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第三章 グレイベア村
第73話 幼女戦隊ドラゴンジャー
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私たちはグレイベア村の村長宅で作戦会議を開いていた。
会議には私と南・坂上両大尉、ルカとグレイちゃん、タヌァカ夫妻、フワデラ夫妻(とその娘)が参加している。
悪魔勇者を討伐するためには、当然だが悪魔勇者の居場所を知る必要がある。
その対策として私たちは捜索のためのチームを編成する一方で、悪魔勇者を引っ張り出す作戦についても同時に進めることにした。
悪魔勇者が私たちの処に出てくるとすれば、それはグレイベア村長ルカの持つ【賢者の石】を奪いにくるときだと考えたのだ。
ルカの眷属でもある鬼人のフワデラ氏は、悪魔勇者がタナァカ氏とライラがこの村に逃げ込むことを想定するのは間違いないと言う。
「グレイベア村を襲ってきたのは岩石旅団だけではない。今や妖異軍はグレイベア村に【賢者の石】があることを確信しているはずだ。そうでなければ何度もこんな僻地にある魔族の村を襲う理由がない」
ちなみに前半の会議で、悪魔勇者が率いる魔族と妖異の混成軍のことは妖異軍と呼ぶことに決定した。
これまでは魔族軍と呼称していたが、それでは魔族の集うグレイベア村や反悪魔勇者の魔族と区別する際に混乱してしまうからだ。
「ライラの持つ【賢者の石】がもう壊れてしまっていることを悪魔勇者は知らんじゃろうからな。奴からしてみれば、この村には2つも秘宝があるというわけじゃ」
ドラゴン幼女にしてグレイベア村の村長ルカが、首に下げているペンダントに触れる。それには【賢者の石】が埋め込まれていた。
その足元では鬼人の幼女がルカの尻尾を舐めている。この幼女はフワデラ氏とシュモネーの間に生まれた三歳になる娘、小鉢だ。
「それで、悪魔勇者を誘い出すために妖異軍狩りを行うと?」
私があまり気乗りしない口調で確認するとルカはニッカリと微笑んだ。
グレイベア村を襲ってくる妖異軍はもちろん、周辺地域にいる妖異軍を徹底的に狩り続けて、悪魔勇者を誘い出そうというのがルカの作戦だった。
ここまでなら私には何の異論もない。むしろ頑張れ! 私も頑張る!
だが、ルカの作戦はここからが本番だった。
「そうじゃ! なるべくド派手に妖異軍を狩る! それこそがわらわが考案した企画!『幼女戦隊ドラゴンジャー』じゃ!」
ルカがパンッと音を立てて手を叩くと、イリアと呼ばれる銀髪の美しい少女が会議参加者の一人ひとりにプレゼン資料を配布する。
資料にはレッドレンジャーをリーダーとした幼女戦隊が、迫りくる悪の妖異軍を次々と撃退し、最終的に悪魔勇者と戦う必要性がデータやグラフを駆使して記述されていた。
私は半ばジト目になりつつも、一応資料に目を通す。
「ちょっ、ルカ村長、このFuwaTube PV数の予想伸び率って項目は何ですか? というかいつの間にルカ★チャンネルなんて開設してるんです!?」
資料には他にはTeikokuTokuやFuwatter、フワフワ動画等の視聴数についても予想伸び率が記載されている。
「PVは大事じゃぞタカツ。多くのPVが集まれるほど収益がガッポガッポ入ってくるのじゃからな!」
「収益って……」
「なんじゃ知らんのか? 収益化しておればPVやCM視聴率に応じてEONポイントが振り込まれるんじゃぞ?」
よし、犯人はわかった。
後でフワーデを尋問する。
もし逃げるようなら【魔力転換炉】にカサカサ走るGを入れてやるからな。Gがいたらだけど。
とりあえず、その問題については今は横に置き、私は重要なことを確認する。
「あと資料によると戦隊は五名ということですが、ルカ村長とグレイちゃん、ライラさんと私……4人分の名前しかありませんが?」
「そこなんじゃ! あと一人足りん! タカツ、おぬしの乗組員を誰か幼女にできぬか?」
「無理です!」
大事な部下をこんなアホで危険なトラブルに巻き込めるか!
「ふむう。では仕方がない。フワデラ、とりあえず当面のメンバーはおぬしの娘に頼むとする」
「了承した、我が主」
そう言って小さな娘を抱き上げるフワデラ氏。隣に座っているシュモネーが娘の小さな頬を指でぷにぷにしながら「よかったでちゅねー」と声を掛けている。
「駄目ですよ! 危険だ!」
私は気色ばんで叫んだ。
「いくら何でもこんな小さな子を巻き込むなんて、あなた方は鬼ですか!」
「鬼じゃよ? その娘も父親も」
「そ……そうでした……けど」
「ちなみにその小鉢(娘)は、今のおぬしよりも強いぞ。無邪気にじゃれ合ったりすれば、おぬしの全身の骨が倍に増えるくらいにな」
「そう……ですか……」
気を抜かれた私は椅子に深く掛ける。ハーフとは言え鬼人の娘なら人間基準で考えるのは少し違うか。
「なに心配することはない。実際に活動するのはわらわたち4人じゃ。本当の5人目が決まるまで、ドラゴンジャーの宣伝の際に顔を借りるだけのことじゃ。5人目が決まったら、小鉢には卒業してもらう」
「そ、それなら……わかりました」
まぁ、マスコット的な扱いなら問題ないか。
「よし、タカツが納得したのなら決まりじゃ。今日から早速、ドラゴンジャーの活動を始めるぞ! 衣装もちゃんと用意しておる。ライラとグレイちゃんもちゃんと台本を呼んで決めゼリフとポーズの練習をしておくのじゃぞ!」
「わかりました」
「うーっ! わかった!」
資料を目にしていた私は眩暈で倒れそうになる。
何故なら――
「この衣装なんとかなりませんか!? これじゃ戦隊というより魔法少女じゃないですか!」
資料に描かれていたのは、肌色多めのへそ出しフリフリ衣装だった。
「見るのは良いけど、着るのは無理です!」
直ぐに衣装合わせに入ると言う強引なルカに、私はジタバタ暴れて抵抗したが、5人の中で一番非力かつ最弱なのは私であった。
くっ……いくら自分が幼女だからって幼女に力負けするなんて。
結局、足元やお腹がスースーして心もとない衣装に着替えさせられてしまった。
会議には私と南・坂上両大尉、ルカとグレイちゃん、タヌァカ夫妻、フワデラ夫妻(とその娘)が参加している。
悪魔勇者を討伐するためには、当然だが悪魔勇者の居場所を知る必要がある。
その対策として私たちは捜索のためのチームを編成する一方で、悪魔勇者を引っ張り出す作戦についても同時に進めることにした。
悪魔勇者が私たちの処に出てくるとすれば、それはグレイベア村長ルカの持つ【賢者の石】を奪いにくるときだと考えたのだ。
ルカの眷属でもある鬼人のフワデラ氏は、悪魔勇者がタナァカ氏とライラがこの村に逃げ込むことを想定するのは間違いないと言う。
「グレイベア村を襲ってきたのは岩石旅団だけではない。今や妖異軍はグレイベア村に【賢者の石】があることを確信しているはずだ。そうでなければ何度もこんな僻地にある魔族の村を襲う理由がない」
ちなみに前半の会議で、悪魔勇者が率いる魔族と妖異の混成軍のことは妖異軍と呼ぶことに決定した。
これまでは魔族軍と呼称していたが、それでは魔族の集うグレイベア村や反悪魔勇者の魔族と区別する際に混乱してしまうからだ。
「ライラの持つ【賢者の石】がもう壊れてしまっていることを悪魔勇者は知らんじゃろうからな。奴からしてみれば、この村には2つも秘宝があるというわけじゃ」
ドラゴン幼女にしてグレイベア村の村長ルカが、首に下げているペンダントに触れる。それには【賢者の石】が埋め込まれていた。
その足元では鬼人の幼女がルカの尻尾を舐めている。この幼女はフワデラ氏とシュモネーの間に生まれた三歳になる娘、小鉢だ。
「それで、悪魔勇者を誘い出すために妖異軍狩りを行うと?」
私があまり気乗りしない口調で確認するとルカはニッカリと微笑んだ。
グレイベア村を襲ってくる妖異軍はもちろん、周辺地域にいる妖異軍を徹底的に狩り続けて、悪魔勇者を誘い出そうというのがルカの作戦だった。
ここまでなら私には何の異論もない。むしろ頑張れ! 私も頑張る!
