47 / 195
第一章 護衛艦フワデラ
第46話 水陸両用多脚型戦闘ドローン「アラクネ」
しおりを挟む
リーコス村に急行したヘリからは村の近辺で激しい戦闘が行われている様子が送られて来た。
フワーデの映像解析によって、魔族軍が南方面から侵攻していることと本隊の位置を把握することができた。
「これが魔族軍の旗みたい」
そう言ってフワーデがCICのモニタに映し出したのは、暗い赤紫色をベースに歪んだ白い円から六本のトゲが飛び出しているシンプルな紋様だ。
なんとなくドローンのアラクネを想起させる。
「これより着陸! ドローン隊を降ろした後、負傷者を回収します!}
飛行長の報告と同時にヘリから送られてくる映像が激しく乱れる中、村の各所から負傷者がヘリに向って運ばれてくる様子が映し出されていた。
「よし! ティンダロス隊! イタカ隊! アラクネ! 起動!」
「「了!」」
「わかったー!」
CICのモニタに村と周辺のマップが表示される。各ドローンの起動報告と共に、マップ上に小さな点が表示される。
水色がティンダロス、黄がイタカ、白がアラクネ、そして緑の点がフワデラの乗組員《クルー》たちだ。
「イタカ隊、索敵開始! 敵と村人の位置を知らせ!」
「「「「了!」」」」
数秒後、マップ上に赤い点と点滅する緑の点が次々と表示されていく。戦闘中の乗組員《クルー》と連絡を取りながら、各科長が必要な指示を出し始める。
「T2番機! D-5にいる斎藤に弾薬を運んでくれ!T3、4番機はA-4の戦闘支援!」
砲雷長の指示が飛ぶ。
「I3! C-2で村人が負傷! アラクネを向かわせるからその間、敵が近づかないように支援!」
イタカ隊に指示を出した飛行長が私に顔を向けた。私は頷きつつフワーデの方を見る。
「 フワーデ! C-2行けるか!」
「行けるよー!」
「では行ってこい!」
「わかったー!」
そのとき艦橋から連絡を受けた平野副長が、ようやくフワデラが村に近づきつつあることを報告する。
「艦長、あと10分で主砲の射程に入ります」
「今からターゲットを決める。射程内に入ったらすぐに撃て」
「了!」
私は飛行長に指示し、2機の飛行ドローンを戦場の撮影に回した。私はCICのモニタを目を皿のようにして観察する。
魔族軍本隊の様子が映し出されていた。
「アレが魔族か……」
「緑色の肌……いわゆるゴブリンというものでしょうか。あの性格の悪い犬みたいなのは犬男?」
「面白いけど、それコボルトな」
「はぁ」
ゲームなどとはほぼ無縁の平野副長が推測した通り、魔族軍の多くがいわゆるゴブリンやコボルトで構成されていた。ただ他にも異形の存在も沢山確認された。
特に目を引くのが本陣を囲むように立っている巨大な岩の巨人たちだ。背中を丸めた状態なので、これが背を伸ばしたらさらに大きい姿を見せるのだろう。
「それにしても……この岩の巨人は動いていないようだが?」
「それ【岩トロル】だよ! 図鑑によると昼間は動けないんだって!」
私の疑問にフワーデが無線を通じて回答してくる。
「なるほど。白狼族に詳しく聞いてみるから、フワーデは村人の救出に注力してくれ」
「わかったー!」
「平野、白狼族の二人をここに呼んでくれ。あとミライも。魔族に付いてのアドバイスが欲しい」
「了」
~ 岩トロル ~
CICに白狼族の二人とミライが到着すると、私は魔物たちについて彼らの情報提供を求める。
三人とも元冒険者ということもあって、映像で確認できる全ての魔物について何らかの知識を持っているようだった。
ヴィルフォアッシュは実際に岩トロルと戦ったことがあるらしい。
「岩トロルはその名の通り非常に固い皮膚を持っています。剣や槍といった通常の武器は通じません。彼らを倒すにはまず楔を打ってそこにハンマーを何度も叩き込むしかありません」
