上 下
129 / 195
第六章 リーコス村開拓

第127話 激しいイチャラブ波動

しおりを挟む
 次々と結成される様々な戦隊たちの活躍によって、護衛艦フワデラに入ってくるEONポイントが急激に増えてきた。

 まさにガッポガッポウハウハレベルの増収だ。

 そのおかげで、あと半年は掛かるであろうと思われていた悪魔勇者討伐作戦の予算はひと月足らずで到達することができそうだった。

 予定していた日程が繰り上がる可能性が高まってきた。悪魔勇者の居場所についても、なるべく早めに把握しておきたいところだ。

 悪魔勇者と直接対峙したことがあるのはシンイチとライラだ。二人は悪魔勇者の捜索に当たって、一番重要な情報を持っていることは間違いない。

 私は二人から悪魔勇者についての聞き取りを行っていた。

「何度も同じ話をさせて申し訳ないな。それでシンイチに右腕を落とされた悪魔勇者は……」

「真っ黒な蝙蝠怪人みたいなのが飛んできて連れ去って行きました。ちょうどその時、死んだと思っていたライラが息を吹き返したので、奴らを追うどころじゃなくなってしまって……」

 その後、シンイチはライラを連れて戦場中から離れる。そして陽が落ちるのを待ってから、未だ混乱の極みにあった戦場に向けて幼女化解除ビームを放った。

「大半の幼女化解除は出来たと思いますが、あくまでその時に戦場から見える範囲でしかなくて……」

「悪魔勇者や私たちのように戦場から離れていた者たちは、幼女のままということだな」

「ええ」

 その後、シンイチとライラは北を目指した。それ以外の道は、撤退する人類軍と妖異軍で溢れていたからだ。

 蝙蝠怪人は悪魔勇者を西に連れて飛び去ったことはシンイチの証言で分かっていた。

 ドラン平原から西に進み続ければ、悪魔勇者の国であるセイジュウ神聖帝国がある。未知の力で幼女に変えられてしまったのだ、慎重を期して自国に戻ったというのはかなり確度の高そうだ。

「悪魔勇者は現在幼女となっていて、その右腕が失われている。特徴的な外見ではあるな。いや、もしかして悪魔勇者の力で再生したりする可能性も考えられるか」

「幼女化スキルは対象を本当にただの幼女にしてしまうんです。が残ることはあるんですが……身体能力は幼女のはずです」

 外見的な特徴というのはおそらく、竜子のようにワイバーンが幼女化された場合、角と羽と尻尾が残るといったものだろう。

「ショゴタンって巨大アメーバの妖異がいますよね? アレを幼女化すると、幼女の全身に目と口の模様が浮かび上がってきます」

 思っていたよりグロかった。

「そ、そうか……あくまで幼女の状態で右腕を失ったということは、もし本来は再生能力を持っていたとしても、その力が発動されることはないわけだ」

 私の言葉を聞いたシンイチが何かひらめいたという顔をする。

「もしかしたら、奴の率いる妖異の中に寄生して右腕に擬態するようなのがいるかもしれません」

「あーっ、アレみたいな? ミギー腕だし」

「それです! もし右腕があんな感じになっていたとしたら、一見すると普通の幼女にしか見えないかもしれませんね」

 確かにそうかもしれない。

 何しろ悪魔勇者の能力も、セイジュウ神聖帝国にどんな妖異がいるのかも、我々は全く把握していないのだ。

 帝国の常識が通じない異世界に我々はいる。一見すると荒唐無稽に思えることでも、その可能性をむやみに排除するべきではないだろう。

 それまで黙って話を聞いていたライラが口を開く。

「たとえ幼女化しても元々持っていた性格自体は変わりません。あの悪魔は傲慢で傍若無人な態度を隠すことはないはずです。いくら幼女の姿でもその振る舞いを見れば、きっと一目でわかると思います」

「確かにそうだね! さすがライラ!」

「シンイチさま……」

「ライラ……」

 チュッ!

 二人から強烈なラブ波動が放出され始めた。

「ちょーっ! そこまで! そこまで! おいシンイチ! 貴様、まさか幼女のライラに、へへへへ、へんな、へんなことしたりしてないだろうな!」

「「へんなこと?」」

 二人が「チョット、ナニイッテルカワカリマセン」という顔をする。

「いやいやいや、いくら夫婦だからって、今のライラは幼女! 幼女なんだぞ! て、てて帝都条例! 帝都条例違反じゃまいか!」

「あっ!? そういうことですか? 酷いな艦長さん、俺がライラの身体に負担を掛けるようなことするわけないじゃないですか」

「そ、そうか。そ、それなら良いんだ。ちょっと艦長妄想が過ぎたな。申し訳ない。だが、人前でいちゃつくのは関心しないぞ」

 一応、注意しておくことにする。こんなの乗組員《クルー》の前でやられたらかなわん。

 私の注意を受けて、シンイチは素直に謝罪。

「す、すみません。気が緩むとつい……ルカにもよく𠮟られます」 

「気を付けてくれ、事情を知らない第三者が見たら通報ものだからな」

「「はい。気を付けます」」

 しっかりハモッていた二人の返事に、艦長、逆に不安になってしまった。

 とりあえず会議はここまでにして解散し、私は艦橋へと戻ることに。

 その途中、ふとシンイチの言葉が、頭の中をリフレインする。

『俺がライラの身体に負担を掛けるようなことするわけないじゃないですか』

 ん? 

 つまり負担をかけないことはしてるってこと?

 ん?

 艦長は考えるのをやめた。



ライラ(幼女化中)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました

Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。 実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。 何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・ 何故か神獣に転生していた! 始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。 更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。 人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m なるべく返信できるように努力します。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

処理中です...