だが、ルカの作戦はここからが本番だった。
「そうじゃ! なるべくド派手に妖異軍を狩る! それこそがわらわが考案した企画!『幼女戦隊ドラゴンジャー』じゃ!」
ルカがパンッと音を立てて手を叩くと、イリアと呼ばれる銀髪の美しい少女が会議参加者の一人ひとりにプレゼン資料を配布する。
資料にはレッドレンジャーをリーダーとした幼女戦隊が、迫りくる悪の妖異軍を次々と撃退し、最終的に悪魔勇者と戦う必要性がデータやグラフを駆使して記述されていた。
私は半ばジト目になりつつも、一応資料に目を通す。
「ちょっ、ルカ村長、このFuwaTube PV数の予想伸び率って項目は何ですか? というかいつの間にルカ★チャンネルなんて開設してるんです!?」
資料には他にはTeikokuTokuやFuwatter、フワフワ動画等の視聴数についても予想伸び率が記載されている。
「PVは大事じゃぞタカツ。多くのPVが集まれるほど収益がガッポガッポ入ってくるのじゃからな!」
「収益って……」
「なんじゃ知らんのか? 収益化しておればPVやCM視聴率に応じてEONポイントが振り込まれるんじゃぞ?」
よし、犯人はわかった。
後でフワーデを尋問する。
もし逃げるようなら【魔力転換炉】にカサカサ走るGを入れてやるからな。Gがいたらだけど。
とりあえず、その問題については今は横に置き、私は重要なことを確認する。
「あと資料によると戦隊は五名ということですが、ルカ村長とグレイちゃん、ライラさんと私……4人分の名前しかありませんが?」
「そこなんじゃ! あと一人足りん! タカツ、おぬしの乗組員を誰か幼女にできぬか?」
「無理です!」
大事な部下をこんなアホで危険なトラブルに巻き込めるか!
「ふむう。では仕方がない。フワデラ、とりあえず当面のメンバーはおぬしの娘に頼むとする」
「了承した、我が主」
そう言って小さな娘を抱き上げるフワデラ氏。隣に座っているシュモネーが娘の小さな頬を指でぷにぷにしながら「よかったでちゅねー」と声を掛けている。
「駄目ですよ! 危険だ!」
私は気色ばんで叫んだ。
「いくら何でもこんな小さな子を巻き込むなんて、あなた方は鬼ですか!」
「鬼じゃよ? その娘も父親も」
「そ……そうでした……けど」
「ちなみにその小鉢(娘)は、今のおぬしよりも強いぞ。無邪気にじゃれ合ったりすれば、おぬしの全身の骨が倍に増えるくらいにな」
「そう……ですか……」
気を抜かれた私は椅子に深く掛ける。ハーフとは言え鬼人の娘なら人間基準で考えるのは少し違うか。
「なに心配することはない。実際に活動するのはわらわたち4人じゃ。本当の5人目が決まるまで、ドラゴンジャーの宣伝の際に顔を借りるだけのことじゃ。5人目が決まったら、小鉢には卒業してもらう」
「そ、それなら……わかりました」
まぁ、マスコット的な扱いなら問題ないか。
「よし、タカツが納得したのなら決まりじゃ。今日から早速、ドラゴンジャーの活動を始めるぞ! 衣装もちゃんと用意しておる。ライラとグレイちゃんもちゃんと台本を呼んで決めゼリフとポーズの練習をしておくのじゃぞ!」
「わかりました」
「うーっ! わかった!」
資料を目にしていた私は眩暈で倒れそうになる。
何故なら――
「この衣装なんとかなりませんか!? これじゃ戦隊というより魔法少女じゃないですか!」
資料に描かれていたのは、肌色多めのへそ出しフリフリ衣装だった。
「見るのは良いけど、着るのは無理です!」
直ぐに衣装合わせに入ると言う強引なルカに、私はジタバタ暴れて抵抗したが、5人の中で一番非力かつ最弱なのは私であった。
くっ……いくら自分が幼女だからって幼女に力負けするなんて。
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