「それ普通に岩を砕く作業だな」
「奴らは夜になると機敏に動くことができるようになります。逆に陽の当たる処では緩慢で、ほとんど動くことができません」
なるほど、それで今はただ突っ立っているように見えるのか。
「おそらく魔族軍は陽が落ちるのを待っているのでしょう。夜になったら岩トロルを先頭に立てて村を襲ってくるつもりだと思います」
ヴィルフォアッシュの推測に続けて、ヴィルミカーラが岩トロルの恐ろしさを強調する。
「よ、夜の……と、トロルはむ、無敵……そ、そのま、前に倒さない、いと……」
「この映像で見る限り8体確認できますね」
平野副長がオペレーターに指示すると、戦場の俯瞰映像内の岩トロルのいる場所にマーカーが表示された。
「こいつらが艦砲射撃のターゲットということになるな。その前にアラクネの兵装が通じるか試してみるか。フワーデ! 状況報告!」
「負傷者を運び終わったよ!」
「よし、そこから南西にいる岩の巨人に|軽MATで攻撃!」
「わかったー!」
フワーデの操るアラクネを飛行ドローンが撮影する。
この水陸両用多脚型戦闘ドローンには帝国が改良を加えた軽MAT(01式軽対戦車誘導弾)が二門装備されている。これは必要に応じて歩兵が使えるように取り外しも可能だ。
局地制圧支援を目的に開発されたアラクネは、帝国で人気のSF漫画作家にデザインを依頼していることもあって、外観はその作品内に登場する同型のAI戦車に似ている。
一応、モニタ内のアラクネのボディの下部に小さい文字でコピーライト表示がされているので問題ない。
はずだ。
「それじゃ行っくよー!」
そうこうしているうちに、アラクネが岩トロルをその射程内に捉えた。
CICの2つのモニタに、アラクネから送られてくる映像と、飛行ドローンから送られてくる俯瞰映像が表示される。
「発射ァぁぁ!」
フワーデの声と同時に、岩トロルに向って軽MATが発射された。
フワーデの映像解析によって、魔族軍が南方面から侵攻していることと本隊の位置を把握することができた。
「これが魔族軍の旗みたい」
そう言ってフワーデがCICのモニタに映し出したのは、暗い赤紫色をベースに歪んだ白い円から六本のトゲが飛び出しているシンプルな紋様だ。
なんとなくドローンのアラクネを想起させる。
「これより着陸! ドローン隊を降ろした後、負傷者を回収します!}
飛行長の報告と同時にヘリから送られてくる映像が激しく乱れる中、村の各所から負傷者がヘリに向って運ばれてくる様子が映し出されていた。
「よし! ティンダロス隊! イタカ隊! アラクネ! 起動!」
「「了!」」
「わかったー!」
CICのモニタに村と周辺のマップが表示される。各ドローンの起動報告と共に、マップ上に小さな点が表示される。
水色がティンダロス、黄がイタカ、白がアラクネ、そして緑の点がフワデラの乗組員《クルー》たちだ。
「イタカ隊、索敵開始! 敵と村人の位置を知らせ!」
「「「「了!」」」」
数秒後、マップ上に赤い点と点滅する緑の点が次々と表示されていく。戦闘中の乗組員《クルー》と連絡を取りながら、各科長が必要な指示を出し始める。
「T2番機! D-5にいる斎藤に弾薬を運んでくれ!T3、4番機はA-4の戦闘支援!」
砲雷長の指示が飛ぶ。
「I3! C-2で村人が負傷! アラクネを向かわせるからその間、敵が近づかないように支援!」
イタカ隊に指示を出した飛行長が私に顔を向けた。私は頷きつつフワーデの方を見る。
「 フワーデ! C-2行けるか!」
「行けるよー!」
「では行ってこい!」
「わかったー!」
そのとき艦橋から連絡を受けた平野副長が、ようやくフワデラが村に近づきつつあることを報告する。
「艦長、あと10分で主砲の射程に入ります」
「今からターゲットを決める。射程内に入ったらすぐに撃て」
「了!」
私は飛行長に指示し、2機の飛行ドローンを戦場の撮影に回した。私はCICのモニタを目を皿のようにして観察する。
魔族軍本隊の様子が映し出されていた。
「アレが魔族か……」
「緑色の肌……いわゆるゴブリンというものでしょうか。あの性格の悪い犬みたいなのは犬男?」
「面白いけど、それコボルトな」
「はぁ」
ゲームなどとはほぼ無縁の平野副長が推測した通り、魔族軍の多くがいわゆるゴブリンやコボルトで構成されていた。ただ他にも異形の存在も沢山確認された。
特に目を引くのが本陣を囲むように立っている巨大な岩の巨人たちだ。背中を丸めた状態なので、これが背を伸ばしたらさらに大きい姿を見せるのだろう。
「それにしても……この岩の巨人は動いていないようだが?」
「それ【岩トロル】だよ! 図鑑によると昼間は動けないんだって!」
私の疑問にフワーデが無線を通じて回答してくる。
「なるほど。白狼族に詳しく聞いてみるから、フワーデは村人の救出に注力してくれ」
「わかったー!」
「平野、白狼族の二人をここに呼んでくれ。あとミライも。魔族に付いてのアドバイスが欲しい」
「了」
~ 岩トロル ~
CICに白狼族の二人とミライが到着すると、私は魔物たちについて彼らの情報提供を求める。
三人とも元冒険者ということもあって、映像で確認できる全ての魔物について何らかの知識を持っているようだった。
ヴィルフォアッシュは実際に岩トロルと戦ったことがあるらしい。
「岩トロルはその名の通り非常に固い皮膚を持っています。剣や槍といった通常の武器は通じません。彼らを倒すにはまず楔を打ってそこにハンマーを何度も叩き込むしかありません」
「それ普通に岩を砕く作業だな」
「奴らは夜になると機敏に動くことができるようになります。逆に陽の当たる処では緩慢で、ほとんど動くことができません」
なるほど、それで今はただ突っ立っているように見えるのか。
「おそらく魔族軍は陽が落ちるのを待っているのでしょう。夜になったら岩トロルを先頭に立てて村を襲ってくるつもりだと思います」
ヴィルフォアッシュの推測に続けて、ヴィルミカーラが岩トロルの恐ろしさを強調する。
「よ、夜の……と、トロルはむ、無敵……そ、そのま、前に倒さない、いと……」
「この映像で見る限り8体確認できますね」
平野副長がオペレーターに指示すると、戦場の俯瞰映像内の岩トロルのいる場所にマーカーが表示された。
「こいつらが艦砲射撃のターゲットということになるな。その前にアラクネの兵装が通じるか試してみるか。フワーデ! 状況報告!」
「負傷者を運び終わったよ!」
「よし、そこから南西にいる岩の巨人に|軽MATで攻撃!」
「わかったー!」
フワーデの操るアラクネを飛行ドローンが撮影する。
この水陸両用多脚型戦闘ドローンには帝国が改良を加えた軽MAT(01式軽対戦車誘導弾)が二門装備されている。これは必要に応じて歩兵が使えるように取り外しも可能だ。
局地制圧支援を目的に開発されたアラクネは、帝国で人気のSF漫画作家にデザインを依頼していることもあって、外観はその作品内に登場する同型のAI戦車に似ている。
一応、モニタ内のアラクネのボディの下部に小さい文字でコピーライト表示がされているので問題ない。
はずだ。
「それじゃ行っくよー!」
そうこうしているうちに、アラクネが岩トロルをその射程内に捉えた。
CICの2つのモニタに、アラクネから送られてくる映像と、飛行ドローンから送られてくる俯瞰映像が表示される。
「発射ァぁぁ!」
フワーデの声と同時に、岩トロルに向って軽MATが発射された。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる