礁の上に転がった。
ババババババババ! ババババババババ! ババババババババ!
露わになったダゴリーヌの白い腹部に、イタカの機銃が弾丸を叩き込んでいく。
一方で、CIWSも未だ大量の弾丸をダゴンに叩き込み続けている。
ブッー-----!
ブッー-----!
ブッー-----!
巨人に目を移すと、ダゴリーヌの巨体からようやく解放されて、立ち上がろうとしていた。
「巨人に当たってはまずい。CIWSを止めろ」
「射撃止めぇぇ!」
「了!」
ヴイイィィン……。
CIWSが停止すると、全身各所と頭の半分が消し飛んだダゴンは、そのまま岩礁の上に倒れて、そのまま動かなくなった。
緑色の血が海に流れ出ている。
立ち上がった巨人が、ダゴンに向って走り出した。
それに気が付いたダゴリーヌが、巨人に向って咆哮を上げる。
だがイタカの激しい掃射を受け続けているため、ダゴリーヌは巨人を追うことができなかった。
巨人がダゴンの遺骸に近づき、そして、通り過ぎた。
どうやら巨人の目的は、ダゴンではなく黒い石碑だったようだ。
何をするつもりなのかは分からないだが、ダゴリーヌからは百メートル以上の距離が開いた。
「巨人がダゴリーヌから離れた! 主砲で止めを」
「目標ダゴリーヌ! 主砲ってぇぇえ!」
「了!」
ドォン!
護衛艦フワデラの前方にある主砲から、重い響きと共に砲弾が発射された。
ゴロン!
巨大な薬莢が甲板の上に落ちる。
ドォン!
ドォン!
ドォン!
主砲が立て続けに火を吹く。
その度に、目標位置に巨大な水柱が上がった。
ドォン!
ドォン!
ドォン!
水柱が落ちる前に、すぐに次の着弾が続き、また新しい水柱が上がる。
「ターゲットキル! 目標、完全に破壊しました」
砲撃が終わったときには、ダゴリーヌの姿は見えず――
海面には、肉片らしきものと緑色の血が広がっていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる